36 / 50
第3章〜カイン学園編〜
第35話。授業選択
しおりを挟む「ルーシィは何選ぶ?」
「エミルはどれ選ぶのよ?」
質問に質問で返されてしまった。
「魔道具学と槍と格闘が気になってるかな」
「ふーん、まあ妥当よね。あたしはまだ幻覚魔法以外使えないし、魔法理論をやってみたいわ」
それを聞き付けたアリスが、驚いた顔をして話に参加してくる。
「ルーシィ魔法使えるの? でも君獣人だよね?」
「あー、えっと。ちょっと生まれつきなのよ」
「へー! 凄い、ちょっと見せてよ!」
ミシェルも興味津々のようで元気にお願いしてくるが、流石に授業中はまずいだろう。
「今は授業中だし、先に選択決めちゃわない? 俺は魔道具学、槍、格闘を取ろうと思ってるんだけど皆はどうする?」
「あたしは魔法理論はほぼ確定だけど、武芸は悩むわね。格闘でナイフとか小型武器を使うならやってみたい気もするけど」
「あ、それなら兄様がやるって言ってたよ! 僕は礼儀作法とロッドをとろうかな。得意だもん!」
「私は魔道具学と剣をとりますわ。レイピアしか扱えませんが」
「僕は魔法理論と斧かなぁ。斧はいつも使ってるし、冒険者志望だから魔法理論は知ってた方がいいかも」
座学はともかく、武芸は見事に別れたな。武芸は2個までと書いてあるからひとつでもいいのか。
皆やりたいものが決まっているなら無理に合わせる必要もないだろう。
「じゃあ魔道具学は俺とサラシャ……さん。魔法理論はルーシィとアリスが一緒だね」
「なんか僕だけ一緒の子が居ない~!」
仲間はずれみたいになったミシェルがいじける一幕もあったけど、割愛しようか。それより俺はずっと気になっていたことがある。
「アリスとサラシャさんは、昨日の結果発表ではどうしてたの? 居なかったみたいだけど」
「あー、それはね。僕が着いたの結構ギリギリでさ。そしたら門の外にサラシャが立ってたんだ。入らないのか聞いてみたら、目立つから恥ずかしくて入れなかったって言ってた」
「ちがっ……いえ、違くはないのですけれど」
結構ハキハキ話すタイプに見えるサラシャが、どっちつかずの言葉を発する。どういうことだろうか? なんだか俯いてしまったので詳しく聞くのもはばかられる。
「そろそろ決まったかー。集めるぞ」
リカルド先生、ナイスタイミング! 微妙な雰囲気になりかけたところで救世主のごとく声を飛ばしてきてくれた。
急いでプリントに希望選択授業を記入し、提出。
「よし、そんじゃ簡単にこの学園のルールについて説明していくぞ。苗字を名乗るのは原則禁止。生徒同士のトラブルは決闘で済ませろ。生徒会と風紀委員会の指示はよく聞くこと」
苗字の件は学園長も言っていたな。
この学園、決闘が認められているのか。試験の時にあった、気絶したら自動的に移動する魔道具を思い出す。あれがあれば、ある程度安全性は保たれるから差程危険ではないのかもしれない。
生徒会の存在はユーリスの挨拶で知っていたが、風紀委員会は初耳だ。
「寮の門限は19時。その時間以降の外出は禁止。ただし、週末2日間と長期休暇中と事前に届出をした場合は問題ない。その他は常識的な行動をしてれば大丈夫だ。以上、質問はあるか?」
門限、早いな。学園内とはいえ警備上仕方のないことか。例外は寮生活で家族に会えない子供が帰宅する場合の為の措置だろう。
「はーい、先生! 寮の他の階には行ってもいいんですかっ?」
「あー、ミシェルか。問題ないが、21時以降は寝始める生徒もいるからあんまり遅くまでは居るなよ」
リカルドは手に持ったボードで、多分名前を確認してから返答した。ミシェルはきっと兄に会いたいんだろうな。俺も兄様に早く会いたいけど、まだ手紙の返事が来ていない。
「他は居るか? …………居ないようだな。そんじゃ今日は必須項目の教科書配ったら終わりだ。そこの棚に置いてあるから各自持っていけ。明日は普通に授業があるから予習でもしておけよ」
そう言って、リカルドはどこかへ行ってしまった。
なんとなく感じてはいたけど、リカルドってちょっと面倒くさがりなようだ。そっちの方がバリバリ教師より親しみを感じるのでいいんだけど。
教科書をそれぞれ取り、隣のB組の教室へ。クラスが別れてしまったラウラを迎えに行くのだ。
「ラウラ、ラウラ。あ、居た! ラウラこっちよー!」
ルーシィが呼びかけるとすぐに気づいたようで、小走りで来た。無事に合流出来たので寮に向かう。
「迎えに……来てくれたの?」
「そうよ。選択授業は何を選んだの?」
「魔法理論と、弓……。得意だから」
「じゃあルーシィとアリスと一緒だね。弓は別れちゃったけど」
完璧に武芸が別れたな。近接格闘は俺とルーシィで被ったが、冒険者体験の時にこのメンツでパーティでも組めばかなりバランス良くなりそうだ。
「ラウラさん、B組の担任はどなたでしたの?」
「担任はね、丁寧な男の人……クロード先生」
実技試験で剣を担当していた試験官だろうか? 常に敬語で話していたし、几帳面そうな顔をしていた。
その後は他愛ない話で盛り上がって寮の前でそれぞれ別れる。ミシェルはそのまま兄のところまで行くようで、3階まで上がっていってしまった為、俺は1人で寮室に戻った。
「っはぁ~~、まさかサラシャ嬢がカイン学園に入学してるんて思わなかったよ。でもなんでわざわざ外国の学園まで来てたんだろ」
机の上に教科書を広げながら独り言を呟く。少しくらい明日の予習をしておこうと思ったけど、室内に突然現れた気配を察知した。
振り返ってその姿を確認し、発言の許可を出す。
「許す」
「第一殿下と第二妃殿下から、お手紙のお返事にございます」
やっと来たか。待ちに待った、兄様からの手紙。
忍び装束の情報部隊構成員から2通の便箋を受け取ったその時。目の前の彼が、一瞬ドアに目線を向け姿を消した。普通なら何も言わず勝手に下がるなどありえない。誰か来たか。
「エミル~~、兄様居なかったよぅ」
「まだ授業中なんじゃないかな? 俺達は初等部だけど、お兄さんは高等部だから遅いのかも」
来たのはミシェルだったようだ。別れた時は気づかなかったが、初等部が先に授業が終わってる可能性もあるし、彼は生徒会長。忙しいだろう。
早く手紙をみたい気持ちもあるが、ミシェルの前で確認して、もし中身を見られてしまったら面倒なことになる。
「そっかぁ、そうだよね……。ねぇねぇ、お腹空かない? 食堂行こうよ!」
「もうお昼だもんね。俺もお腹減ってきちゃった」
「じゃあ決まりだね!」
ミシェルに手を引かれ、食堂に向かう。前探検に来た時は時間的な問題で誰もいなかったが、今は数人食事をしていた。
注文は紙に書かれたメニューを見て決めるようだ。そこにシュメフィールで初めて見る料理名を見て、思わず声に出してしまった。
「ハンバーグ……」
この世界にハンバーグなんてあったのか。勇者アドルが作っていたならもっと広く知られていてもおかしくない。神の呪縛とやらのせいで伝わっていないのなら、尚更ここにあるのはおかしい。
もしかして、俺の他にも転生者が居るのか?
これは、すぐに確認せねばなるまい。厨房には寮母のジェンナが居るだろう。彼女に詳しく聞くため、厨房に駆けてしまった。ミシェルを置いてけぼりにしてしまったが、そんなことに構っていられない。
「ジェンナさん、聞きたいことが!」
そこに居たのはジェンナさんではなく、黒髪黒目の男性だった。
0
お気に入りに追加
4,368
あなたにおすすめの小説
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる