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卒業試験――改め初任務の内容。
それは簡単に言えば、最近起きている事件の調査及び解決だった。
きっとこの国に住んでいる人間であれば誰でも知っている有名な事件……それは3、4年ほど前からだろうか、酷い状態の遺体が発見されたことが始まりだった。
その遺体は女性だった。しかしただの女性の遺体ではない。両の瞳が抉り取られ、膣から口に掛けてを2メートル近い角材で刺し貫かれており、苦しさに悶えたのかその死に顔は元の顔が分からないくらいに歪んでいたのだという。きっと彼女らは生きたまま苦痛を味あわされたのだろう。
当時記事には写真は載せられていなかったが、こんな一文があった『熟練の検視官すらも気分が悪くなるほど醜悪な殺し方だった』と――。こんな死体が国境問わず1カ月3人のペースで発見されていた。
何故過去形か。
それは私やアーサー含め、この事件は既に終わったものだと認識していたからだ。
そう。殺された死体から通称『眼球狩人』と呼ばれたソレは被害者の女性約50人を殺したところで捕まっている。捜査をしていた警察機構の人間に3桁単位の被害を出してからやっとのことだった。実は事件を追っていた人間たちにも複数の被害が出ていたのだ。目こそ抉られていなかったものの両手足が折られて磔にされた状態で見つかっている。だからこそ歴史に残る最悪な事件とされているのだ。
しかしながら、今回の資料には持っていた情報を打ち消すほどの事が記載されていた。
情報は出回っていないが、同様の殺害方法の遺体が既に何体か見つかっていること。警察機構がかつて検挙した犯人は冤罪であったこと……正確には大した証拠がない誤認逮捕であり、犯人も一部の事件日にはアリバイがあった上に犯行を認めていなかったという情報が今更ながら出て来たという書き方だったが。
結局のところ、本物の犯人は捕まっておらず、偽物が捕まった後は息を潜めていた。けれど最近になって我慢できなくなったのか、同様の殺人を繰り返している。その犯人を捕まえろという任務だった。
長々と続く資料をどうやら私と同じくらいの場所まで読み終えたのであろうアーサーが声を掛けてきた。
「警察機構が頼れないからってエスパーダに回ってきたっと。なるほど、僕達捨て駒にされた?」
「否定はできないですね。学生と言えど、既にエスパーダの資格を与えられてしまったのですから、任務にエスパーダを出したという履歴は残る。学校――いえ、正確には大元の魔導院側もこんな死亡リスクが高い案件に熟練のエスパーダを使いたくなかったんでしょう。きっと、向かわせてみて少しでも情報や証拠が見つかって返ってくれば儲けもんレベルではないでしょうか」
なにせかつて被害者や捜査に関わった人間合わせ百人以上の人間が死んでいる事件だ。もしかしたら当時もエスパーダが関わっていたのかもしれないが、こんな無理難題とも言える任務に優秀なエスパーダを大量投入はしたくないだろう。
しかしながら魔法のスペシャリストなどと銘打ち、魔法使いを世界各国に派遣して金を得ているということもある学校の元締め――魔導院はその権威を保ちたい故に全く手出しをしなかったという記録は残したくない。それは見て取れた。
とにかく、きっと『地雷』と言っていいような案件がこれなのだろう。
「……フローラは怖い?」
「怖いなんてありえないですよ。むしろ捨て駒扱いをされたと分かって、魔導院の責任者をぶちのめしたいと思っています」
「うん、同意。やっぱり君のそういうところ、好きだな」
「そうですか。私は貴方の事が嫌いです」
ビシっと素直な気持ちを伝えると、アーサーは『振られちゃった、ショックー』なんて、気持ちが籠っていない言葉を零す。いつものことに呆れながらも、更に資料を読み込んでいった。
いくら任務参加に同意したとはいえ、こんなところで死ぬなんてたまったものじゃない。学校ひいては魔導院の思い通りの捨て駒にならないためにも、決意を固め直した。
それは簡単に言えば、最近起きている事件の調査及び解決だった。
きっとこの国に住んでいる人間であれば誰でも知っている有名な事件……それは3、4年ほど前からだろうか、酷い状態の遺体が発見されたことが始まりだった。
その遺体は女性だった。しかしただの女性の遺体ではない。両の瞳が抉り取られ、膣から口に掛けてを2メートル近い角材で刺し貫かれており、苦しさに悶えたのかその死に顔は元の顔が分からないくらいに歪んでいたのだという。きっと彼女らは生きたまま苦痛を味あわされたのだろう。
当時記事には写真は載せられていなかったが、こんな一文があった『熟練の検視官すらも気分が悪くなるほど醜悪な殺し方だった』と――。こんな死体が国境問わず1カ月3人のペースで発見されていた。
何故過去形か。
それは私やアーサー含め、この事件は既に終わったものだと認識していたからだ。
そう。殺された死体から通称『眼球狩人』と呼ばれたソレは被害者の女性約50人を殺したところで捕まっている。捜査をしていた警察機構の人間に3桁単位の被害を出してからやっとのことだった。実は事件を追っていた人間たちにも複数の被害が出ていたのだ。目こそ抉られていなかったものの両手足が折られて磔にされた状態で見つかっている。だからこそ歴史に残る最悪な事件とされているのだ。
しかしながら、今回の資料には持っていた情報を打ち消すほどの事が記載されていた。
情報は出回っていないが、同様の殺害方法の遺体が既に何体か見つかっていること。警察機構がかつて検挙した犯人は冤罪であったこと……正確には大した証拠がない誤認逮捕であり、犯人も一部の事件日にはアリバイがあった上に犯行を認めていなかったという情報が今更ながら出て来たという書き方だったが。
結局のところ、本物の犯人は捕まっておらず、偽物が捕まった後は息を潜めていた。けれど最近になって我慢できなくなったのか、同様の殺人を繰り返している。その犯人を捕まえろという任務だった。
長々と続く資料をどうやら私と同じくらいの場所まで読み終えたのであろうアーサーが声を掛けてきた。
「警察機構が頼れないからってエスパーダに回ってきたっと。なるほど、僕達捨て駒にされた?」
「否定はできないですね。学生と言えど、既にエスパーダの資格を与えられてしまったのですから、任務にエスパーダを出したという履歴は残る。学校――いえ、正確には大元の魔導院側もこんな死亡リスクが高い案件に熟練のエスパーダを使いたくなかったんでしょう。きっと、向かわせてみて少しでも情報や証拠が見つかって返ってくれば儲けもんレベルではないでしょうか」
なにせかつて被害者や捜査に関わった人間合わせ百人以上の人間が死んでいる事件だ。もしかしたら当時もエスパーダが関わっていたのかもしれないが、こんな無理難題とも言える任務に優秀なエスパーダを大量投入はしたくないだろう。
しかしながら魔法のスペシャリストなどと銘打ち、魔法使いを世界各国に派遣して金を得ているということもある学校の元締め――魔導院はその権威を保ちたい故に全く手出しをしなかったという記録は残したくない。それは見て取れた。
とにかく、きっと『地雷』と言っていいような案件がこれなのだろう。
「……フローラは怖い?」
「怖いなんてありえないですよ。むしろ捨て駒扱いをされたと分かって、魔導院の責任者をぶちのめしたいと思っています」
「うん、同意。やっぱり君のそういうところ、好きだな」
「そうですか。私は貴方の事が嫌いです」
ビシっと素直な気持ちを伝えると、アーサーは『振られちゃった、ショックー』なんて、気持ちが籠っていない言葉を零す。いつものことに呆れながらも、更に資料を読み込んでいった。
いくら任務参加に同意したとはいえ、こんなところで死ぬなんてたまったものじゃない。学校ひいては魔導院の思い通りの捨て駒にならないためにも、決意を固め直した。
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