俺とシロ

マネキネコ

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25 剣の指導

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 刃物を出しおどしてきた痩せぎす男をその場で取り押さえた。

 偽のドラゴンステーキを出していた飲食店の店長である。

 その男をシロに押さえさせて、俺は事の次第を表で並んでいた客数人に説明した。

 すると、並んでいた客の一人が『それはけしからんな! 』と衛兵えいへいを呼んで来てくれたのだ。

 それにより、お店は一時騒然そうぜんとなった。

 衛兵は証拠しょうこ品となる肉のかたまりを押収したあと痩せぎす男を詰め所に連行していった。

 ドラゴンステーキが食べられず残念そうに肩を落とした客や払い戻しを求める客などで今だに店の混乱は続いている。

 勿論もちろん、俺も詰め所に同行し大まかな事情を聞かれることになった。

 取り調べの方は2時間程で終わった。

 せぎす男は以前にも同じような犯罪を犯しており罰金刑での前科持ぜんかもちであった。

 いくつかの証拠品をはじめ数名の客からの証言も取れているため、今回は奴隷落どれいおちになるだろうとのことである。

 奴隷……。そう、このクルーガー王国には奴隷制度があったのだ。

 なんでも、このように犯罪を犯した者が奴隷に落とされる際、その犯人を捕らえた者に奴隷買取価格の半分が報奨金として渡されるそうだ。

 その受け取り手続きも同時に行なわれていた。

 俺は冒険者ギルドに加入していること、マクベ商店に住んでいることなど身元が確りしていたので手続きをする際も割とスムーズであった。

 そうして、2日後に再度こちらに来るように言われ俺とシロは衛兵の詰め所を後にした。





 この騒動そうどうで肉を食べそこなってしまったな。

 衛兵の詰め所は中央広場の近くにあり、その近辺には沢山の屋台やたいが出ていた。

 そこで、俺たちはその屋台を廻ってみることにした。

 パン・串焼き・飲み物などいろいろあって楽しい。

 いくつか買って広場のベンチに座りシロと一緒に食べた。

 広場は様々な人でにぎわっている。

 意識して見てみると首輪を付けた奴隷もそれなりに見受けられた。

 さて、遅めの昼食を取った俺たちは再び冒険者ギルドに行ってみることにした。

 剣の指導について聞いてみるためだ。

 この時間なら冒険者ギルドも空いているだろう。

 シロを連れてギルドの中へ入っていくと…………。

 おおっ、カウンターに女性だ! 『受付嬢』がいる。 ――2人も。

 うんうん、いいね~。

 やっぱり冒険者ギルドはこうでなくてはね! 失望しつぼうしないで良かった。

 とりあえず並びますかぁ。

 この時間はやはり流れが早いな。

 「冒険者ギルドへようこそ。ご用件は何でしょうか?」

 うんうん、同じ定型文だけど やっぱり違うもんだな。――むさくなーい。

 「あのですね、剣の訓練をしたいのですが指導をお願いすることは出来ますか?」

 「はい、剣や槍の指導にあたられる方は指導員登録をされてあるBランク以上の冒険者がなられます。指導回数は1回からで指導料は1刻 (およそ2時間) で500バースとなっております。如何いたしますか?」





 なるほど、その辺はしっかり決まっているみたいだね。

 合わなければ止めればいいのだし、頼んでみようかな。

 「それでは剣の指導をお願いします。1日1刻で5日間お願いできますか。時間は毎朝2の鐘からでお願いします。今日は今からでも大丈夫です」

 「確認してきますので、しばらくお待ちください」

 受付のおねーさんは席を立つとバックヤードへ消えていった。

 静かに待っていると数分でカウンターに戻ってきた。

 「お一方いらっしゃいました。これからでも受けられますがどのように致しますか?」

 「では、これから指導をお願いします」

 「はい、それでは手続きを致します。本日分が500バースです。これからは受けられる前に指導料をお支払いください。訓練が終わりましたらカウンターにて終了報告をお願いいたします」

 そして、おねーさんは手早く受付処理を終わらせると、

 「指導員はまもなく参りますので訓練場に入ってお待ちください。本日はありがとうございました」 

 俺たちはさっそく訓練場に入った。――結構広い。

 あちらこちらで剣を振ったり模擬戦もぎせんをしていたりと……、おおっ、魔法の訓練もあるようだ。

 分かりやすいように俺とシロは訓練場前の踊り場にいた。

 すると後ろから声を掛けられた。

 「剣の指導を申し込んだゲンというのはお前か?」

 「あっ! っとゲンです。こっちが従魔のシロよろしくお願いします」

 振り返った俺は簡単に名前だけを告げた。今朝、ギルド前で親切に教えてくれた女戦士さんであった。





 赤橙 (あかだいだい) の短髪に2mはある長身。がっしりとした体躯たいく革鎧かわよろいがかっこいい。

 「わたしはアーツ。龍人族りゅうじんぞくだ。よろしく頼む」

 ポンっと肩を叩かれ訓練所に入っていく。

 「ところで、ゲンは剣を習った事はあるのか?」

 「子供の頃に少しだけ」

 「そうか、ほとんど素人しろうとなのか……」

 「最近、剣を買ったので素振すぶりは毎日しています」

 「それではまず、その素振りを見せてくれ」

 俺は1回深呼吸をして静かにバスターソードを引き抜いた。

 そして、いつものように素振りをしていく。

 その際も『剣はつばの根元を空けないよう持て』とか、『足の位置はこのように』などいろいろと指導を受けた。

 「ほう、初心者にしてはなかなか振れているな。変な癖もついてないようだ。ただ剣を振り切るまでは気を抜くな」

 指導はそれから一刻 (2時間) みっちりと行われた。

 う、腕が上がらん、足がふらつく……。

 シロは何が楽しいのか、俺の周りを回っている。『よく頑張った』とでも言うかのように。

 「よしっ、今日はここまで! また明日だな」

 その日はギルドカウンターにて終了報告をしてギクシャクしながら家に戻った。

 どうしたのか? とみんなに笑われてしまったが。……この団らんがまた良いよな。

 部屋に戻るとすぐに睡魔すいまが襲ってきたが魔力操作の訓練だけは何とか行った。





 そして次の日の朝。

 今日は散歩を止め裏庭に出て剣を振っている。

 身体のあちこちが筋肉痛で大変だったが剣はなんとか振れている。

 だいぶ良い音が出るようになってきたぞ。

 そして、いつものように200回を振り終わると次の瞬間、

 ピーン!{スキル剣術を獲得しました}と脳に響いてきた。

 今朝は2の鐘が鳴るまえに冒険者ギルドに入った。

 もちろんシロも一緒だ。今は従魔登録の鑑札かんさつを革ひもで首に吊っている。

 これでシロも冒険者ギルドの仲間である。

 どこか嬉しそうで、昨日来たときより堂々としているように思える。

 少し時間が早かったので指導料を納めたあと依頼表いらいひょうながめていた。

 薬草採取やスライム採取は町の外だよな。

 ドブさらい・馬屋の清掃うまやのせいそう・木材運び・食堂の手伝い・庭の草むしり・屋根の修理・レンガ運び・中央広場の清掃・畑の手伝いなどなど駆け出しのFランクでも依頼は豊富にあるようだ。

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