11 / 15
十一話 『上原悠馬の恋愛事情②』
しおりを挟む
モヤモヤはいつまで経っても消えてくれない。氷室稔のことが頭から離れないのだ。
あの時感じた得体の知れないものがどんどん大きくなっていくような感覚を覚えてしまう。
「(落ち着かなきゃ……)」
手を握りしめながら自分の胸に手を当てる。するとドクンドクンという心臓の音を感じることができる。その感触にため息を吐きながらベッドの上に寝転ぶ。
「なんなんだよこれぇ……」
どうすればいいか分からず頭を悩ませることしかできなかった。だって原因が全く分からないし、解決法も全く思いつかないからだ。
このままではずっと悩み続けることになってしまうかもしれない。それだけは何としても避けなければならない。
だが今の俺にはどうすることもできないのだ。だからこそ、こうして悶々として過ごすしかない。
「こんなに悩んで何になるんだろう?こんなことをしても何も変わらないじゃないか」
結局堂々巡りをしているだけだ。この疑問に対して答えなんて出るはずがない。ただ……時間だけが過ぎていくだけなのだから。
「手紙……書こうかな」
ふとそう思った。思い立ったらすぐ行動というのは俺の長所でもあるし、短所でもあると自覚している。だから今回もその例に漏れることなく、すぐに机に向かい便箋を取り出してペンを持った。
そして俺は氷室稔へ送る手紙を書き始めた。
△▼△▼
「出来た……!」
何時間と悩み続けようやく完成した手紙を見て俺はため息を吐く。
「結局、何時間もかけて書けた文章がたったこれだけって……」
思わずそんな声が出てしまった。我ながら情けないと思う。だけど仕方がないことだ。これが俺なんだから。
「…うん!もうこれでいいんだ」
これ以上書いたところで無駄だと悟った。考えるのは氷室稔が来てくれてからでもいいだろう。時計を見るとすでに日付が変わっていた。明日に備えてそろそろ寝なければ。
そうして俺は部屋の電気を消した。
△▼△▼
――そして勢いで氷室稔に手紙を送った後、俺はすぐに後悔することになった。何せ……
「(よくよく考えたら来てくれるのか?氷室稔……)」
不安になって来たのだ。だってあんな一方的な内容の手紙を送ってしまったわけだし、来る可能性は低い気がする。それに手紙の内容的もよく考えたらかなり酷いし……
「(こんなの脅しだろ!って思われててもおかしくないぞ!?)」
そして、今更気付いたのだが、俺が送った手紙には宛名を書かなかったのだ。こんなの来てくれるはずがないじゃないか!
「どうしたん?悠馬。そんな難しい顔して」
そんなことを思っていると純に声をかけられた。
「そんな難しい顔をしていたか?」
「うん。何か悩み事でもあるんだろ?相談に乗るぜ!」
……本当にいい奴だよなぁ。純は……だからモテるんだよな。
「ありがとうな。でも大丈夫だ」
これだけは純には言えない、いや言いたくない。言ったところで何も変わらないだろうし。純なら笑ってくれないって思っているけど、それでも怖いと感じるから。
すると純は少し残念そうな表情をしたが、それ以上は何も言わなかった。
△▼△▼
そしてお昼休みになった。氷室稔を呼び出した時間になってしまった。正直、来てくれるのかが心配だ。来てくれなければあの話は無しになることになるし……
「なーなー。悠馬。合コン行かね?」
「合コン?なんでまた急に……いや、ごめん。合コンとか苦手なんだわ」
急に誘われて、思わず断ってしまった。そんなことより今日は大事な用事があるのだ。
「あー。そっか、悠馬は好きな女の子がいるんだっけ」
「は?」
ニヤニヤしながら言ってきたので俺は素直に疑問の声をあげたが周りは気にせず話を続ける。
「なーなー、教えろよ~。俺らにも恋の相手を教えてくれたっていいじゃんかよ~」
そう言いながらグイグイと体を近づけてくるが、今はそれどころではないんだけども……!しかし、俺も逆の立場ならこんな風にグイグイと聞くと思うのであまり強く言うことはできないし……
「うるさいぞお前ら!!さっきから何を騒いでいるんだ!!」
困り果てていると教室に先生が入ってきた。ナイス!と思いながら……
「じゃあ、俺用があるんで!また後で!」
と言って逃げるように教室を出て、勢いよく、自分で指定した場所に向かった。
扉のすぐ側には氷室稔がいる……と思うと緊張する。深呼吸をして気持ちを整えた後、俺はゆっくりと扉に手をかけ、開けた。
「(どんなことを言われても受け止めよう)」
そう、思ったのに。
「あ……」
目が合ったとき。その瞳を見た瞬間、吸い込まれそうになって……心臓がドクン、となった。
「(何これ……)」
心臓がドクンドクンと鳴っても、一向に収まる気配はない。むしろどんどん加速していく。体が熱い。胸が苦しい。
でも、それでも。
「良かった。来てくれなかったらどうしようかと……あ、氷室くん、初めまして。俺、上原悠馬です」
……ちゃんと笑って挨拶は出来た自分を褒めてやりたい。平然としなければならない。表情を曇らせてはならない。
すると氷室稔はペコリと頭を下げると口を開いた。
「あ、ど、どうも…氷室稔です……あの、今日はどう言ったご用件ですか……?」
ビクビク、と怯えた表情でこちらの様子をうかがいながら尋ねてくる。その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「俺、お前のことが好きだ!付き合ってくれ!」
と、そう言ってしまった。
あの時感じた得体の知れないものがどんどん大きくなっていくような感覚を覚えてしまう。
「(落ち着かなきゃ……)」
手を握りしめながら自分の胸に手を当てる。するとドクンドクンという心臓の音を感じることができる。その感触にため息を吐きながらベッドの上に寝転ぶ。
「なんなんだよこれぇ……」
どうすればいいか分からず頭を悩ませることしかできなかった。だって原因が全く分からないし、解決法も全く思いつかないからだ。
このままではずっと悩み続けることになってしまうかもしれない。それだけは何としても避けなければならない。
だが今の俺にはどうすることもできないのだ。だからこそ、こうして悶々として過ごすしかない。
「こんなに悩んで何になるんだろう?こんなことをしても何も変わらないじゃないか」
結局堂々巡りをしているだけだ。この疑問に対して答えなんて出るはずがない。ただ……時間だけが過ぎていくだけなのだから。
「手紙……書こうかな」
ふとそう思った。思い立ったらすぐ行動というのは俺の長所でもあるし、短所でもあると自覚している。だから今回もその例に漏れることなく、すぐに机に向かい便箋を取り出してペンを持った。
そして俺は氷室稔へ送る手紙を書き始めた。
△▼△▼
「出来た……!」
何時間と悩み続けようやく完成した手紙を見て俺はため息を吐く。
「結局、何時間もかけて書けた文章がたったこれだけって……」
思わずそんな声が出てしまった。我ながら情けないと思う。だけど仕方がないことだ。これが俺なんだから。
「…うん!もうこれでいいんだ」
これ以上書いたところで無駄だと悟った。考えるのは氷室稔が来てくれてからでもいいだろう。時計を見るとすでに日付が変わっていた。明日に備えてそろそろ寝なければ。
そうして俺は部屋の電気を消した。
△▼△▼
――そして勢いで氷室稔に手紙を送った後、俺はすぐに後悔することになった。何せ……
「(よくよく考えたら来てくれるのか?氷室稔……)」
不安になって来たのだ。だってあんな一方的な内容の手紙を送ってしまったわけだし、来る可能性は低い気がする。それに手紙の内容的もよく考えたらかなり酷いし……
「(こんなの脅しだろ!って思われててもおかしくないぞ!?)」
そして、今更気付いたのだが、俺が送った手紙には宛名を書かなかったのだ。こんなの来てくれるはずがないじゃないか!
「どうしたん?悠馬。そんな難しい顔して」
そんなことを思っていると純に声をかけられた。
「そんな難しい顔をしていたか?」
「うん。何か悩み事でもあるんだろ?相談に乗るぜ!」
……本当にいい奴だよなぁ。純は……だからモテるんだよな。
「ありがとうな。でも大丈夫だ」
これだけは純には言えない、いや言いたくない。言ったところで何も変わらないだろうし。純なら笑ってくれないって思っているけど、それでも怖いと感じるから。
すると純は少し残念そうな表情をしたが、それ以上は何も言わなかった。
△▼△▼
そしてお昼休みになった。氷室稔を呼び出した時間になってしまった。正直、来てくれるのかが心配だ。来てくれなければあの話は無しになることになるし……
「なーなー。悠馬。合コン行かね?」
「合コン?なんでまた急に……いや、ごめん。合コンとか苦手なんだわ」
急に誘われて、思わず断ってしまった。そんなことより今日は大事な用事があるのだ。
「あー。そっか、悠馬は好きな女の子がいるんだっけ」
「は?」
ニヤニヤしながら言ってきたので俺は素直に疑問の声をあげたが周りは気にせず話を続ける。
「なーなー、教えろよ~。俺らにも恋の相手を教えてくれたっていいじゃんかよ~」
そう言いながらグイグイと体を近づけてくるが、今はそれどころではないんだけども……!しかし、俺も逆の立場ならこんな風にグイグイと聞くと思うのであまり強く言うことはできないし……
「うるさいぞお前ら!!さっきから何を騒いでいるんだ!!」
困り果てていると教室に先生が入ってきた。ナイス!と思いながら……
「じゃあ、俺用があるんで!また後で!」
と言って逃げるように教室を出て、勢いよく、自分で指定した場所に向かった。
扉のすぐ側には氷室稔がいる……と思うと緊張する。深呼吸をして気持ちを整えた後、俺はゆっくりと扉に手をかけ、開けた。
「(どんなことを言われても受け止めよう)」
そう、思ったのに。
「あ……」
目が合ったとき。その瞳を見た瞬間、吸い込まれそうになって……心臓がドクン、となった。
「(何これ……)」
心臓がドクンドクンと鳴っても、一向に収まる気配はない。むしろどんどん加速していく。体が熱い。胸が苦しい。
でも、それでも。
「良かった。来てくれなかったらどうしようかと……あ、氷室くん、初めまして。俺、上原悠馬です」
……ちゃんと笑って挨拶は出来た自分を褒めてやりたい。平然としなければならない。表情を曇らせてはならない。
すると氷室稔はペコリと頭を下げると口を開いた。
「あ、ど、どうも…氷室稔です……あの、今日はどう言ったご用件ですか……?」
ビクビク、と怯えた表情でこちらの様子をうかがいながら尋ねてくる。その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「俺、お前のことが好きだ!付き合ってくれ!」
と、そう言ってしまった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる