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34. 宝剣
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あれから、場所を風通しの良い2階のテラスに移し、そこで一大お茶会が始まってしまった。
大きな丸テーブルをぐるりとみんなで囲み、それぞれが楽しく談笑し、絶品スイーツをほおばる。
いつの間に呼ばれたのか、僕の隣りにはアンリエッタとセーラが座っている。
シロも横に居て、セーラに撫でてもらっているし。
ピーチャンはモコモコとテラスの手すりに並んで、左右にシンクロスイングしている。
そして、給仕を担当するメイドたちも普段より張りきって対応しているのがわかる。
それほど、魅力的なスイーツの数々が並んでいるのだ。
もちろん、茶会が終わっても引っこめないし、おみやげも残していこうと思っている。
そうして、茶会もそろそろお開きかなぁと思っているところに、
「カルロ、お昼からお願いね。準備しておきますからね」
「えっ、これからですか?」 (汗!)
「ええ、そうです。沢山いただいたのですから、汗をかかないとダメよね~」
「温泉の効能を聞いた以上、待たせるなんて無粋でしょう? セーラも楽しみにしているのよ」
「は……い、わかりました。それで、行かれる方は……み、みなさんですよね」
結局、エミリー様に仕切られてしまい。昼食後に集合することになった。
そして、三々五々と散っていく中、僕はアースレット王子に呼び止められた。
「カルロ君、今から時間は取れるかい。そんなに手間は取らせないと思うが」
「はい、特にありませんが。どちらかお伺いするのですか?」
「ああ、そうだな~。では、私の執務室に行こう。ついてきてくれ」
そう言うと、アースレット王子はスタスタと僕の前を歩きはじめた。
なんだろう。って、聞かれますよね~。ねほりはほり、……しかたないか。
と、いろいろ思いを巡らせながら歩いていると、程なく3階にある王太子の執務室に到着した。
アースレット王子は部屋を守る衛兵に右手をあげると、
「カルロ君、こっちだよ。中にはいって。もちろんシロくん達も一緒にどうぞ」
言われるがままに部屋に入り、ソファーの脇に立っていると。
「ああ、ごめんね~。ちょっと座って待っててよ。すぐ行くから」
「はい。失礼します」
と、言って僕は腰を下ろした。
アースレット王子は執務机の向こう側に回り、何かゴソゴソやっている。
執事がいれてくれたお茶を飲みながら、しばらく待っていると、
「やあ、お待たせ。ああ、座ったままでいいよ。そのままそのまま」
この王子様は意外と話せる、優しいお兄さんのようだな~。
もちろん、王太子な訳だから裏の顔もお持ちだとは思うが、それはそれだな。
「それでね、こうして来てもらったのは、預かり物を渡しておこうと思ってね」
そう言うと、アースレット王子は小脇に抱えていた装飾の立派な木箱をテーブルに下ろし、対面のソファーへ腰掛けた。
「預かり物ですか? いったいどちらからでしょう」
「うん、それを言う前に、一度見てごらんよ」
「はあ……」
僕は、一旦立ち上がり箱を手前に引き寄せると、ふたを止めてあるフックをはずして中身を確認した。
おお、これは……。あれだよな、国の宝。初代様が作った「宝剣」じゃなかったか?
「こ、これが預かり物? 何かの間違いでしょう。僕には何のことやら」
「まあ、そうだよね。いきなり渡されても困るよね。だけど、こちらも受け取ってもらわないと困るんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください。訳をお聞きしても?」
それから、アースレット王子は、これを渡すに至った経緯を順を追って説明してくれた。
なるほど~。開発とかやり過ぎていたんだな。
良かれと思って手を貸していたのだが、傍目に目立っていたということか。
それを王宮の方で、上手くごまかしてくれていたと……。ハハハッ (滝汗)
そこまで、やらかしているのに、さらに国一番の宝を預けるとか?
…………。
――ふぅ、ここまでしてもらって、隠すのも不義理か。
「シロ、おいでー」
シロを隣に呼び、例のもう一本の短剣を取り出してアースレット王子に手渡した。
「こっ、これは……」
短剣を手に持ったまま、アースレット王子はフリーズしていた。
そのまましばらく、フリーズが解けるのを待って、
「ご覧の短剣はこちらと瓜二つです。それは建国期の勇者クドウから僕が受け継いだものなのです」
「詳細を説明する事はできません。ですがこちらの王宮が、僕らのことをどの様に思ってくださっているのかは理解できました」
「つきましては、こちらの剣はお返しいたします。確認できた訳ですから、問題はありませんよね」
「あっ、ああ。もちろんだ。我らはそなたたちを害したり、利用したりとは考えてはいない」
「ダンジョンも増えたことだし、協力してもらえると助かる。もちろん、このことは公開しない」
「そうですか、それを聞いて安心しました。僕もアストレアの人間として、あまり目立たないようにやっていきます」
「やり過ぎている時は、今回のように言っていただけると助かります」
そうして、宝剣はお返しすることになった。
しかし、アストレアや迷宮都市を含めての協議が必要だろう。
いろいろと話すこともあるので、あと数日はこちらに滞在してほしいとのことだ。
いったい僕は、いつになったら帰れるのだろう……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
猫に小判、女性にスイーツですね。えっ? 使い方が間違っている? いいえ、マネキネコは小判大好き、いつも小脇に抱えていますよ。それにしても、正体はバレテーラでしたね~。特に影でこそこそもやってませんが目立っていたようです。自重しなくては……。それはそーと、来ましたよ~ビッグウェーブです。大温泉回です。わんさかです。ご準備おこたりなく……。
大きな丸テーブルをぐるりとみんなで囲み、それぞれが楽しく談笑し、絶品スイーツをほおばる。
いつの間に呼ばれたのか、僕の隣りにはアンリエッタとセーラが座っている。
シロも横に居て、セーラに撫でてもらっているし。
ピーチャンはモコモコとテラスの手すりに並んで、左右にシンクロスイングしている。
そして、給仕を担当するメイドたちも普段より張りきって対応しているのがわかる。
それほど、魅力的なスイーツの数々が並んでいるのだ。
もちろん、茶会が終わっても引っこめないし、おみやげも残していこうと思っている。
そうして、茶会もそろそろお開きかなぁと思っているところに、
「カルロ、お昼からお願いね。準備しておきますからね」
「えっ、これからですか?」 (汗!)
「ええ、そうです。沢山いただいたのですから、汗をかかないとダメよね~」
「温泉の効能を聞いた以上、待たせるなんて無粋でしょう? セーラも楽しみにしているのよ」
「は……い、わかりました。それで、行かれる方は……み、みなさんですよね」
結局、エミリー様に仕切られてしまい。昼食後に集合することになった。
そして、三々五々と散っていく中、僕はアースレット王子に呼び止められた。
「カルロ君、今から時間は取れるかい。そんなに手間は取らせないと思うが」
「はい、特にありませんが。どちらかお伺いするのですか?」
「ああ、そうだな~。では、私の執務室に行こう。ついてきてくれ」
そう言うと、アースレット王子はスタスタと僕の前を歩きはじめた。
なんだろう。って、聞かれますよね~。ねほりはほり、……しかたないか。
と、いろいろ思いを巡らせながら歩いていると、程なく3階にある王太子の執務室に到着した。
アースレット王子は部屋を守る衛兵に右手をあげると、
「カルロ君、こっちだよ。中にはいって。もちろんシロくん達も一緒にどうぞ」
言われるがままに部屋に入り、ソファーの脇に立っていると。
「ああ、ごめんね~。ちょっと座って待っててよ。すぐ行くから」
「はい。失礼します」
と、言って僕は腰を下ろした。
アースレット王子は執務机の向こう側に回り、何かゴソゴソやっている。
執事がいれてくれたお茶を飲みながら、しばらく待っていると、
「やあ、お待たせ。ああ、座ったままでいいよ。そのままそのまま」
この王子様は意外と話せる、優しいお兄さんのようだな~。
もちろん、王太子な訳だから裏の顔もお持ちだとは思うが、それはそれだな。
「それでね、こうして来てもらったのは、預かり物を渡しておこうと思ってね」
そう言うと、アースレット王子は小脇に抱えていた装飾の立派な木箱をテーブルに下ろし、対面のソファーへ腰掛けた。
「預かり物ですか? いったいどちらからでしょう」
「うん、それを言う前に、一度見てごらんよ」
「はあ……」
僕は、一旦立ち上がり箱を手前に引き寄せると、ふたを止めてあるフックをはずして中身を確認した。
おお、これは……。あれだよな、国の宝。初代様が作った「宝剣」じゃなかったか?
「こ、これが預かり物? 何かの間違いでしょう。僕には何のことやら」
「まあ、そうだよね。いきなり渡されても困るよね。だけど、こちらも受け取ってもらわないと困るんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください。訳をお聞きしても?」
それから、アースレット王子は、これを渡すに至った経緯を順を追って説明してくれた。
なるほど~。開発とかやり過ぎていたんだな。
良かれと思って手を貸していたのだが、傍目に目立っていたということか。
それを王宮の方で、上手くごまかしてくれていたと……。ハハハッ (滝汗)
そこまで、やらかしているのに、さらに国一番の宝を預けるとか?
…………。
――ふぅ、ここまでしてもらって、隠すのも不義理か。
「シロ、おいでー」
シロを隣に呼び、例のもう一本の短剣を取り出してアースレット王子に手渡した。
「こっ、これは……」
短剣を手に持ったまま、アースレット王子はフリーズしていた。
そのまましばらく、フリーズが解けるのを待って、
「ご覧の短剣はこちらと瓜二つです。それは建国期の勇者クドウから僕が受け継いだものなのです」
「詳細を説明する事はできません。ですがこちらの王宮が、僕らのことをどの様に思ってくださっているのかは理解できました」
「つきましては、こちらの剣はお返しいたします。確認できた訳ですから、問題はありませんよね」
「あっ、ああ。もちろんだ。我らはそなたたちを害したり、利用したりとは考えてはいない」
「ダンジョンも増えたことだし、協力してもらえると助かる。もちろん、このことは公開しない」
「そうですか、それを聞いて安心しました。僕もアストレアの人間として、あまり目立たないようにやっていきます」
「やり過ぎている時は、今回のように言っていただけると助かります」
そうして、宝剣はお返しすることになった。
しかし、アストレアや迷宮都市を含めての協議が必要だろう。
いろいろと話すこともあるので、あと数日はこちらに滞在してほしいとのことだ。
いったい僕は、いつになったら帰れるのだろう……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
猫に小判、女性にスイーツですね。えっ? 使い方が間違っている? いいえ、マネキネコは小判大好き、いつも小脇に抱えていますよ。それにしても、正体はバレテーラでしたね~。特に影でこそこそもやってませんが目立っていたようです。自重しなくては……。それはそーと、来ましたよ~ビッグウェーブです。大温泉回です。わんさかです。ご準備おこたりなく……。
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