俺とシロ

マネキネコ

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6  シロの魔法

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 俺はせっせとまきを拾っている。場所は先程の野営地やえいち隣接りんせつしている林のなか。

 あまり離れるのも怖いので、シロがいる簡易竈かんいかまどが見える範囲をうろついている訳だが……。

 シロは未だ丸まって寝ているようだ。まったくいい気なもんだな、すこしは手伝えよ!

 今の時刻はどのくらいになるだろうか?

 もう、一番暑い時間帯は過ぎてるかな。だいたい15時ぐらいだろうか。

 日は西に傾いているが日暮れまでにはまだ3時間ぐらいはありそうだ。

 ここ1時間ぐらい薪集めに精をだし、何度も往復おうふくしていたら疲れた。

 薪を手に持ち、腰にさし集めてまわったよ。ああ、薪をたばねるロープかひもが欲しい。

 ――ホントに疲れた。

 「ちょっと休憩!」

 竈の近くの岩に腰をおろし水筒の水を口に含む。

 足元で丸くなっているシロ。首の辺りをもふもふしてやるとすこし身じろぎしている。――可愛い。





 さーて、どうしますかねぇ。

 生きていく為にはまず食べ物。あと安全な住む場所。

 生活していくには、いろいろと要るしなぁ。

 お金も大事、すご~く大事!

 それと情報だよなぁ。

 確かに、何も知らないし分からない。

 ここの知識や常識じょうしきなど、そこらの子供よりもつたないはずだ。

 シロのことも大っぴらにはできないよな。フェンリルなんて言ったらぜったい大騒ぎになる。

 かといって、魔獣などがいる外を連れて回るのも怪しまれそうだ。

 あと強さなんだけど、シロはどれくらい戦えるのだろう。

 仮にも聖獣フェンリルなんだし弱いってことはないだろう。

 体の大きさなどは変えられるのだろうか?

 そういえば、ここまで魔獣を見ていないなぁ。鹿しかうさぎといった獣すら見なかった。

 …………あっ!

 これは、たぶんそういう事じゃないか。

 つまり、シロがいるから近寄れなかったんだ。

 獣なんかは匂いで敵の強さを計るというし。内包している魔力なんかも関係しているのかもしれない。

 魔獣といっても獣とどう違うんだろう? 強さは戦いかたは魔法があれば無双できるのだろうか。

 ――使ってみたいな魔法。

 いや、女神さまにスキルをいっぱいもらったし、使えるはずなんだよなぁ魔法。

 くぅ――っ、早くステータス見れないかな。

 どーやるんだよぉ。なぜ何にもできないの? ――教えて女神さま!

 いかんいかん、また考えが暴走していた。

 まっ、やれる事からやっていくまでだな。





 岩に座ったまま『ロダンの像』のごとく考えを巡らせていると、いつの間にかシロが目の前にお座りしていた。

 あまりの可愛さについつい頭をでてしまう。

 「シロ、お手!」

 ――ペシ!

 「おかわり!」

 ――ペシ!

 「おおー、ちゃんと覚えているなぁ。よしよし……」

 そうだ、何が出来るのかをシロに聞いてみるか。

 「なぁシロ、おまえって魔法とか使えんの? わかるか、魔法だぞ」

 すくっと立ち上がったシロは俺から2mほど離れると、その場でくるくると回りはじめた。

 んん、何か考えているのかな?

 すると何回かまわった後、こちらに背を向けてきた。

 ――何をするんだ?

 足をググっと踏ん張りためをつくったあと、

 シロは『ワンッ!』と大きく吠えた。

 その瞬間、吐き出された赤い火の玉は直線上にどんどん加速していく。

 火の玉は回転しながら30㎝ぐらいの大きさまで変化した。

 そして次の瞬間、20m程先にあった高さ3mの大岩にぶち当たって爆ぜた!

 ――ドドォーン!

 向こうの方から大きな爆発音が聞こえてきた。

 ええっ、こんなに!

 俺は半ば唖然あぜんとしながらもその光景をながめていた。

 シロさんスゲー! パネー!

 当のシロは何食わぬ顔でこちらに戻ってきてめて褒めてと言わんばかりにブンブン尻尾を振っていた。

 我に返った俺はその場にしゃがむと、シロを精一杯もふりながら褒めまくった。

 それにしたって、誰もいなくて本当によかった。

 あんな魔法、そうそう見せられないだろう。

 火の魔法『ファイヤーボール』かな。

 はじめて魔法を見たけど、すごかった。

 しかし、森や町中では使えないよな。たぶん大火事になる。





 俺はシロを連れて、さっき魔法をぶち当てた大岩の所までやってきた。幅2m、高さ3mの大岩だ。

 下から見てみると岩肌の上半分が真っ黒にげている。

 それに黒くなった中心部分が20㎝ほどえぐれていた。これが人間だったらと思うと背すじがゾッとする。

 (許可なく使わないように、しっかり教えないとな)

 そうつぶやいてその場所を後にした。

 そのあと、

 「魔法は俺が許可するまで使っちゃダメだぞ」

 よく言って聞かせた。

 シロは俺の言っていることがわかるのか、コクコクと何度も頷いていた。――可愛い。

 「他にも使える魔法はあるの?」

 そう聞いてみると、隣りの林にある電信柱ほどの樹木が3本まとめて切り倒された。

 それはもうスッパリと。

 大きく吠えていたので、何らかの魔法を発動したのはわかったが、樹木が倒れるまで何も見えなかった。

 風の魔法かな? おそらくそうだろう。

 所謂いわゆるウインドカッターというヤツだな。

 それにしても、こちらも威力いりょくが半端ない。あれじゃ熊でも一撃だろう。

 いっ、いかん! これもキッチリ言っとかないと大変なことになるな。





 「じゃぁ、他には?」

 俺の声にシロはお座りをしたままだ。

 ☆。.:*:・'゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。

 んんっ、何かした? えっ、

 「もう一回して見せて」

 そして、シロに注目する……。

 ☆。.:*:・'゜'・:*:.。.:*:・'゜☆。

 ん~、何か体の周りがキラキラしているような?

 何だろう結界か? いや、クリーンあるいは浄化じょうかかな?

 ――わからん。

 「シロ、それって俺にも掛けられるか?」

 そう言うと、シロは俺のそばまで来て魔法を発動したようだ。

 すると、さっきのシロのように身体の周りがキラキラしている。

 それは2秒ほどのことで……。

 あれっ! 頭や身体、それに足のつま先までスッキリさらさらになっている。

 シロを見るとブンブン尻尾を振って『ドヤッ』っている。 ように見える。

 「おお――っ、さすがはシロだよなぁ」

 綺麗になっているシロの毛を盛大にもふり、褒めそやすのだった。

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