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61 タグ村
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俺たちは無事タグ村に到着、そのまま宿屋へと向かった。
表にいる馬は別として、大人が4人、小人が2人、あと犬が1匹。
大人数になるの……、かな?
タグ村はそこそこ大きな村らしいが立地から見ても人の往来は少ない。というかほとんど来ないだろう。
宿屋も申し訳程度だし、いきなりドヤドヤ来られたところで対応できないよなぁ。
女将に話しを聞いてみると、野菜の方は問題ないがパンと肉が間に合わないそうだ。
だけど俺ならパンも肉も出せるんだよねぇ。
まぁ肉の方はオーク限定になってしまうんだけど。
そこで交渉はマクベさんにおまかせした。
………………
そして女将との交渉の結果。
オーク肉を卸す代わりに宿代をいつもの3人分にしてもらえたようだ。
パンについては勝手に出して食べていいらしい。
なるほど、さすがはマクベさんだ。交渉はお手のものだよね。
程なくして俺たちの食料事情は解決された。
さらに肉の在庫を尋ねられたので、「まだ多少は」なんて適当に話していたところ、
「こんなに新鮮で良い肉があるのなら、村のほうに卸してくれないかい」
「村にですか?」
「ああそうだよ。最近雨の日が多かったせいで、ちょっと不足してるみたいだから」
「そうですか了解です。明日にでも伺うことにします」
「ああそうしておくれ。朝までには話を通しておくから」
俺は心よく承諾したのだった。
てなわけで、夕食にはオークステーキがメインで出てきた。
それをエールやワインと共に美味しく頂きながらみんなで盛りあがった。
やはり野営が続くと、その間は気を張ってないといけないから大変なんだよね。
お酒も宿屋じゃないと飲めないのだし。
肉がたくさん食べられてシロもご満悦の様子だな。
割とゆっくり目の夕食を終え、
「それではまた明日」とそれぞれの客室へ向かった。
俺もシロとメアリーを連れて部屋に移動、ロウソクに火を灯した。
「メアリーもここまでよく頑張ったなぁ。えらいぞ」
「えへへへ! じゃあ、ごほうびにゲンパパのお話が聞きたい」
「おういいぞ。んんと、そうだなぁ…………」
メアリーにせがまれ、むかし話の ”うらしま太郎” を語り聞かせた。
その後はいつものように魔力操作の訓練をして眠りについた。
ぺしぺし! ぺしぺし!
『おきる、あそぶ、はやく、いっしょ、さんぽ、あそぶ』
うぅ~はいはい。おきまふ。おきまふよ~。
眠い目をこすりながら生返事をかえす。
遊ぶ気満々なシロである。今度は隣で寝ていたメアリーを起こしている。
………………
散歩から戻った俺たちは裏庭に出てきた。
俺は剣の素振りを行っていく。メアリーは槍で突きの練習だな。
そして最後は、シロを交えての『スーパーサ○ヤ人ごっこ』だ。
どういった状況でも、身体強化の状態へスムーズに移行できるよう訓練していくのだ。
朝練を終えたら朝食だ。
散歩と訓練でお腹はペコペコなのだ。
食堂に顔をだすと、
「あっ、メアリーちゃんだ! おはよー」
ミリーの元気な声が部屋に響きわたる。
「ミリーちゃんおはよー!」
俺の隣りから駆けだしていくメアリー。
ミリーに抱きついたかと思うと、こんどはふたり手に手を取って踊っている。
キャッキャいって実に楽しそうだ。
テーブルのほうを見ると。
――みんな顔色が良いな。
昨夜はゆっくりと休むことが出来たみたいで良かった。
朝食を済ますと今日の予定を簡単に尋ね宿屋をあとにした。
そのまま馬車について歩き、指定された場所で荷物を降ろしていく。
オークの肉も村の倉庫にキッチリと納め、昼少し前にはタグ村を出発した。
行商人の一日は本当に慌ただしくて大変なんだなぁ。
『時は金なり』ということなのだろう。
マクベさんは今日の野営地にと例の洞窟を目指しているようだが……。
「おっかしいな~。覚えてるはずなのに近くにくると分からなくなるんだよな」
そう言ってなんども首を傾げていた。
これは洞窟に認識阻害の魔法がかかっている為なので致しかたない。
おまけに現状維持の魔法もかけてあり、いつ来てもキレイなままなのだ。
まあ、シロならばこれらの結界を破ることも可能だろうが今はそのままにしている。
何かあった時の避難場所にはちょうどいいだろうしね。
てなことで、結局シロに案内してもらうことになった。
馬の前で先導しているシロは軽やかな足取りだ。
何の迷いもなく林の洞窟へたどり着いた。
今日も馬を中に入れて楽しく野営だ。
雨風が防げるだけで疲れがぜんぜん違うのだ。本当にありがたい。
………………
そして翌日。
俺たちは夜明けと共に洞窟を出発し林を抜ける。
今日の天気は上々のようだ。お馬さんも軽やかに進んで行く。
しかし、モンソロへ伸びるいつもの街道へ差し掛かった時、それは起きた。
「アウォ――――――――ン!」
お馬さんの前を行っていたシロの遠吠えである。
シロが発する警告に俺は腕抱きにしていたメアリーを地面に立たせ短槍を持たせた。
コリノさんは大弓に矢をつがえ戦闘準備をはじめる。
マクベさん一家には馬車から出ないようにと注意を促し、馬も一緒に防御結界を張った。
――見えた!
ウルフの団体さんだな。
――ざっと30匹はいるか。
『なぜ、ここに?』と疑問が浮かぶが、今は後まわしだ。
敵 (魔獣) の殲滅を優先させる。
先頭はハイウルフが2匹、なかなかデカいな。
ウルフたちは散開しながらこちらに突っ込んでくる。
俺はメアリーに中級ポーションを渡し、すぐ使えるようにとポッケに入れさせた。
そしてコリノさんから離れないように言いつけると、ハイウルフに向けシロと共に走りだした。
「俺は右のヤツを殺る。シロは左のヤツを頼むな!」
バスターソードを抜きながら身体強化をかけ、さらに加速していく。
右へ回り込もうとするブラックウルフに先制のウインドカッターをお見舞いする。
その魔法に巻き込まれ2匹のブラックウルフが崩れ落ちた。
正面のハイウルフは更に接近し襲いかかってくるが……。
――遅いな。
前足での爪撃を楽々躱し首に一撃を入れた。
切断まではいかなかったが十分に深手だろう。
ハイウルフはヨロヨロと3、4歩進んで崩れ落ちた。
それを横目に見ながら配下のウルフたちを切り伏せていく。
10匹程狩っただろうか、シロが近寄ってきた。
――んっ、
俺は周りを見まわす。
すると動いている魔物の気配はなかった。
そうか、終わったのか……。
さすがはシロだな。
シロに浄化を頼み、血塗れだった身体をきれいにしてからメアリーの元へもどった。
「ゲンパパすごーい! シロ兄もかっこいい!」
ちぎれんばかりに尻尾を振りながらメアリーが飛び込んできた。
そんな興奮冷めやらぬメアリーをやさしく抱き上げながら馬車に近づいていく。
「お、お怪我はございませんでしたでしょうか?」
「はい、俺もシロも無傷です。心配をおかけしました」
恐る恐るといった感じで話しかけてくるマクベさん。
んっ、なんで急に敬語なの?
まだ気が動転しているのだろうか?
その一方で、
「キャ――――――ッ! ゲンちゃん。皮よ、皮、皮、解体するわよ~!」
カイアさんはいつもの通りであった。
するとそこへ……、
騎兵だろうか?
揃いのプレートアーマーを着込んだ騎馬の集団が到着した。
――その数10騎。
各騎馬は散開するとウルフの死骸を突いてまわっている。
………………
しばらくすると、その中の一騎がこちらに近づいてきた。
マクベさんたちは馬車の中に待機してもらい、俺が対応する。
「私はクルーガー王国第3騎士団のマーベリックだ。この数のウルフをそなた達が?」
「そうだ」
騎士の問いに俺は短く答える。
「そうか……、ハイウルフが2匹も居たのに大したものだ。良かったら名を聞かせてくれぬか」
「俺はゲン、こっちは従魔のシロ。モンソロの冒険者だ」
コリノさんは聞かれてないので言う必要もないだろう。
「そうか覚えておこう。邪魔したな」
そう口にすると、騎士団のマーベリックは他に者を引き連れ帰っていった。
ふぅ――――っ。
まあ、おおかたガルーダ大森林から出てきたヤツ (魔獣) を打ち漏らしたのだろう。
さてさて、カイアさんが解体を始める前にインベントリーに回収してしまいますかね。
そのあとはシロと一緒にウルフを回収しながら浄化をかけてまわった。
インベントリーの情報を見ると、ハイウルフ2・ブラックウルフ12・グレイウルフ18となかなかの数の魔獣だった。
片づけが終わった俺たちは野営場に向け出発した。
そして暗くなるまでになんとか野営場に辿り着くことができたのだった。
こちらはリマの砦に引き揚げ中の王国第3騎士団。
馬上の会話にて、
「隊長、あの冒険者の小僧、名前を聞く程の者だったんですかねぇ」
そのように隊長のマーベリックへ話しかけるのは同じ第3騎士団所属の副長であるジェネスだ。
「そうだな、あのくらいの数の魔獣なら俺達3人も居れば簡単に片づけられるだろう」
「そうでしょ、特に凄かったようには見えませんでしたしね」
と団長マーベリックの返しにジェネスも同意していたのだが、
「だが、問題は数だけではないのだ。魔法を使えば納得もいくが、使った形跡はほとんど見えなかった。剣だけでということになるなら身体強化ができる俺でもあの時間では無理だな。なんせ、殆どの魔獣が死後硬直がまだ解けていなかったのだから」
そう、しみじみと口にする隊長マーベリックに返す言葉もなくジェネスは黙り込むのだった。
こちらはいつもの野営場。
俺はシロに乗ったメアリーを連れて隣の林へ薪拾いだ。
背負い籠のおかげで2回も行けば大丈夫だろう。
さすがに後半は暗くなってしまったので、メアリーに光球を上げてもらいながら難なく薪を拾っていく。
火の魔法と違って森や林での使用も安心だな。
今日の夕食用の肉はすでにカイアさんに渡してある。
そう、ハイウルフの肉だ。
また旨いんだよな、これが。
野営での楽しみといえば、やはり美味しいご飯だろう。今から楽しみで仕方ない。
薪拾いを終え、シロの浄化魔法のおかげで飲料水もバッチリ用意できた。
後は日課である剣の素振りと身体強化の訓練。
「ゲンちゃん、シロちゃん、メアリーちゃんできましたよ~」
カイアさんの声に全員が竈の周りに集まる。
みんなでハイウルフの肉を美味しく頂きながら、メアリーは昼間の戦闘の事を興奮しながらも一生懸命みんなに話して聞かせていた。
夜警はいつものように夜半過ぎまでが俺で、後半をコリノさんが担当。
夜警の折、俺は二つ月を静かに眺めながら紅茶を飲んでいた。
すると突然、メアリーが自分も飲みたいと言いだした。
涼しい晩に温かい紅茶でほっこりしていたところだ。
メアリーにはさぞ美味しそうに見えたことだろう。
紅茶をミルクで割って砂糖を多めに入れて渡してあげた。
そのミルクティーにメアリーは目を大きくすると、おいしいおいしいと言いながら飲んでいた。
ミルクティーはメアリーの舌にも合うようだな。
だけど飲み過ぎちゃうと眠れなくなるぞー。
表にいる馬は別として、大人が4人、小人が2人、あと犬が1匹。
大人数になるの……、かな?
タグ村はそこそこ大きな村らしいが立地から見ても人の往来は少ない。というかほとんど来ないだろう。
宿屋も申し訳程度だし、いきなりドヤドヤ来られたところで対応できないよなぁ。
女将に話しを聞いてみると、野菜の方は問題ないがパンと肉が間に合わないそうだ。
だけど俺ならパンも肉も出せるんだよねぇ。
まぁ肉の方はオーク限定になってしまうんだけど。
そこで交渉はマクベさんにおまかせした。
………………
そして女将との交渉の結果。
オーク肉を卸す代わりに宿代をいつもの3人分にしてもらえたようだ。
パンについては勝手に出して食べていいらしい。
なるほど、さすがはマクベさんだ。交渉はお手のものだよね。
程なくして俺たちの食料事情は解決された。
さらに肉の在庫を尋ねられたので、「まだ多少は」なんて適当に話していたところ、
「こんなに新鮮で良い肉があるのなら、村のほうに卸してくれないかい」
「村にですか?」
「ああそうだよ。最近雨の日が多かったせいで、ちょっと不足してるみたいだから」
「そうですか了解です。明日にでも伺うことにします」
「ああそうしておくれ。朝までには話を通しておくから」
俺は心よく承諾したのだった。
てなわけで、夕食にはオークステーキがメインで出てきた。
それをエールやワインと共に美味しく頂きながらみんなで盛りあがった。
やはり野営が続くと、その間は気を張ってないといけないから大変なんだよね。
お酒も宿屋じゃないと飲めないのだし。
肉がたくさん食べられてシロもご満悦の様子だな。
割とゆっくり目の夕食を終え、
「それではまた明日」とそれぞれの客室へ向かった。
俺もシロとメアリーを連れて部屋に移動、ロウソクに火を灯した。
「メアリーもここまでよく頑張ったなぁ。えらいぞ」
「えへへへ! じゃあ、ごほうびにゲンパパのお話が聞きたい」
「おういいぞ。んんと、そうだなぁ…………」
メアリーにせがまれ、むかし話の ”うらしま太郎” を語り聞かせた。
その後はいつものように魔力操作の訓練をして眠りについた。
ぺしぺし! ぺしぺし!
『おきる、あそぶ、はやく、いっしょ、さんぽ、あそぶ』
うぅ~はいはい。おきまふ。おきまふよ~。
眠い目をこすりながら生返事をかえす。
遊ぶ気満々なシロである。今度は隣で寝ていたメアリーを起こしている。
………………
散歩から戻った俺たちは裏庭に出てきた。
俺は剣の素振りを行っていく。メアリーは槍で突きの練習だな。
そして最後は、シロを交えての『スーパーサ○ヤ人ごっこ』だ。
どういった状況でも、身体強化の状態へスムーズに移行できるよう訓練していくのだ。
朝練を終えたら朝食だ。
散歩と訓練でお腹はペコペコなのだ。
食堂に顔をだすと、
「あっ、メアリーちゃんだ! おはよー」
ミリーの元気な声が部屋に響きわたる。
「ミリーちゃんおはよー!」
俺の隣りから駆けだしていくメアリー。
ミリーに抱きついたかと思うと、こんどはふたり手に手を取って踊っている。
キャッキャいって実に楽しそうだ。
テーブルのほうを見ると。
――みんな顔色が良いな。
昨夜はゆっくりと休むことが出来たみたいで良かった。
朝食を済ますと今日の予定を簡単に尋ね宿屋をあとにした。
そのまま馬車について歩き、指定された場所で荷物を降ろしていく。
オークの肉も村の倉庫にキッチリと納め、昼少し前にはタグ村を出発した。
行商人の一日は本当に慌ただしくて大変なんだなぁ。
『時は金なり』ということなのだろう。
マクベさんは今日の野営地にと例の洞窟を目指しているようだが……。
「おっかしいな~。覚えてるはずなのに近くにくると分からなくなるんだよな」
そう言ってなんども首を傾げていた。
これは洞窟に認識阻害の魔法がかかっている為なので致しかたない。
おまけに現状維持の魔法もかけてあり、いつ来てもキレイなままなのだ。
まあ、シロならばこれらの結界を破ることも可能だろうが今はそのままにしている。
何かあった時の避難場所にはちょうどいいだろうしね。
てなことで、結局シロに案内してもらうことになった。
馬の前で先導しているシロは軽やかな足取りだ。
何の迷いもなく林の洞窟へたどり着いた。
今日も馬を中に入れて楽しく野営だ。
雨風が防げるだけで疲れがぜんぜん違うのだ。本当にありがたい。
………………
そして翌日。
俺たちは夜明けと共に洞窟を出発し林を抜ける。
今日の天気は上々のようだ。お馬さんも軽やかに進んで行く。
しかし、モンソロへ伸びるいつもの街道へ差し掛かった時、それは起きた。
「アウォ――――――――ン!」
お馬さんの前を行っていたシロの遠吠えである。
シロが発する警告に俺は腕抱きにしていたメアリーを地面に立たせ短槍を持たせた。
コリノさんは大弓に矢をつがえ戦闘準備をはじめる。
マクベさん一家には馬車から出ないようにと注意を促し、馬も一緒に防御結界を張った。
――見えた!
ウルフの団体さんだな。
――ざっと30匹はいるか。
『なぜ、ここに?』と疑問が浮かぶが、今は後まわしだ。
敵 (魔獣) の殲滅を優先させる。
先頭はハイウルフが2匹、なかなかデカいな。
ウルフたちは散開しながらこちらに突っ込んでくる。
俺はメアリーに中級ポーションを渡し、すぐ使えるようにとポッケに入れさせた。
そしてコリノさんから離れないように言いつけると、ハイウルフに向けシロと共に走りだした。
「俺は右のヤツを殺る。シロは左のヤツを頼むな!」
バスターソードを抜きながら身体強化をかけ、さらに加速していく。
右へ回り込もうとするブラックウルフに先制のウインドカッターをお見舞いする。
その魔法に巻き込まれ2匹のブラックウルフが崩れ落ちた。
正面のハイウルフは更に接近し襲いかかってくるが……。
――遅いな。
前足での爪撃を楽々躱し首に一撃を入れた。
切断まではいかなかったが十分に深手だろう。
ハイウルフはヨロヨロと3、4歩進んで崩れ落ちた。
それを横目に見ながら配下のウルフたちを切り伏せていく。
10匹程狩っただろうか、シロが近寄ってきた。
――んっ、
俺は周りを見まわす。
すると動いている魔物の気配はなかった。
そうか、終わったのか……。
さすがはシロだな。
シロに浄化を頼み、血塗れだった身体をきれいにしてからメアリーの元へもどった。
「ゲンパパすごーい! シロ兄もかっこいい!」
ちぎれんばかりに尻尾を振りながらメアリーが飛び込んできた。
そんな興奮冷めやらぬメアリーをやさしく抱き上げながら馬車に近づいていく。
「お、お怪我はございませんでしたでしょうか?」
「はい、俺もシロも無傷です。心配をおかけしました」
恐る恐るといった感じで話しかけてくるマクベさん。
んっ、なんで急に敬語なの?
まだ気が動転しているのだろうか?
その一方で、
「キャ――――――ッ! ゲンちゃん。皮よ、皮、皮、解体するわよ~!」
カイアさんはいつもの通りであった。
するとそこへ……、
騎兵だろうか?
揃いのプレートアーマーを着込んだ騎馬の集団が到着した。
――その数10騎。
各騎馬は散開するとウルフの死骸を突いてまわっている。
………………
しばらくすると、その中の一騎がこちらに近づいてきた。
マクベさんたちは馬車の中に待機してもらい、俺が対応する。
「私はクルーガー王国第3騎士団のマーベリックだ。この数のウルフをそなた達が?」
「そうだ」
騎士の問いに俺は短く答える。
「そうか……、ハイウルフが2匹も居たのに大したものだ。良かったら名を聞かせてくれぬか」
「俺はゲン、こっちは従魔のシロ。モンソロの冒険者だ」
コリノさんは聞かれてないので言う必要もないだろう。
「そうか覚えておこう。邪魔したな」
そう口にすると、騎士団のマーベリックは他に者を引き連れ帰っていった。
ふぅ――――っ。
まあ、おおかたガルーダ大森林から出てきたヤツ (魔獣) を打ち漏らしたのだろう。
さてさて、カイアさんが解体を始める前にインベントリーに回収してしまいますかね。
そのあとはシロと一緒にウルフを回収しながら浄化をかけてまわった。
インベントリーの情報を見ると、ハイウルフ2・ブラックウルフ12・グレイウルフ18となかなかの数の魔獣だった。
片づけが終わった俺たちは野営場に向け出発した。
そして暗くなるまでになんとか野営場に辿り着くことができたのだった。
こちらはリマの砦に引き揚げ中の王国第3騎士団。
馬上の会話にて、
「隊長、あの冒険者の小僧、名前を聞く程の者だったんですかねぇ」
そのように隊長のマーベリックへ話しかけるのは同じ第3騎士団所属の副長であるジェネスだ。
「そうだな、あのくらいの数の魔獣なら俺達3人も居れば簡単に片づけられるだろう」
「そうでしょ、特に凄かったようには見えませんでしたしね」
と団長マーベリックの返しにジェネスも同意していたのだが、
「だが、問題は数だけではないのだ。魔法を使えば納得もいくが、使った形跡はほとんど見えなかった。剣だけでということになるなら身体強化ができる俺でもあの時間では無理だな。なんせ、殆どの魔獣が死後硬直がまだ解けていなかったのだから」
そう、しみじみと口にする隊長マーベリックに返す言葉もなくジェネスは黙り込むのだった。
こちらはいつもの野営場。
俺はシロに乗ったメアリーを連れて隣の林へ薪拾いだ。
背負い籠のおかげで2回も行けば大丈夫だろう。
さすがに後半は暗くなってしまったので、メアリーに光球を上げてもらいながら難なく薪を拾っていく。
火の魔法と違って森や林での使用も安心だな。
今日の夕食用の肉はすでにカイアさんに渡してある。
そう、ハイウルフの肉だ。
また旨いんだよな、これが。
野営での楽しみといえば、やはり美味しいご飯だろう。今から楽しみで仕方ない。
薪拾いを終え、シロの浄化魔法のおかげで飲料水もバッチリ用意できた。
後は日課である剣の素振りと身体強化の訓練。
「ゲンちゃん、シロちゃん、メアリーちゃんできましたよ~」
カイアさんの声に全員が竈の周りに集まる。
みんなでハイウルフの肉を美味しく頂きながら、メアリーは昼間の戦闘の事を興奮しながらも一生懸命みんなに話して聞かせていた。
夜警はいつものように夜半過ぎまでが俺で、後半をコリノさんが担当。
夜警の折、俺は二つ月を静かに眺めながら紅茶を飲んでいた。
すると突然、メアリーが自分も飲みたいと言いだした。
涼しい晩に温かい紅茶でほっこりしていたところだ。
メアリーにはさぞ美味しそうに見えたことだろう。
紅茶をミルクで割って砂糖を多めに入れて渡してあげた。
そのミルクティーにメアリーは目を大きくすると、おいしいおいしいと言いながら飲んでいた。
ミルクティーはメアリーの舌にも合うようだな。
だけど飲み過ぎちゃうと眠れなくなるぞー。
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