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蠍狐

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「落下る少女」-訪問-

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……首都「東京」からしばらく離れた、田舎か近郊か分からない場所に、1つの探偵事務所がある。
「望月探偵事務所」という事務所だ。
私の住む、いわゆる「23区内」周辺から若干遠くはあるものの、電車からの風景と。今朝友達伝てで届いたモノの真相解明と至るまでは、面倒くさがってはいられなかった。
私は、蒸し暑い夏の早朝、またも人身事故で遅れている中央線に乗って向かっていた。
自分が見た、衝撃的な光景を片手に。



「ここが…望月探偵事務所…?」
私が立ち止まったのは、駅前の小さなカフェみたいな建物。
若干不安はあったものの、親友の死と言う暫定的な謎を目の前にして、建物の外装なんかで止まってなどいられなかった私は、その扉を開けた。 

「やぁ、いらっしゃい。とは言ったものの……」
若い男の人が自分の常套句を言い切る事を制止してまで、私は自分の依頼を一方的に話したのだった。
「あの!幼馴染がビルから飛び降りて…、解決してもらいたいんです!」

…探偵と思わしき若い男が、言おうとしていたセリフを続ける。
「…営業時間外、と言いたかったんだけど……ちょっと状況が変わるね。それは多分警察に言うべき案件では無いかい…?」
間を置かずに、私が続ける。
「いえ、ここじゃなきゃ駄目なんです!」
「……どうしても?」
「はい!どうしてもです!」


しまった。依頼にしては押し付けがましかったかな。
でも……それくらい私は。いや……この事件は。
解決されるのを待っているのだから。

「いいよ。それに、こっちとしても願ったり…叶ったりな依頼だからね。追わせてもらおう。君の事件を。」

探偵と思わしき若い男は、「ビル」と「飛び降り」。
ふたつのワードを聞いた瞬間、真剣な顔でこっちを見ながら、なんと私の依頼を通してしまったのだった。


事務所に入ると、探偵さんより1頭身小さいような人が出迎えてくれた。
他にも結構色んな人が居たので、私はどこを見ればいいのか、よく分からなくなってしまった。

子供みたいに周囲を見渡す私に対し、桃色の髪の人が語りかける。
「営業時間外に駆け込んで来るなんてね。緊急事態かしら?とりあえずお茶菓子と…あとは、優秀な探偵さんね。」

続いて、黒髪の人がやってきて、こちらに話しかけた。
「優秀?誰がだ。こんなもん、さっさと追い返すかテキトーに物事終わらせときゃ良いんだよ。」
その男の人は、学生の目の前であるというのに、お構いなしに煙草に火をつけ始め、吸い始め、私に対しこう言った。
「……ふぅ。全く……静かに煙草も吸えやしない。」

うぅ……やっぱり、ここに来るべきじゃなかったかなぁ……なんて、誰が見てもわかるような困り顔をしていると、桃髪の女がこちらに向かって、
「……子供みたいね、とりあえず……要件を伺いたいから、早くあそこの席に座ってくれるかしら?」
と、半ば急かすような形でこちらに問い掛けてきた。

悪態をつく黒髪の男と、急かす桃髪の女に対し、探偵さんは、少し睨んだ様な顔で語る。
「こらこら、依頼者の前だ。そんな乱暴な言葉遣いはしないでよ。」
探偵さんは2人に少し凄んだあと、私の方を向き、近くにあった棚を探し始めた。
「音楽でも聞くかい?最近の……けーぽっぷ?だっけ、そっち系は分からないけど……無いよりかはマシかもしれないからね。確かこの辺に…………あぁ、あった。」
……と、言いながら探偵さんが流してきてくれたのは、どこか哀愁を漂わせる、ポップな感じの曲だった。
「多分君でも聞いた事あると思うよ、ここの「物憂げな六月の~」って。」
しかし、曲のサビらしき所を聞いても一向にアーティストが分からず、首を傾げている私に対して、「……まじか、やっぱり最近の曲ってやつを流さないとダメなのかな……?」
と言ったあと、桃髪の女を呼んで……
「るるちゃん、ちょっと雪だるマンのCD持ってきて、2枚目のほうね。」
と曲を変えようとしていたので、なんだか申し訳なくなってしまい……
「いえ、大丈夫です!その……なんだか心地よい曲なんですね。」
と、音楽を変えようとしている探偵さんの手を止めた。

「分かった、じゃあ……早速、初めよっか。いい加減、梨寿が耐えられなくなっちゃいそうだからね。」
と、煙草を吸う黒髪の男をちらっと見た後に、真剣な顔をして、私の方に尋ねた。


「じゃ、今から依頼内容とかについて色々聞いてくよ。そうだな……まず、お名前の方はなんて言うのかな?」
「はい……、稲野イナノメイです。」
…そっか。尋問みたいなのが始まったんだ。とりあえずはそう思う事にし、私は探偵さんに駆け込んできた理由を語りかけた。
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