俺とシロ(second)

マネキネコ

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34. お父さん

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 俺たちは池袋いけぶくろ駅の外、北側にある連絡通路れんらくつうろ「ウイ・ロード」を通って西口へまわり込んでいた。

 (今のウイ・ロードは描画と照明ですごく明るく、女性も通りやすくなっています)

 なぜ、そのまま駅の中を通っていかないのか?


 そのまま行けよ、行けばわかるさ。ダ――――! (いや、失礼しました)


 大きな駅の中って結構けっこう入り組んでいて、迷うんだよね。

 結局、駅の外をまわった方が早かったりするのだ。

 初めて来る旅行者はマジでめない方がいいとおもう。平日の朝なんかも絶対避けてね。

 話が横路よこみちにそれてしまったが、予約していたビジネスホテル (サン○ティ池袋) はすぐに見つかった。

 だって、「ウイ・ロード」抜けたらめっちゃ目の前。駅までも1分かかりませーん。

 『お盆とはいえ、よくこんなところ取れたよな』って感じだよ。

 さっそく宿泊手続きをば。

 ツインルームとトリプルルームを取ってくれてるみたい。予約を入れてるから手続きも至ってスムーズ。

 部屋には15時から入れるようになっており、荷物はクロークに預けておくことができるそうだ。

 そこで荷物を預けて、俺たちはいよいよマリアベルの実家へ向かうこととなった。

 とはいっても、最寄もよりの「東長崎駅」まではここからたった2駅なのだ。

 都会なので電車の本数も多いし、掛かった時間をホテルから計算しても15分程で着いてしまった。

 マリアベルはスマホを取りだして家に電話をかけている。

 相手はお母さんだろうか? 少しよそ行きの口調くちょうで喋っていた。

 通話を終えたマリアベルは先頭にたって歩きはじめる。

 「そう、こっちこっち。大丈夫だからー、すぐそこなんだからー」

 (カウントダウンが始まりそうな台詞せりふだな。おい)

 メアリーは相変わらずキョロキョロしている。

 おばちゃんの乗った自転車を必要以上にけてみたり、ジュースの自動販売機の排出口に手を突っ込んだりといそがしい。(子供かよ!)

 10分も歩いただろうか、俺たちは大きなマンションの前に立っていた。

 マンション名は「アオバ・9」。

 ア・バオア・クーだと! (かなり無理があります)

 「まだ僕には帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない……」

 「なに言ってるのよ。さっさと行くわよ!」

 「へ~い」

 インターホンを鳴らし、二言三言ふたことみこと交わしたのち自動ドアが開かれた。





 マンションの玄関ホールを過ぎ、みんなでエレベーターへ乗りこむ………… ってどした!?

 メアリーがイヤイヤしているのだ。

 一旦、みんなでエレベーターを降りる。

 「メアリー、どうかしたのか?」

 聞いてみたのだが、ぷるぷる震えて顔が真っ青だ。

 「大丈夫か? 少し休もう」

 1階ロビーにそなえつけられたベンチに座らせる。

 インベントリーから水筒を取り出し、プラコップに水をいれてメアリーに渡した。

 ピカチュウがウインクしてる黄色いやつだ。メアリーのお気に入りで家で歯を磨くときも使っている。

 いやいや、今そういうことはどうだっていい。

 「マリア悪いけど、みんなを連れて先に上がっててくれるか。落ち着いたらそっちへいくから。ここは俺ひとりで十分だぞ」

 マリアベルは少し考えてから、

 「わかったわ。挨拶あいさつしたらすぐむかえにくるから。無理させちゃダメだからね」

 そういって3人はエレベーターに乗り、上にあがっていった。

 俺の肩にほほをくっつけて息をととのえているメアリー。

 う~ん、もしかしたら閉所恐怖症へいしょきょうふしょうなのかも。

 (そういえば、エレベーターに乗るのも初めてだったか)

 なにかトラウマになることでもあったのだろうか? 

 こういうのって、自分ではどうしようもないからなぁ。

 冷たいタオルを出して首の後ろに当ててやる。

 ……だいぶ落ち着いてきたみたいだな。

 まあ、エレベーターがダメなら、階段で上がれば済む話だよな。

 「どうだメアリー。行けそうか?」

 「うん、ゲンパパ。あれに乗ろうとしたらねぇ、身体がふるえてきちゃったの」

 「おう、そうか。エレベーターに乗らなくても階段で行けるから大丈夫だぞ」 

 軽く笑いながら言ってやる。

 「うんゲンパパ。行こう!」

 少しは元気を取り戻せたようだ。

 さてさて、マリアベルの方はご両親にちゃんと挨拶あいさつできただろうか? 





 俺たちは上に行こうとホールを見回してみたが、ここには階段がないようである。

 スマホを取り出し紗月さつきに電話をいれ、階段で行きたいのだが場所がわからないことを伝えた。

 すると家の者に話をうかがったのだろう。紗月がいうには、マンションの玄関口げんかんぐちを出て、右にまわり込んだところに非常階段ひじょうかいだんがあるそうだ。

 しかし、階段入口の扉はつね施錠せじょうされており、マンションの管理者や住人以外は外側から開けることができない。

 そこで、お父さんが今から1階へ下りていき非常階段の扉を開けてくれるそうだ。

 マリアベルの家はたしか5階だったはず。大変だろうが、ここはお願いするしかない。

 電話を切ったあと俺たちは外に出て、非常階段の前で待つことにした。

 すると間もなく、紗月が男の人を連れてマンションの玄関口からこちらに歩いてくるのが見えた。

 「こんにちはー。どうもすいません、さっそくご迷惑をおかけして」

 「いえいえ、こんなことぐらい何でもありませんよ。そちらのお嬢さんは大丈夫でしたか?」

 「はい、今はなんとも」

 「そうですか。私は本条ほんじょう剛志つよしといいます。あおい (マリアベル) の父です」

 丁寧ていねいに頭を下げられた。

 こちらも自己紹介じこしょうかいしながら頭を下げる。

 扉を開けてもらったあと、俺とメアリーは階段を上りはじめた。

 すると2人も後ろから付いてくる? エレベーターで戻ればすぐだろうに……。

 なんでもこの階段、普段ふだんはあまり使われておらず、他の住人に見られると不信に思われるかもしれない。その可能性かのうせいを踏まえての同行だったようだ。

 (本当に申し訳ないことです)

 真夏まなつなので、エアコンが効いていない非常階段はむちゃくちゃ暑かった。

 そんな中、みんなよく頑張って5階まで上ったとおもう。

 部屋が最上階の20階じゃなくて本当によかった。

 おみやげの追加で ”めんたいマヨネーズ” を2本進呈しんていしようじゃないか。

 今はすずしいリビングにとおされ、冷たい麦茶を頂いているところだ。





 一息ついたところで、あらためて自己紹介と、持参したおみやげをお渡しする。

 もちろん、めんたいマヨネーズ2本もだ。

 お父さんの剛志さんは辛子明太子からしめんたいこが大好きということもあって、とても喜んでくれた。

 マリアベルの方は、妹さんの部屋にお母さんと3人で入ったきり出てこないそうだ。

 こういう時は昔から、お父さんは一人蚊帳の外かやのそとなんだとか……。

 うん、まあ、そうね。 女性が多い家庭のお父さんって大体そんな感じだよね。

 お父さん……、乙です。

 うちの子たちはというと、窓から見える景色をながめながらキャッキャと騒いでいる。

 あれ、紗月は……、読書か?

 所在しょざいなくしているお父さんに、俺は話しを振ってみることにした。

 「例の地震、こちらではどんな感じになってますか?」

 「ああ、地震かい。もともと東京は地震が多いんだよ。それでも最近は多くなってきてるね。規模きぼは小さいけど、つい身構みがまえてしまうよね」

 「その地震が起こっている範囲はどのくらいなんですか」

 「う~ん、都内でいうとだね、渋谷・銀座・葛飾かつしか・足立・練馬ねりまその辺りかな。北の川口を除けば環7かんななの内側ってことになるよ」 

 ――環7。

 環状かんじょう七号線のことだね。

 外側に環8かんぱち、内側に山手通り、さらに内側が明治通りである。

 ちなみに、皇居こうきょを回ってる内堀うちぼり通りが環1、外堀そとぼり通りが環2だね。

 環7の内側か……。

 つまり東京の中枢ちゅうすうということになる。

 もう少しすると範囲はんいせばまってきて、ダンジョンの位置も特定しやすくなるとは思うけど。

 東京だから、中心 (ダンジョン) はやはり皇居こうきょにあるとにらんでたけど……。

 今聞いた話だと、少し北にズレているような気がするな。

 皇居じゃないなら上野か? いや、もう少し上になるかな?

 ………………

 世間話も一段落。少々ひまになってきたなぁ。

 暇になったら、男どうしで何を話すのか?

 大抵エロ話…………は、今の現状では難しいので、武器の話でも振っておきますかね。

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