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異世界居住編

第86話 エルフ達の行動

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「あの、終わりましたけど」

 ムツキは、驚いて反応を返さないエルフ達にそう声をかけた。

「え、あ、はい。本当に終わりましたね」

 ムツキに返事を返したのは、エルフの総指揮を取ると先程紹介されたイニーナであった。

 イニーナはナーラが推薦し、オサが認めたのだし、強い人物だとは理解していたつもりだ。
 ただ、1人で5000の軍勢を相手できるわけもなく、撃ち漏らしたワーウフル達をエルフで掃討しなくてはと考えていた。

 人族と言うだけで下に見ていたハムニストとは違う。

 しかし、イニーナが想像していた強さなんてものは自分の小さな物差しでしかなく、ナーラや、オサが見ていた強さを知って恥ずかしくなった。

 共同で戦う力をもった強者だとは理解していても、まさか本当にナーラが言う様に、参加に入り、腹を見せるほどの人物だとは理解していなかったのだ。

 イニーナは、はっと棒立ちになっている自分達の愚行に気づくと、号令を叫んだ。

「跪けぃ!」

 そして、自らも跪く。

 ふと、隣でまだ棒立ちで、あんぐりと口を開けているハムニストの存在に気づいた。

 イニーナは、弓を引く時以上に、己の魔力全てを肉体強化に使う様にして慌ててハムニストの頭を掴んで地面に押しつけた。

 少し変な音が聞こえたが、今はそれどころでは無い。

「主上、ムツキ様のお膝元に、我々エルフは平伏させていただきたく思います」

 イニーナは、自らもそう言って額を地面につけた。

 土下座と同じ所作だが、土下座とは意味が違う。

 エルフにとって、美しい自らの顔を汚すこ事は、屈辱に値する。

 その行動を自ら行う事で、相手へ謙る為の行為なのである。

 簡単に言えば、犬が腹を見せるのと同じである。

 エルフ全員から土下座をされて傘下に入る宣言をされたムツキは、苦笑いでどうしようか考える。

 ドラゴニアの時から、慣れなければいけないとは思っているのだが、この後どうすればいいのか……

 前回は、エレノアが居てくれたし事前に練習もしたのだが、今回は突然の出来事である。

 ムツキがどうしようかと迷っていると、ムツキの頬をペチペチと叩く小さな手があった。

『もう、私の言う通りにしなさい、エルフ達は妖精を神聖視しているからどうすればいいのか教えてあげる』

 ピリカからの助け舟に、胸を撫で下ろす思いのムツキは、ピリカに念話でお礼をいった。

 念話の内容は、スキルを使える人間でないと聞くことはできない。

 ムツキは、ピリカの指示通りに、上手い事この場をまとめ上げ、取り仕切っていく。


 その裏側で、ピリカのムツキへの指導は、『もっと背筋を伸ばして』『語尾を強く自信がなさそうに聞こえない様に!』等、スパルタであったのだとか。








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