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第十四章 大地母神マーテル

14-21 騒動を治める方法

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 オーディナル様に別途頼まれた丸パンを作り、焼成は黎明ラスヴェート騎士団にお任せした。
 暫くすると、パンの焼ける香ばしい香りが辺りに漂う。
 その匂いに気づいたカフェたちが鼻をヒクヒクさせているのだが、とても可愛らしくて笑みがこぼれた。
 天然酵母で焼くパンとは違う香りが気になるようだ。
 周囲の人たちも香ばしい香りに誘われ、家族との談笑よりも匂いに気を取られている。
 遠征組の人たちは、そんな家族の姿にニヤニヤした笑みを浮かべ、したり顔だ。

 準備の出来た肉。
 ピザ窯で焼き上がっていく熱々のピザ。
 新鮮な魚介類も、辺りに良い香りを漂わせ始める。
 スープも良い具合に仕上がった。

「あとは、肉や魚介類を網で焼くだけですね」
「さすがはルナ。仕事が早いな」

 声の主であるリュート様の方へ顔を向ける。
 いつも通りの優しい笑みを浮かべている彼の後ろには、異様な雰囲気に包まれた人たちがいた。
 言葉にするのは難しいが、圧……のような物を微かに感じる。
 ただ、その一団の先頭にいたのはランディオ様だ。
 さすがは白の騎士団の団長。彼の身に纏う真っ白な鎧は威厳すら感じられる。
 
「何だ、お前たちも来たのか。城の方は良いのか?」

 彼らが誰か理解しているのだろう。
 スッと前に出たお父様が一団に声をかける。
 警戒しているのか、お父様の肩へ着地した蛍は相手の様子を窺っているようだ。

「国王が動けない状態になってしまったので、我々が来たのだ」
「国王陛下が動けない?」
「聖都を守る結界を安定させるため、今は『珠玉の間』に籠もっておられる」

 お父様とランディオ様の会話を聞きながら、何か思い当たることがあったのか、オーディナル様が「あ……」と呟いた。

「しまった……宝珠に力を注ぐタイミングで、僕の力が干渉してしまったのか」

 オーディナル様の言葉を合図に一団は揃ってその場へ片膝をつき、深々と頭を垂れる。

「オーディナル様がこの地に降臨されたと聞き、ご挨拶に窺いました」
「たかだか挨拶の為に、上位称号持ちの家がそろい踏みか……仰々しいことだ」

 頭を垂れている方々は、十神の加護を受けし上位称号持ちの家――しかも、その当主達だという。
 その一人であるはずのお父様は、彼らを遠巻きに見て溜め息をついている。
 おそらく、オーディナル様がそういうことを嫌う場面を見てきたからだろう。

 王家は現在、オーディナル様の力の干渉を受けた聖都を正常化するため動けないから不在だが、他の家の当主が揃っているというのは稀なことらしい。
 アーゼンラーナ様と時空神様がコッソリと教えてくれるのだが、初めて見る当主達に私は驚くしか無い。
 お父様やランディオ様、そしてメロウヘザー様とは面識があった。
 しかし、他の方々は初である。

 よくよく見ると、トリス様やシモン様に似ている顔立ちの男性がいるので、彼らは娘や息子の心配もあって、此方へやってきたのだろう。
 一人一人名乗りを上げていくが、オーディナル様はソレを遮った。

「そういう面倒なことはしなくて良い。はぁ……リュート」
「え、俺に何とかしろっていうのかよ」
「そうだ、何とかしろ。そいつらを僕から遠ざけてくれ。鬱陶しい」

 手をヒラヒラさせて追い払おうとするオーディナル様に、リュート様は盛大な溜め息をついた。
 
「しょーがねーなぁ……。ほら……だから言っただろ。オーディナルは嫌がるって……」

 こうなることが判っていた彼が呆れた口調で言い放った瞬間、初老の男性が噛みつく。
 
「リュート……オーディナル様に対して、その言葉遣いはなんだ」
「だから! 爺様も頭が硬ぇんだよ! オーディナルの望んでいることをしていれば『無礼』でも『失礼』でもねーの!」
「お前の破天荒さは……我が娘に似たのか……」
「いや、あそこまで常識が通用しなくはねーから」
「お父様はいつものことだけど……リュート? お母様のことをそう思っていたのっ!? ルナちゃん、リュートが酷いのよ!」

 ガバッ! と抱きついてくるお母様を抱きしめ返しながら、リュート様と口論をしている初老の男性を見つめる。
 お母様の父であり、リュート様の祖父。
 顔つきはリュート様に似ていると感じるのは、おそらく、彼の目がリュート様と同じアースアイだからだろう。
 ただ、リュート様が青を基調としているのに対し、彼は鮮やかな緑である。

「じゃから、リュートの言う通りにせいと言ったのじゃ。お主達は揃いも揃って頭が固いのぅ」
「自分たちの常識に父上を付き合わせることこそ傲慢ダヨ」

 そうだろうか……と、私はオーディナル様を見つめた。
 こういう堅苦しい挨拶に嫌悪感すら抱いているのか、苦虫を噛みつぶしたような顔をして取り付く島も無い様子だ。
 最初の頃は、もっと慈悲深き神を演じていたはずだが、最近ではそれすら面倒くさくなったのだろうか。
 少し、素を出し過ぎているような気もする。
 
「全く……頭の固い連中だ。柔軟な思考を持たねば、人に未来は無いぞ? リュートのように柔軟な思考と臨機応変な対応をして見せろ。そういう思考から生み出される物が、人々の生活に潤いをもたらすのだ。そのノートPCのようにな」

 ふふんっと笑うオーディナル様とリュート様を交互に見ていた当主達は、困惑した表情を浮かべて途方に暮れていた。
 全員顔見知りであるリュート様がフォローを入れているが、オーディナル様はノータッチだと言いたげにそっぽを向いている。
 面倒ごとをリュート様に丸投げしているオーディナル様へ、私は声をかけた。

「オーディナル様……国王陛下が動けなくなってしまったようですが……?」
「待て。それは僕のせいだが、僕のせいではないぞっ!? 僕の愛し子……な……なんだか、目が怖いぞ」

 今までの高圧的な態度はどこへやら、パッと私の方を見て弁明を始めるオーディナル様は別人のようだ。
 その様子に時空神様が肩を振るわせて笑っているが、それすら見えていないのか必死に言葉を探している。
 
「……真白はどう思います?」
「えー? オーディナル、やらかしちゃったのー?」
「じーじ……」
「ご、誤解だ! リュート! ゼル! 何とかしてくれ!」
 
 真白とチェリシュにも責められたオーディナル様は、たまらずリュート様と時空神様にヘルプ要請するが、二人は笑いを堪えるのに必死だ。
 おそらく、私が本気で言っていないと判っているからだろう。
 しかし、父を心配しているアーゼンラーナ様がオロオロしているので、からかうのはこの辺にしておいた方が良さそうである。

「――とはいえ、オーディナル様が力を使ったおかげで、聖都の外で騒いでいた人たちの一部が中へ引っ込んだようですね」
「うむ。その辺はアレンが手を回したのだろう?」
「無論」

 アレン様が当然だというように力強く頷く。
 リュート様もアレン様の動きを読んでいたのか、特に反応すること無く言葉を続ける。

「それにも気づかずに未だ騒いでいる人たちは、そそのかされた連中なんだろうな」
「マールのせいで漁ができへんっていう漁師や、仕事のあらへん人たちが中心になってるみたいやねぇ」
「金で雇われたか?」
「その可能性は大きいやろうねぇ」

 既に調べていたらしいキュステさんの言葉に、リュート様が盛大に溜め息をつく。

「だが、賢いやり方だ。そうやって騒ぐ連中がいれば、皆不安になる。懐疑的になり、危険分子として排除しようとする。特に……今回は、リュート。お前がいるから、色々と後付けがしやすいのだ」
「お父様!」
「事実だ。ここで下手に隠しても、この賢い子はすぐに気づく」

 リュート様のお祖父様の言葉にお母様が声を上げるが、確かに彼の言う通りだ。
 リュート様であれば、すぐに気づくことだろう。
 そして、それを視野に入れて動いているのがキュステさんたちだ。
 対応が早いのは、リュート様が聖都に帰ってきたために与える影響の大きさを考えてのこと――。
 さすがは、彼の右腕である。

「え……それって……リュート様が誤解されて責められるってことか?」
「なんで? 俺たちが生きているのは……リュート様が見捨てずに命を張ってくれたからだぞ」

 遠征組からは戸惑いの声が漏れた。
 そして、家族の誰かがリュート様に対して否定的な事を言ったのだろう。
 遠征組の生徒数名が、自分の親兄弟に向かって怒鳴り、口論を始めてしまった。
 場は騒然とし、険悪の空気に包まれる。
 和やかな空気は霧散し、怒鳴り合う声が耳に響く。
 その異様な光景に真白とチェリシュが怯えるので、私はお母様の腕から抜け出し、グレンタールに二人を任せた。
 
「やはり……人は……どこの世界でも変わらんな」

 呆れたような……いや、どこか冷たい瞳で彼らを見やるオーディナル様が怒り出す前に、事態を収拾しなければならない。
 そう感じた私は、必死に騒動を止めようとしているリュート様たちの背中を見つめて考え込む。
 大きな声で呼びかけても効果は無い。
 説得も同じだ。
 だったら――

「……蛍」
「っ!」

 私の呼びかけに応えて飛んできた蛍は、「なになに?」と私を見上げて問うてくる。
 ふよふよしている蛍へ、コッソリと耳打ちをした私は、顔を見合わせてニンマリと笑った。

「~♪」

 元気よく距離を取るために飛んでいった蛍は、これくらいでいいかな? と周囲を確かめたあと、いきなり元のサイズへ戻る。
 その大きさ。
 その姿に遠征組以外の者たちがフリーズしてしまうのは仕方の無いことだ。
 突如として現れた海の覇者クラーケンは、腕を振り上げて不思議な踊りを見せてくれる。
 私のお願いを聞いて踊ってくれるだなんて……本当に優しくて可愛らしい子ですよね!

 呆然とする人々を置いて一通り踊った蛍は、小さいサイズに戻ってから舞い戻ってくる。
 うまく踊れて上機嫌の蛍を労い、私は未だ呆然とする人たちの注意を引くために手を叩く。
 パンッ! と、自分でも驚くほど大きな音が出て、手のひらが少しジンジンしているが気にしている暇は無い。

「昼食にしましょう!」

 音に反応して集まった視線を物ともせずに、私は笑顔で言い放つ。
 
「お腹が空くとイライラしちゃいますから、美味しい物を食べて落ち着きましょう。昼食のメニューは海鮮ピザとモツスープ。新鮮な魚介類やお肉。他にも沢山ありますから、お腹を満たしてから話し合いましょうね。話し合いは後にしましょう!」

 ニッコリと微笑む私に、呆けた顔をしていた人たちはコクコクと頷く。
 あまりのショックで動きが鈍くなった思考でも、『昼食』『後で話し合う』ということだけは理解して貰えたようだ。

「さすがはルナ……」
「ルナ様は、マジでスゲーッす……」

 リュート様とモンドさんの称賛を受けて照れ笑いを浮かべた私は、何とか険悪な空気は追い払うことが出来たと一安心して、昼食をとるための準備を再開するのであった。
 
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