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act.3 Main Story
本編8
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結婚式は王宮内の教会で行われるのだが、待っている時間がこんなにも緊張するものだとは思わなかった。
今日のウェディングドレスはアーシュが私のためにデザインから装飾品まで全てをセッティングしてくれたものだ。国花であるウィステリアが胸と腰にあしらわれた薄紫のエンパイアラインのドレスに金のティアラ、かつて誕生日にもらった大きなアメシストが特徴的なネックレス。まだ着替えてはいないが、彼が私を思って選んでくれたものだ。私に似合わないわけがないと確信を持てる。……だから衣装は心配ないのだ。でも――――。
「……はあ、緊張する」
来賓客は全てウィステリアの上位の貴族や他国の王族たちだ。正直かなり緊張する。未だに”誰かに認められなかったら”、”誰かから誹謗中傷を受けたら”という心配はあるのだ。こういう時に未来視でのトラウマが残っているのだな、と感じる。
「ヴィー、何か考え事かい?」
「アーシュ……っ!」
いつの間にか準備が終わっていたらしいアーシュに声を掛けられた。白のタキシードに身を包んだ彼は息を呑むくらいに格好良くて……今からこの人と結婚するんだなと思うと、思わず頬が赤らむのを感じる。やはり鍛えているのもあって、衣装栄えが良い。それに昔よりも全体的に大人っぽくなったアーシュの色気といったら……。
ついでに胸に付いたウィステリアの国花は私とお揃いだ。小さい所だが、そこが嬉しい。
「……未来視でのことを思い出しているの?」
「うん。……アーシュの隣に並ぶのが未だに少し、怖くて」
未来視の事は思いを通じ合わせたその日に話した。彼に隠し事はしたくなかったから。私が数年間悩んでいたことも……全て。
アーシュはそれらを聞いて、私を受け入れてくれたのだ。それどころか”悩んでいるのに気づけなくてごめんね”と言っていた彼は心根が優しすぎると思う。
「ヴィー、言っておくけど君以上に僕に相応しい人はいない。それは容姿とか持ってる能力とかでもなくて、君自身を愛しているんだ。……それに今まで君は頑張って来ただろう?最近では王妃としての教養だけでなく、僕の社交や外交を助けるために色んな知識をつけようとして頑張っていることも知っている。それは僕以外も見ているし、何よりも君は成果を出しているだろう。この国で君を批判する人間なんて一人もいないよ」
「アーシュ、衣装が」
アーシュは衣装が汚れるのも気にせず私に跪いて言葉をかける。
「僕は誰でもない君に隣で支えて欲しいんだ。君が僕の隣にいるのに憂うことがあると言うなら、僕は君をどんなことからも守りきると誓うよ……僕の命ある限り。僕を信じてくれる?」
まるで騎士のように私の手をとり、口付けを落とされる。それは衣装も相まってとても神聖なものに見えて、表情と見つめてくる瞳からは彼の思いが痛いくらいに伝わってきた。
私は今度こそ彼の隣で彼の味方になって、支えよう。だから私は彼のことを全面的に信じる。
「……っうん、私、今度こそ……貴方を信じるわ!」
***
「アシュレイ=ウィステリア様。貴方はヴィオレッタ=ガーランドを妻とし、女神アレイシア様の導きにより夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
アーシュが躊躇いなく答える。誓う瞬間、こちらをチラリを見て微笑んできたのが印象的だった。
「ではヴィオレッタ=ガーランド様。貴方はアシュレイ=ウィステリアを夫とし、女神アレイシア様の導きにより夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
私の答えは決まりきっている。当然。
「誓います!」
彼に引き寄せられて、口付けを交わす。
その瞬間どこからともなく歓声が沸き上がり、辺りは一気に祝福の声が沸き上がった。
そうして教会の外。花びらが舞い散る中、指輪の交換をする。その指輪はかつて私がアーシュに突き返したものだった。でも前見た時の様な恐怖心はない。むしろ嬉しさが勝る。だってこれをくれたアーシュの気持ちがちゃんとわかっているから。……この指輪に込められた私への気持ちを知っているから。
「今日のよき日に、女神アレイシア様の大御前において、私達は結婚式を挙げます。今後はご神徳のもと、相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄のために勤め、終生変わらぬことをお誓いいたします。なにとぞ、幾久しくご守護下さいますようお願い申し上げます」
鐘が鳴り響く……私達の未来を祝福するように。私は今日、彼と真の意味で結ばれた。
***
一気に上げたせいで、本編7を一回誤爆しました。すみませんm(__)m
今日のウェディングドレスはアーシュが私のためにデザインから装飾品まで全てをセッティングしてくれたものだ。国花であるウィステリアが胸と腰にあしらわれた薄紫のエンパイアラインのドレスに金のティアラ、かつて誕生日にもらった大きなアメシストが特徴的なネックレス。まだ着替えてはいないが、彼が私を思って選んでくれたものだ。私に似合わないわけがないと確信を持てる。……だから衣装は心配ないのだ。でも――――。
「……はあ、緊張する」
来賓客は全てウィステリアの上位の貴族や他国の王族たちだ。正直かなり緊張する。未だに”誰かに認められなかったら”、”誰かから誹謗中傷を受けたら”という心配はあるのだ。こういう時に未来視でのトラウマが残っているのだな、と感じる。
「ヴィー、何か考え事かい?」
「アーシュ……っ!」
いつの間にか準備が終わっていたらしいアーシュに声を掛けられた。白のタキシードに身を包んだ彼は息を呑むくらいに格好良くて……今からこの人と結婚するんだなと思うと、思わず頬が赤らむのを感じる。やはり鍛えているのもあって、衣装栄えが良い。それに昔よりも全体的に大人っぽくなったアーシュの色気といったら……。
ついでに胸に付いたウィステリアの国花は私とお揃いだ。小さい所だが、そこが嬉しい。
「……未来視でのことを思い出しているの?」
「うん。……アーシュの隣に並ぶのが未だに少し、怖くて」
未来視の事は思いを通じ合わせたその日に話した。彼に隠し事はしたくなかったから。私が数年間悩んでいたことも……全て。
アーシュはそれらを聞いて、私を受け入れてくれたのだ。それどころか”悩んでいるのに気づけなくてごめんね”と言っていた彼は心根が優しすぎると思う。
「ヴィー、言っておくけど君以上に僕に相応しい人はいない。それは容姿とか持ってる能力とかでもなくて、君自身を愛しているんだ。……それに今まで君は頑張って来ただろう?最近では王妃としての教養だけでなく、僕の社交や外交を助けるために色んな知識をつけようとして頑張っていることも知っている。それは僕以外も見ているし、何よりも君は成果を出しているだろう。この国で君を批判する人間なんて一人もいないよ」
「アーシュ、衣装が」
アーシュは衣装が汚れるのも気にせず私に跪いて言葉をかける。
「僕は誰でもない君に隣で支えて欲しいんだ。君が僕の隣にいるのに憂うことがあると言うなら、僕は君をどんなことからも守りきると誓うよ……僕の命ある限り。僕を信じてくれる?」
まるで騎士のように私の手をとり、口付けを落とされる。それは衣装も相まってとても神聖なものに見えて、表情と見つめてくる瞳からは彼の思いが痛いくらいに伝わってきた。
私は今度こそ彼の隣で彼の味方になって、支えよう。だから私は彼のことを全面的に信じる。
「……っうん、私、今度こそ……貴方を信じるわ!」
***
「アシュレイ=ウィステリア様。貴方はヴィオレッタ=ガーランドを妻とし、女神アレイシア様の導きにより夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
アーシュが躊躇いなく答える。誓う瞬間、こちらをチラリを見て微笑んできたのが印象的だった。
「ではヴィオレッタ=ガーランド様。貴方はアシュレイ=ウィステリアを夫とし、女神アレイシア様の導きにより夫婦になろうとしています。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
私の答えは決まりきっている。当然。
「誓います!」
彼に引き寄せられて、口付けを交わす。
その瞬間どこからともなく歓声が沸き上がり、辺りは一気に祝福の声が沸き上がった。
そうして教会の外。花びらが舞い散る中、指輪の交換をする。その指輪はかつて私がアーシュに突き返したものだった。でも前見た時の様な恐怖心はない。むしろ嬉しさが勝る。だってこれをくれたアーシュの気持ちがちゃんとわかっているから。……この指輪に込められた私への気持ちを知っているから。
「今日のよき日に、女神アレイシア様の大御前において、私達は結婚式を挙げます。今後はご神徳のもと、相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄のために勤め、終生変わらぬことをお誓いいたします。なにとぞ、幾久しくご守護下さいますようお願い申し上げます」
鐘が鳴り響く……私達の未来を祝福するように。私は今日、彼と真の意味で結ばれた。
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一気に上げたせいで、本編7を一回誤爆しました。すみませんm(__)m
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