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第二章:王都
21.初めての友達④
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「分かった!分かったから!!ったす、助けてくれ!!あああ、あやまるから!!俺が、俺達が悪かった」
「謝るのは私ではないでしょう?まあ、貴方の右手は今回の勉強料ということで……ここで砕いちゃいましょうか」
「そんな!!?」
「お前達、何をしている」
「ックラウス!!!この女がき、急に俺の腕をこんな状態にしてきたんだ!!」
「はあ。またお前は余計なことを」
急に姿を現したクラウスだったが、私と男達を見て呆れながら男にかかった魔法を解く。
私は私で、一度頭に血が上り、心の準備が白紙に戻ったところでクラウスと遭遇してしまったこともあり、男達の自分は何も悪くないという態度に対しても咄嗟に何も言い返せずにいた。なにを言えば良いのか分からず、黙り込んでしまう。
「俺の上司に言い付けてやるからな!!」
「……仕置きが足りなかったみたいね」
「っひぃ!」
「あーはいはい。止まれ止まれ。お前らも治してやったんだから、もっと酷い目に遭う前にさっさと散れ」
案の定、何もクラウスに謝らずに男達は出て行ってしまう。流石にクラウスの研究室に運ばれる予定の荷物への悪戯はしないだろうが、結局は本人の陰口を叩き、悪事を計画していたという行為には変わりはない。ただ、許せなかった。
だから追いかけて、再度……今度はクラウスに治させることなく、誰にも相談できないような魔法をかけてやろうとしたところをクラウスに止められる。
彼は――怒っていた。明らかにさっき会った時よりも数段鋭い瞳に、深い溜息。それに私を逃すまいと、腕を掴む手の力が強かった。
「……私、別に悪くないもん」
開口一番、謝ろう。そう考えていたはずの口から出た言葉は、謝罪とは正反対のものだった。
クラウスが怒っているというのを実感してしまったが故に出てしまった言葉。彼の目が見られずに、俯く私に返って来たのは冷たい視線――などではなく、頭に置かれた暖かい手の感触だった。
「え?」
思わず顔を上げ、クラウスを見つめると、彼の顔はどこか照れたような表情をしていた。あまりにも予想外の反応に、素直な問いかけが口から零れてしまった。
「怒って、ないの?」
「ああ。あと一個言っておくと、俺、お前達が会話し始めたところからずっと聞いてた。盗み聞きみたいになってすまん。俺があの場で姿を現すと、さらに面倒なことになりそうだったからな」
「……別に気にしてない」
恥ずかしさから出た無愛想な言葉。しかしクラウスはそれに怒るでも顔を歪めるでもなく、優しそうにはにかんだ。
「なんだ、その、俺のために怒ってくれてありがとうな。俺のことを認めてくれてる?みたいな発言はちょっと嬉しかった」
「っ――!べ、別に、クラウスのためじゃないわ。私が気に食わなかったから反論してただけ。あと、さっきのリハーサルで私、貴方に嫌な態度をとったわ。ごめんなさい。それじゃ!!」
その本当に嬉しそうに微笑む姿に、頬に熱が集まるのを感じる。
心臓が跳ねるように鼓動が早くなって、少し苦しいのに、何故だかじんわりと心が温まるような不思議な感覚。
今まで誰と話していても感じることのなかった感覚に戸惑う。頭が真っ白になりながらも、さっきのことをなんとか謝り、その場から逃げ出したのだった。
「謝るのは私ではないでしょう?まあ、貴方の右手は今回の勉強料ということで……ここで砕いちゃいましょうか」
「そんな!!?」
「お前達、何をしている」
「ックラウス!!!この女がき、急に俺の腕をこんな状態にしてきたんだ!!」
「はあ。またお前は余計なことを」
急に姿を現したクラウスだったが、私と男達を見て呆れながら男にかかった魔法を解く。
私は私で、一度頭に血が上り、心の準備が白紙に戻ったところでクラウスと遭遇してしまったこともあり、男達の自分は何も悪くないという態度に対しても咄嗟に何も言い返せずにいた。なにを言えば良いのか分からず、黙り込んでしまう。
「俺の上司に言い付けてやるからな!!」
「……仕置きが足りなかったみたいね」
「っひぃ!」
「あーはいはい。止まれ止まれ。お前らも治してやったんだから、もっと酷い目に遭う前にさっさと散れ」
案の定、何もクラウスに謝らずに男達は出て行ってしまう。流石にクラウスの研究室に運ばれる予定の荷物への悪戯はしないだろうが、結局は本人の陰口を叩き、悪事を計画していたという行為には変わりはない。ただ、許せなかった。
だから追いかけて、再度……今度はクラウスに治させることなく、誰にも相談できないような魔法をかけてやろうとしたところをクラウスに止められる。
彼は――怒っていた。明らかにさっき会った時よりも数段鋭い瞳に、深い溜息。それに私を逃すまいと、腕を掴む手の力が強かった。
「……私、別に悪くないもん」
開口一番、謝ろう。そう考えていたはずの口から出た言葉は、謝罪とは正反対のものだった。
クラウスが怒っているというのを実感してしまったが故に出てしまった言葉。彼の目が見られずに、俯く私に返って来たのは冷たい視線――などではなく、頭に置かれた暖かい手の感触だった。
「え?」
思わず顔を上げ、クラウスを見つめると、彼の顔はどこか照れたような表情をしていた。あまりにも予想外の反応に、素直な問いかけが口から零れてしまった。
「怒って、ないの?」
「ああ。あと一個言っておくと、俺、お前達が会話し始めたところからずっと聞いてた。盗み聞きみたいになってすまん。俺があの場で姿を現すと、さらに面倒なことになりそうだったからな」
「……別に気にしてない」
恥ずかしさから出た無愛想な言葉。しかしクラウスはそれに怒るでも顔を歪めるでもなく、優しそうにはにかんだ。
「なんだ、その、俺のために怒ってくれてありがとうな。俺のことを認めてくれてる?みたいな発言はちょっと嬉しかった」
「っ――!べ、別に、クラウスのためじゃないわ。私が気に食わなかったから反論してただけ。あと、さっきのリハーサルで私、貴方に嫌な態度をとったわ。ごめんなさい。それじゃ!!」
その本当に嬉しそうに微笑む姿に、頬に熱が集まるのを感じる。
心臓が跳ねるように鼓動が早くなって、少し苦しいのに、何故だかじんわりと心が温まるような不思議な感覚。
今まで誰と話していても感じることのなかった感覚に戸惑う。頭が真っ白になりながらも、さっきのことをなんとか謝り、その場から逃げ出したのだった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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