人生

男

ある男がこの世に生まれた。

男は成長し、ある一人の女性を愛した。

しかしその女性は振り向かなかった。

男は悩んで悩んだ末に

自ら命を絶った。







次に男が生まれた時。

男はまた愛する人ができた。

今度は愛し合うことが出来た。

しかし男はその人に裏切られた。

男は命を絶った。







次に男が生まれた時。

男は誰も愛さなかった。

ただひたすらに生きた。

しかし何をしても男は満たされなかった。

男は命を絶った。







次に男が生まれた時。

男はこの世が最悪だと思った。

男は暴れ回った。

すると男は人に殺された。







次に男が生まれた時。

男は普通だった。

恋をして、仕事に就き、家庭を持った。

しかし男は家庭を裏切った。

男は殺された。







次に男が生まれた時。

男は全てを思い出した。

男は生きたいと思った。

恋をしなかった。

仕事に就かなかった。

家庭も持たなかった。

誰とも話さなかった。

男は病気にかかり、そのまま死んだ。







次に男が生まれた時。

また男は全てを思い出した。

今度は人に優しくなろうとした。

男は誰にでも優しかった。

誰も裏切らず、誰も嫌わなかった。

しかし男はそうするのが辛くなった。

男は命を絶った。







次に男が生まれた時。

男は誰にでも優しかった。

それが当たり前だと思った。

辛くはならなかった。

周りに人が沢山いた。

男は幸せな人生を歩んだ。

男は寿命で死んだ。







次に男が生まれた時。

男はこの世が素晴らしいと思った。

男は毎日神に祈った。

男は寿命で死んだ。







次に男が生まれた時。

男は人でなかった。

下界にはたくさんの人間がいて、

男はそれをずっと見ていた。

愛だの恋だのする人間を手伝ってみた。

死んだ人間を天国や地獄に連れて行った。

時たま、イタズラもした。

しかしそれも飽きた頃、

男は下界に落ちていった。







また男が生まれた。

また男が死んだ。

また男は人生を歩む。






神はただ微笑んでいた。

fin.