俺とシロ(second)

マネキネコ

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8. 防犯カメラ対策

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 久々の家カレーは、やはりうまかった~。

 「いっぱい作ったので、明日の朝もカレーですよ!」

 なにそれ最高じゃん!

 2日目のカレーがまた旨いんだよね。ジャガイモとか玉ねぎが溶けちゃってるし。

 ”こくまろ” のルーは絶対に持って帰るぞ~。近いうちに大人買いしよう。

 (まだ、帰れるとは決まってません!)

 晩ご飯のあとは、約束どおりインベントリーの中のものをいろいろ見せてあげた。

 紗月さつきちゃんはキャーキャー言いながら見たり触ったりで、もう大変!

 革鎧かわよろいも一発装着そうちゃくしてみせると、

 「キャー。かっこいい!」

 いつもは鎧下よろいしたと革パンツの上に装着するのだが、今はお風呂あがりのジャージ姿なので、若干じゃっかんまらないよね。

 ナイフやバスターソードは、さすがに恐る恐るといった感じで触っていた。

 しげるさんはクナイを手にとり、じっくりと見つめている。

 「異世界から来たと言われても、未だに信じられないけど……。実際にこういう物を見せられると実感がくよ。だってコレは普通のステンレスやはがねとはまったく別物だよね」 

 茂さんは刀剣類に興味があるのかな?

 「そのクナイには少量ですがミスリルが混ぜてあります」

 「ミスリル!? そうかこれが……」

 食後のデザートにって、プリンやショートケーキをポイポイ出していたら、かなり驚かれた。

 インベントリー内にはダンジョン・サラのおかげで、たくさんのスイーツが納められているからね。(ほぼ無尽蔵)

 「インベントリーって時間停止なんですねー。キャー! 凄すぎて寝れません!」

 いや、そこはちゃんと寝ようよ。 明日は学校があるんだよね。

 ………………

 しばらくして茂さんが口をひらいた。

 「それで、ゲンさんはこれからどうするんだい。うちならいつまでも居てくれても構わないからね」

 「ありがとうございます。 そうですね、俺の目的は向うの世界に帰ることです。こちらは馴染なじみのある世界ではありますが、俺やシロが居るところではありませんので……。行くあてもないので、今しばらくはこちらにおいて頂けると助かります。ですがタダはいけません。ご厄介やっかいになる以上、お米だけでも用意させてください。あと俺に出来ることがあれば遠慮なくおっしゃってってください。こう見えて力仕事には自信がありますから」

 俺がそうめくくると、茂さんはどこかほっとしたような表情を浮かべ、俺たちをこころよく受け入れてくれた。





 ぺしぺし! ぺしぺし!

 『さんぽ、あさ、うれしい、おきる、いっしょ、でる』

 ふわ~、はいはい。

 枕もとに置いてあったリモコンを操作し部屋の照明あかりを点けた。

 柱にかけてある時計を見ると時刻は5時30分。外はまだ真っ暗である。

 (シロちゃん、はりきり過ぎだって)

 仕方がないので、布団からもそもそとい出る。

 みんなを起こさないように遮音結界しゃおんけっかいをはってから、布団をたたんで押し入れにいれた。

 ジャージを着たまま外に出ると、手水舎てみずやの横にある水道の蛇口じゃぐちをひねり顔を洗う。

 そして、首に掛けていたタオルで顔を拭きながらシロに話しかけた。

 「シロ、今日はちょっと試したいことがあるんだけど付きあってくれるか?」

 頭をでながら話していくと、シロはブンブン尻尾を振りながらコクコクと頷いている。

 そうかそうか、よしよし。

 まず、周りから見えないよう本殿ほんでんの裏側に移動する。

 シロにリードを付けてから油山の展望台てんぼうだいへ向け、トラベル! 

 (油山:福岡市城南区、早良区、南区にまたがる標高596メールの山。山の上には展望台があり福岡市を一望できる。夜の夜景もめちゃキレイ。自動車で行けるデートスポットである)

 おお、成功だな。

 前世の俺・・・・が行った場所でも、”トラベル!” による転移は問題なくできるみたいだ。

 そうそう、MPの消費量を確認しないと。

 ――鑑定!

 ふんふん、減っているのは7ポイントか。

 この油山展望台は元の家からだと直線距離でおよそ3kmだったはず。

 そうすると、MPの消費量は向う (サーメクス) とほぼ変わらないということか。

 これなら市内をあちこち移動することができるな。

 ただ、MPの回復かいふくには時間が掛かっているようだ。

 やはりこちら (地球) は大気中の魔素が薄いのだろうか?

 ふむ……、マジックポーションも大量に持っているので、差し当たって支障ししょうが出ることはないだろう。





 あと、問題になるといえば人の多さ・・・・だよな。

 早朝でも人の目が結構ある。うかつに転移を使えば大騒ぎになるだろう。

 それなら認識阻害にんしきそがいの結界を平行して使っていくのか?

 それでも防犯カメラには映ってしまうので注意が必要だろう。

 防犯カメラを元に調べられたら、いろいろと矛盾むじゅんしそうだしな。

 人の目はごまかせても、カメラに映像が残っていてはつたない。

 電磁でんじパルス弾 (雷魔法) を使ってカメラごと機能停止きのうていしにさせる?

 いやいや、行った先々で防犯カメラや付近の電子機器が謎の機能停止とか、それこそあやし過ぎるだろう。

 それならもうアレしかない。

 ――光学迷彩こうがくめいさいである。

 これなら、プレデ○ーのように周りに溶け込んでやり過ごすことができるだろう。

 しかし、それでも欠点はあるのだ。

 ぶつかってくるのだ。

 人や自転車ぐらいなら、まだいい。これが自動車やトレーラー、ましてや電車などであれば大惨事になるだろう。あちらが。

 つまり無いものとして扱われるのだ。そこが認識阻害にんしきそがいとの相違点そういてんだろう。

 まあ、こちらがければ済む話ではあるのだが。

 そんな訳で、シロにも光学迷彩のしくみをレクチャーしていく。

 「よしシロ、やってみろ!」 

 おぉ――――っ、見事に消えてるなぁ。

 まあ、俺には魔力の流れが見えているので、何処に居るのか分かるけど。





 ある程度練習したのち、俺たちは展望台から10m下の森へダイブ。

 そのまま森を通ってふもとまで下山、あとは歩道を走って神社まで戻ってきた。

 朝食はおいしいカレーだ。

 今朝もおかわりしてしまった。

 「紗月さつきちゃん、いってらっしゃーい!」

 玄関でお見送りしていると、開きかけた引き戸をそのままに紗月ちゃんが戻ってきた。

 「ちゃん・・・は要りません。紗月・・で!」

 それだけ言って出ていってしまった。

 「…………」

 「まあ、娘もああ言ってるんだから良いんじゃない」

 と茂さん。

 「今から茅の輪ちのわを片付けるから、手伝ってもらえるとありがたいのだが」

 「はい、勿論もちろんです。どうすればいいですか?」

 裏から脚立きゃたつを持ってきて、支えているひもを切断。

 下ろした茅の輪を解体。さらに竹で作った支柱も解体。

 あとはたばねて表に出しておけば、昼過ぎには業者が持っていってくれるそうだ。

 昔は近くで燃やしていたそうだが、環境破壊かんきょうはかいだなんだと最近はうるさくなってしまったという。





 じゃあ、サクッと終わらせますかね。

 竹やちがやを束ねる為の荷紐を茂さんから受け取り、シロを連れて参道さんどうに出てきた。

 竹の支柱に取り付けられた茅の輪の近くへいき、周りに誰も居ないことを確認する。

 「シロ、この茅の輪を支えてる紐を全部切ってくれ」

 「ワン!」

 シロは一えすると、2回ジャンプしただけで8ヶ所もの紐をすべて切り落とした。

 おそらく、前足と風魔法を使ったのだと思うが、目にもとまらぬ速さだった。

 あとは、手前にゆっくりと倒していき、地面に下ろしたところでインベントリーへ 収納・解体・排出。

 竹の支柱は結構深く地面に差し込んであったが、俺が普通にポイっと抜いて、収納・解体・排出。

 あとは荷紐でしばって道路脇に出すだけ。

 支柱があった穴は、俺が戻ってくる間にシロが埋めてくれていた。

 10分も掛からず終わってしまった。

 片付け終わったので報告をしようと、汚れた手をキレイに洗ってから玄関の引き戸を開けた。

 すると茂さんは靴を履いたまま軍手をはめているところだった。

 「おや、ゲンさん何か忘れものかい? じゃあ、僕は先に行って作業を始めてるよ」

 「…………」

 「早くしないと、業者が来てしまうからね」

 「あの~、もう終わりました。……言っておけば良かったですね。一人で大丈夫だって」

 「えっ!?」

 しばらくほうけていた茂さん。

 気を取り直して表に出ると、道路脇に積んであった竹と茅の束を確認していた。

 「うん完璧だね!」

 サムズアップして合格サインを送ってくれた。

 さ~て仕事も終ったし。 お出かけ お出かけ!

 今日はいろいろと買い物をしながら、この近くをまわってみようと思う。

 「お昼は外で食べてきますね」

 そう茂さんに伝えて俺たちは家を出た。

 まずは吉牛で牛丼のお持ち帰りだ!

 光学迷彩を張ったあと、シロを連れて吉牛の駐車場に転移した。






______________________________________

電磁でんじパルス弾 (雷魔法)
単発の電磁パルス弾。直径5mm程の物を指弾しだんにより打ちだす。電圧の調整により
人を麻痺まひさせたり、電子機器を機能停止きのうていしさせる。機械や機器の中のプロセッサーを破壊はかいすることも可能。

……かっこよく書いてはいるがサンダーボール (雷玉) の一種である。
あちらでは魔物を麻痺させるために使っていた。
こちら (地球) に戻ってきて、調子にのったゲンが中二病を発症して ”電磁パルス弾” と命名。



光学迷彩こうがくめいさい (結界魔法)
光魔法で作り出した多くの光学プリズムを使い、光を屈折くっせつさせて周りに溶け込むように姿をかくす。カメラには映るが、よく解析かいせきしないと解らない。解析後も空間の歪みひずみのように映り、個人の特定は困難こんなんである。

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