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86. 特訓はつづく
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僕たちは冒険者ギルドで依頼を受け、王都の東門へ向かって歩いていた。
今日は家の新人冒険者2名を引率しているのである。
ひとりはクロナ。なんとも今さら感が強いがギルドランクを上げるため頑張ってほしい。
そして、もうひとりはカルロ邸メイドのリンである。
家のメイドは ある程度は戦えるようにしておきたいし、冒険者の経験もさせてやりたい。
そこで、募集を募ったところがまっ先に手を上げたのがこのリンであった。
なんでも、本人曰く、
「ネズミどもを根絶やしにするため、日々精進するニャン」
だそうな。――まあ、がんばれ!
クロナは今日から3日間は学園が休みになるため、張りきって参戦している。 (入学試験中)
もう、あの赤いローブも卒業し、今は僕と同じような革鎧を主体とした冒険者スタイルに変更している。
そして、成長したよな~。いろいろと。
やはり身体の成長は早いようで、一緒に歩いているリン (15歳)とほとんど変わらない。
それで王家の血を引いているだけあって、とても奇麗になった。
あの翠眼でジッと見つめられると鳥肌が立ちそうだったよ。
それでもって、ベタベタしてくるものだから本当に困っているのだ。
いつものように、串焼き屋でシロにおねだりされての小休止。
串肉をほう張りながら、東門を抜けた僕らは森林地帯を目指し北へ向かった。
そして、森に入った所で転移。王都とカイルの中間ぐらいに出てきた。
あとはシロの案内で薬草の群生地を廻っていく。途中に出てきたゴブリン、ウルフも同時に狩っていった。
「ニャッハハ、薬草いっぱいニャ。クロニャン、こっちこっち取り放題ニャン」
「あ、ホントですね。頑張って摘みましょう!」
すると、クロナはリンの隣りに腰をおとし、仲良く並んで薬草を積み始めた。
――お花摘みではない。
「にゃーにゃ―、クロニャン。ご主人様と何処まで進んでるのニャ」
「えっ、どういう事ですか? なにを進めるのですか?」
「にゃにゃ! わからないのニャ。マジかニャン」
「はい、わたしはお母さんが早く亡くなって、それで……なにも……」
「そーニャ、それは大変だったニャ。だから、『ニャーニャー語』ではなかったニャン」
「リンさん、その『ニャーニャー語』とはそんなに大事なものなのですか? わたし分かんなくて」
「…………」
――リンは驚愕した。
えっ、マジかよ。猫人族 最大の武器である『ニャーニャー語』を知らない?
勇者が居た時代から500有余年、大切に受け継がれてきた伝統の言語。それが『ニャーニャー語』である。その使用は猫人族に限られ、少々の失敗は「ごめんニャン!」で許されてしまうという、いたずら好きの猫人族には とてもありがたーい『魔法の言語』なのだ。
コイツ正気か? 何を言ってるんだ!
しかし、リンは思いなおしたのである。そうなのだ、クロナは母親を早くに亡くしている。
近くに同族がいなかったのだ。何だか胸がキュンとなったリンは決心を固めたのである。
「大丈夫ニャ、アチきが確り教えるニャ。かつお節の船に乗ったつもりでいるニャン」
「まずは、招き猫ポーズで『おはようニャン!』 これからいくとするニャン」
「アチきがやるから、まねするニャ。フリは柔らかく流れるようニャン」
「はい! がんばります。……えっと、こうですか? おはようニャン!」
「にゃ――、なってないニャ。右手はコウ、左手はコウ、目線は下から上ニャン」
「もう一回、最初からニャン!」
――『ニャーニャー語』の特訓はつづく。
「おーい、次いくぞー。こっちに集まってくれ」
「はい! かしこまりました。今すぐ…………」
「なーに、恥ずかしがっているのニャ。普通に出るようにするニャン」
「でもですニャン。難しいのですニャン。わかんなくなってきまニャンニャン」
「…………」
「今日は普通にしとくニャ。無理するとドツボにハマっていくニャン」
「そうですね、そうします。リンさんすいません」
「おう、ようやく来たな。こっちだ、シロたのむ!」
僕たちは次の採取場所へやってきた。
そして、みんなが薬草を摘み始めてからしばらくして、周りを警戒していたヤカンから念話が飛び込んできた。
『主様、ヤカンです!』
「ん、ヤカンか。何かあったか?」
『はい、只今わたしは街道外れにいるのですが、人族同士が戦闘いたしております』
「もう少し詳しく話せ」
『はい、襲われているのは幌馬車が2両。盗賊と思われる輩40人程に包囲され攻められております。また、馬車側では冒険者らしき者10人が馬車の周りで応戦しております』
ふむ、ヤカンが言うように盗賊だろうな。
街道か? おそらく王都からサミラス伯爵領のアークに伸びた街道だよな。
襲われているのは幌馬車ということだから商人だろうか?
また、怪しい所を通っているものだ。この辺は昔から危険区域だったはず……。
今も昔も盗賊が出てくるような場所は そうそう変わらないということか。
さて、盗賊と聞いた以上 放っておく訳にもいくまい。
僕はみんなを集め事情を説明したのち、ヤカンの待つ街道外れに転移していくのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クロナは13歳。ようやく冒険者に登録できました。目標はまず、Dランクに上がることです。そうすれば、これまでのようにダンジョンに入ってもコソコソする必要がなくなるのです。今日は”おてんば娘”が居ないと思ったら、お受験だったようです。それにしても、「ニャーニャー語」は500年もの古い歴史があったのですね
今日は家の新人冒険者2名を引率しているのである。
ひとりはクロナ。なんとも今さら感が強いがギルドランクを上げるため頑張ってほしい。
そして、もうひとりはカルロ邸メイドのリンである。
家のメイドは ある程度は戦えるようにしておきたいし、冒険者の経験もさせてやりたい。
そこで、募集を募ったところがまっ先に手を上げたのがこのリンであった。
なんでも、本人曰く、
「ネズミどもを根絶やしにするため、日々精進するニャン」
だそうな。――まあ、がんばれ!
クロナは今日から3日間は学園が休みになるため、張りきって参戦している。 (入学試験中)
もう、あの赤いローブも卒業し、今は僕と同じような革鎧を主体とした冒険者スタイルに変更している。
そして、成長したよな~。いろいろと。
やはり身体の成長は早いようで、一緒に歩いているリン (15歳)とほとんど変わらない。
それで王家の血を引いているだけあって、とても奇麗になった。
あの翠眼でジッと見つめられると鳥肌が立ちそうだったよ。
それでもって、ベタベタしてくるものだから本当に困っているのだ。
いつものように、串焼き屋でシロにおねだりされての小休止。
串肉をほう張りながら、東門を抜けた僕らは森林地帯を目指し北へ向かった。
そして、森に入った所で転移。王都とカイルの中間ぐらいに出てきた。
あとはシロの案内で薬草の群生地を廻っていく。途中に出てきたゴブリン、ウルフも同時に狩っていった。
「ニャッハハ、薬草いっぱいニャ。クロニャン、こっちこっち取り放題ニャン」
「あ、ホントですね。頑張って摘みましょう!」
すると、クロナはリンの隣りに腰をおとし、仲良く並んで薬草を積み始めた。
――お花摘みではない。
「にゃーにゃ―、クロニャン。ご主人様と何処まで進んでるのニャ」
「えっ、どういう事ですか? なにを進めるのですか?」
「にゃにゃ! わからないのニャ。マジかニャン」
「はい、わたしはお母さんが早く亡くなって、それで……なにも……」
「そーニャ、それは大変だったニャ。だから、『ニャーニャー語』ではなかったニャン」
「リンさん、その『ニャーニャー語』とはそんなに大事なものなのですか? わたし分かんなくて」
「…………」
――リンは驚愕した。
えっ、マジかよ。猫人族 最大の武器である『ニャーニャー語』を知らない?
勇者が居た時代から500有余年、大切に受け継がれてきた伝統の言語。それが『ニャーニャー語』である。その使用は猫人族に限られ、少々の失敗は「ごめんニャン!」で許されてしまうという、いたずら好きの猫人族には とてもありがたーい『魔法の言語』なのだ。
コイツ正気か? 何を言ってるんだ!
しかし、リンは思いなおしたのである。そうなのだ、クロナは母親を早くに亡くしている。
近くに同族がいなかったのだ。何だか胸がキュンとなったリンは決心を固めたのである。
「大丈夫ニャ、アチきが確り教えるニャ。かつお節の船に乗ったつもりでいるニャン」
「まずは、招き猫ポーズで『おはようニャン!』 これからいくとするニャン」
「アチきがやるから、まねするニャ。フリは柔らかく流れるようニャン」
「はい! がんばります。……えっと、こうですか? おはようニャン!」
「にゃ――、なってないニャ。右手はコウ、左手はコウ、目線は下から上ニャン」
「もう一回、最初からニャン!」
――『ニャーニャー語』の特訓はつづく。
「おーい、次いくぞー。こっちに集まってくれ」
「はい! かしこまりました。今すぐ…………」
「なーに、恥ずかしがっているのニャ。普通に出るようにするニャン」
「でもですニャン。難しいのですニャン。わかんなくなってきまニャンニャン」
「…………」
「今日は普通にしとくニャ。無理するとドツボにハマっていくニャン」
「そうですね、そうします。リンさんすいません」
「おう、ようやく来たな。こっちだ、シロたのむ!」
僕たちは次の採取場所へやってきた。
そして、みんなが薬草を摘み始めてからしばらくして、周りを警戒していたヤカンから念話が飛び込んできた。
『主様、ヤカンです!』
「ん、ヤカンか。何かあったか?」
『はい、只今わたしは街道外れにいるのですが、人族同士が戦闘いたしております』
「もう少し詳しく話せ」
『はい、襲われているのは幌馬車が2両。盗賊と思われる輩40人程に包囲され攻められております。また、馬車側では冒険者らしき者10人が馬車の周りで応戦しております』
ふむ、ヤカンが言うように盗賊だろうな。
街道か? おそらく王都からサミラス伯爵領のアークに伸びた街道だよな。
襲われているのは幌馬車ということだから商人だろうか?
また、怪しい所を通っているものだ。この辺は昔から危険区域だったはず……。
今も昔も盗賊が出てくるような場所は そうそう変わらないということか。
さて、盗賊と聞いた以上 放っておく訳にもいくまい。
僕はみんなを集め事情を説明したのち、ヤカンの待つ街道外れに転移していくのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クロナは13歳。ようやく冒険者に登録できました。目標はまず、Dランクに上がることです。そうすれば、これまでのようにダンジョンに入ってもコソコソする必要がなくなるのです。今日は”おてんば娘”が居ないと思ったら、お受験だったようです。それにしても、「ニャーニャー語」は500年もの古い歴史があったのですね
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