27 / 31
25.精神世界②
しおりを挟む
クレアがエストに出会ってから――他の貴族に厭味を言われたり、嫌がらせを受けがらも、エストと共に過ごす内に少しずつ彼女の内面も変化していく。目に見えて分かる変化としては塞ぎ込んでいた時よりも笑顔でいる時間が増えた。そして時間の使い方も変化していた。
医術や魔法薬学の勉強にのめり込み、それらをどんどん自分のものにしていく。そしてエストを中心として、クレアを容姿で差別しない人達との交流も増えた。
そんな彼女の視線の先にはいつでもエストがいた。思い出の中がエストで溢れていた。
そんな中、見逃せないモノがエストの目に飛び込む。クレアが自身に差し向けられた暗殺者に殺されかけるが、なんとか形成を逆転し、一対一で対峙している場面だった。クレアは片腕を負傷した状態であっても、その暗殺者を無事捕縛することに成功する。
「こ、れは――どういうことだ!?アイツらはクレアまで狙っていたというのか!!?」
「………………」
「どうなんだ!?答えてくれ、クリストファー」
クリストファーはこの光景が映し出されるのを見て、『やってしまった……』と言いたげな表情になる。
クリストファーが悪いわけではない事は分かっている。しかし、エストはこの場で唯一事情を知っているであろうクリストファーに詰め寄ってしまう。
「……俺は貴方に相談するべきだと何度も言ったんです。しかし、クレアはずっと秘密にしてくれと言っていました」
「っ何故だ。なんで俺を頼ってくれなかったんだ。そんなにも俺が信用できなかったのか?……いや、違うな。あんなことを言ったんだ。それも全部俺の――」
『全部が俺のせい。自業自得だ』。また自身の立場が彼女に負担を掛けていたことをこんな風に直接見て、知って、エストは抑えきれないと言った様子で再び感情をぶちまけてしまう。
それに加えて自身の行いを更に後悔していた。何も相談してもらえなかったことが悲しく、彼女にずっと自分のことで負担を掛けて苦しませていた事に気づけなかったのが何よりも悔しかった。しかしそんな負の感情をクリストファーが遮って、否定する。
「違います!!クレアは貴方に少しでも負担を掛けたくないと言っていました」
「え……」
「クレアはずっと貴方の事を想っていたんですよ。自分が前を向けたのは貴方のおかげだって、だからこんな事でわざわざ手を煩わせたくない、と」
「っでも、俺は――」
「いきなりこんなものを見せられて、怒りを覚えてしまう気持ちはわかりますが、これ以上は僕が言うべきことではありません。クレアを目覚めさせて、彼女に直接聞いてください」
エストは頷く。ここに来てからは取り乱してばかりだ。彼女は本当に秘密が多すぎる。しかしこれはそれだけクレアとちゃんと向き合えていなかったという証拠だろう。
彼女を目覚めさせて、気持ちを伝える。そして次こそは全て打ち明けてもらえるような存在になって見せる。そう決意を新たにした。
***
そこから更に場面は変化し、クレアが死を偽装した場面になる。
「誤解のないように言っておきますが、クレアはずっとエスト様のあの最初の言葉を気にしていたようです。出来るだけ貴方の負担になりたくないから、と。この方法を選びました」
「……そうか。本当、見事に騙されたよ」
先程とは打って変わって、エストは冷静だった。
「ふふ、今回ばかりはクレアの方が上手でしたね」
「俺は本当に、クレアの事を何も知らなかったんだな」
「はい。じゃあ、これからいっぱい知ってあげてください」
「ああ」
エストとクリストファーは微笑み合う。ここに来てやっと気持ちが一つになったような気がした。
周囲ではクレアが『ルーネスト』という一人の男を偽装して過ごし王宮に、そしてエストの施術を経て、またエストと過ごすようになったところまでが猛スピードで再生されていく。
見覚えのある光景に、そろそろこの回想も終わりが近づいていることを自然と察することが出来た。
そして、二人が庭園で襲撃され、クレアがエストの呪いをあの特異魔法によって身代わりしたところで、再び周囲は光に包まれた。
******
目の前に今度は、新たに透明な膜の様なものに覆われた真っ白な球体が現れる。今までの魔力反応を比べても、ここは最もクレアの魔力が濃い。きっとこれが最深部であろうことが伺えた。軽く膜に触れてみる。
「っ――!?」
エストはすんなりと片腕をその柔らかい膜の中にいれることが出来たが、クリストファーが身体を大きく弾かれてしまっていた。数メートルはじけ飛んだ彼の身体を見て、エストは思わず触れていた膜から手を離す。
「クリストファー?どうしたんだ!?」
「……どうやら僕はこの中には入れないみたいです」
「お前が入れないなんて、どういうことだ?この膜はなんなんだ?」
「これはきっと、クレアの精神の――心の最深部。最も見られたくないものがある場所。僕には真の意味ではクレアの中に入り込めない……きっと貴方だけ特別なんですよ、エスト様」
やはり貴方に着いてきて頂いて正解でした。クリストファーは残念そうに、しかしどこか嬉しそうにエストに微笑みかける。
事実、クリストファーはずっと全ての事を共有してきた妹が離れていくのは寂しかったが、自分以上に心を許す大切な相手――それも同じくらいに、命を捨てても良いとすら思う程に彼女を想ってくれる人――が出来ていたことに嬉しさを感じていた。そんな相手、人生を過ごしていても、中々出来るものではない。しかしクレアはその相手が出来たのだ。ならばこれは祝福するべき、喜ばしい事なのだ。
彼なら、エストならば、これからはきっとクレアを大切に、幸せにしてくれる。それを改めてこんな場面で実感してしまった。だからエストの背中を押す。
「クレアは貴方に全てを見られて嫌われたくないと思うと同時に、全てを見て欲しいという相反する感情を持っているんです。だから行ってあげてください。僕はここで貴方の帰りを大人しく待っています……妹を、クレアを頼みます」
その言葉には全てが詰まっていた。その言葉の深い意味まで全部を察したエストは頷く。そうしてクリストファーに送り出されて、エストはクレアの心の最も深い部分に足を踏み入れたのだった――。
******
あとがき:
あとちょっと!本当にあとちょっとで終わります(ただし今日中に書き上げられるかは謎)。
医術や魔法薬学の勉強にのめり込み、それらをどんどん自分のものにしていく。そしてエストを中心として、クレアを容姿で差別しない人達との交流も増えた。
そんな彼女の視線の先にはいつでもエストがいた。思い出の中がエストで溢れていた。
そんな中、見逃せないモノがエストの目に飛び込む。クレアが自身に差し向けられた暗殺者に殺されかけるが、なんとか形成を逆転し、一対一で対峙している場面だった。クレアは片腕を負傷した状態であっても、その暗殺者を無事捕縛することに成功する。
「こ、れは――どういうことだ!?アイツらはクレアまで狙っていたというのか!!?」
「………………」
「どうなんだ!?答えてくれ、クリストファー」
クリストファーはこの光景が映し出されるのを見て、『やってしまった……』と言いたげな表情になる。
クリストファーが悪いわけではない事は分かっている。しかし、エストはこの場で唯一事情を知っているであろうクリストファーに詰め寄ってしまう。
「……俺は貴方に相談するべきだと何度も言ったんです。しかし、クレアはずっと秘密にしてくれと言っていました」
「っ何故だ。なんで俺を頼ってくれなかったんだ。そんなにも俺が信用できなかったのか?……いや、違うな。あんなことを言ったんだ。それも全部俺の――」
『全部が俺のせい。自業自得だ』。また自身の立場が彼女に負担を掛けていたことをこんな風に直接見て、知って、エストは抑えきれないと言った様子で再び感情をぶちまけてしまう。
それに加えて自身の行いを更に後悔していた。何も相談してもらえなかったことが悲しく、彼女にずっと自分のことで負担を掛けて苦しませていた事に気づけなかったのが何よりも悔しかった。しかしそんな負の感情をクリストファーが遮って、否定する。
「違います!!クレアは貴方に少しでも負担を掛けたくないと言っていました」
「え……」
「クレアはずっと貴方の事を想っていたんですよ。自分が前を向けたのは貴方のおかげだって、だからこんな事でわざわざ手を煩わせたくない、と」
「っでも、俺は――」
「いきなりこんなものを見せられて、怒りを覚えてしまう気持ちはわかりますが、これ以上は僕が言うべきことではありません。クレアを目覚めさせて、彼女に直接聞いてください」
エストは頷く。ここに来てからは取り乱してばかりだ。彼女は本当に秘密が多すぎる。しかしこれはそれだけクレアとちゃんと向き合えていなかったという証拠だろう。
彼女を目覚めさせて、気持ちを伝える。そして次こそは全て打ち明けてもらえるような存在になって見せる。そう決意を新たにした。
***
そこから更に場面は変化し、クレアが死を偽装した場面になる。
「誤解のないように言っておきますが、クレアはずっとエスト様のあの最初の言葉を気にしていたようです。出来るだけ貴方の負担になりたくないから、と。この方法を選びました」
「……そうか。本当、見事に騙されたよ」
先程とは打って変わって、エストは冷静だった。
「ふふ、今回ばかりはクレアの方が上手でしたね」
「俺は本当に、クレアの事を何も知らなかったんだな」
「はい。じゃあ、これからいっぱい知ってあげてください」
「ああ」
エストとクリストファーは微笑み合う。ここに来てやっと気持ちが一つになったような気がした。
周囲ではクレアが『ルーネスト』という一人の男を偽装して過ごし王宮に、そしてエストの施術を経て、またエストと過ごすようになったところまでが猛スピードで再生されていく。
見覚えのある光景に、そろそろこの回想も終わりが近づいていることを自然と察することが出来た。
そして、二人が庭園で襲撃され、クレアがエストの呪いをあの特異魔法によって身代わりしたところで、再び周囲は光に包まれた。
******
目の前に今度は、新たに透明な膜の様なものに覆われた真っ白な球体が現れる。今までの魔力反応を比べても、ここは最もクレアの魔力が濃い。きっとこれが最深部であろうことが伺えた。軽く膜に触れてみる。
「っ――!?」
エストはすんなりと片腕をその柔らかい膜の中にいれることが出来たが、クリストファーが身体を大きく弾かれてしまっていた。数メートルはじけ飛んだ彼の身体を見て、エストは思わず触れていた膜から手を離す。
「クリストファー?どうしたんだ!?」
「……どうやら僕はこの中には入れないみたいです」
「お前が入れないなんて、どういうことだ?この膜はなんなんだ?」
「これはきっと、クレアの精神の――心の最深部。最も見られたくないものがある場所。僕には真の意味ではクレアの中に入り込めない……きっと貴方だけ特別なんですよ、エスト様」
やはり貴方に着いてきて頂いて正解でした。クリストファーは残念そうに、しかしどこか嬉しそうにエストに微笑みかける。
事実、クリストファーはずっと全ての事を共有してきた妹が離れていくのは寂しかったが、自分以上に心を許す大切な相手――それも同じくらいに、命を捨てても良いとすら思う程に彼女を想ってくれる人――が出来ていたことに嬉しさを感じていた。そんな相手、人生を過ごしていても、中々出来るものではない。しかしクレアはその相手が出来たのだ。ならばこれは祝福するべき、喜ばしい事なのだ。
彼なら、エストならば、これからはきっとクレアを大切に、幸せにしてくれる。それを改めてこんな場面で実感してしまった。だからエストの背中を押す。
「クレアは貴方に全てを見られて嫌われたくないと思うと同時に、全てを見て欲しいという相反する感情を持っているんです。だから行ってあげてください。僕はここで貴方の帰りを大人しく待っています……妹を、クレアを頼みます」
その言葉には全てが詰まっていた。その言葉の深い意味まで全部を察したエストは頷く。そうしてクリストファーに送り出されて、エストはクレアの心の最も深い部分に足を踏み入れたのだった――。
******
あとがき:
あとちょっと!本当にあとちょっとで終わります(ただし今日中に書き上げられるかは謎)。
134
お気に入りに追加
5,396
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
殿下が私を愛していないことは知っていますから。
木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。
しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。
夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。
危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。
「……いつも会いに来られなくてすまないな」
そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。
彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。
「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」
そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。
すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。
その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。
何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?
木山楽斗
恋愛
公爵令息であるラウグスは、妻であるセリネアとは別の女性と関係を持っていた。
彼は、そのことが妻にまったくばれていないと思っていた。それどころか、何も知らない愚かな妻だと嘲笑っていたくらいだ。
しかし、セリネアは夫が浮気をしていた時からそのことに気づいていた。
そして、既にその確固たる証拠を握っていたのである。
突然それを示されたラウグスは、ひどく動揺した。
なんとか言い訳して逃れようとする彼ではあったが、数々の証拠を示されて、その勢いを失うのだった。
殿下、婚約者の私より幼馴染の侯爵令嬢が大事だと言うなら、それはもはや浮気です。
和泉鷹央
恋愛
子爵令嬢サラは困っていた。
婚約者の王太子ロイズは、年下で病弱な幼馴染の侯爵令嬢レイニーをいつも優先する。
会話は幼馴染の相談ばかり。
自分をもっと知って欲しいとサラが不満を漏らすと、しまいには逆ギレされる始末。
いい加減、サラもロイズが嫌になりかけていた。
そんなある日、王太子になった祝いをサラの実家でするという約束は、毎度のごとくレイニーを持ち出してすっぽかされてしまう。
お客様も呼んであるのに最悪だわ。
そうぼやくサラの愚痴を聞くのは、いつも幼馴染のアルナルドの役割だ。
「殿下は幼馴染のレイニー様が私より大事だって言われるし、でもこれって浮気じゃないかしら?」
「君さえよければ、僕が悪者になるよ、サラ?」
隣国の帝国皇太子であるアルナルドは、もうすぐ十年の留学期間が終わる。
君さえよければ僕の国に来ないかい?
そう誘うのだった。
他の投稿サイトにも掲載しております。
4/20 帝国編開始します。
9/07 完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる