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第二章:王都
19.初めての友達②
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何分経っただろうか。あまりの気まずさから、せめてもう少し話を真面目に聞けばよかったとほんの少しだけ反省し始めた時に、ソレは現れた。
「あっれ、肩パッドとフィーアだ。こんなところでどうしたの?」
「……サミュエル。俺は肩パッドなどというふざけた名前じゃないと、何度言ったら分かる」
「ええー、良い渾名じゃん。って冗談は置いておいて。クラウス、トーナメントの責任者の人がお前の事呼んでた。なんか確認したいことがあるんだってさ」
「先にそれを言え!!――行ってくる」
「はいはい、行ってらっしゃーい」
何も、言えなかった。クラウスはここから出て行く直前にチラリと私の方を見はしたが、彼もかける言葉が見つからなかったのだろう、何も言わずにそのまま出て行った。あまりにも気まずい。
「……もう用事は済んだんでしょう。何時までここにいるのですか?」
「んー。別にクラウスに用があってここに来たわけじゃないんだよね、僕。アレはついでのようなもの。実際のところとしては、遠目で見ても分かるくらいに君が困ってたから助けに来てあげたんだよ?」
「は??」
「クラウスと言い合いになって、気まずくなってー、困ってたでしょ」
「う゛、見てたんですか」
あのやり取りの一通りを見られていたのだと思うと、少し恥ずかしくなる。
今まで、ポッシェ村に居た時も確かに同年代で魔道具を作れるという人間はいるにはいたが、彼女らはまだ見習いの段階であり、私と基本的に熱く議論を交わしていたのは大人たちだった。
しかしここに来て、私と歳が1つか2つしか変わらないのに、こんなにも好きなモノに対して言い合ったり、気楽な話を出来る人間が現れてしまった。しかも彼とはまだ出会って数日しか経っていないにも関わらず、だ。
そんな初めて体験する得体の知れない初めての関係性の人間。それが肩パッド改め、クラウスだった。
だから、いざこのような喧嘩のようなことをした時にはどう接すれば良いのか分からないというのが本音なのだ。だって、一方的に罵られてそれを無視することはあっても、喧嘩をしてかつその気まずくなった空気を戻したいと思ったことが今まではなかった。
「ね、フィーアってさ、友達出来たことないでしょ」
「は!?」
「あ、図星。まあ、君かなり性格キツイもんね。僕が言うのもなんだけど」
「……失礼なことを言いに来ただけであれば、魔法で消し飛ばしますよ?」
急に失礼なことを言い出すサミュエルに殺意が湧いたが、別に彼は私の事を揶揄いたかったわけではないらしい。少し魔法の準備をしてみせれば、すぐに謝って来た。だから攻撃魔法を放つのはやめておいた。
「待って。ゴメンって。というか君、本気で魔法打とうとした??僕これでもこの国の王子――ってそんな話をしたいんじゃなくて。友達ならさ、普通に謝ればいいんだよ。僕もよくクラウス怒らせて、その度に謝ってるし……一応」
「とも、だち?私とクラウスって友達だったんですか?」
「君達のさっきの距離感で友達じゃなかったら、クラウス可哀そうなやつになっちゃうけど……」
「いえ、ちょっと聞き慣れない単語だったので動揺してしまっただけです。でも確かに私も悪かった……かもしれないので、謝ってきます」
王国に居た時は勿論、現在に至るまで『友達』などと呼べる気楽な存在がいなかった故に動揺してしまったが、確かにかつて物語で読んだ『友達』という存在は、何気ない話をしたり、好きなものに関する討論をしたりなどなど、言われてみれば、現在クラウスと私が築いた関係に近いものだった。
認めてしまえば、ソレはすんなりと心の中に入ってくる。
口の中で軽く『友達』と復唱しながら、少し頬が緩む。私は仲直りしたいと心に決めて、クラウスの元に向かいながらも、助言をしてくれたサミュエルにほんのちょっとだけ感謝をしたのだった――。
******
あとがき:
2月から始まる恋愛大賞にエントリーしてます。良かったら応援お願いします!多分投稿頻度が上がります!!
「あっれ、肩パッドとフィーアだ。こんなところでどうしたの?」
「……サミュエル。俺は肩パッドなどというふざけた名前じゃないと、何度言ったら分かる」
「ええー、良い渾名じゃん。って冗談は置いておいて。クラウス、トーナメントの責任者の人がお前の事呼んでた。なんか確認したいことがあるんだってさ」
「先にそれを言え!!――行ってくる」
「はいはい、行ってらっしゃーい」
何も、言えなかった。クラウスはここから出て行く直前にチラリと私の方を見はしたが、彼もかける言葉が見つからなかったのだろう、何も言わずにそのまま出て行った。あまりにも気まずい。
「……もう用事は済んだんでしょう。何時までここにいるのですか?」
「んー。別にクラウスに用があってここに来たわけじゃないんだよね、僕。アレはついでのようなもの。実際のところとしては、遠目で見ても分かるくらいに君が困ってたから助けに来てあげたんだよ?」
「は??」
「クラウスと言い合いになって、気まずくなってー、困ってたでしょ」
「う゛、見てたんですか」
あのやり取りの一通りを見られていたのだと思うと、少し恥ずかしくなる。
今まで、ポッシェ村に居た時も確かに同年代で魔道具を作れるという人間はいるにはいたが、彼女らはまだ見習いの段階であり、私と基本的に熱く議論を交わしていたのは大人たちだった。
しかしここに来て、私と歳が1つか2つしか変わらないのに、こんなにも好きなモノに対して言い合ったり、気楽な話を出来る人間が現れてしまった。しかも彼とはまだ出会って数日しか経っていないにも関わらず、だ。
そんな初めて体験する得体の知れない初めての関係性の人間。それが肩パッド改め、クラウスだった。
だから、いざこのような喧嘩のようなことをした時にはどう接すれば良いのか分からないというのが本音なのだ。だって、一方的に罵られてそれを無視することはあっても、喧嘩をしてかつその気まずくなった空気を戻したいと思ったことが今まではなかった。
「ね、フィーアってさ、友達出来たことないでしょ」
「は!?」
「あ、図星。まあ、君かなり性格キツイもんね。僕が言うのもなんだけど」
「……失礼なことを言いに来ただけであれば、魔法で消し飛ばしますよ?」
急に失礼なことを言い出すサミュエルに殺意が湧いたが、別に彼は私の事を揶揄いたかったわけではないらしい。少し魔法の準備をしてみせれば、すぐに謝って来た。だから攻撃魔法を放つのはやめておいた。
「待って。ゴメンって。というか君、本気で魔法打とうとした??僕これでもこの国の王子――ってそんな話をしたいんじゃなくて。友達ならさ、普通に謝ればいいんだよ。僕もよくクラウス怒らせて、その度に謝ってるし……一応」
「とも、だち?私とクラウスって友達だったんですか?」
「君達のさっきの距離感で友達じゃなかったら、クラウス可哀そうなやつになっちゃうけど……」
「いえ、ちょっと聞き慣れない単語だったので動揺してしまっただけです。でも確かに私も悪かった……かもしれないので、謝ってきます」
王国に居た時は勿論、現在に至るまで『友達』などと呼べる気楽な存在がいなかった故に動揺してしまったが、確かにかつて物語で読んだ『友達』という存在は、何気ない話をしたり、好きなものに関する討論をしたりなどなど、言われてみれば、現在クラウスと私が築いた関係に近いものだった。
認めてしまえば、ソレはすんなりと心の中に入ってくる。
口の中で軽く『友達』と復唱しながら、少し頬が緩む。私は仲直りしたいと心に決めて、クラウスの元に向かいながらも、助言をしてくれたサミュエルにほんのちょっとだけ感謝をしたのだった――。
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あとがき:
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