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ステージ
11.踊り子の「舞台」
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♪
時は止まらない
だけど ああ
あなたは永遠に動かない
それは誰のせい?
あなたは今日も答えない
あなたは今日も答えない
♪
二人は数十分、ゆっくりじっくり、歩いて例の踊り子の銅像の前に来た。
隠れる柱も何もないので、堂々と目の前に。だが、そこは辺りをいくら見渡しても、あの機械少女の存在はなかった。
さてはて、どうしたもんか。
「あぁ! あんなとこまで飛んでやがる!」
突然ノアが叫びだすもんで、ヴァル少し驚いて肩を揺らしてしまう。その視線と指先が指し示す場所にはノアの愛用銃、P228が転がっていた。
豆粒サイズでしか確認できず、ここが砂だらけでなかったら分からなかったろう。
「いい加減、変えろって事じゃねえの? お前も最新のレーザー銃にでもしろよ。そしたらきっとその手を離れないぜ。」
「うっせ! 乙女の心を俺自身じゃなきゃ射止めることが出来ねえように、俺にはこのシグちゃんじゃねえと獲物は狙えねえんだヨ!」
そう言って急ぎ足で愛用の、それこそ骨董品レベルの古い昔のドイツが作成したモデル、シグシリーズのP228をお出迎えに行く。
ま、そう言う俺もあいつと同じシグシリーズの別タイプ、P229を持っている。
決してお揃いのつもりではなく、なぜかお互いに手に馴染む形のハンドガンがこれだったってだけだが。
「ったぁく、いくら見目麗しい踊り子と言えど、俺の銃になんてことを……アン?」
「どしたー? また例の、荒くれ踊り子レディでも現れたか?」
茶化して言ったつもりだが、ノアは銃が転がったところからしゃがんだまま動かない。……まさか、マジで現れたのか? だが、気配はない。
ヴァルは一応用心して腰に手を当てる。あのスピードで早撃ち勝負ができるか若干不安ではあるが……。
「おい、ノア……」
ノアに静かに近づくと、ヴァルは全てを理解した。
そうだ、そもそもこんな銅像の近くに銃が転がる方がおかしかったんだ。ノアの銃はおそらく、本来ならばもっと、肉眼で確認できない程のところまで飛んでいくはずだ。
ノアだって握力がないわけじゃないし、しっかりとグリップも握っていた。そんな銃が、彼の手を痺れさせるほどの衝撃で、こんなところで止まるなんて。
理由は一つ。
ここに、見えない壁があったんだ!
その証拠に、ノアの銃が当たったことによって液晶のようなものに、ヒビが入っていた。
「なんとまぁ……こんなカラクリがあったとはね!」
「へ! 俺のシグちゃんのおかげだぜ! レーザー銃なんぞに後れを取るかヨ!」
いや、これは例えレーザー銃が当たったとしても結果は同じだったろうよ……。
その言葉をヴァルはあえて言わずにいてやった。言ったら言ったで、面倒くさいだろうから。
「しかし、こいつは驚いたな。こいつぁ映像モニターだぜ。しかもどんな技術なのか。どっから見たって違和感がない。かといって最新式モデルにも見えない。」
「ヘッ! ってぇことはよ、所謂、舞台裏っちゅーもんが、あるんでねえの?」
そう言って、2人はニッと悪い顔をして、銃を構える。
ドパパパパン!
連射して、ビンゴ! 砂景色を映していた映像は乱れ、その正体を現したのだ。
「……ヒュゥ」
思わず口笛を鳴らす。砂景色は消えたかと思えば、一体どこまで続いているのか、映像を映すことを止めたグレーの液晶画面が左右、どこまでも、どこまでも伸びていた。
まるで地平線まであって、地図の境界線を表しているかのように思えるほど、それは長く長く、続いていた。こんなものが、100年以上、守られてきていたのか。
そう思うと、想像を絶する感動があった。
だが、いつまでもその感動に浸ってはいられない。ヴァルは銃をしまい、銅像付近の液晶画面を弄る。
すると、丁度銅像の真後ろ、正面から見るとド真ん中にとうとうその舞台裏への扉があった。
分かりにくいが、微かに隙間があり、少し窪んだボタンのようなものもあった。恐らく、こいつを押せば開けゴマ! と、なる仕組みだろう。
なるほど、ここから静かに出ればそりゃ突然現れることも可能なわけだ。
ヴァルが扉のボタンと思われる窪みに、人差し指をかざす。
「ノアさんよ、彼女のエスコートの準備はいいか?」
「ハン! 誰に言ってやがる!」
さぁさぁ、その舞台、見せてもらおうか!
時は止まらない
だけど ああ
あなたは永遠に動かない
それは誰のせい?
あなたは今日も答えない
あなたは今日も答えない
♪
二人は数十分、ゆっくりじっくり、歩いて例の踊り子の銅像の前に来た。
隠れる柱も何もないので、堂々と目の前に。だが、そこは辺りをいくら見渡しても、あの機械少女の存在はなかった。
さてはて、どうしたもんか。
「あぁ! あんなとこまで飛んでやがる!」
突然ノアが叫びだすもんで、ヴァル少し驚いて肩を揺らしてしまう。その視線と指先が指し示す場所にはノアの愛用銃、P228が転がっていた。
豆粒サイズでしか確認できず、ここが砂だらけでなかったら分からなかったろう。
「いい加減、変えろって事じゃねえの? お前も最新のレーザー銃にでもしろよ。そしたらきっとその手を離れないぜ。」
「うっせ! 乙女の心を俺自身じゃなきゃ射止めることが出来ねえように、俺にはこのシグちゃんじゃねえと獲物は狙えねえんだヨ!」
そう言って急ぎ足で愛用の、それこそ骨董品レベルの古い昔のドイツが作成したモデル、シグシリーズのP228をお出迎えに行く。
ま、そう言う俺もあいつと同じシグシリーズの別タイプ、P229を持っている。
決してお揃いのつもりではなく、なぜかお互いに手に馴染む形のハンドガンがこれだったってだけだが。
「ったぁく、いくら見目麗しい踊り子と言えど、俺の銃になんてことを……アン?」
「どしたー? また例の、荒くれ踊り子レディでも現れたか?」
茶化して言ったつもりだが、ノアは銃が転がったところからしゃがんだまま動かない。……まさか、マジで現れたのか? だが、気配はない。
ヴァルは一応用心して腰に手を当てる。あのスピードで早撃ち勝負ができるか若干不安ではあるが……。
「おい、ノア……」
ノアに静かに近づくと、ヴァルは全てを理解した。
そうだ、そもそもこんな銅像の近くに銃が転がる方がおかしかったんだ。ノアの銃はおそらく、本来ならばもっと、肉眼で確認できない程のところまで飛んでいくはずだ。
ノアだって握力がないわけじゃないし、しっかりとグリップも握っていた。そんな銃が、彼の手を痺れさせるほどの衝撃で、こんなところで止まるなんて。
理由は一つ。
ここに、見えない壁があったんだ!
その証拠に、ノアの銃が当たったことによって液晶のようなものに、ヒビが入っていた。
「なんとまぁ……こんなカラクリがあったとはね!」
「へ! 俺のシグちゃんのおかげだぜ! レーザー銃なんぞに後れを取るかヨ!」
いや、これは例えレーザー銃が当たったとしても結果は同じだったろうよ……。
その言葉をヴァルはあえて言わずにいてやった。言ったら言ったで、面倒くさいだろうから。
「しかし、こいつは驚いたな。こいつぁ映像モニターだぜ。しかもどんな技術なのか。どっから見たって違和感がない。かといって最新式モデルにも見えない。」
「ヘッ! ってぇことはよ、所謂、舞台裏っちゅーもんが、あるんでねえの?」
そう言って、2人はニッと悪い顔をして、銃を構える。
ドパパパパン!
連射して、ビンゴ! 砂景色を映していた映像は乱れ、その正体を現したのだ。
「……ヒュゥ」
思わず口笛を鳴らす。砂景色は消えたかと思えば、一体どこまで続いているのか、映像を映すことを止めたグレーの液晶画面が左右、どこまでも、どこまでも伸びていた。
まるで地平線まであって、地図の境界線を表しているかのように思えるほど、それは長く長く、続いていた。こんなものが、100年以上、守られてきていたのか。
そう思うと、想像を絶する感動があった。
だが、いつまでもその感動に浸ってはいられない。ヴァルは銃をしまい、銅像付近の液晶画面を弄る。
すると、丁度銅像の真後ろ、正面から見るとド真ん中にとうとうその舞台裏への扉があった。
分かりにくいが、微かに隙間があり、少し窪んだボタンのようなものもあった。恐らく、こいつを押せば開けゴマ! と、なる仕組みだろう。
なるほど、ここから静かに出ればそりゃ突然現れることも可能なわけだ。
ヴァルが扉のボタンと思われる窪みに、人差し指をかざす。
「ノアさんよ、彼女のエスコートの準備はいいか?」
「ハン! 誰に言ってやがる!」
さぁさぁ、その舞台、見せてもらおうか!
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