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人生いろいろ②

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「はぁ~」っと溜め息をつきながら裏校舎の噴水近くに落ちているどんぐりを拾っているとなにやらボソボソと人の話し声が聞こえてくる。

「ん?もしかしてみんな来たのかな?」
そう思い、声がする方へ歩いて行くと男子生徒の後ろ姿が見えた。
後ろ姿だけでわかるくらいのイケメンオーラを出している長身の男子生徒がいたため、今までろくに働かなかった脳がフル回転しだした。
(あっ、これは幽霊よりも関わってはいけないやつだ…………よし、気付かれないように逃げよう!)
今までにないくらいに慎重に…ゆっくりと音をたてずに一歩一歩後ろ向きに下がっていく…そう!クマから逃げるように…そっと…そっと…
そしてついに相手の姿が見えなくなり裏校舎から離れられるところまできたとき…いきなり
「おい!」と後ろから声がし、あまりの驚きに声よりもスマホのバイブなみに全身が震え固まった…

「えっと…すまない、そんなに驚くとはおもわなくて…大丈夫か?」
そう声をかけながら私の前まで行き顔を覗き込む。
「………まて、なぜ両手で目を隠している?」
「…私のルールでは相手を見なければセーフなので…」
「いや、聞いても意味がわからないのだが?」
「大丈夫です、私がわかってるので」
「何がどう大丈夫なんだ?」
「いや!ほんとに大丈夫なんで!私に構わずに先に行って下さい!」
「行けと言われても…どこに…?」
「とりあえず!私の前からいなくなって下さい!」
「何気なく傷付くことを言われてるんだが…」
「すみません!じゃあ、私が下を見ながら移動するので構わないで下さい!」
「……わかった」
見ないように慎重に下だけを見て歩いて行こう…大丈夫!足元だけ見えても誰かまではわからないからセーフ!!
「ちなみに私はこの国の第一おぅ」
「ぁ゙ぁ゙あああああああーーー!!!!!!」
「どうした!?急に叫んで?さっきので心臓でも痛めたか?」
「あの……本当にすみませんが…私に話しかけないで下さい」
「……………………………」
「…………………」
沈黙が流れるなか…歩きだそうとした瞬間…
「私はこの国の第一王子キル・ロイド・ファルデリックだ」
「…………………………………………」
「どうした?聞こえなかったのか?」
「……………………んで…」
「?…すまない…よく聞こえない」
「私…目を塞いでましたよね?」
「…あぁ」
「話しかけないで下さいってお願いしましたよね?」
「したな」
「…………じゃあ!!どうして名乗ったんですかコノヤロウ!!人が見ないように関わらないようにしたのに嫌がらせのように御丁寧に自己紹介までしてくれやがって!!」
「いや……話しかけるなと言われると話しかけたくなって…」
「いやいや、ボタン押したがる小学生か!!」
「しょうがく?」
「それは気にしなくていいです!それよりもここで会って聞いたことはなかったことにしますのでそちらもそのつもりでお願いします!」
「……ちょっと相談に乗ってくれないか?」
「あの!人の話聞いてます!?」
「相談に乗ってくれないなら…数々の王族に対する暴言で罪に問うてもいいが…」
(なっ!!ひっ卑怯だ!!これだから上のやつと関わりたくないんだ!!)
「私は…貴族でもなくただの準貴族の準男爵令嬢ですけど…」
「だろうな…貴族なら顔や名前知ってるからな」
(なんか腹立つな)
「まあ、ここでもなんだから噴水にあるベンチに座ろう」
(仕切りだした…はぁ~…もうこれは逃げられないな…しょうがない腹をくくるか…最悪、「私には難しすぎてわかりませ~ん」って言ってやり過ごそう!)

第一王子が言った噴水近くのベンチに座る…だけどこのベンチ…3人ギリギリ座れるくらいのベンチに第一王子が1人半使ってるため…圧迫感がある上に近い…
(近っ、ってか足を広げて座るな!)


「あの…それで…相談というのは?」
「あぁ…………実は……」
(ごくり……)
「実は……俺には……友達がいないんだ…」

「………………………」
「………………………」


「はっ?」
(あっ、しまった…思わず本音がダダ漏れしてた)
「そういえば、お前の名前を聞いてなかったな」
(えっ?この雰囲気で聞く?正気か!?)

「……フィナ・ランペーン…です」
「フィナか……よし、では今日から友達だな」
「はっ?突然すぎて意味がわからないんですが…」
「お前は話を聞いてなかったのか?」
「いやいや、聞いてましたよ!友達がいないっていう相談ですよね?!」
「なんだちゃんと聞いてるじゃないか」
「いやだから!なんでその話から私と友達になるのかを聞いてるんですよ!!」
「嫌なのか?」
「嫌とかじゃなく、王族の方が準男爵令嬢と友達になるのが問題かと…」(ってか王子に嫌とか言えない…)
「そうなのか?」
(えっ?問題じゃないの?違うの?)
「まあ、確かにいきなり他の生徒の前で仲良くしてたら不審に思う者もいるかもしれないな」
「そっそうですよ!なのでこの話はなかっ…」
「では、ここで会うことにしよう」
「は?」
本日3回目の本音が出てしまったが…今はもう何も考えたくなかった
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