【完結】君に伝えたいこと

かんな

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〜青春編〜

六話 『分からないことは……』

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あの後の記憶は曖昧で、気づいたら家にいた。どうやって帰ったのかも覚えていないし、何を話したかもあまり覚えていなかった。ただ一つだけ鮮明に覚えていることがあった。それは――


「(何で笹川さんと石崎さんが……?)」


一緒にいたのだろう。いや、一緒にいるのは百歩譲ってもどうして石崎さんは笹川さんを連れてサッカー部の部室に来たんだ……?……そんなことを考えていると、


「ちょっと!中村くん!」


そんな考え事をしていると、松岡の声が聞こえた。俺はその声に反応して、顔を上げる。するとそこには、焦った表情をした松岡がいた。


「先生に呼ばれてるわよ!」


松岡の言葉を聞いた瞬間、俺は椅子から
立ちあがり、


「は、はい!」


「中村。俺が言った問いに答えろ」


そう言って先生は黒板を叩く。俺は、教科書を開くが、何処をやっているのかを話を聞いていなかったため分からない。だから素直に――


「わかりません……」


と言った。先生は少しの間黙り込んでから――。


「……ったく、じゃ、もう一回言うぞ……分からないのなら分からないままにするじゃねーぞ」


分からないままにするな……。確かにそうだ。このままだと何も変わらない。そうだ。聞けばいいじゃないか!笹川さんと石崎さんに!


「そうですね!先生!わからないままではダメですよね!ありがとうございます!」


「おお……今日はいつになく勢いがいいな……毎回こうだったら良いんだけどなぁ……」


そんな先生のぼやくような言葉を聞きながら俺は授業に集中した。


△▼△▼



昼休みは残念ながら笹川さんを捕まえることは出来なかった。同じクラスなのに捕まえられないのは不覚だけど……無理矢理捕まえるのは……無いよな……笹川さんが嫌がることはしたくないし。


でも――。


「中村くん、ちょっと残れる?」


…放課後になり、部室に向かおうとしている途中に石崎さんに声をかけれた。その声はいつもより低く感じられた。そして同時に、何かを決意したかのような決意に満ちた目をしていた為、断れる空気でもなく、俺ははいと答えてしまった。


そのときの周りにいた人達の目線が――。


「中村ー?お前何したんだよー?」


「石崎さんに叱られるとかご褒美じゃん……!羨ましいぜちくしょぉお!!」


「え!?これから中村くん、石崎先輩に怒られるの!?マジかよ!!あ~ん♡私も石崎先輩に叱られたいぃ~!!!」



という、やばい声と心配の声があったが、今の俺にはそんなの一切耳に入らず、ただただ緊張していた。
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