俺とシロ(second)

マネキネコ

文字の大きさ
上 下
46 / 81

42. シロちゃん孝行

しおりを挟む
 あーぁ、行っちゃったなぁ。

 ――東京。

 また、しばらくしたら行くことになるんだろうな。

 次回はぜひとも ”つけ麺” を食べに行きたい。新宿に出て、”とんかつ” なんてのも捨てがたいかな。

 マリアベルの妹であるかえでは、一人残ってもう少しレベルを上げていくようである。

 たまには親元離れてのびのびしよう、というのが本当のところらしい。

 まあ、お姉ちゃんであるマリアベルがこちらにいるから親も安心なんだろうが。

 楓はマリアベルを「お姉ちゃんお姉ちゃん」と呼んでいるが、違和感はないのだろうか?

 楓は17歳、マリアベルは13歳で、しかも西洋人顔である。

 …………ふむ。

 ご注文を頂いていたライトアーマーもようやく調整ちょうせいが終わったので、試してもらいたいところだけれど。

 まだ、披露ひろうするわけにはいかないんだよね。

 一旦、サーメクスに戻らないと大型ナイフもライトアーマーも渡すことはできない。

 こちらのダンジョンでも、いろいろと出来ることがバレると面倒事になりかねない。

 みんなには言わない方が無難だろうね。

 たのめば何でもすぐ出てくる、どこぞの猫型ロボットのようにあつかわれても嫌だしな。

 まあ、低階層ていかいそうでの探索なら、今の装備そうびで十分なわけだし。

 それにしたって、ライトアーマー。

 クラネルさんのライトアーマーはなんとかなったけど、ヴァレン何某なにがしくんのやつが、これまた大変だったよ。

 アニメのとおりに作ると、かたわき・背中がぱっくり開いてるミニスカ・ワンピースでしょ。それに手を覆っているロングアームカバーと分割されたアームプロテクター。あと、ニーハイ・スキニーブーツ。

 これでは防御力にかなりの問題があった。ていうか紙に等しい。

 ――紙装甲!

 そこで、防刃ぼうじんシャツなどに使われているケブラー素材というものがあるけど。

 このケブラー素材を中心に何度も試作を重ねていき、ようやく強度の高いストレッチ素材そざいを作り出すことに成功したのだ。

 これで、なんとか薄手のアームカバーと、防御力を備えたニーハイ・スキニーブーツを完成させたのだけれど。

 いやー、カンゾー (ダンジョン) くんには頑張ってもらいましたわー。

 ただね、服の生地に重量があるためか、

 立ちまわり時に、ミニスカのひらひら感がなくなってしまったのは非常に惜しまれる点である。

 それにしても、はだ露出ろしゅつが多いので、防御力には不安が残るわけでして……。

 アームプロテクターにしても、激しく動けばズレてきてしまうわけでして……。

 うぅ~~~ん。

 まあ、何度か痛い思いをすれば紗月さつきの考えも変わるだろう。





 さて、ダンジョンの方だけれど、

 三つあるダンジョンのうち、二つは福岡と東京で確定しました。

 それじゃあ最後の一つは何処どこ? って話になるけど。

 フウガに言わせると、ほぼ【京都】で決まりらしい。

 ただ、地震の頻度ひんどが低いため、場所の特定にはいたっていないそうだ。

 それも、もう1~2回大きな地震が起これば判別できるだろうと、今朝の報告の時に言っていた。

 本当に頼りになる。フウガを連れてきたのは正解だったな。

 そして、次の満月 (帰還予定日) も近づいてきた。

 誰を連れて行くかまでは決めてないが、今回は5日程で此方こちらに戻る予定だ。向こうの時間だと10日ということになる。

 ダンジョン・カンゾーの覚醒前には戻ってきたいからな。

 管理下にあるとはいえ、ダンジョンの再起動は初めてのこと。完全覚醒かんぜんかくせいする際はこちらで見守っていたほうがいいだろう。

 あとは、こちら (日本) にしっかりとした生活基盤せいかつきばんが必要だな。

 いつまでもしげるさんの世話になるという訳にはいかないだろう。

 そのためには、こちらでの資金調達しきんちょうたつも必要になってくるわけだが。

 こちらには冒険者ギルドもないし、金の売買もあまり大っぴらにやると目立ってしまうしな。

 こちらでもダンジョン関連の整備が進んでいけば、やり様はいくらでもあるんだけどなぁ。

 まあ、あせっても仕方ないので、おいおい考えていくことにしよう。





 バイバーイ! みんなが手を振る先で、茂さんの運転する車は神社裏の坂道を下りていった。

 俺の両脇にはメアリーとキロが並んでおり、後ろにはフウガがひかえている。

 駐車場の横にある、でっかいクスノキの木陰こかげでは慶子けいこ紗月さつき、楓が集まっておしゃべりをしていた。

 さ~て、急ぎのレベリングも終ったし、今日は何をして過ごそうかな。

 時計は9時をまわったばかりだが、外はじわっとあつくなってきていた。

 目の前でお座りしているシロも、ヘッヘッヘッヘと舌を出して暑そうだ。

 そうだ、夏といえば海じゃないか! シロを海に連れていってあげよう。

 泳ぐのが大好きだし、きっと喜ぶはずだ。

 それに水着回で読者サービスもできるぞ。ヒャッホイ!

 そんなわけで、みんなに声を掛けてみたのだが…………、

 ――あえなく撃沈げきちん

 慶子は焼けるから嫌だというし、紗月は、「留守番るすばんがあるのでごめんなさい!」と手をあわせる。

 メアリーと楓は今からダンジョンに一緒にもぐるんだんって。

 「…………キ、キロ?」

 「申し訳ございませんがご主人さま、今日は買い出しと荷物の受け取りが一件ございまして……」

 フウガはフウガで、ちょっと調べものがあるのだとか。

 最後の望みで、マリアベルに電話をかけてみるが、

 「女の子にはいろいろと準備が必要なんだから、急に言われてもダメなんだからね!」

 だとさ。

 う~ん、みんなつれないよねぇ~。

 たしかに急すぎたかな。海に行ったところで、お盆過ぎてるから海水浴場はクラゲでいっぱいだろうし。

 まぁ、いっか。

 もともとシロを泳がせてやりたいと思ってのことだから、シロとふたりでも全然OKなのさ。

 しかし、行くとするなら連絡受けたらすぐに帰れるところだよな。

 そうすると、ダンジョン転移が可能な10キロ圏内けんないということか……。

 う~ん、それならあそこだな!

 生の松原いきのまつばら海岸森林公園かいがんしんりんこうえん

 「ちょっと出てくるから、何かあったらスマホによろしく」

 そう紗月に伝えると、俺はカンゾー (ダンジョン) に転移する座標を指定する。

 俺とシロは ”生の松原” へ転移した。





 おお――――――っ! 晴れわたる空、青い海、白い砂浜。

 い―――ね―――。この開放感!

 もわんと暑いのは仕方ないよね。夏だから。

 平日だからか、ほとんど人がいない浜辺。投げ釣りで竿さおを立てたおっちゃんが、たまにポツンポツンといるだけだ。

 むろんギャルなんているはずもない。――ざんねん。

 でも、いいんだ。

 俺にはこうして砂浜を一緒にけてくれるシロがいるからさ。

 ……さみしくなんかないんだからね!

 しばらく、潮風を吸い込みながらシロと砂浜を駆けていると、なんだか知らないけど気持ちが スカッ! とした。

 今は木陰こかげに腰を下ろし、海の波をものともせず泳ぎまわっているシロをながめていた。

 それにしても……、泳ぐスピードが速すぎないか?

 あれじゃマリンジェットも真っ青だろう。

 しかも、スススススー、スススススーと飛沫しぶきひとつ立ててないのだ。

 凄いよなぁ、さすがシロちゃんだ。

 ………………

 ――おっ、ようやく帰ってきたか。

 広い海を縦横無尽じゅうおうむじんに泳ぎまわって満足したのだろう。

 波打ち際なみうちぎわでブルブルブルと脱水しながらこちらに向かってくる。

 のどかわいているだろう。

 木のうつわにお水をたくさん出してやった。

 それをピチャピチャと旨そうに飲んでいるシロ。

 「どうだ、いっぱい泳いで気持ち良かったか? そのうち、また連れてきてやるからな。お次は旨いメシでも食べにいくか!」

 「ワン!」

 尻尾をはち切れんばかりに振って喜んでいるシロ。ホントに可愛いやつだ。





 砂浜からあがり、松の小道にはいった俺たちは光学迷彩こうがくめいさいを張った。

 カンゾーに頼んで転移した先は、夜の歓楽街かんらくがいで有名な中洲なかす川端かわばただ。

 目的は、この季節のスタミナ食である『うなぎ』。

 福岡でうなぎといえばココ、【吉塚う○ぎ】。

 結構なお値段ではあるが、味は文句なし。

 ――今日は特別だからな。

 二階の受付にて蒲焼かばやき二人前を持ち帰りで頼んだ。

 ………………

 持ち帰り用の手さげ紙袋をぶらさげて表に出てきた。

 シロも光学迷彩を張ったまま、ちゃんと付いてきている。

 さて、これを何処どこで食べようか? 

 家で食べたら、絶対ヒンシュクものだよな……。

 そうだ、空港へ行ってみようか。

 空港といってもフェンスの外。撮影さつえいスポットにもなっている絶好ぜっこうの場所があるのだ。

 うなぎ屋近くにあるコンビニによって、白ご飯とお茶を手にいれた俺たちは、今度は空港へと転移した。

 飛行機が頭上を通過する際は少々うるさくなるが、ここは広々としていて、とても気持ちがいいのだ。

 野外なので暑くはあるけど、俺もシロも遮熱しゃねつの結界を張れるのでどうということはない。

 俺はインベントリーから小さな椅子いすを取り出して座った。

 シロのフライパンを出し、中にあったかご飯をいれ、上にうなぎを乗せていく。

 その上から、うなぎのタレをタラ~リと掛けていると、シロのよだれもタラ~リと垂れているのだった。

 (もう少しだから、まっててね)

 シロはお座りをしたままソワソワしている。

 フライパンと俺を交互こうごに見つめ、尻尾を振りながら前足をふみふみ。

 俺は急いで自分の用意を終わらせると、

 「よし! 食べよう。いただきまーす!」

 はふはふ、もぐもぐもぐ。

 うま――――――――い!

 久しぶりに食べたうなぎは、これまた格別であった。

 二人前で大枚 (1万円) がふっとんだが、コレなら納得できるよな。

 お口のまわりについたうなぎのタレをペロペロとなめているシロ。

 そんなシロの頭をやさしくでてやる。

 (いつもそばにいて、支えてくれてありがとなぁ)

 今回のシロちゃん孝行こうこうは、こんなところで良いだろうか。

 次は長浜のラーメンでも食べにいこうな。そして、寒くなったら【もつ鍋】だよな。

 じゃあ、そろそろ家 (神社) に戻るとするか。

 シロをそばに呼び、一緒に神社の境内けいだいへと戻ってきた。

 カンゾー (ダンジョン) に転移のお礼を言ったあと、みんなと合流する。

 さーて、レベル上げをしている皆さんのお手伝い、元気いっぱい続けていきますかねー。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

トラップって強いよねぇ?

TURE 8
ファンタジー
 主人公の加藤浩二は最新ゲームであるVR MMO『Imagine world』の世界に『カジ』として飛び込む。そこで彼はスキル『罠生成』『罠設置』のスキルを使い、冒険者となって未開拓の大陸を冒険していく。だが、何やら遊んでいくうちにゲーム内には不穏な空気が流れ始める。そんな中でカジは生きているかのようなNPC達に自分とを照らし合わせていった……。  NPCの関わりは彼に何を与え、そしてこのゲームの隠された真実を知るときは来るのだろうか?

元公務員が異世界転生して辺境の勇者になったけど魔獣が13倍出現するブラック地区だから共生を目指すことにした

まどぎわ
ファンタジー
激務で倒れ、そのまま死んだ役所職員。 生まれ変わった世界は、魔獣に怯える国民を守るために勇者が活躍するファンタジーの世界だった。 前世の記憶を有したままチート状態で勇者になったが、担当する街は魔獣の出現が他よりも遥かに多いブラック地区。これは出現する魔獣が悪いのか、通報してくる街の住人が悪いのか……穏やかに寿命を真っ当するため、仕事はそんなに頑張らない。勇者は今日も、魔獣と、市民と、共生を目指す。

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

俺とシロ

マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました) 俺とシロの異世界物語 『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』 ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。  シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?

処理中です...