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第十四章 大地母神マーテル
14-31 最強の相性
しおりを挟む「回復しますね」
ムユルさんたちの事を聞きつけて駆けつけてくれたマリアベルが今現在、ムユルさんに治癒魔法をかけてくれているが、治るのは外傷ばかりだ。
やはり、赤子の方まで力を及ぼすことはできないらしい。
アーゼンラーナ様も試してみたが、【混沌結晶】に阻まれてしまったようである。
ムユルさんの中にある【混沌結晶】は、お父様の中にあった結晶より純度が高い。
お父様の方は何とか完全排除することが出来たけれども、赤子がこの状態では不可能だ。
しかし、この場に居る全員が感じているように、母子はギリギリの状態である。
せめて……ベオルフ様の回復があれば、それを足がかりに回復へ大きく傾くのだけれども――。
そう考えていたら、私の頭の中に幼い声が響く。
誰の声かと認識するより早く、それは聞き慣れた声と入れ替わった。
『大丈夫か? 何かあったようだが……』
その声が聞こえただけで、体の底から安堵感が湧いてくる。
「ベオルフ様……ナイスタイミングです」
私の言葉を聞いたリュート様が振り返り、オーディナル様は優しく微笑む。
これほど心強い助っ人はいないだろう。
彼と私の力を融合させた物であれば、赤子を傷つけることなく癒やすことが可能ではないだろうか。
完全回復とはいかないが、それでも無いよりはマシである。
「あの……ムユルさん」
一応声をかけてから力を使う方が良いだろうと、彼女の側で膝をつく。
「は、はい」
「私の手を介して、私の兄と慕う方が触れても良いでしょうか。彼の力は回復に特化したものなので……多少楽になると思います」
「え……えっと……その方は……ここにいらっしゃらないのですか?」
「はい、世界を隔てた場所にいて……実物に会うことはできないのです」
少しだけ寂しげな音が混じってしまったのを敏感に察したのだろう。
彼女はハッとした顔をしてから眉尻を下げて私の手を両手で包み込む。
「お気遣いありがとうございます。此方からお願いしたいくらいです。赤ちゃんを……助けてください。お願いします」
ムユルさんの言葉に反応したように左手が勝手に彼女の膨らんだ腹部へ触れる。
今まで彼が憑依した時に動くのは右手だったように思ったが、今回は左手だ。
何か違いがあるのだろうかと考えていたら、全身にベオルフ様の力が満ちてくる。
安堵感と高揚感に包まれると同時に首元がチリッと熱くなった。
「契約紋が……呼応しているのか?」
リュート様の声が聞こえるけれどもソレに反応することなく、私とベオルフ様の力は混じり合う。
浄化と治癒が混じり合うことで、新たな力になるような感覚だ。
「うわぁ……ルナとベオルフの力で聖炎みたいな力になっていくねー! すごーい!」
今までで一番濃い……と言えば良いのだろうか。
ベストな状態で融合した力がムユルさんの赤子へ注がれる。
「とても……あたたかい……」
「ふむ……良い感じだな。これまで見てきた中で一番純度の高い力だ……」
そう言ったオーディナル様は指をパチンッと鳴らして周囲に結界を張り巡らせる。
私たちの力を察知されないようにしたのだと判るが、誰に対しての警戒なのだろうと考えを巡らせる暇も無い。
滾々と湧き出る力に自分の力を馴染ませていくことで精一杯だ。
「リュート、契約紋を通してサポートしてやれ」
「え……? お、おう……サポートって……?」
「もっと力がスムーズに流れるよう、お前が助力すれば良い。術式を構成するのと同じだ」
どこか悪戯っぽい笑みを浮かべて言うオーディナル様に警戒心を持ちながらも、リュート様は言われたとおり私の契約紋へ手を添えた瞬間、見事に弾かれた。
それも体ごとだ。
これに反応したのはキュステさんだ。
彼は普段からは考えられないほどのスピードでリュート様の体を抱えて衝撃をその身に受ける。
キュステさんのおかげで事なきを得たが、とんでもない。
「サンキュー、キュステ」
「間一髪やったわ……ビックリさせんといて。どう考えても無茶やん」
「いや、これはオーディナルのせいだろっ!?」
「ふむ……やはり無理か」
「そりゃそうだよー。今のルナは純度100%の聖炎みたいなもんだしー」
「はあぁっ!?」
私の頭にぽよんっと跳ねて乗った真白が動揺するリュート様を見てケタケタ笑う。
ムユルさんの心配をしていた一同は、目が点である。
何が起きたのか判らず、ただリュート様とオーディナル様、それに真白の会話に聞き入っていた。
「100%は言い過ぎだな。まだ60%程度だろう。今後はもっと純度が上がっていくが……今のお前では制御できん」
「だったら何でサポートしろって言ったんだよ」
「知っておく必要があったからだ。この二人の融合した力がどういう物か……実際に全身を巡った力の感想はどうだ?」
「……なんつーか……左半身は灼熱。右半身に極寒。中央では二つの力がひしめき合い、とんでもねー力を束ねていく感じだった」
多少意地悪な笑みを浮かべて尋ねるオーディナル様を睨み返しながらも、リュート様は素直な感想を口にする。
「それをこの子達は毎回繰り返している。訓練し、馴染ませ、ようやくここまで解放したのだ。お前も時空間魔法の練度を上げて、追いつけるよう調整することだな」
「マジか……二人は難なくやっているけど、普通に考えて厳しいぞ」
リュート様が難しい顔をして考え込む中、力を注がれているムユルさんはリラックスしている様子だ。
体が楽になってきたのか、余分な力が抜けている。
穏やかな顔つきになった姉を安堵の表情で見つめていたヤトロスさんは、私たちへ向かって頭を下げた。
「遠征のときは我々の命を助ける為にご助力いただいただけではなく、姉も助けてくださってありがとうございます」
「あ、そうだったっす! ベオルフ様、俺たちもお礼が言いたかったっす! あの時は、スゲー助かったっす!」
「窮地を救っていただき、誠に感謝しております」
私の中のベオルフ様に頭を下げる黎明騎士団に、彼は少々戸惑ったようだ。
『別にお前達のためにしたことではなく、ルナティエラ嬢を救う為に力を貸したのだ。ついでだから、感謝されるほどの事ではない』
ああ……ベオルフ様らしいなぁと考えながらも、これは彼らに伝えない方が良いだろうと私は「感謝されるほどでは無い……とのことです」と伝えて微笑み返す。
おそらくベオルフ様の言葉が聞こえていたのだろうオーディナル様だけは、肩を振るわせて笑いを堪えていた。
全く……こういうところがベオルフ様の困ったところだ。
あちらでうまく人間関係を築けているのか不安になるが、マテオさんとラハトさんという優秀な従者が側にいれば何とかなるだろう。
「魔法の無い世界で、これほどの力を有するのか……」
リガルド様の言葉に時空神様が笑う。
「そりゃそうデショ。ルナちゃんは、父上の愛し子で彼はその半身ともいえる者なんだカラ」
「しかし……中々凄まじい力じゃな。暫く見ないうちに、これほどまでに強力になるとは……」
アーゼンラーナ様も驚きが隠せないようだ。
私の手元をマジマジと見つめている。
「そういう意味で遠征訓練は、ルナちゃんにとって最高の環境だったと考えていいだろうネ」
「それはルナだけじゃねーかも。みんなにとって、今回の遠征訓練は重要な物になったと思う。問題点、改善点、魔物への理解、危険回避など様々な知識や……今までの価値観を覆すような状況に置かれて学べたことは多かったはずだからな」
それに一番力強く頷いたのは他でもないヤトロスさんだった。
黎明騎士団もそうだが、沢山のモノを得たのだ。
蛍やアルコ・イリスたちも、今回の件が無ければ出会わなかったかもしれない。
「ん……? な、なんすか? お前が背中から離れるなんて珍しいっすね」
私の左手から力が消えていくタイミングで声を出したのはモンドさんだった。
全員の注意が彼へ向く。
すると、いつもモンドさんの背中に貼り付いていた紅ちゃんがポヨンポヨンと跳ねている。
黎明騎士団全員のアルコ・イリスたちが集まり、何か相談するように円陣を組み始めたので見守っていると、六花がリュート様のところへ来て何かを告げた。
「ん? 宝石? あるにはあるが……」
アイテムボックスをガサゴソして取り出した宝石たちをテーブルに並べたリュート様を取り囲むようにアルコ・イリスたちが集合する。
そして、相談しているのかぽよぽよもにょもにょと動きながら、一つの宝石に決めたようだ。
それは真珠だった。
蛍が捕ってきてくれた貝の中に入っていた物である。
「トモダチ、誕生。儀式、する」
拙い言葉で告げた六花を中心に、真珠を持っていったアルコ・イリスたちは、少し離れた場所で再び円陣を組んで真珠を取り囲む。
暫くぽよぽよ跳ねていたかと思ったら、中心の真珠へ全員が手のような触手を伸ばす。
中心にある真珠が取り込まれて溶けていき、真珠色に染まった触手がプチリと切れて球体になった。
周囲のアルコ・イリスたちに比べたら小さめだが、新たなアルコ・イリスが誕生した瞬間である――と気づいたのは、中央にいた真珠色の核を持つアルコ・イリスが元気よく跳ねたからだ。
「……え? マジで? 宝石を核にして融合分裂したのか? マジかよ……」
「仲間、新しい! できた! ヤトロスできた!」
片言で必死に告げる言葉に名指しをされたヤトロスさんが驚く。
しかし、それも束の間。
生まれたばかりの少し小さめのアルコ・イリスが元気よくヤトロスさんへ飛びついたのだ。
モンドさんの紅ちゃんみたいに貼り付いたかと思えば、頭の上に乗ったりと大忙しである。
「え、えっと……リュート様?」
「あー、黎明騎士団に入団したから、コイツらなりに考えたんだろ? 仲間には仲間をって」
「あ……えっと……その……ありがとう。よろしくね」
ヤトロスさんの礼の言葉に気を良くしたアルコ・イリスたちがご機嫌で跳びはね、受け入れて貰ったと感じた真珠色の核を持つアルコ・イリスは、照れたように体をくねらせた。
触手を伸ばして握手を交わす二人に、リュート様や黎明騎士団の面々も嬉しそうだ。
「……私だけでは無く、弟も救っていただいたのですね……本当に感謝の言葉もありません」
「全てはあなた方が行動した結果だと思います」
幾分顔色が良くなったムユルさんの礼は必要無いと首を振りながら伝え、彼女の肩を支えるサラ様を見上げる。
「本当に……ルナは優しいねぇ」
「私は私にできることでサポートしているだけですよ? それに大変なのはこれからですから……お礼は、この子の手から【混沌結晶】を回収、もしくは消滅させたときで良いです。それまでは油断なく、一緒に頑張りましょう」
「は、はい!」
私たちでそんな会話を交わしている間も、私の隣で黙って見学していたのはマリアベルだ。
いつの間にやって来たのか、ノートを片手にカリカリと忙しそうに文字を綴っている。
「マリアベル?」
「あ、お師匠様は気にせず続けてください。本当に勉強になります!」
「……キミの存在が邪魔にならなきゃいいんだけどね」
保護者よろしくロン兄様が彼女の背後で呟き、私たちを見守るように立っていたテオ兄様は、戯れ付くヨーコを肩車して此方を見ていた。
――親子かな?
こうしてみると沢山の人がいる。
全員が自分にできる事を探して、現状を整理している様子だ。
これでムユルさんの方も落ち着くだろうし、夕飯に向けて体験教室の準備もしたい。
さて……彼女の夕飯はどうしよう。
さすがにラーメンは難しいかな……と考えていた私は、自然と彼女に質問をしていた。
「食事のあとでする質問では無いのですが……食欲や胃の調子はどうでしょう」
「あ……はい。先程のスープは美味しくいただけました。胃もむかつきはありませんし、ずっと感じていた痛みは治療のおかげで消えました」
「それは良かった……。ベオルフ様のおかげですね」
意識を集中させても今は微かにしか感じない彼の気配に礼を言うが、「痛みが消えて良くなったのなら問題無い」という彼らしい返事と共に消え去ってしまう。
忙しそうな私に気を利かせてくれたのだろうが……少しだけ寂しい。
そういえば、いつもの痛みが無かった――と引っかかりはしたけれども、そういうこともあるだろうと深く考えないようにして今晩のメニューを思案する。
「食べたい物はありますか?」
「酸っぱい物か辛いものがあれば……」
その言葉で思い出したのは餃子のつけだれだ。
水餃子にすれば口当たりも良くて、食べられるかもしれない。
肉と野菜をたっぷり使えばバランスも良いだろう。
彼女には水餃子、他の人は焼き餃子にしたらオーディナル様が設置してくれた焼き肉用のテーブルでも焼く事が出来る。
網を鉄板に変えるだけだ。
「餃子……かな」
「ラーメンに餃子……鉄板メニューがきたな!」
私の呟きに反応して振り向いた彼は、少年のように目をキラキラ輝かせている。
リュート様が好きそうなメニューだと納得はするが、その食いつき具合に吹き出してしまう。
クスクス笑う私に彼はハッとして照れたように後頭部を掻いた。
「イイネ。ラーメンと餃子なんて最高ダヨ」
「チェリシュはお手伝いしますなの!」
「真白ちゃんもー!」
すぐさま同調する時空神様と、お手伝いを申し出るチェリシュと真白に感謝しつつ、私の頭の中で手順を組み立てていく。
「よし……先ずはラーメンの麺。次に餃子の皮。それから餡ですね。ラーメンのスープは鶏ガラスープを使いましょう。具材はチャーシューも良いですが、ホタテが大量にあるので、それにコーンとバターなんてどうでしょう。他の魚介類も添えれば豪華絢爛ですね」
「……海の幸三昧だな!」
「蛍ちゃんの働きが大きいなぁ。さすがだねぇ」
「でかした蛍!」
お父様やリュート様たちに褒められて照れた蛍は、クネクネと踊り、それに合わせてアルコ・イリスたちもピョコピョコ跳ねる。
その輪にシグ様のモルルとディード様のラエラエたちが、いつの間にか交じっていた。
ラエラエたちはお腹が空いたのか、すぐさまリュート様のところへやって来て「くわくわっ」と催促している。
おそらく、コーヒーを淹れたあとのアレを狙っているのだろう。
「え? いや、コーヒー淹れてねーから」
「ああ、そうだ。リュート、コーヒーをご馳走してくれ。私の娘にも飲ませてやってほしい」
「あ……確かに、アーゼンラーナも飲みたいよな。ディードも飲む? てか、爺さんたちも飲むだろうし準備するわ」
オーディナル様のお願いを聞き入れ、どこかウキウキした様子でコーヒーを淹れに行くリュート様の姿に、思わず笑みが漏れた。
コーヒーを淹れるのが趣味だと言うだけはある。
「ルナはミルクたっぷりのカフェオレにして、他は……判ったから、そうせっつくな」
ラエラエを従えて移動する彼に、何故か真白とモルル、それにアルコ・イリスたちもついて行く。
リュート様が何かするらしいと察した召喚獣たちも混ざってしまい、移動するだけで人目を引くほどの大所帯となってしまう。
小さい子達に囲まれて移動する彼を見慣れている私たちや遠征組の人たちは微笑ましく見送るのだが、他の人たちは目を丸くしているようだ。
「リュートは……好かれているのだな」
呆然と呟くリガルド様をアレン様が豪快に笑い飛ばす。
「あやつは竜帝領でも子供たちに人気じゃったぞ。いつも囲まれて歩くのも大変そうだったがな」
「だんさんが誤解されがちやけど、子供は純粋に見はるからねぇ……大人になればなるほど、目の前のものを純粋に見られへんのかもしれへんね」
キュステさんの言葉が聞こえたのか、何人かはばつが悪そうな顔をして俯いている。
強制はしないし、諭すことも無い。
しかし、ここへ来たときよりは幾分態度が軟化したように見える一部の人たちを横目に、私はただ彼を信じてこれからも隣にいるのだろうと感じていた。
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