俺とシロ

マネキネコ

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35  魔纏(まてん)

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 猫人族ねこびとぞくのナナにマジックバッグの仕入れを頼むことにした。

 まあ、ナナが客をなめていたので半分おどして原価で譲ってもらうようにしたのだが、ちょっと可哀そうだったかなぁ……とすこし反省もしているのだ。

 そこで、前から考えていた『シロの首輪』を頼むことにした。

 自動でサイズ調整が出来るひもかベルトなどはないのかと聞いてみたところ、王都に居る友人が以前そのような話をしていたのを覚えていたのだ。

 それで、今度マジックバッグを発注する折に詳しく聞いてくれるそうだ。

 あとは、納期など決まったら連絡してくれるようにお願いして俺たちはナナの魔道具屋をあとにした。





 店を出たあと俺は空を見上げた。

 空は晴れわたっており爽やかな風が吹いている。

 太陽の位置からすると、もう直ぐ昼時かな?

 さて、どうするかなぁ? ガンツのところにでも行って見るか!

 俺とシロは南門に向けて歩き出した。

 そして、門を潜り街道を南下していく。

 途中からは身体強化を掛けシロと競争だぁー。

 時間にして30分程で俺たちはマギ村へ到達した。馬車で行けば半日はかかる距離である。

 一本しかない村のメインストリートを進みガンツの工房こうぼうまでやってきた。

 入口の扉を開け、

 「おーい! ガンツ居るかぁ?」

 するとカウンターの奥からムッキムキのドワーフが顔を出した。

 「おお、ゲンではないか。なんじゃ~、モンソロに行ったのではなかったのか?」

 そう言って笑顔で迎えてくれた。

 「モンソロへは行ったさ。今は向こうで生活してるよ。今日はガンツに会いに来たんだ」

 そう言って土産みやげのエールを1たるカウンターに置いた。

 「それとこいつを頼む」

 腰にいていたバスターソードをカウンターに置く。

 「ほう、儂に会いにか? 嬉しいことを言ってくれるのう。これはエールか、ありがたい!」

 そう言うとガンツはバスターソードのさやを払い刀身とうしんを確認する。

 「そこの椅子に座って少し待っておれ。直ぐに終わる」

 ガンツはバスターソードを持って奥の工房へ入って行った。





 少しの間店内でシロとじゃれていると、

 「ほれ、終わったぞ」 

 と剣を返してくれた。

 「いくらだ?」 

 「今日はサービスだ!」

 そして、ニヤニヤしながら、

 「それよりこいつを見てくれ。会心かいしんの出来じゃぞ」

 ガンツは一振りの長剣を見せてきた。

 俺はその剣を手に取ってつくりや刀身をじっくりと見ていく。

 『やっぱり良い物というのは剣であっても美しいものだよなぁ』

 最後に鑑定を掛けてみた。

 ”ミスリル・マジック合金ロングソードA+”

 おおおっ、何これ凄い! 

 「マジックソードか……いいなコレ。うん凄く良い。しかし、俺には少し長いか……」

 そう呟きながらロングソードを返した。

 すると、ガンツはワクワクした子供のような目をこちらに向け、

 「おぬしから譲ってもらったあのミスリルは最高じゃった!」 

 とても嬉しそうである。

 「また、見つけてくるよ。そのときは最高の一本を俺に打ってくれよな!」





 俺はそのようにお願いしつつ、前から気になっている事を聞いてみた。

「魔法剣であるマジックソード・・・・・・・とはどういった物なんだ。ミスリル合金ソードとの違いというのはなんだ?」

 するとガンツは、

 「まず、ミスリル合金ソードじゃが。この前も言ったはずじゃが鋼鉄こうてつに少量のミスリルを添加てんかするんじゃ。その量は金属が反応を起こすギリギリの量でいい。変化を起こした金属は硬度こうどと耐久性が格段に上がるんじゃ」

 「一方、マジックソードに使うマジック合金・・・・・・ではミスリルを添加てんかする量はミスリル合金ソードの約4倍、これを特殊とくしゅな形で融合ゆうごうしていくんじゃ。通常使用の場合は双方ともにほとんど差はないんじゃ。では、何が違うのか? それは刀身に魔素をまとわせる場合じゃ」

 そう言うと、ガンツは一拍おいて再び話はじめた。

魔纏まてんと言うんじゃが、これを使うと通常の鋼鉄てつでは魔力を通しただけで一瞬にして砕ける。また、硬度や耐久を上げたミスリル合金ですら1回の使用でぼろぼろじゃ。そこで登場したのがマジック合金・・・・・・じゃ。もちろん、魔纏を使えば耐久は落ちていくが10回~15回位は耐えてくれるじゃろう。なぜ、そうまでして魔纏を使うのかじゃが、Sクラスの魔獣になると通常の武器はおろかかミスリル合金でも歯が立たん。そこで魔纏まてんなのじゃ、これならドラゴンのうろこですら切り裂くことが出来るんじゃ。……まぁ、そういう事なんじゃな」

 ガンツはそう締めくくった。

 「ありがとう、勉強になったよ。それではどうやって魔纏まてんの練習をするんだ?」

 「鋼鉄にミスリルを20%混ぜた棒を作るんじゃ。じゃが今となっては持ってるとしても上級貴族ぐらいじゃろうな。もし、有ればなんじゃがオリハルコン・・・・・・なら5%も混ぜればいけるじゃろうがな」

 そのようにいろいろと話してくれた。ホントに有難い存在なのだ。

 その日は『また来る』と言って工房の近くに転移に適した場所を見つけ、そこからモンソロの町に戻った。

 夕刻までには少し早いが俺とシロは部屋に戻っていた。

 木窓を開け空気を入れ替える。

 ここ数日は何かバタバタしてしまったなぁ。明日からはいつもの暮らしに戻るだろう。

 ベッドに寝そべってぼ~と天井を眺める。

 オーク共も片がついたしステータスを確認しておくか。――鑑定!


 ゲン    Lv18

 年齢      17
 状態    通常
【従魔】   シロ (フェンリル)
 HP   132/132
 MP   196/208
 筋力      83
 防御      81
 魔防      91
 敏捷      72
 器用      68
 知力    130

【特殊スキル】   時空間魔法(U)  身体頑強    状態異常耐性

【スキル】     鑑定 (4)   魔法適性(全) 魔力操作(6)

          剣術 (2)

【魔法】      風魔法(5)    氷魔法(3)  身体強化(4)

【加護】      ユカリーナ・サーメクス


 レベル18、結構上がったな。

 MPも200を超えている。それに身体強化も上がっているな。

 しかしなぁ、剣術はもう少し上げておきたいよな。

 めざすは『魔法剣士』だ!! ――なんつって。

 そして、魔纏まてんを是非とも覚えたい。

 『ドラゴンスレイヤー』になるのも男のロマンなんだよなぁ。

 しかし、練習が出来ないのではな…………!?

 ん、待てよ。

 女神さまから頂いたショートソードが有ったよな。

 そうそう、コレコレ。

 最近は使う機会がなかったからインベントリー内に保管していたんだよね。

 確かこれってグレードはA+だったよな。そしてガンツのロングソードもグレードはA+だった。

 普通に考えればいけるはずなんだけど……。

 あっ! そうか、俺の鑑定のレベルが低いせいで詳細が見れなかった可能性もあるのか。

 それなら、シロに頼んで鑑定してもらうことで新たに何か分かるかもしれない!

 俺はガバッとベッドから起き上がった。

 そして、手にしていたショートソードをシロに見せる。

 「シロ、これを鑑定してくれないか?」

 そう言って、俺はシロの背中を数回撫でたあと頭にそっと手をのせた。

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