31 / 107
29 シスターマヤ
しおりを挟む
俺はその場で貴族礼をとった。
片膝を突き右手を左胸上に指は揃えて肩の高さに。左手は握り込んで地面に付ける。
これは今朝、
『冒険者なら貴族が出したクエストもこれから携わるかもしれない』と習ったばかり。
――アーツ先生ありがとう!
「モンソロの冒険者でゲンと申します。お力になることができて光栄に存じます」
するとアリス様は俺の手を取り、
「そんな堅苦しい挨拶は必要ありません。どうぞ、お立ちになってください」
そう促されて立ち上がる。
「ゲン様はお強いのですね、さぞ名のある冒険者だとお見受け致します」
「特にオークジェネラルを倒された魔法は圧巻の一言でした。素晴らしいです!」
と興奮している様子だ。俺が答えに困っていると、
「お嬢様、まだ旅の途中でございます。急ぎ出立いたしませんと困ったことになります」
「今回のお礼はいずれ必ず致します」
そう言い残し馬車に戻っていかれた。
アリス様ご一行は旅を急ぐため亡くなられた3名は街道の脇に葬られた。
オークの始末はこちらで全てやっておくと言うと恐縮がられたが討伐部位の回収などもあるからと先に行かせたのだ。
さてと、あとはのんびりと片付けていきますかね。
オークジェネラルとオーク40頭をポンポンとインベントリーへ入れていく。
それに、このインベントリーに関してだが先日女神さまにお会いしたのち新機能が追加されていることに気づいたのだ。
その機能とはズバリ『自動解体』である。
どんな魔物でもインベントリーに入れることで立ち所に解体できてしまうという。とてもありがたい機能なのだ。
俺とシロはいつもの森の丘に戻ってきていた。
襲撃のあった場所には、血の臭いで魔獣が寄らないようにとシロに浄化をお願いした。
すると、あのエリア全てを一発で浄化してしまったのだ。
まぁ……、そーだよね。シロは聖獣だからね。
ホントに凄いよね。ハハハハハッ!
――いろいろ疲れた。
「なぁ、シロここで肉を焼いたら絶対に旨いよな」
それを聞いたシロはブンブン尻尾を振りながら縋りついてきて、反応が凄いことになっている。
「おおっ――、わかった わかったって、そのうち そのうちにな」
「じゃあ今度、しっかりした竈を作ろうな。そうそう金網も買っておかないとな」
それと胡椒が欲しいよな。有るとは思うんだけど、まだ見てないんだよなぁ。
串焼きを出し、シロが食べやすいよう肉を串からはずしてフライパンに入れてやる。
その横には水のはいった木皿も一緒に出してあげた。
嬉しそうに食べるシロを眺めながら俺も串焼きを頬ばる。――うん旨い!
トラベル! を使って北門の近くまで飛び町にはいった。
さてさて、どーしたもんかねぇ?
報告しない訳にはいかないよなぁ。
かと言って、大きな騒ぎになっても嫌なんだよな。
あっ、そうだ! アーツ先生に相談してみるか。
俺はシロを連れて冒険者ギルドに向かった。
居るかなぁ~? ……そう都合良くは居ないかぁー。
よし、この薬草を出すときにどこに行ったか聞いてみよう。
そして、麻袋を買い取り窓口に持っていく。
「おう、今日も来たのか。がんばってるなぁ。え~と、ヒール草が100本にマジック草も100本か。やるじゃないか!」
………………
「今日のもすべて状態が良いな。よし『良』だ。また頼むぞ!」
そこで木札を受け取りこちらの総合カウンターに持っていく。
「すいませーん、アーツ先生はもう居ませんよね。どこに行けば会えますかね?」
「はいはい、ちょっとまって。まず薬草の報酬840バースね。それから、アーツさんなら今日は教会裏の孤児院じゃないかしら。炊き出しで」
俺は受付嬢に礼を言うと冒険者ギルドをあとにした。
教会か……。
この前会った、美人なんだけど残念シスターであるマヤの顔が頭をよぎる。
まぁ、行くのは孤児院だし。――大丈夫だよね?
教会に着いた俺たちだが、孤児院の場所がわからない?
はぁ~、聞くしかない……よね。
そして教会の扉をそっと開くと……居た! シスターマヤ。
あっ、目が合ってしまった!
シスターマヤは無言でツカツカツカとこちらにやって来くると、俺は手を掴かまれ教会の中に引きずり込まれた。
「どーしてあのとき帰っちゃうんですかぁ? 悲しかったですぅ」
「えっと、用事です。用事があったからです」
「じゃあ、今日は大丈夫なんですね。うれしいです!」
「えっ、えっとですね。今日はその……此方ではなく孤児院に行きたいのですが……」
とっ、とにかく手を放して欲しい。
「ダメですよ、また逃げちゃうでしょう?」
「おまえ! シスターに何してやがる?」
『た、助かったよアーツ先生~』と振り返ると…………視界が暗転した。
しばらくして目を覚ますとシロが心配そうに俺を見つめていた。
あぁ~、あのセリフを言いたかったのに。
シロの可愛い顔で天井が見えないじゃんよ~~~。
ひとりで悶えていると、
「ゲン、済まなかった。どこぞの不埒な者だと思ってな」
アーツ先生はごめんねポーズ。
そうか……、俺はアーツ先生のげんこつを喰らったのか。シロはアーツの後ろから来てたから、わかんなかったんだな。それにしても身体頑強を持つ俺を気絶させるなんて、普通の人なら昏睡状態だろ。手加減しろよなー。
「えーと、別に問題はありません。それにアーツさんを探していたんで」
「んっ、私をか? また、どーして」
「ちょっと相談したいことがありまして」
「なんだ、相談というのは?」
「それは、ここではちょっと……」
「うっ、浮気者~。どこに行く気ですか?」
「いやいやいや、もともと俺はアーツさんを探していたわけで……」
「やっぱり帰っちゃうんですね。この嘘つき……」
「ゲン? どーなっているんだ」
「わかりません!」
「ところで、シスターとはどういう関係なんだ?」
「わかりません!」
「何だか知らんが炊き出しを手伝え! 話はその後でゆっくり聞いてやる」
何故か、炊き出しを手伝うはめになった。
孤児院は教会の横の路地を入った先、奥まった所にあった。
なるほど、分かりづらい。
シロを連れて孤児院に入った。
シスターも一緒についてくる。――なぜに?
教会には別のシスターが居るので問題ないらしいのだ。
だ・か・ら その手を放しなさいってばよ。
アーツ先生からも変な目で見られているし。
子供たちは冷やかしてくるしで大変なんだよ。あなたのせいで!
だ・か・ら 手を放してください。
とりあえず炊き出しをがんばることにした。
シロは孤児院の子供たちと走りまわっている。犬はお気楽でいいよなぁ。
片膝を突き右手を左胸上に指は揃えて肩の高さに。左手は握り込んで地面に付ける。
これは今朝、
『冒険者なら貴族が出したクエストもこれから携わるかもしれない』と習ったばかり。
――アーツ先生ありがとう!
「モンソロの冒険者でゲンと申します。お力になることができて光栄に存じます」
するとアリス様は俺の手を取り、
「そんな堅苦しい挨拶は必要ありません。どうぞ、お立ちになってください」
そう促されて立ち上がる。
「ゲン様はお強いのですね、さぞ名のある冒険者だとお見受け致します」
「特にオークジェネラルを倒された魔法は圧巻の一言でした。素晴らしいです!」
と興奮している様子だ。俺が答えに困っていると、
「お嬢様、まだ旅の途中でございます。急ぎ出立いたしませんと困ったことになります」
「今回のお礼はいずれ必ず致します」
そう言い残し馬車に戻っていかれた。
アリス様ご一行は旅を急ぐため亡くなられた3名は街道の脇に葬られた。
オークの始末はこちらで全てやっておくと言うと恐縮がられたが討伐部位の回収などもあるからと先に行かせたのだ。
さてと、あとはのんびりと片付けていきますかね。
オークジェネラルとオーク40頭をポンポンとインベントリーへ入れていく。
それに、このインベントリーに関してだが先日女神さまにお会いしたのち新機能が追加されていることに気づいたのだ。
その機能とはズバリ『自動解体』である。
どんな魔物でもインベントリーに入れることで立ち所に解体できてしまうという。とてもありがたい機能なのだ。
俺とシロはいつもの森の丘に戻ってきていた。
襲撃のあった場所には、血の臭いで魔獣が寄らないようにとシロに浄化をお願いした。
すると、あのエリア全てを一発で浄化してしまったのだ。
まぁ……、そーだよね。シロは聖獣だからね。
ホントに凄いよね。ハハハハハッ!
――いろいろ疲れた。
「なぁ、シロここで肉を焼いたら絶対に旨いよな」
それを聞いたシロはブンブン尻尾を振りながら縋りついてきて、反応が凄いことになっている。
「おおっ――、わかった わかったって、そのうち そのうちにな」
「じゃあ今度、しっかりした竈を作ろうな。そうそう金網も買っておかないとな」
それと胡椒が欲しいよな。有るとは思うんだけど、まだ見てないんだよなぁ。
串焼きを出し、シロが食べやすいよう肉を串からはずしてフライパンに入れてやる。
その横には水のはいった木皿も一緒に出してあげた。
嬉しそうに食べるシロを眺めながら俺も串焼きを頬ばる。――うん旨い!
トラベル! を使って北門の近くまで飛び町にはいった。
さてさて、どーしたもんかねぇ?
報告しない訳にはいかないよなぁ。
かと言って、大きな騒ぎになっても嫌なんだよな。
あっ、そうだ! アーツ先生に相談してみるか。
俺はシロを連れて冒険者ギルドに向かった。
居るかなぁ~? ……そう都合良くは居ないかぁー。
よし、この薬草を出すときにどこに行ったか聞いてみよう。
そして、麻袋を買い取り窓口に持っていく。
「おう、今日も来たのか。がんばってるなぁ。え~と、ヒール草が100本にマジック草も100本か。やるじゃないか!」
………………
「今日のもすべて状態が良いな。よし『良』だ。また頼むぞ!」
そこで木札を受け取りこちらの総合カウンターに持っていく。
「すいませーん、アーツ先生はもう居ませんよね。どこに行けば会えますかね?」
「はいはい、ちょっとまって。まず薬草の報酬840バースね。それから、アーツさんなら今日は教会裏の孤児院じゃないかしら。炊き出しで」
俺は受付嬢に礼を言うと冒険者ギルドをあとにした。
教会か……。
この前会った、美人なんだけど残念シスターであるマヤの顔が頭をよぎる。
まぁ、行くのは孤児院だし。――大丈夫だよね?
教会に着いた俺たちだが、孤児院の場所がわからない?
はぁ~、聞くしかない……よね。
そして教会の扉をそっと開くと……居た! シスターマヤ。
あっ、目が合ってしまった!
シスターマヤは無言でツカツカツカとこちらにやって来くると、俺は手を掴かまれ教会の中に引きずり込まれた。
「どーしてあのとき帰っちゃうんですかぁ? 悲しかったですぅ」
「えっと、用事です。用事があったからです」
「じゃあ、今日は大丈夫なんですね。うれしいです!」
「えっ、えっとですね。今日はその……此方ではなく孤児院に行きたいのですが……」
とっ、とにかく手を放して欲しい。
「ダメですよ、また逃げちゃうでしょう?」
「おまえ! シスターに何してやがる?」
『た、助かったよアーツ先生~』と振り返ると…………視界が暗転した。
しばらくして目を覚ますとシロが心配そうに俺を見つめていた。
あぁ~、あのセリフを言いたかったのに。
シロの可愛い顔で天井が見えないじゃんよ~~~。
ひとりで悶えていると、
「ゲン、済まなかった。どこぞの不埒な者だと思ってな」
アーツ先生はごめんねポーズ。
そうか……、俺はアーツ先生のげんこつを喰らったのか。シロはアーツの後ろから来てたから、わかんなかったんだな。それにしても身体頑強を持つ俺を気絶させるなんて、普通の人なら昏睡状態だろ。手加減しろよなー。
「えーと、別に問題はありません。それにアーツさんを探していたんで」
「んっ、私をか? また、どーして」
「ちょっと相談したいことがありまして」
「なんだ、相談というのは?」
「それは、ここではちょっと……」
「うっ、浮気者~。どこに行く気ですか?」
「いやいやいや、もともと俺はアーツさんを探していたわけで……」
「やっぱり帰っちゃうんですね。この嘘つき……」
「ゲン? どーなっているんだ」
「わかりません!」
「ところで、シスターとはどういう関係なんだ?」
「わかりません!」
「何だか知らんが炊き出しを手伝え! 話はその後でゆっくり聞いてやる」
何故か、炊き出しを手伝うはめになった。
孤児院は教会の横の路地を入った先、奥まった所にあった。
なるほど、分かりづらい。
シロを連れて孤児院に入った。
シスターも一緒についてくる。――なぜに?
教会には別のシスターが居るので問題ないらしいのだ。
だ・か・ら その手を放しなさいってばよ。
アーツ先生からも変な目で見られているし。
子供たちは冷やかしてくるしで大変なんだよ。あなたのせいで!
だ・か・ら 手を放してください。
とりあえず炊き出しをがんばることにした。
シロは孤児院の子供たちと走りまわっている。犬はお気楽でいいよなぁ。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
処刑された女子少年死刑囚はガイノイドとして冤罪をはらすように命じられた
ジャン・幸田
ミステリー
身に覚えのない大量殺人によって女子少年死刑囚になった少女・・・
彼女は裁判確定後、強硬な世論の圧力に屈した法務官僚によって死刑が執行された。はずだった・・・
あの世に逝ったと思い目を覚ました彼女は自分の姿に絶句した! ロボットに改造されていた!?
この物語は、謎の組織によって嵌められた少女の冒険談である。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!
夜夢
ファンタジー
現世で組織同士の抗争中に命を落とした主人公。
彼は極悪人だった。
人は死んだらどうなるか。彼は今それに直面している。
神は彼に裁きを与えた。
彼に与えられた裁きは、地球とは違う世界にいき魔物として一億回死ぬ事。それを終えたら人として生まれ変わらせるというものだった。
彼は猛反発したが、相手は神。罰は覆る事なく、彼は異世界へと落とされた。
──はずだった。
「くっくっく、こんな真っ黒い魂は久しぶりじゃ。お主、助けてやろうか?」
「はい喜んで!」
彼を拾ったのは邪神デルモート。
彼は邪神から力を与えられ地上に降り、邪神の手先として働く事になるのである。
神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~
波 七海
ファンタジー
※毎週土曜日更新です。よろしくお願い致します。
アウステリア王国の平民の子、レヴィンは、12才の誕生日を迎えたその日に前世の記憶を思い出した。
自分が本当は、藤堂貴正と言う名前で24歳だったという事に……。
天界で上司に結果を出す事を求められている、自称神様に出会った貴正は、異世界に革新を起こし、より進化・深化させてほしいとお願いされる事となる。
その対価はなんと、貴正の願いを叶えてくれる事!?
初めての異世界で、足掻きながらも自分の信じる道を進もうとする貴正。
最強の職業、無職(ニート)となり、混乱する世界を駆け抜ける!!
果たして、彼を待っているものは天国か、地獄か、はたまた……!?
目指すは、神様の願いを叶えて世界最強! 立身出世!
進学できないので就職口として機械娘戦闘員になりましたが、適正は最高だそうです。
ジャン・幸田
SF
銀河系の星間国家連合の保護下に入った地球社会の時代。高校卒業を控えた青砥朱音は就職指導室に貼られていたポスターが目に入った。
それは、地球人の身体と機械服を融合させた戦闘員の募集だった。そんなの優秀な者しか選ばれないとの進路指導官の声を無視し応募したところ、トントン拍子に話が進み・・・
思い付きで人生を変えてしまった一人の少女の物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる