俺とシロ(second)

マネキネコ

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17. 耐震

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 その後は夕食を頂くことにしたのだが……。

 めてしまった夕食を申し訳ないと思ったのか、慶子けいこはひたすらみんなに謝っていた。

 しかしそんなことを気にする者なんて、ここには誰一人としていないはずだ。

 たしかに料理は冷めてしまったけど、でき自体はわるくないし美味しく食べられるからね。

 そうしているうちに自然と会話も増えていき、いつもの楽しい食卓へと変わっていった。

 すると慶子が、

 「携帯けいたい電話は明日にでも何とかするわね。スマホとガラケーどっちにする?」

 「そうだな。初めてだけどスマホを使ってみたいかな。頼めるか」

 「うん、もちろん。今は一人で複数ふくすう持っている人も多いから問題ないわね」

 大まかな料金や手数料などを尋ね、お金は多めに渡しておく。

 これで何とかスマホもゲットである。

 「あ、それから……、次の満月の日に向こうへ渡るんでしょう? 7月29日だったわよね。私もついて行くから」

 慶子の目がキラリと光ったような気がした。

 「へっ? おおい、いきなり何言ってるんだよ。何かあるのか?」

 「さあ、それはどうかしらね。あなたの力になりたいことは確かよ」

 「俺の力に?」

 「70歳のおばーちゃんが若い人をはるかにしのぐパワーと俊敏性しゅんびんせい。そんなの楽しくて、けいちゃんワクワクが止まらないのよ~。それに階位かいいが上がれば長生きもできるんでしょう? 異世界もゆっくり見てみたいし、ダンジョンができた日本がどのように変わっていくのかも気になるじゃない」 

 (ただの好奇心こうきしんかよ!)

 遊びじゃないんだぞ。はぁ~。

 ――まあ、いいけど。





 「はい、はーい。私も異世界に行きたいです! ねっお父さん、行ってもいいでしょう?」

 右手を高々とあげ、紗月さつきまでついてくると言いだした。

 みんなの視線しせんしげるさんに集まる。

 「う~ん、学校はもうすぐ夏休みに入るのか……。ここで止めたとしても、どうせ聞きやしないんだろう。迷惑はかけるんじゃないぞ」

 (おお~、意外とすんなり通したなー)

 「えっ本当! やったー! お父さん大好き!」

 「こらこら、喜ぶのはゲンさんの許可が下りてからだぞ」

 「えぇ――――っ!?」

 「うん、まあ、茂さんの許可がもらえるなら俺の方はぜんぜん問題ないぞ。……約束もしていたしな」 

 そう答えてやると、

 「「やったー!」」

 慶子と紗月は二人でハイタッチしている。

 その横ではシロも立ちあがり、盛大に尻尾を振って喜んでいた。

 「そうと決まれば出発までに2週間あるから、その間に異世界のことをレクチャーするよ。慶子もなるべくここにかよってくれ」

 それとアレ・・だな。

 夕食のあとはテーブルの上を速やかに片付ける。

 「茂さん、例のものを……」

 俺の言葉に茂さんは大きく頷くと、女神像を静かにテーブルに置いた。

 そしてしゃくを取りだすと女神像の正面に座った。

 「さあ、紗月もここへ座りなさい。みんなと一緒にユカリーナ様へ祈りをささげてごらん」

 優しくみちびいていく茂さん。

 シロは紗月に寄り添うようにお座りしている。

 周りにいるみんなも居住まいを正し、女神像に向かって祈りを捧げた。

 すると慶子の時のように紗月の身体が薄白く光っている。

 こちらも無事に授かることができたようだ。





 そうして神像しんぞうを持って退室たいしつする茂さんを横目に、

 「ゲンちゃん。あれって悪ふざけが過ぎるんじゃないのー。なんでビキニ姿なのよ!」 

 だ・か・ら、慶子さんジト目は止めましょうよ。ジト目は。

 何言ってんだよ。決して悪ふざけなんかじゃないぞ。

 美しき女神さまを思い描きながら丹精たんせい込めて作り上げた作品なんだ。

 ――力作だぞ!

 まあ確かにぃ、趣味しゅみに走っている部分も多少はあると思うけど……。

 あの神像は神職しんしょくである茂さんの一押しなんだぞ。そして何より、女神さまがおみとめになられているのだ。そうでなければ神像にたましいは入らないだろう!

 ……と言ってやりたいところだが、とりあえずここは黙っておこう。

 それからはお風呂に入ったりしながら、それぞれが自由にくつろいでいた。

 俺は慶子につかまって、異世界のことやダンジョンなどについていろいろと説明させられている。

 そして話題が魔法へと移った際、慶子がまたとんでもないことを言いだした。

 「魔法を使うには、まず魔法適性まほうてきせいが重要になってくるのよね。それって女神様にお願いして何とかできないのかしら? 加護を与えられた者はシロちゃんとゲンちゃんの家族なんでしょう。ほら、加護を与えた人限定にするとか、ご褒美ほうびの前渡しとか何とかで、もらうことってできないのかしら。……ねぇ」

 『ねぇ』と言われても困るんですけど。

 (女神さまにおねだりするわけか~?)

 シロは尻尾を振って、うんうん頷いていますけど……。

 確かに今まで、そんな発想はなかったよなぁ。

 まあ、今回は女神さまからの依頼いらいでもあることだし。ご褒美の前渡しとかは別にして、女神さまの御心みこころ次第というところかな。

 向こうへ帰る前に、一度おたずねしてみますかね。





 と、その時である。

 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。 キュイ! キュイ! キュイ! 地震です。

 おお、来やがったなー。

 「シロ、神社の敷地しきち内に状態維持じょうたいいじの結界を張ってくれ!」

 けたたましく鳴り響く警告音けいこくおんの中、俺はシロに言い放った。

 それから数秒後、

・・・カタッ カタッ カタタッ ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ カタタ カタ・・・

 ――長げーよ!

 前の地震より確実にデカかったよな。

 れも1分以上続いていたようにおもう。

 茂さんが家を飛び出していく。

 向かった先は本殿ほんでんあたりだろうか?

 問題はないはずだ。そのためにシロに結界を張ってもらったのだから。

 テレビでは地震速報じしんそくほうが流れ、国営放送では気象庁きしょうちょうが地震について詳しく説明している。

 震度しんど6弱のところまで出ているようだ。

 震源地しんげんちもここから近いな。

 被害は未だ集計中のようである。

 時間が経つにつれ被害報告ひがいほうこくが上がりだす。

 死者が1名。行方不明ゆくえふめい者が2名。重軽傷じゅうけいしょう者が30名以上か……。

 明日になったら増えてるよな。

 今は夜で見えない部分も多いだろうからね。

 被害が増える要因としては地震の規模が上がったこともあるだろうが、問題は建物の耐震強度たいしんきょうどにあるだろう。

 今回、震度5の地震に耐えられたからといって、次回も震度5に耐えられるのか?

 ――それは分からないのだ。

 つまり地震が起きるたびに建物自体の耐震強度は確実に落ちていくのである。

 当然、建物の基準きじゅんに関しても、こんな短期間で大きな群発地震が起こる事など想定そうてい範囲外はんいがいなのだから。

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