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「おはよう、フローラ」
「……アーサー」
「えー、そんな嫌そうな顔しないでよ」
寮から通っている魔導士養成学校への登校中。普段から眼帯を付けているために視界の塞がっている左側からにゅっと生えて来た男に対して、顔をしかめてしまう。
私は正直、このアーサー=クオレールという男を大の苦手としている。
私にトラウマをこれでもかという程に植え付けたあの少年――ガリアと同じ貴族の出身であり、白銀の髪に右目をその髪の毛で軽く隠している……とはいえ、透けて見える美しい金の瞳という王子様然とした容姿、そして一見この世界の汚い部分を何も知りませんよと言ったような明るい性格。見えるもの全てに於いて嫌いだった。
なにせこの男を見ていると、どうしてもガリアを思い出すのだ。貴族という産まれは勿論、容姿も雰囲気も、全てが私の心を引っ掻き回した。
そして更に最悪なことに、この男は私に対して一定の好意を持っているようで、ことある毎に絡んでくる。
アーサー自身も私が彼の事を好いていない……むしろ嫌っている事は気づいている筈なのに、だ。嫌悪という感情に鈍いのか、それともそんなことを気にしない質なのか。どちらにしろ、私にとっては天敵のような存在だった。
「今日は卒業試験のペア発表日だね!一緒に会場まで行こうか!!」
「嫌です。というかいつも言っていますが、貴方と一緒なのを見られたら周りに引かれるんで、離れて歩いてくれませんか?」
「ん?君、いつも別に誰かと一緒に行動していないだろう?引かれても関係ないって顔をしているじゃないか」
「……私がハブられてるのは、貴方も原因の一つだと思いますが」
「うんうん。じゃあ責任取って、僕が一緒に居てあげるね。それに僕も一人で寂しいんだ!一緒に行った方が楽しいよ」
この男、これを素で言っているとしたら――というか素で意味を分かった上で言っているのだろうが――相当性格が悪いなと考える。元々、この学園の誰かと親しくなるつもりはなかったが、嫌悪に包まれた針の筵になりたいとまでは思っていなかった。
なにせ、アーサーはモテるのだ。彼に引っ付かれていると、学園の女子からの視線が痛いし、嫌がらせの手紙が机に入っていたこともある。陰でビッチだのヤリマンだのという噂を流されていることも知っている。本当に面倒だと思う。
授業中にペアを組むことになってしまった時は特に最悪だった。
それなのに、この男は何故か私に興味を抱き、近付いてくる。どれだけ引き離そうと酷い言葉を吐き、遠ざけようとしても距離を近づけてくるのだ。迷惑で仕方がなかった。
「相変わらず理解力が宇宙人ですね。学園の女子も貴方の素の性格を知れば、皆、害虫を見るような目で貴方を見ると思うのですが」
「いやいや、僕は君と違って外面が良いタイプだから。ごめんね、生き方が上手くて」
「はあ、貴方のそういうところが嫌いです」
「僕は君のそういういつでも鬱々としたところが大好きなんだけどな」
その無駄に高い背を曲げ、私の顔を覗き込むようにわざわざ顔を近付けて、そんなことを言ってくるアーサー。
こういう人をおちょくろうとする態度と、人にすぐ『大好き』などという軽薄な言葉を掛けてくるところも大嫌いだった。
朝から嫌な夢を見て、嫌な男と出会って、無理矢理目的地についてこられる。こうして今日も最悪な一日が始まった――。
「……アーサー」
「えー、そんな嫌そうな顔しないでよ」
寮から通っている魔導士養成学校への登校中。普段から眼帯を付けているために視界の塞がっている左側からにゅっと生えて来た男に対して、顔をしかめてしまう。
私は正直、このアーサー=クオレールという男を大の苦手としている。
私にトラウマをこれでもかという程に植え付けたあの少年――ガリアと同じ貴族の出身であり、白銀の髪に右目をその髪の毛で軽く隠している……とはいえ、透けて見える美しい金の瞳という王子様然とした容姿、そして一見この世界の汚い部分を何も知りませんよと言ったような明るい性格。見えるもの全てに於いて嫌いだった。
なにせこの男を見ていると、どうしてもガリアを思い出すのだ。貴族という産まれは勿論、容姿も雰囲気も、全てが私の心を引っ掻き回した。
そして更に最悪なことに、この男は私に対して一定の好意を持っているようで、ことある毎に絡んでくる。
アーサー自身も私が彼の事を好いていない……むしろ嫌っている事は気づいている筈なのに、だ。嫌悪という感情に鈍いのか、それともそんなことを気にしない質なのか。どちらにしろ、私にとっては天敵のような存在だった。
「今日は卒業試験のペア発表日だね!一緒に会場まで行こうか!!」
「嫌です。というかいつも言っていますが、貴方と一緒なのを見られたら周りに引かれるんで、離れて歩いてくれませんか?」
「ん?君、いつも別に誰かと一緒に行動していないだろう?引かれても関係ないって顔をしているじゃないか」
「……私がハブられてるのは、貴方も原因の一つだと思いますが」
「うんうん。じゃあ責任取って、僕が一緒に居てあげるね。それに僕も一人で寂しいんだ!一緒に行った方が楽しいよ」
この男、これを素で言っているとしたら――というか素で意味を分かった上で言っているのだろうが――相当性格が悪いなと考える。元々、この学園の誰かと親しくなるつもりはなかったが、嫌悪に包まれた針の筵になりたいとまでは思っていなかった。
なにせ、アーサーはモテるのだ。彼に引っ付かれていると、学園の女子からの視線が痛いし、嫌がらせの手紙が机に入っていたこともある。陰でビッチだのヤリマンだのという噂を流されていることも知っている。本当に面倒だと思う。
授業中にペアを組むことになってしまった時は特に最悪だった。
それなのに、この男は何故か私に興味を抱き、近付いてくる。どれだけ引き離そうと酷い言葉を吐き、遠ざけようとしても距離を近づけてくるのだ。迷惑で仕方がなかった。
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その無駄に高い背を曲げ、私の顔を覗き込むようにわざわざ顔を近付けて、そんなことを言ってくるアーサー。
こういう人をおちょくろうとする態度と、人にすぐ『大好き』などという軽薄な言葉を掛けてくるところも大嫌いだった。
朝から嫌な夢を見て、嫌な男と出会って、無理矢理目的地についてこられる。こうして今日も最悪な一日が始まった――。
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