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第十一章 命を背負う覚悟

11-13 好奇心からの質問

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「……ところで、王太子殿下。話は聞いていたのでしょうね」
「ん? ああ、一応……」

 あれ?
 確か目の前に座っていたはずの王太子殿下がいない。
 それどころか、今……全く違う方向から声が聞こえたような?
 声がした方へ視線を向けると、何故かノエルたち神獣と円陣を組んでいる王太子殿下の姿が――
 中心になっているのは、どうやら真白のようだ。
 ふんふんっと鼻息も荒く、羽毛を膨らませてまん丸になっている。
 どういう状況なのか把握出来ずに困惑して、王太子殿下とベオルフ様を交互に見つめた。
 私は王太子殿下が移動したことにも気づいていなかったのだが、さすがはベオルフ様といったところだろうか。

「まさか、ノエル達と遊んでいて、全く話を聞いていなかったわけでは……」
「それは無いから心配するな。むしろ、二人の邪魔をしてはいけないのではないかと気を利かせてやっただけだ」

 どういう気の利かせ方だ――そう言いそうなベオルフ様の横顔を見つめながらも、コソコソ話をしている真白たちが気になる。
 あれほどウキウキした様子で何かに取り組む真白を見たことが無い。
 とても嫌な予感がする。
 どうやら、ベオルフ様も同じ事を感じているらしく、珍しく渋い表情をしていた。

「できたよー!」
「うむ、完璧だ」
「いっぱい頑張ったよねー」

 そんな中で、神獣達の可愛らしい声が響く。
 ノエルは真白と似た無邪気さがあるので判るが、何故か紫黒も一緒になって上機嫌である。
 これは……マズイのではっ!?

「真白、何をしたのですか?」

 恐る恐る尋ねてみると、真白はキョトンとしてから自分たちの頑張りを語って聞かせてくれるために胸を張り、自信満々に説明をしてくれた。

「えーとねー、ベオルフの弟さんって人が持っている剣に、オーディナルの力を感じたから、浄化の力を上掛けしておいたー!」
「かなり強力なものをかけたから、ハルヴァートの身の安全は保証できるぞ」

 紫黒の太鼓判付きであれば、恐ろしい性能を秘めているのだろう。
 それは有り難いのだが、私たちが考えていた計画に支障が出そうである。
 善意で行ってくれたので大変申し訳ないが、計画が台無しになったら元も子もない。

「……真白、すぐさま解いてください。それか、威力を落としてください」
「どうしてー!」
「それでは、ガイセルク様が【黎明の守護騎士】のように思われてしまいます」
「だいじょうーぶだよー? ベオルフのはもっと強力なのをかけておいたから!」
「うむ。ベオルフの方は非の打ち所のない出来栄えだ」
「これ以上はないよねー!」
「さすがは神獣様方。格が違いますね」
「ふーふーふー、わかってるじゃないのー! 真白ちゃんはすごいのだー!」

 うん?
 つまり……ベオルフ様の方も強化したということで良いのだろうか。
 現時点でも浄化の力は強かったはずだ。
 しかし、真白の浄化を付与した武器の強さは、リュート様たちが魔物と戦っている時に立証されている。
 あの力がベオルフ様の武器に付与されているなら……いや、真白の口ぶりだと、もっと凄い効果を付け加えている感じがする。
 それなら、ガイセルク様の方を弱体化する必要もない。
 王太子殿下を守る事も出来て、ベオルフ様の強化にも繋がるのなら申し分無い。

「やっぱり、オーディナルは浄化に関して甘い部分があるよねー。まあ、真白ちゃんが一番ってことで!」

 えっへん! とでも言いたげに胸を張る真白に溜め息が漏れる。
 良い仕事をしてくれたのは事実だけれども……素直に褒めて良いのかどうか迷うところだ。
 リュート様がいたら何と言うか……
 おそらく、「調子に乗ってんじゃねーよ」と言って小突いているか、いつものように『もにもに』の刑に処しているはず。
 取りあえず、結果オーライ……ということにしておこうと考えて溜め息をつき、ぐったりとベオルフ様に体を預けると、彼も私に身を寄せる。
 互いに「ヤレヤレ」といった状態だ。
 その間に王太子殿下は元の位置に戻り、私たちに紅茶を勧めてくれた。
 疲れた心と体を癒やすような香り高い紅茶は有り難い。
 王室御用達の品だけはあって、口当たりもまろやかで美味しい紅茶である。

「先ほど言っていた戦争は、私が生きている限り何とかなりそうだが……聖女の件は、ルナティエラ嬢の言う通り、王族が介入できない場所となる。我々の手から離れたミュリア嬢が何をしでかすかわからんが……監視の目を増やしておこう」
「助かります」
「異性より同性の方が良いのだな?」
「はい。そこは徹底してください」
「お前がつけている監視役は……」
「アレは気にしないでください。出来ることなら、話題にも出さない方向で……」
「そ、そう……か。まあ……わからなくもないが……」

 確か、ベオルフ様が好きすぎる方のお話であったと思いだし、彼が本気で嫌がっていることを察し、堪えきれずに笑ってしまった。
 ここまで感情をあらわにすることも珍しいから余計だ。
 よほど苦手なのだろう。
 ベオルフ様にジロリと睨まれてしまった。
 このままではマズイと気を取り直して会話を続ける。

「とりあえず、戦争は王太子殿下が無事でしたら大丈夫……でしょうが、一応、火種になりそうな事は洗い出して注意されたほうが良いかもしれません」
「そうだな……ルナティエラ嬢、本気で私の補佐官にならないか?」
「王太子殿下……」

 この方は何を言い出すのだろうかと呆れていると、隣のベオルフ様から私以上に呆れたような低い呟きが聞こえてきた。

「ベオルフの言いたいことも判るが、これだけの才能を埋もれさせるのは非常に勿体ないではないか! あの愚弟! 王家にとって大損害だぞっ!」

 婚約破棄をするにしても方法があっただろうに……と、頭を抱える王太子殿下には申し訳無いが、おそらく何度同じ時を繰り返したとしてもリュート様に召喚されていた可能性が高い。
 それくらい、彼との繋がりは強固な物であると日々感じている。
 もし失敗していたら、その時はどうなっていたのだろうと考えて隣をチラリと見ていたら「そういえば……」と、王太子殿下が呟く。

「前々から聞きたかったのだが……ルナティエラ嬢が兵士に連れられて牢へ入れられたとして……お前はどう動く予定だった?」
「突然ですね……何か理由があるのでしょうか」
「いや、単なる好奇心だ」

 王太子殿下の好奇心に対する答え――それは、私も興味を覚えるものであった。
 あの時、ベオルフ様はどう動くつもりだったのだろう。
 兵士が来たときは距離を取っていた。
 しかし、その後は……?
 当時は強い呪いの影響で敵だと信じて疑わなかったが、今は違う。
 だからこそ知りたい。

「あの兵士は全て父の配下でした。酷い扱いを受ける心配は無いと確信しておりましたが、すぐに身の安全を確認しに行ったと思います。その後は、裁判に備えて情報収集をしていたはずです」
「なるほど……もし、その裁判で有罪になったとしたら、どうしていた?」
「父に勘当してもらってから彼女を助け出し、国を出ていたと思います」

 一切の迷いなど感じられない言葉に、体が固まってしまった。
 あの一瞬で、彼はそこまで考えていたのだ。
 どんな状況でも私のことを第一に考えて動いてくれていたのだと知り、胸が熱くなる。
 言葉も無くベオルフ様を見つめていると、王太子殿下が深い溜め息をつく。

「国を出る前に北の辺境伯を頼ってやれ……心配していた」
「迷惑をかけることはできません」
「北と南の辺境伯は王家でも簡単に手出しが出来ない。一旦、そこに頼って対策を練るという方法を勧める。お前なら国を出るのも容易いだろうが……ルナティエラ嬢の体には負担がかかっただろうからな」
「……わかりました。もう……その心配もありませんが、何かあれば頼りたいと思います」
「そうしてやれ。きっと喜ぶ」

 もしかしたら……そういう未来もあったかもしれない。
 ベオルフ様と二人で放浪している旅の中、待っていてくれたノエルやオーディナル様と再会し、いずれは賑やかな真白と引っ込み思案な紫黒を連れて、各国を巡る――
 それこそ、伝説に残っている『愛し子と黎明の守護騎士』のように動いていたはずだ。
 それはそれで楽しそうだと考えると同時に、家も国も捨てる覚悟をしていたベオルフ様が持つ、私への想いに胸が震えた。
 何の迷いの無い彼の言葉が全身を満たしていく。
 言葉にならない激情が胸を締め付けて思わず涙がこみ上げたが、泣いてはいけない。
 彼に見せるのは涙では無く、笑顔だ。
 私の事を、ここまで考えてくれるベオルフ様に幸せなのだと伝えるために……

「ありがとう……ございます」
「当たり前のことだ」
「私は……本当に幸せ者です」
「今まで苦労してきたのだから、少しは幸せを噛みしめてくれ」
「……はい」

 本当に優しい方だ。
 うっすらと涙は浮かぶが、哀しみの涙では無い。
 幸せの涙だ。
 リュート様に感じるものとは違う、穏やかで優しい気持ち――
 前世の家族にも持ち合わせていたものに近く、それよりも深くて強い、私たちの間にしか無い繋がり。
 私とベオルフ様の縁は、どういうものなのだろう。
 そして、他の人と何が違うのだろう。
 思い浮かんでくる疑問は、耳に入ってきた王太子殿下の呟きによりかき消される。

「愚弟は何を見ていたのか……これほど出来た女性を切り捨てて、選んだ女が……アレか?」

 それを私の前で言わないでください。
 思わずツッコミを入れそうになったが、隣ではベオルフ様が深く頷いている。
 彼が何か言い出す前に前もって注意しておいたほうが良いだろうか……
 こういう時は、決まって私をべた褒めしてくるのだ。
 恥ずかしいことこの上ない状況になるので、出来るだけ回避したい。

「どうした?」

 どうやら私が悶々と悩んでいたことに気づいたらしいベオルフ様が、私に問いかける。

「あ……あの……あまり……人前で褒めないでください。照れてしまいますので……」
「いつも言っていることだろうに……」
「王太子殿下の前ですからっ」

 オーディナル様たちの前で言うならまだしも、王太子殿下の前では気恥ずかしい。
 そういう私の気持ちは全く察すること無く首を傾げているベオルフ様に、何故こういう時だけ鈍感なのかと不満を覚えた。
 何も難しい話をしているわけではないのに……
 とりあえず……と言った様子で「わかった」という返事をくれたのだが、全くわかっていないと彼の腕をペチペチ叩いて抗議する。

「確約は出来ん」
「簡単なことなのにっ!?」
「私には難しいことだ」
「難しくありませんっ」
「難しい」
「どこがですかっ!?」
「あー……お前達はそうやって、すぐに私の存在を忘れるのをやめてもらえないだろうか……」

 ハッ!
 し、しまったと思っても後の祭りである。
 慌てて謝罪するが、王太子殿下は私たちを交互に見て柔らかな笑みを浮かべた。

「良いな……お前達は」
「良い?」
「二人が揃っていると、なんだかわからないが……安心する」

 どうやら不快に思って紡がれた言葉では無いようだけれども、とても気になる言い回しだ。
 私たちから何かを感じ取ったのか……それとも、似ている何かを思い出したのか。
 王太子殿下の心中は判らないが、とても穏やかな表情で笑われてしまった。
 オーディナル様の加護の欠片を持つ王家だから、私たちの間に何かを感じたのかも知れない。
 それが今後は彼の身を守る力になれば良いと思わずには居られなかった。

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