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95 突入作戦
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アランさんの決意を聞いてから15日。
迷宮都市への突入作戦において綿密な打ち合わせは既に終わっている。
クドーの町より呼び寄せられた総勢30名にのぼる騎士の精鋭たちは王都アラン邸の前に集結していた。
いよいよ出陣である。
本来はクドーの町で行うべきものだろうが、情報漏えいのリスクと転移の関係でこちらで決行される運びとなった。
従士や輜重部隊などを入れたら軽く100人を超えているのだ。この者たちが動けば嫌が上でも目立ってしまうだろう。
ところが王都であれば地脈が走っている為ダンジョンの力が借りられる。
食糧や資材の輸送、大規模な隠ぺい結界など、秘密裏に行動するには打ってつけというわけだ。
………………
突入作戦における第一段階。
迷宮都市カイルにある冒険者ギルドへの突入だ。
ここでは副ギルド長のヤゴチェをはじめ、経理担当のヘマー、受付嬢のマリヤン、この3名を拘束し連行する。
(越後屋にヤリマン? ……ではないな、間違えないようにしないと)
そして順次取り調べを行っていく手はずだ。
連行する場所は迷宮前広場の地下にある秘密基地。
これはカイル (ダンジョン) に指示を出しており、すでに完成している。
中は牢屋が20、取調室が5、宿泊部屋 (ベッド2・シャワー・トイレ完備) が50室。
他には多目的リビングスペースが3・大食堂・厨房・トイレ・そして大浴場だ。
お風呂はもちろん温泉を引き入れている。
排気口もしっかり巡らせているし、地熱暖房だからクリーンで温かいのだ。
また、この秘密基地への出入りは転送陣を利用している為、防犯面に於いても万全である。
………………
突入作戦における第二段階。
代官邸への強制捜査だ。
屋敷に乗りこみ、法衣子爵ミヤーテ・ベスを捕縛。家宅捜索を行い証拠品などを押収する。
(すべて闇になんかはさせないぞ!)
捕縛と強制捜査の命令書は国王様から預かっているので、こちらはその命令を遂行していくだけだ。
まあ、ここ最近のゴタゴタで抵抗する力は残っているかどうか……。
(ミスリル紛失の件だね)
一人も取り逃がさないよう慎重に行動する必要がある。
さあ、いよいよ決着をつける時がきた。
まずは先発隊として出陣する者が50名。
篝火が焚かれた王都アラン邸の広場にて、今か今かと待機している。
さらに更迭されるギルド長、捕縛される副ギルド長の代わりに冒険者ギルド本部より派遣される職員5名が同行する。
こちらは冒険者ギルドの通常業務が滞らないようにするためだな。
――夜明けと同時に作戦開始である。
転移する場所はダンジョン・カイルの迷宮前広場。目標である冒険者ギルドは目と鼻の先である。
吐く息も白くなる中、アラン邸の広場全体に緊張が走る。
今日のアラン卿はプレートアーマー姿である。ヘルムは付けていない。
(イケメンでかっこいいので今回はアラン卿と呼ぶことにします)
俺はいつもの冒険者スタイル。
シロは赤い首輪にツーハイム家の紋章が入ったミスリル製のタグを付けている。
(シロもかっこいいぞ!)
夜露が体についたのか、ブルブルをしている。
……そして夜が明ける。
「行くぞ――――っ!」
アラン卿の右手に持った剣が天を突く。
――出陣の合図である。
「「「「おお――――っ!」」」」
それに呼応するように、集まっていた騎士達も右拳を突きあげる。
そして次々と転移していった。
迷宮前広場へ着いた先発隊の騎士たちは、慌てることもなく素早く整列していく。
「進め――――っ!」
振り上げた剣を前に突き出しながら号令をかけるアラン卿。
白馬に乗っていないのが残念ではあるが、ここは町中、冒険者ギルドは本当に目の前なのだ。
――ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ。
皆一丸となって冒険者ギルドへ向かっていった。
冒険者ギルドの前に到着するとアラン卿は素早く指示を出しはじめる。
入口を封鎖し、3名の騎士が裏口へと回って配置につく。
アラン卿と5名の騎士、それに俺とシロがギルドの中へと踏み込んだ。
何事かと色めき立つギルド内。
「静まれ――――っ! 静まらんか――――っ!」
騒然となったギルド内にアラン卿側近の騎士が大声を張りあげる。
しばらくするとギルド内は水を打ったように静まり返った。
そこに一拍置いてから、
「こちらはアラン大公殿下であらせられる。王命により次の者を捕縛しに参った。読み上げられた者は速やかに前へ出ませいっ!」
………………
名を呼ばれた3人はこれといった抵抗も見せずにお縄についた。
のちに、騒ぎを聞きつけ2階から下りてきたギルドマスターのバロンはギルド本部の人間に捉まって、これからの事についていろいろと説明を受けているようだ。
アラン卿とその騎士団は捕縛した3人を連行し速やかにダンジョン・カイルへ引き上げていく。
秘密基地用の転移台座にアラン卿をはじめとした関係者を登録していく。
(そういえば、お腹すいたなぁ)
お昼前の中途半端な時間だが、朝食をとっている暇もなかったので腹ペコだ。
秘密基地内はまだワタワタとしているし、外で食べてきてもいいのだが……。
――皆も食べてないよね。
仕方がないので 干し肉・白パン・薄めのホットワインをそれぞれ騎士や関係者に配ってまわった。
干し肉と言ってもデレク (ダンジョン) に作らせた特製半生タイプ (塩分控えめ) だ。胡椒をまぶしてから渡していく。
「「「「これは旨い!」」」」
騎士団の皆さんからも大絶賛であった。
輜重部隊も到着しているし、夕食からは連れてきているコック達が腕を振るうことだろう。
まあ、ここは迷宮都市である。
ダンジョン前には沢山の食堂や屋台が立ち並んでいるから、交代で食べに行くのも有りだろう。
捕縛した3人への尋問はすぐに開始された。
そして意外だったのが、取り調べに於いては3人とも素直に応じているのだ。
これなら手荒な事はしなくて済みそうである。
取り調べが進むにつれて、二重帳簿・虚偽の申告・ミスリル鉱山の不法占拠・上層部への訴えの揉み消し・その訴えた者を合法的に処分。
処分とはダンジョン内で行方不明になったということだな。
とまぁ出るは出るはで半ば呆れてしまう程だ。
宵闇の赤月の件も代官であるミヤーテ・ベスの指示によるものであった。
幹部を一人ひとり呼び出してはダンジョン内で処分していたということだ。
そして肝心なエレナ殺害についてなのだが……。
経理担当であったヘマーと受付嬢のヤリマ……いや、マリヤンは全く知らないという。
副ギルド長のヤゴチェでさえ当時は下っ端ギルド員で経緯などは分からないということだった。
もう、3年も前の事なのだ。
当時の関係者は殆ど始末されているしな。
ただ、実行犯は判明している。当時大公家に勤めていたコックの一人だったようだ。
こちらも、後にダンジョンで行方不明になっているらしい。
………………
…………
……
この3日間で冒険者ギルドにおける聞き取り、関係者への尋問は大方終わった。
それぞれに家宅捜索も行われたのだが、
どの家も広く調度品にしても高級品だらけ、とても安月給の一般ギルド員が住めるような物件ではなかったと、捜査した騎士たちが呆れ顔で話していた。
中にあった高級な調度品、現金、そしてギルド預金などは全て没収となった。
処分については、
副ギルド長のヤゴチェは全ての罪状を明らかにしたのち、公開処刑で首を刎ねられるだろう。
残り2名の手下についてはA級犯罪奴隷としてオーレン山脈の鉱山へ送られることになった。
そして、いよいよ本丸への突入である。
カイル (ダンジョン) からの報告を聞く限り、”大人しく首を差し出す” という事はないようである。
この3日間における奴らの動きは全て把握している。
逃げ出すこともなく代官屋敷に居座り続けている。
あくまで徹底抗戦の構えだ。
ミヤーテ・ベス家に仕える騎士15名をはじめ、子飼いのゴロツキに冒険者崩れなど、集めも集めたり90人程を代官屋敷に集結させている。
何を考えているのだろう?
王国に逆らってもどうにもならないと思うのだが……。
――まぁいい。
向うから集まってくれるのだ。こちらとしては探す手間がはぶけて大助かりだ。
代官屋敷内の全員にマーカーを付ける。一人として逃がしはしない。
それに一昨日より迷宮都市の各門では厳しい検問が行われている。
それでも外に出ようとする者は直接牢屋へ転送されるようにしている。
これらの状況を踏まえどうしていくか? 俺とアラン卿は協議を重ねていた。
強行突破でも、魔法の一斉掃射でも、はたまた屋敷に居る人間すべてをダンジョンへ引き込んで闇に葬る事だってできる。
こちらには俺とシロがついているし、この町ではダンジョンの力だって及ぶのだ。
まさに、やりたい放題できる状況なのだ。
――それでも。
アラン卿にしてみれば、最後は自分でカタをつけたいところだろう。
また、派手にやってしまって町に被害を出したり、関係のない人々にいらぬ恐怖心を与えてしまうのも考えものである。
………………
「急がなければですが……」
そう前置きした上で、俺はある作戦を提案した。
その作戦とはズバリ!【兵糧攻め】である。
はい、そこっ!
はぁ――――っ! とか、地味だ――――っ! とか言わない!
昔から籠城に対する戦いで使い古されている戦法だけど、
その効果は絶大なんだよ。
掛かるのは時間だけで、味方には何の被害もでないのだから。(極端な表現になっています)
「そのような事が本当に出来るものなのか?」
「はい、私達なら簡単に実行できます。急がないとはいっても、時間の方もそれほど掛からないと思いますよ」
聞かれた俺は大きく頷きながら返事をした。
すると、いくつかの確認をおこなったのち、比較的スムーズにこの作戦が採用されたのである。
作戦会議を終えた俺たちは、さっそく準備に取り掛かることにした。
迷宮都市への突入作戦において綿密な打ち合わせは既に終わっている。
クドーの町より呼び寄せられた総勢30名にのぼる騎士の精鋭たちは王都アラン邸の前に集結していた。
いよいよ出陣である。
本来はクドーの町で行うべきものだろうが、情報漏えいのリスクと転移の関係でこちらで決行される運びとなった。
従士や輜重部隊などを入れたら軽く100人を超えているのだ。この者たちが動けば嫌が上でも目立ってしまうだろう。
ところが王都であれば地脈が走っている為ダンジョンの力が借りられる。
食糧や資材の輸送、大規模な隠ぺい結界など、秘密裏に行動するには打ってつけというわけだ。
………………
突入作戦における第一段階。
迷宮都市カイルにある冒険者ギルドへの突入だ。
ここでは副ギルド長のヤゴチェをはじめ、経理担当のヘマー、受付嬢のマリヤン、この3名を拘束し連行する。
(越後屋にヤリマン? ……ではないな、間違えないようにしないと)
そして順次取り調べを行っていく手はずだ。
連行する場所は迷宮前広場の地下にある秘密基地。
これはカイル (ダンジョン) に指示を出しており、すでに完成している。
中は牢屋が20、取調室が5、宿泊部屋 (ベッド2・シャワー・トイレ完備) が50室。
他には多目的リビングスペースが3・大食堂・厨房・トイレ・そして大浴場だ。
お風呂はもちろん温泉を引き入れている。
排気口もしっかり巡らせているし、地熱暖房だからクリーンで温かいのだ。
また、この秘密基地への出入りは転送陣を利用している為、防犯面に於いても万全である。
………………
突入作戦における第二段階。
代官邸への強制捜査だ。
屋敷に乗りこみ、法衣子爵ミヤーテ・ベスを捕縛。家宅捜索を行い証拠品などを押収する。
(すべて闇になんかはさせないぞ!)
捕縛と強制捜査の命令書は国王様から預かっているので、こちらはその命令を遂行していくだけだ。
まあ、ここ最近のゴタゴタで抵抗する力は残っているかどうか……。
(ミスリル紛失の件だね)
一人も取り逃がさないよう慎重に行動する必要がある。
さあ、いよいよ決着をつける時がきた。
まずは先発隊として出陣する者が50名。
篝火が焚かれた王都アラン邸の広場にて、今か今かと待機している。
さらに更迭されるギルド長、捕縛される副ギルド長の代わりに冒険者ギルド本部より派遣される職員5名が同行する。
こちらは冒険者ギルドの通常業務が滞らないようにするためだな。
――夜明けと同時に作戦開始である。
転移する場所はダンジョン・カイルの迷宮前広場。目標である冒険者ギルドは目と鼻の先である。
吐く息も白くなる中、アラン邸の広場全体に緊張が走る。
今日のアラン卿はプレートアーマー姿である。ヘルムは付けていない。
(イケメンでかっこいいので今回はアラン卿と呼ぶことにします)
俺はいつもの冒険者スタイル。
シロは赤い首輪にツーハイム家の紋章が入ったミスリル製のタグを付けている。
(シロもかっこいいぞ!)
夜露が体についたのか、ブルブルをしている。
……そして夜が明ける。
「行くぞ――――っ!」
アラン卿の右手に持った剣が天を突く。
――出陣の合図である。
「「「「おお――――っ!」」」」
それに呼応するように、集まっていた騎士達も右拳を突きあげる。
そして次々と転移していった。
迷宮前広場へ着いた先発隊の騎士たちは、慌てることもなく素早く整列していく。
「進め――――っ!」
振り上げた剣を前に突き出しながら号令をかけるアラン卿。
白馬に乗っていないのが残念ではあるが、ここは町中、冒険者ギルドは本当に目の前なのだ。
――ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ。
皆一丸となって冒険者ギルドへ向かっていった。
冒険者ギルドの前に到着するとアラン卿は素早く指示を出しはじめる。
入口を封鎖し、3名の騎士が裏口へと回って配置につく。
アラン卿と5名の騎士、それに俺とシロがギルドの中へと踏み込んだ。
何事かと色めき立つギルド内。
「静まれ――――っ! 静まらんか――――っ!」
騒然となったギルド内にアラン卿側近の騎士が大声を張りあげる。
しばらくするとギルド内は水を打ったように静まり返った。
そこに一拍置いてから、
「こちらはアラン大公殿下であらせられる。王命により次の者を捕縛しに参った。読み上げられた者は速やかに前へ出ませいっ!」
………………
名を呼ばれた3人はこれといった抵抗も見せずにお縄についた。
のちに、騒ぎを聞きつけ2階から下りてきたギルドマスターのバロンはギルド本部の人間に捉まって、これからの事についていろいろと説明を受けているようだ。
アラン卿とその騎士団は捕縛した3人を連行し速やかにダンジョン・カイルへ引き上げていく。
秘密基地用の転移台座にアラン卿をはじめとした関係者を登録していく。
(そういえば、お腹すいたなぁ)
お昼前の中途半端な時間だが、朝食をとっている暇もなかったので腹ペコだ。
秘密基地内はまだワタワタとしているし、外で食べてきてもいいのだが……。
――皆も食べてないよね。
仕方がないので 干し肉・白パン・薄めのホットワインをそれぞれ騎士や関係者に配ってまわった。
干し肉と言ってもデレク (ダンジョン) に作らせた特製半生タイプ (塩分控えめ) だ。胡椒をまぶしてから渡していく。
「「「「これは旨い!」」」」
騎士団の皆さんからも大絶賛であった。
輜重部隊も到着しているし、夕食からは連れてきているコック達が腕を振るうことだろう。
まあ、ここは迷宮都市である。
ダンジョン前には沢山の食堂や屋台が立ち並んでいるから、交代で食べに行くのも有りだろう。
捕縛した3人への尋問はすぐに開始された。
そして意外だったのが、取り調べに於いては3人とも素直に応じているのだ。
これなら手荒な事はしなくて済みそうである。
取り調べが進むにつれて、二重帳簿・虚偽の申告・ミスリル鉱山の不法占拠・上層部への訴えの揉み消し・その訴えた者を合法的に処分。
処分とはダンジョン内で行方不明になったということだな。
とまぁ出るは出るはで半ば呆れてしまう程だ。
宵闇の赤月の件も代官であるミヤーテ・ベスの指示によるものであった。
幹部を一人ひとり呼び出してはダンジョン内で処分していたということだ。
そして肝心なエレナ殺害についてなのだが……。
経理担当であったヘマーと受付嬢のヤリマ……いや、マリヤンは全く知らないという。
副ギルド長のヤゴチェでさえ当時は下っ端ギルド員で経緯などは分からないということだった。
もう、3年も前の事なのだ。
当時の関係者は殆ど始末されているしな。
ただ、実行犯は判明している。当時大公家に勤めていたコックの一人だったようだ。
こちらも、後にダンジョンで行方不明になっているらしい。
………………
…………
……
この3日間で冒険者ギルドにおける聞き取り、関係者への尋問は大方終わった。
それぞれに家宅捜索も行われたのだが、
どの家も広く調度品にしても高級品だらけ、とても安月給の一般ギルド員が住めるような物件ではなかったと、捜査した騎士たちが呆れ顔で話していた。
中にあった高級な調度品、現金、そしてギルド預金などは全て没収となった。
処分については、
副ギルド長のヤゴチェは全ての罪状を明らかにしたのち、公開処刑で首を刎ねられるだろう。
残り2名の手下についてはA級犯罪奴隷としてオーレン山脈の鉱山へ送られることになった。
そして、いよいよ本丸への突入である。
カイル (ダンジョン) からの報告を聞く限り、”大人しく首を差し出す” という事はないようである。
この3日間における奴らの動きは全て把握している。
逃げ出すこともなく代官屋敷に居座り続けている。
あくまで徹底抗戦の構えだ。
ミヤーテ・ベス家に仕える騎士15名をはじめ、子飼いのゴロツキに冒険者崩れなど、集めも集めたり90人程を代官屋敷に集結させている。
何を考えているのだろう?
王国に逆らってもどうにもならないと思うのだが……。
――まぁいい。
向うから集まってくれるのだ。こちらとしては探す手間がはぶけて大助かりだ。
代官屋敷内の全員にマーカーを付ける。一人として逃がしはしない。
それに一昨日より迷宮都市の各門では厳しい検問が行われている。
それでも外に出ようとする者は直接牢屋へ転送されるようにしている。
これらの状況を踏まえどうしていくか? 俺とアラン卿は協議を重ねていた。
強行突破でも、魔法の一斉掃射でも、はたまた屋敷に居る人間すべてをダンジョンへ引き込んで闇に葬る事だってできる。
こちらには俺とシロがついているし、この町ではダンジョンの力だって及ぶのだ。
まさに、やりたい放題できる状況なのだ。
――それでも。
アラン卿にしてみれば、最後は自分でカタをつけたいところだろう。
また、派手にやってしまって町に被害を出したり、関係のない人々にいらぬ恐怖心を与えてしまうのも考えものである。
………………
「急がなければですが……」
そう前置きした上で、俺はある作戦を提案した。
その作戦とはズバリ!【兵糧攻め】である。
はい、そこっ!
はぁ――――っ! とか、地味だ――――っ! とか言わない!
昔から籠城に対する戦いで使い古されている戦法だけど、
その効果は絶大なんだよ。
掛かるのは時間だけで、味方には何の被害もでないのだから。(極端な表現になっています)
「そのような事が本当に出来るものなのか?」
「はい、私達なら簡単に実行できます。急がないとはいっても、時間の方もそれほど掛からないと思いますよ」
聞かれた俺は大きく頷きながら返事をした。
すると、いくつかの確認をおこなったのち、比較的スムーズにこの作戦が採用されたのである。
作戦会議を終えた俺たちは、さっそく準備に取り掛かることにした。
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