54 / 107
51 弔い
しおりを挟む
盛大に泣きじゃくったあと疲れて眠ってしまったメアリー。
そして俺は目の前にお座りいるシロに視線を向けた。
徐に頭を撫でてやりながら、
「シロもごめんなぁ。勝手に決めてしまって」
『いっしょ、うれしい、できた、あそぶ、まもる、いもうと』
俺のそんな言葉にシロが念話で答えてくる。
「そうかぁ妹か……。そうだな、しっかり守ってやろうな」
何度も頷きながら尻尾を振ってくるシロ。本当に嬉しいようだ。
まあ、メアリーは犬人族でもあるし、妹分として面倒を見てくれるということかな。
俺はつい嬉しくなり、シロをわちゃわちゃともふり倒した。
それから……、
(サラ、聞こえているか?)
[はい、マスター。お呼びでしょうか]
(よし、範囲内だな。今居る所がこの町での俺の拠点になる。記録しておいてくれ)
[はい、マスター。了解しました]
………………
「……おじいちゃん?」
ちいさな声が耳に入ってきた。メアリーは少し寝ぼけているようだ。
そして、ハッ! となって俺に気がつくと恥ずかしそうに俯いてしまった。
「眠ってスッキリしたかぁ? 爺さんは明日みんなで見送ってやろうな」
すると、小さな頭をコクんと振って頷いてくれた。
「さて、俺は今から裏庭に出て剣の素振りをするが、一緒に来るか?」
メアリーに問いかけると服の裾をそっと掴んでくる。
「そうか、じゃあみんなで行こう!」
そういって俺はメアリーを抱えると剣をもって裏庭にでた。
バスターソードを鞘から抜いて、一振り一振り気合を入れながら打ち込んでいく。
キッチリ200回振り終えて納刀する。
首筋の汗を拭いながらメアリーの方を見やると、シロと仲良く遊んでいたようだ。
そして……、あっ!
メアリーが可愛い服を着ていることにようやく気づいたのだ。
薄い黄色のワンピースだ。
尻尾が出せるようちゃんと加工もしてある。
茶革の靴も可愛いがしっかりしている物のようだ。
って靴? さっきまで履いてなかったよな。
話を聞いてみると、
俺が剣を振っている間に、カイアさんが裏口から顔を出して『おいで、おいで』されたのだという。
なるほどそうだったのか。 後でカイアさんにお礼を言っとかないとな。
その後の夕食はメアリーの歓迎会ということもあり、料理の品数も多くとても賑やかものになった。
最初は緊張していたメアリーだったが、同じぐらいの年のミリーがいたお陰か自然と馴染んできたみたいだ。
食事の後はリビングに移りミリーとメアリーに昔話 (はなさか爺さん) を聞かせてあげた。
すると、シロがポチのまねをして前足で土を掘る動作をしてはリビングに居たみんなを笑わせていた。(芸達者なやつである)
しばらくすると、ミリーとメアリーは二人で頭をくつけて眠ってしまった。
カイアさんがミリーを抱え部屋から出ていく。寝室へ向かったのだろう。
メアリーには毛布をかけ、しばらくソファーに寝かせる。
俺はマクベさんと二人で話をした。
メアリーをこのまま引き取っても大丈夫なのか?
何か手続きをしなければならないのか? など、いろいろ尋ねてみることにした。
なんでも、孤児院の場合は手続も多いのだが、引き取るまでそれなりに時間が掛かってしまうという。
その間に受け入れ側の人柄、財産、仕事などを調べられたりもするそうだ。
(う~ん、そりゃそうだよな。犬猫を引き取るわけではないんだし)
それがスラムからの引き取りになると人身売買などの犯罪行為でなければ特に問題になることもないのだという。
(割とガバガバなんだな。どのみち問題を引き起こすお荷物なので、居なくても問題ないということか)
故にそのまま引き取っても問題になることはないのだが、住民登録は小さいときにやっておいた方がいいとのことだ。
登録料もさることながら、生まれた時から住民税が課せられているからだそうだ。
(なるほど、住民税も安くはないのだろうが、その年その年親たちが必死に払っているのだろう。それが10年分とか15年分とかになれば普通は払えないよな)
それからメアリーが着ていた服についてなのだが、どうもミリーの服を譲ってもらったらしい。
年齢はメアリーのほうが1歳年上になるのだがスラムでの生活のためか成長がすこし遅れ気味なのだ。
それでミリーの服をそのままメアリーに着せてみたらしい。
あとはブラシなどの日用品に下着や靴などを購入したということだった。
お釣りはしっかりと返された。
部屋代も今のまんま、1日あたり200バースでいいそうだ。
若干だが食費も増えるというのにマクベさんには本当にに頭があがらない。
それと、冒険者ギルドに依頼を出してきたので忘れずに受けておくようにとのことだ。
そうか、もう4日後だったよな。
行商の付き添いは問題ないのだが、メアリーはどうしよう?
どうしてもの時はマクベさんに相談するしかないよな。
俺はスヤスヤ眠っているメアリーを抱きかかえ部屋に戻ってきた。
あとは寝る前の日課である魔力操作の訓練だ。
メアリーを隣に寝かせ、座禅を組み瞑想していく……。
ぺしぺし! ぺしぺし!
『おきる、いく、いっしょ、あそぶ、さんぽ、はやく』
「ふぁ~ぁ、おはようシロ」
俺はあくびをしながら木窓を開けた。
(うん、天気は良いみたいだな)
そのあとメアリーも起こして、顔を洗ったら朝の散歩である。
みんなで朝食をとったあとはメアリーを連れて家をでた。
まずは冒険者ギルドだな。
昨夜話していたが、マクベさんが出した護衛依頼を受けにいくのだ。
――ううっ!
相変わらずおっさん臭が目にしみる。
入ったとたんに顔を顰めたくなるがここは我慢だ。
仕方なくカウンターに並んだ。
メアリーを腕に抱いているせいか奇異の目で見られるが、流石にCランクの冒険者には絡んではこない。
そのままカウンターにて護衛依頼の受付を済ませ冒険者ギルドをでた。
(さて、……次は教会だな)
メアリーを腕抱きにしたままシロを連れて教会の扉をくぐる。
シスターマヤが笑顔を浮かべて俺の前までやってくる。
しかし、メアリーを抱いている俺を見て少し戸惑っている様子だ。
「お祈りをさせてもらうよ」
俺は構わず大銀貨を渡して礼拝堂へと進んだ。
そこでメアリーを床に下ろし、
「みんなで女神さまに祈りを捧げるよ」
そうすると、メアリーも俺の隣で跪き胸の前で両手を組む。
静かに祈りを捧げていると、ススゥ――と周りの景色が変わっていく。
――いつもの場所だな。
そして目の前には女神さまが顕現なされる。
「みなさん息災にお暮らしのようで何よりですね」
「はい。いつも見守っていて下さり感謝しております。今日はシロに妹ができましたので連れて参りました」
『できた、うれしい、いもうと、あそぶ、まもる、いっしょ』
「それは良きことです。仲良くですね」
「今回、女神さまにお聞きしたいことがあったのです。よろしいでしょうか?」
「あまり時間はとれませんが簡単なことなら答えることができます」
「この世界において、あくまでも俺の手の届く範囲になるのですが……、貧しい子供や厳しい因果にある者を俺の判断で救っていっても構いませんか?」
「こちらからは、ある特定の人物に何らかの制限や定めといったものは科しておりません。『皆が幸せに暮らす』 これこそが望むべきものなのです」
「そうですか。では、やり過ぎない程度にやっていこうと思います」
「そろそろ時間のようですね。最後に一つだけ、”スキップ!” これで短距離の瞬間移動ができます。それでは、またいつの日か……」
周りの真っ白な景色が元の礼拝堂へと戻る。
そして俺はゆっくりと立ち上がる。
――ひしっ!
シスターマヤである。
「おおおぉぉおお 神よぉ!」
お構いなしに涙と鼻水を擦りつけてくる。
おいおい、今回光ってたのは隣りにいるメアリーだっただろ?
……いや、”スキップ!” を授けられた時に俺も光ったのか?
お座りしているシロをみると、目をとじてコクコクと頷いている。
「…………」
それにしたって、ホントにこやつは…………。
しかし今回は我慢だ、このあと尋ねたいこともあるからな。
シスターマヤをなんとかなだめて、並んでいる長椅子にメアリーと腰掛ける。
「人を一人弔ってやりたいのだが何処か案内はできるか?」
問いかけるとシスターマヤは涙と鼻水をハンカチで拭い、
「すぐにでしょうか?」
その言葉に俺は無言で頷く。
「少し待っていてください」
そう言い残してシスターマヤは出ていってしまった。
仕方がないので、メアリーと一緒にシロをもふりながら待つことにした。
それからしばらくしてシスターマヤは戻ってきた。
後ろにもう一人女性を伴っているので代打を頼むのだろう。
シスターマヤが今から墓地へ案内してくれるという。
………………
そして俺たちは今、シスターマヤに案内され町中を北門へ向かって歩いていた。
すると、目の前を進んでいたシロが途中で止まってお座りをする。
そこは串焼き屋。薬草採取の折にいつも寄っている馴染みの店なのだ。
シロは屋台の正面にお座りしてブンブン尻尾を振っている。
(これは買うまで動かないだろうな)
……仕方ない。
俺はシスターマヤに断りを入れると串焼き4本買って小休止することにした。
「ゆっくり食べろ。ほれっ、ちゃんと水も飲むんだぞ」
「うん!」
水筒を出してメアリーに水を飲ませる。幼い子がいるのだから水分補給はこまめにしていかないとな。
もちろんシロにも器をだして水を入れてやる。
そうして北門を出た俺たちは、右に曲がって城壁沿いを進み途中から細い小道へと入った。
その道を10分程登っていくと小高い丘の上に墓地が見えてきた。
周りは簡単な木の柵で囲ってあり、入口には古い小屋が建っている。
俺たちは木でできた門を潜り墓地の中を進んでいく。
しばらく行ったところでシスターマヤは立ち止まった。
「こちらへどうぞ」
その場所を掌で示してくれている。
「メアリー、ここでいいか?」
俺はやさしくメアリーに問いかけるが……。
その顔にはすでに大粒の涙があふれており、まともに答えることができそうにない。
メアリーをシスターマヤに預けると、俺はインベントリーから鍬と手箕を取りだした。(手箕:農作業で使う竹ざる)
そして穴掘り作業を黙々とこなしていった。
そして俺は目の前にお座りいるシロに視線を向けた。
徐に頭を撫でてやりながら、
「シロもごめんなぁ。勝手に決めてしまって」
『いっしょ、うれしい、できた、あそぶ、まもる、いもうと』
俺のそんな言葉にシロが念話で答えてくる。
「そうかぁ妹か……。そうだな、しっかり守ってやろうな」
何度も頷きながら尻尾を振ってくるシロ。本当に嬉しいようだ。
まあ、メアリーは犬人族でもあるし、妹分として面倒を見てくれるということかな。
俺はつい嬉しくなり、シロをわちゃわちゃともふり倒した。
それから……、
(サラ、聞こえているか?)
[はい、マスター。お呼びでしょうか]
(よし、範囲内だな。今居る所がこの町での俺の拠点になる。記録しておいてくれ)
[はい、マスター。了解しました]
………………
「……おじいちゃん?」
ちいさな声が耳に入ってきた。メアリーは少し寝ぼけているようだ。
そして、ハッ! となって俺に気がつくと恥ずかしそうに俯いてしまった。
「眠ってスッキリしたかぁ? 爺さんは明日みんなで見送ってやろうな」
すると、小さな頭をコクんと振って頷いてくれた。
「さて、俺は今から裏庭に出て剣の素振りをするが、一緒に来るか?」
メアリーに問いかけると服の裾をそっと掴んでくる。
「そうか、じゃあみんなで行こう!」
そういって俺はメアリーを抱えると剣をもって裏庭にでた。
バスターソードを鞘から抜いて、一振り一振り気合を入れながら打ち込んでいく。
キッチリ200回振り終えて納刀する。
首筋の汗を拭いながらメアリーの方を見やると、シロと仲良く遊んでいたようだ。
そして……、あっ!
メアリーが可愛い服を着ていることにようやく気づいたのだ。
薄い黄色のワンピースだ。
尻尾が出せるようちゃんと加工もしてある。
茶革の靴も可愛いがしっかりしている物のようだ。
って靴? さっきまで履いてなかったよな。
話を聞いてみると、
俺が剣を振っている間に、カイアさんが裏口から顔を出して『おいで、おいで』されたのだという。
なるほどそうだったのか。 後でカイアさんにお礼を言っとかないとな。
その後の夕食はメアリーの歓迎会ということもあり、料理の品数も多くとても賑やかものになった。
最初は緊張していたメアリーだったが、同じぐらいの年のミリーがいたお陰か自然と馴染んできたみたいだ。
食事の後はリビングに移りミリーとメアリーに昔話 (はなさか爺さん) を聞かせてあげた。
すると、シロがポチのまねをして前足で土を掘る動作をしてはリビングに居たみんなを笑わせていた。(芸達者なやつである)
しばらくすると、ミリーとメアリーは二人で頭をくつけて眠ってしまった。
カイアさんがミリーを抱え部屋から出ていく。寝室へ向かったのだろう。
メアリーには毛布をかけ、しばらくソファーに寝かせる。
俺はマクベさんと二人で話をした。
メアリーをこのまま引き取っても大丈夫なのか?
何か手続きをしなければならないのか? など、いろいろ尋ねてみることにした。
なんでも、孤児院の場合は手続も多いのだが、引き取るまでそれなりに時間が掛かってしまうという。
その間に受け入れ側の人柄、財産、仕事などを調べられたりもするそうだ。
(う~ん、そりゃそうだよな。犬猫を引き取るわけではないんだし)
それがスラムからの引き取りになると人身売買などの犯罪行為でなければ特に問題になることもないのだという。
(割とガバガバなんだな。どのみち問題を引き起こすお荷物なので、居なくても問題ないということか)
故にそのまま引き取っても問題になることはないのだが、住民登録は小さいときにやっておいた方がいいとのことだ。
登録料もさることながら、生まれた時から住民税が課せられているからだそうだ。
(なるほど、住民税も安くはないのだろうが、その年その年親たちが必死に払っているのだろう。それが10年分とか15年分とかになれば普通は払えないよな)
それからメアリーが着ていた服についてなのだが、どうもミリーの服を譲ってもらったらしい。
年齢はメアリーのほうが1歳年上になるのだがスラムでの生活のためか成長がすこし遅れ気味なのだ。
それでミリーの服をそのままメアリーに着せてみたらしい。
あとはブラシなどの日用品に下着や靴などを購入したということだった。
お釣りはしっかりと返された。
部屋代も今のまんま、1日あたり200バースでいいそうだ。
若干だが食費も増えるというのにマクベさんには本当にに頭があがらない。
それと、冒険者ギルドに依頼を出してきたので忘れずに受けておくようにとのことだ。
そうか、もう4日後だったよな。
行商の付き添いは問題ないのだが、メアリーはどうしよう?
どうしてもの時はマクベさんに相談するしかないよな。
俺はスヤスヤ眠っているメアリーを抱きかかえ部屋に戻ってきた。
あとは寝る前の日課である魔力操作の訓練だ。
メアリーを隣に寝かせ、座禅を組み瞑想していく……。
ぺしぺし! ぺしぺし!
『おきる、いく、いっしょ、あそぶ、さんぽ、はやく』
「ふぁ~ぁ、おはようシロ」
俺はあくびをしながら木窓を開けた。
(うん、天気は良いみたいだな)
そのあとメアリーも起こして、顔を洗ったら朝の散歩である。
みんなで朝食をとったあとはメアリーを連れて家をでた。
まずは冒険者ギルドだな。
昨夜話していたが、マクベさんが出した護衛依頼を受けにいくのだ。
――ううっ!
相変わらずおっさん臭が目にしみる。
入ったとたんに顔を顰めたくなるがここは我慢だ。
仕方なくカウンターに並んだ。
メアリーを腕に抱いているせいか奇異の目で見られるが、流石にCランクの冒険者には絡んではこない。
そのままカウンターにて護衛依頼の受付を済ませ冒険者ギルドをでた。
(さて、……次は教会だな)
メアリーを腕抱きにしたままシロを連れて教会の扉をくぐる。
シスターマヤが笑顔を浮かべて俺の前までやってくる。
しかし、メアリーを抱いている俺を見て少し戸惑っている様子だ。
「お祈りをさせてもらうよ」
俺は構わず大銀貨を渡して礼拝堂へと進んだ。
そこでメアリーを床に下ろし、
「みんなで女神さまに祈りを捧げるよ」
そうすると、メアリーも俺の隣で跪き胸の前で両手を組む。
静かに祈りを捧げていると、ススゥ――と周りの景色が変わっていく。
――いつもの場所だな。
そして目の前には女神さまが顕現なされる。
「みなさん息災にお暮らしのようで何よりですね」
「はい。いつも見守っていて下さり感謝しております。今日はシロに妹ができましたので連れて参りました」
『できた、うれしい、いもうと、あそぶ、まもる、いっしょ』
「それは良きことです。仲良くですね」
「今回、女神さまにお聞きしたいことがあったのです。よろしいでしょうか?」
「あまり時間はとれませんが簡単なことなら答えることができます」
「この世界において、あくまでも俺の手の届く範囲になるのですが……、貧しい子供や厳しい因果にある者を俺の判断で救っていっても構いませんか?」
「こちらからは、ある特定の人物に何らかの制限や定めといったものは科しておりません。『皆が幸せに暮らす』 これこそが望むべきものなのです」
「そうですか。では、やり過ぎない程度にやっていこうと思います」
「そろそろ時間のようですね。最後に一つだけ、”スキップ!” これで短距離の瞬間移動ができます。それでは、またいつの日か……」
周りの真っ白な景色が元の礼拝堂へと戻る。
そして俺はゆっくりと立ち上がる。
――ひしっ!
シスターマヤである。
「おおおぉぉおお 神よぉ!」
お構いなしに涙と鼻水を擦りつけてくる。
おいおい、今回光ってたのは隣りにいるメアリーだっただろ?
……いや、”スキップ!” を授けられた時に俺も光ったのか?
お座りしているシロをみると、目をとじてコクコクと頷いている。
「…………」
それにしたって、ホントにこやつは…………。
しかし今回は我慢だ、このあと尋ねたいこともあるからな。
シスターマヤをなんとかなだめて、並んでいる長椅子にメアリーと腰掛ける。
「人を一人弔ってやりたいのだが何処か案内はできるか?」
問いかけるとシスターマヤは涙と鼻水をハンカチで拭い、
「すぐにでしょうか?」
その言葉に俺は無言で頷く。
「少し待っていてください」
そう言い残してシスターマヤは出ていってしまった。
仕方がないので、メアリーと一緒にシロをもふりながら待つことにした。
それからしばらくしてシスターマヤは戻ってきた。
後ろにもう一人女性を伴っているので代打を頼むのだろう。
シスターマヤが今から墓地へ案内してくれるという。
………………
そして俺たちは今、シスターマヤに案内され町中を北門へ向かって歩いていた。
すると、目の前を進んでいたシロが途中で止まってお座りをする。
そこは串焼き屋。薬草採取の折にいつも寄っている馴染みの店なのだ。
シロは屋台の正面にお座りしてブンブン尻尾を振っている。
(これは買うまで動かないだろうな)
……仕方ない。
俺はシスターマヤに断りを入れると串焼き4本買って小休止することにした。
「ゆっくり食べろ。ほれっ、ちゃんと水も飲むんだぞ」
「うん!」
水筒を出してメアリーに水を飲ませる。幼い子がいるのだから水分補給はこまめにしていかないとな。
もちろんシロにも器をだして水を入れてやる。
そうして北門を出た俺たちは、右に曲がって城壁沿いを進み途中から細い小道へと入った。
その道を10分程登っていくと小高い丘の上に墓地が見えてきた。
周りは簡単な木の柵で囲ってあり、入口には古い小屋が建っている。
俺たちは木でできた門を潜り墓地の中を進んでいく。
しばらく行ったところでシスターマヤは立ち止まった。
「こちらへどうぞ」
その場所を掌で示してくれている。
「メアリー、ここでいいか?」
俺はやさしくメアリーに問いかけるが……。
その顔にはすでに大粒の涙があふれており、まともに答えることができそうにない。
メアリーをシスターマヤに預けると、俺はインベントリーから鍬と手箕を取りだした。(手箕:農作業で使う竹ざる)
そして穴掘り作業を黙々とこなしていった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
転生錬金術師・葉菜花の魔石ごはん~食いしん坊王子様のお気に入り~
豆狸
ファンタジー
異世界に転生した葉菜花には前世の料理を再現するチートなスキルがあった!
食いしん坊の王国ラトニーで俺様王子様と残念聖女様を餌付けしながら、可愛い使い魔ラケル(モフモフわんこ)と一緒に頑張るよ♪
※基本のんびりスローライフ? で、たまに事件に関わります。
※本編は葉菜花の一人称、ときどき別視点の三人称です。
※ひとつの話の中で視点が変わるときは★、同じ視点で場面や時間が変わるときは☆で区切っています。
※20210114、11話内の神殿からもらったお金がおかしかったので訂正しました。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる