364 / 558
第九章 遠征討伐訓練
9-27 召喚獣科・特殊クラス
しおりを挟む
湿地帯に入り、アクセン先生が危惧したとおり皆の進行速度が素人目でもわかるほどに落ちた。
水分の多い地面に足を取られ、伸び放題になっている植物が足元の視界を遮り、不用意に足を進めれば深みにはまり抜け出せなくなる者もいる始末だ。
ボーボの上から周囲の状況を確認出来るからわかったことだが、こんな状態が続けば隊列が乱れ、到着予定時刻から大幅に遅れて現地へ辿り着くのは明白であった。
「思った以上にひでーな……お前ら、俺たちが進む道を追ってこい。それ以外に道はねーと思って進め」
見かねたリュート様がそう言うと、レオ様を筆頭に、リュート様や黒の騎士団が辿った道を追うように歩き出す。
慣れているのか、それともこういう地帯での訓練も積んできたのか……そう考えて、騎士科の方を見ると、彼らも危なげなく湿地帯を歩いている。
なるほど……騎士科でこういう訓練をしていたわけですね!
経験値は違うので足の運び方やスピードに違いはあるが、それでも、他の科と比べものにならない動きだ。
「翼が無いって不便だよねー」
暢気にそんなことを言っている真白は、飛ぶより弾けるほうが多い気もするのだが、そこを突っ込んではいけないのだろうか。
もの言いたげに見ている私の視線に気づかないのか、真白は眠そうにあくびをして目をこすっている。
やはり、疲れているのかと思う反面、それほど疲れるまでに何をしてきたのだろうという心配が拭えない。
今頃、真白の尻拭いで奔走しているだろうオーディナル様と紫黒が不憫でならないが、とりあえずここで大人しくしているなら問題は無いだろう。
「しかし、以前よりも動けるようになっているではないか。いつもなら、もうバテて動けなくなっていたのにな」
「お転婆なファスを追いかけているからかもしれませんわ……」
荒い息をしながらも、何とか歩いているイーダ様の横で元気づけようと声をかけているレオ様との会話が聞こえてきたのだが、いつもイーダ様を振り回しているファスは現在、ボーボの上で団子状態になっているところである。
『だって、イーダは体力が無いんだもん。追いかけっこするくらいしか、動かないし……アレじゃ、体に良くないもん』
不満げにそう言ったファスは、意図的にイーダ様を走らせているのかと感心していたのだが、そこで鼻を鳴らしたのはガルムであった。
『自分の好奇心が優先のくせに、何言ってんだ』
『一応、これでもイーダのことは考えているもん』
『お前の主もそうだけど、レオも……ヴォルフってヤツのこと、考えすぎなんだよな』
『もう居ない人に、どうしてそんなに気を遣うのか私にはわかんない。結局、弱い個体だったってだけじゃん』
ガルムとファスの会話を聞いていて、この言葉を彼らの前で口にしていないか心配になってしまう。
レオ様とイーダ様にとって、ヴォルフ様は忘れられない幼なじみなのだ。
ファスはおそらく、『死=弱い』という考えを持つ世界で生きてきたのだろうが、そこまで考えを巡らせる事が出来るほど、今のイーダ様に余裕はなさそうだ。
「ファス……それをイーダ様に言ってはいけませんよ」
『どうして? 事実なのに?』
「もしも……と、仮定しますね? もし、ファスが死んでしまったとき『弱い個体だったとして忘れ去られる』のと『大切な仲間だったとして思い出して貰える』のは……どちらがよいですか?」
『そ、それは、思い出して……欲しいかも……』
「私も同じです。出来れば忘れないで欲しい。でも、私の事を思い出すのが辛くて苦しいのなら、忘れて笑っていて欲しい。それはきっと、残して去っていった者のエゴですね。残された者は、そう簡単に割り切れないでしょうし……」
『……ルナはまるで、そんな経験をしたような事を言うのね』
家族を思い語る言葉は、ファスに……いえ、召喚獣達にどう響いたのだろうか。
ただ、皆は心配そうに私を見上げてくるので、そんなに酷い顔をしているのかと心配になる。
無言でぎゅっと抱きしめてくれるチェリシュが心配しているのだと伝わってきて、安心させるために翼で彼女の手に触れた。
「つまり、故人を想う気持ちはデリケートな問題なので、安易に口にしない方が良いということです」
『んー……わかった、ルナがそう言うなら、気をつけるね』
イマイチわからないといった表情をしていたファスは、「デリケートな問題」として捉えたようで、無神経なことをしてはいけないと判断したようだ。
このクラスの召喚獣は、基本的に賢い子が多いのも特徴のように思える。
「主と召喚獣といっても、全てわかりあえるわけではありません。他の世界で今まで生きて暮らしてきたのですから、価値観や考え方の違いはあります。それは当たり前のことです。ですが、頭から否定をせずに、相手の考えに少しだけ耳を傾けてください。考えることは難しく、否定することは容易いのですから……」
私の言葉を真剣に聞いていた召喚獣達には、何か思うことがあったのだろう。おずおずと、ボリス様の召喚獣であるレイスが小さな声で尋ねてくる。
『あのね……違っても……いいの? ボクが変なんじゃ……ないの?』
「変なのでは無く、違うというだけです。それで、自分を責める必要はありません。そして、相手を責めてもいけませんよ? 生きる世界、生きてきた時間、全てが違うのだから、考え方や思いが違っても当然なのですもの」
『怒られない?』
ロヴィーサ様の召喚獣であるプルルが、半透明な体を不安げに揺らす。
「怒られたら相談してください。私たちは、召喚獣科・特殊クラスの仲間ですから!」
『召喚獣科……特殊……クラス……?』
何ソレ――期待と不安と好奇心が入り交じった召喚獣達の視線を受けながら、私はニッコリ笑って見せた。
何も不安に思うことがないように、この先に明るい未来が待っているのだと告げるように、この子達の中にある不安を払拭するように、明るい口調で話しかける。
「そうですよ? だって、主は召喚術師科・特殊クラスの生徒なのですもの。私たちは、召喚獣科なのです。仲間なのですから、お互いに助け合って、わからないことは相談して、この世界に馴染んでいきましょうね」
「そのクラスの担任は、ルナさんでしょうかねぇ」
「ひゃあぁっ! あ、アクセン先生、聞いていたのですかっ!?」
突然声をかけられて焦ったのだが、ボーボの様子を見るために近づいてきていたアクセン先生が此方を見上げてにこやかに話しかけてくる。
「いやはや、召喚獣達が何を話しているのかわかりませんが、ルナさんの言葉は、この周囲にいる人たちには聞こえておりましたからねぇ」
「……え、えっと……あの……その……」
「召喚獣科・特殊クラスですか……良いですね! その副担任は、是非とも私に!」
「いや、ダメだろ」
すかさずリュート様のツッコミが入り、ボーボのそばにいた人たちも深く頷く。
「何故ですかっ!?」
「お前の召喚獣愛が重すぎるんだよ!」
「貴方ほどではありません」
「はぁっ!? 誰が重いだとっ?!」
目をつり上げてアクセン先生に食ってかかるリュート様は、グロッキー状態で突っ伏しそうになっているイーダ様や、それを支えているレオ様に比べると、今でも駆け出しそうなくらい元気そうだ。
体力が有り余っているというのも問題ですね……
「あの、今の話……聞こえて……」
「アイツらは聞こえて無いっていうか……ほら、あの状態だから、聞く余裕が……」
それは良かった……レオ様とイーダ様を見ても何ら変化は無く、更にシモン様とトリス様のサポートを受けながら、何とか休憩地点へ向かって足を進めている状態だ。
「悪先、早めに休憩したほうが良いぞ。こりゃダメだ。昨年よりも体力の無いヤツが多いだろ。弱体化してんじゃねーか? 魔物は……強くなっているんだがな……」
最後の低く鋭いリュート様の言葉に、アクセン先生も苦笑を浮かべ、まるで「同意見ですねぇ」とでも言いたげである。
「今のところ問題無く動けているのは、特殊クラス、騎士科……くらいでしょうか」
「イーダの様子を見ていると、特殊クラスも入れて良いのか迷うが……問題は魔法科と聖術科だな。隊列が乱れて話になってねーぞ」
「ヤレヤレですねぇ……それに比べて黒の騎士団の元気なところは見習いたいですねぇ」
「アイツら、体力と耐久力だけはあるからな」
湿地帯の中を、ケタケタ笑いながら走り回る余裕を見せる元クラスメイトたちへ視線を向け、リュート様は呆れたような苦笑を浮かべた。
どうやら、湿地帯の食材を探しているようである。
このままでは訓練にならないと判断したロン兄様が、班に分かれて食材をどれだけゲットできるか競争させているらしい。
後続を考えて、進行速度をかなり落としましたものね……
「あーいうことしているとさ、俺もうずうずしちまうな……食材だろ? 湿地帯の食材か……ルナ、何が欲しい?」
とても良い笑顔で問われたのだが、リュート様が参戦することによって、確実に元クラスメイトたちが違う意味で窮地へ追い込まれる予感がする。
さすがに可哀想なので、「今日のリュート様は、私から離れすぎなのです」と言って翼をぱたつかせてジーッと見つめていると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてから頬を赤らめて「す、すみません」という謝罪をいただいた。
元クラスメイトのみなさま、私、やりましたよ!
「リューがベリリなのーっ!」
「チェリシュ! 音量、声の音量落として! そういう報告はしなくていいからっ!」
チェリシュの絶叫のようなベリリ報告に、うとうとしていた真白はたたき起こされ、「なにっ!? ベリリっ!?」と周囲を見渡している。
「ルナちゃんが尻に敷いてる……」
「ああ、もう完全に確定だよな……」
「まさかの、嫁さんが強いパターンか……」
「魔王の奥さんが女神で強いとか、最強かよ」
おかしいですね。結婚した覚えが無いのに、どうして私たちはそういう風に捉えられてしまうのでしょう。
小首を傾げている私に習って、召喚獣団子と真白とチェリシュが一緒になって首を傾げる。
その姿が気に入ったのか、リュート様は無言でカメラを取り出して撮影をしはじめ、それを目ざとく見つけたロン兄様とマリアベルが「あとで見せて!」と約束を取り付けていた。
水分の多い地面に足を取られ、伸び放題になっている植物が足元の視界を遮り、不用意に足を進めれば深みにはまり抜け出せなくなる者もいる始末だ。
ボーボの上から周囲の状況を確認出来るからわかったことだが、こんな状態が続けば隊列が乱れ、到着予定時刻から大幅に遅れて現地へ辿り着くのは明白であった。
「思った以上にひでーな……お前ら、俺たちが進む道を追ってこい。それ以外に道はねーと思って進め」
見かねたリュート様がそう言うと、レオ様を筆頭に、リュート様や黒の騎士団が辿った道を追うように歩き出す。
慣れているのか、それともこういう地帯での訓練も積んできたのか……そう考えて、騎士科の方を見ると、彼らも危なげなく湿地帯を歩いている。
なるほど……騎士科でこういう訓練をしていたわけですね!
経験値は違うので足の運び方やスピードに違いはあるが、それでも、他の科と比べものにならない動きだ。
「翼が無いって不便だよねー」
暢気にそんなことを言っている真白は、飛ぶより弾けるほうが多い気もするのだが、そこを突っ込んではいけないのだろうか。
もの言いたげに見ている私の視線に気づかないのか、真白は眠そうにあくびをして目をこすっている。
やはり、疲れているのかと思う反面、それほど疲れるまでに何をしてきたのだろうという心配が拭えない。
今頃、真白の尻拭いで奔走しているだろうオーディナル様と紫黒が不憫でならないが、とりあえずここで大人しくしているなら問題は無いだろう。
「しかし、以前よりも動けるようになっているではないか。いつもなら、もうバテて動けなくなっていたのにな」
「お転婆なファスを追いかけているからかもしれませんわ……」
荒い息をしながらも、何とか歩いているイーダ様の横で元気づけようと声をかけているレオ様との会話が聞こえてきたのだが、いつもイーダ様を振り回しているファスは現在、ボーボの上で団子状態になっているところである。
『だって、イーダは体力が無いんだもん。追いかけっこするくらいしか、動かないし……アレじゃ、体に良くないもん』
不満げにそう言ったファスは、意図的にイーダ様を走らせているのかと感心していたのだが、そこで鼻を鳴らしたのはガルムであった。
『自分の好奇心が優先のくせに、何言ってんだ』
『一応、これでもイーダのことは考えているもん』
『お前の主もそうだけど、レオも……ヴォルフってヤツのこと、考えすぎなんだよな』
『もう居ない人に、どうしてそんなに気を遣うのか私にはわかんない。結局、弱い個体だったってだけじゃん』
ガルムとファスの会話を聞いていて、この言葉を彼らの前で口にしていないか心配になってしまう。
レオ様とイーダ様にとって、ヴォルフ様は忘れられない幼なじみなのだ。
ファスはおそらく、『死=弱い』という考えを持つ世界で生きてきたのだろうが、そこまで考えを巡らせる事が出来るほど、今のイーダ様に余裕はなさそうだ。
「ファス……それをイーダ様に言ってはいけませんよ」
『どうして? 事実なのに?』
「もしも……と、仮定しますね? もし、ファスが死んでしまったとき『弱い個体だったとして忘れ去られる』のと『大切な仲間だったとして思い出して貰える』のは……どちらがよいですか?」
『そ、それは、思い出して……欲しいかも……』
「私も同じです。出来れば忘れないで欲しい。でも、私の事を思い出すのが辛くて苦しいのなら、忘れて笑っていて欲しい。それはきっと、残して去っていった者のエゴですね。残された者は、そう簡単に割り切れないでしょうし……」
『……ルナはまるで、そんな経験をしたような事を言うのね』
家族を思い語る言葉は、ファスに……いえ、召喚獣達にどう響いたのだろうか。
ただ、皆は心配そうに私を見上げてくるので、そんなに酷い顔をしているのかと心配になる。
無言でぎゅっと抱きしめてくれるチェリシュが心配しているのだと伝わってきて、安心させるために翼で彼女の手に触れた。
「つまり、故人を想う気持ちはデリケートな問題なので、安易に口にしない方が良いということです」
『んー……わかった、ルナがそう言うなら、気をつけるね』
イマイチわからないといった表情をしていたファスは、「デリケートな問題」として捉えたようで、無神経なことをしてはいけないと判断したようだ。
このクラスの召喚獣は、基本的に賢い子が多いのも特徴のように思える。
「主と召喚獣といっても、全てわかりあえるわけではありません。他の世界で今まで生きて暮らしてきたのですから、価値観や考え方の違いはあります。それは当たり前のことです。ですが、頭から否定をせずに、相手の考えに少しだけ耳を傾けてください。考えることは難しく、否定することは容易いのですから……」
私の言葉を真剣に聞いていた召喚獣達には、何か思うことがあったのだろう。おずおずと、ボリス様の召喚獣であるレイスが小さな声で尋ねてくる。
『あのね……違っても……いいの? ボクが変なんじゃ……ないの?』
「変なのでは無く、違うというだけです。それで、自分を責める必要はありません。そして、相手を責めてもいけませんよ? 生きる世界、生きてきた時間、全てが違うのだから、考え方や思いが違っても当然なのですもの」
『怒られない?』
ロヴィーサ様の召喚獣であるプルルが、半透明な体を不安げに揺らす。
「怒られたら相談してください。私たちは、召喚獣科・特殊クラスの仲間ですから!」
『召喚獣科……特殊……クラス……?』
何ソレ――期待と不安と好奇心が入り交じった召喚獣達の視線を受けながら、私はニッコリ笑って見せた。
何も不安に思うことがないように、この先に明るい未来が待っているのだと告げるように、この子達の中にある不安を払拭するように、明るい口調で話しかける。
「そうですよ? だって、主は召喚術師科・特殊クラスの生徒なのですもの。私たちは、召喚獣科なのです。仲間なのですから、お互いに助け合って、わからないことは相談して、この世界に馴染んでいきましょうね」
「そのクラスの担任は、ルナさんでしょうかねぇ」
「ひゃあぁっ! あ、アクセン先生、聞いていたのですかっ!?」
突然声をかけられて焦ったのだが、ボーボの様子を見るために近づいてきていたアクセン先生が此方を見上げてにこやかに話しかけてくる。
「いやはや、召喚獣達が何を話しているのかわかりませんが、ルナさんの言葉は、この周囲にいる人たちには聞こえておりましたからねぇ」
「……え、えっと……あの……その……」
「召喚獣科・特殊クラスですか……良いですね! その副担任は、是非とも私に!」
「いや、ダメだろ」
すかさずリュート様のツッコミが入り、ボーボのそばにいた人たちも深く頷く。
「何故ですかっ!?」
「お前の召喚獣愛が重すぎるんだよ!」
「貴方ほどではありません」
「はぁっ!? 誰が重いだとっ?!」
目をつり上げてアクセン先生に食ってかかるリュート様は、グロッキー状態で突っ伏しそうになっているイーダ様や、それを支えているレオ様に比べると、今でも駆け出しそうなくらい元気そうだ。
体力が有り余っているというのも問題ですね……
「あの、今の話……聞こえて……」
「アイツらは聞こえて無いっていうか……ほら、あの状態だから、聞く余裕が……」
それは良かった……レオ様とイーダ様を見ても何ら変化は無く、更にシモン様とトリス様のサポートを受けながら、何とか休憩地点へ向かって足を進めている状態だ。
「悪先、早めに休憩したほうが良いぞ。こりゃダメだ。昨年よりも体力の無いヤツが多いだろ。弱体化してんじゃねーか? 魔物は……強くなっているんだがな……」
最後の低く鋭いリュート様の言葉に、アクセン先生も苦笑を浮かべ、まるで「同意見ですねぇ」とでも言いたげである。
「今のところ問題無く動けているのは、特殊クラス、騎士科……くらいでしょうか」
「イーダの様子を見ていると、特殊クラスも入れて良いのか迷うが……問題は魔法科と聖術科だな。隊列が乱れて話になってねーぞ」
「ヤレヤレですねぇ……それに比べて黒の騎士団の元気なところは見習いたいですねぇ」
「アイツら、体力と耐久力だけはあるからな」
湿地帯の中を、ケタケタ笑いながら走り回る余裕を見せる元クラスメイトたちへ視線を向け、リュート様は呆れたような苦笑を浮かべた。
どうやら、湿地帯の食材を探しているようである。
このままでは訓練にならないと判断したロン兄様が、班に分かれて食材をどれだけゲットできるか競争させているらしい。
後続を考えて、進行速度をかなり落としましたものね……
「あーいうことしているとさ、俺もうずうずしちまうな……食材だろ? 湿地帯の食材か……ルナ、何が欲しい?」
とても良い笑顔で問われたのだが、リュート様が参戦することによって、確実に元クラスメイトたちが違う意味で窮地へ追い込まれる予感がする。
さすがに可哀想なので、「今日のリュート様は、私から離れすぎなのです」と言って翼をぱたつかせてジーッと見つめていると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてから頬を赤らめて「す、すみません」という謝罪をいただいた。
元クラスメイトのみなさま、私、やりましたよ!
「リューがベリリなのーっ!」
「チェリシュ! 音量、声の音量落として! そういう報告はしなくていいからっ!」
チェリシュの絶叫のようなベリリ報告に、うとうとしていた真白はたたき起こされ、「なにっ!? ベリリっ!?」と周囲を見渡している。
「ルナちゃんが尻に敷いてる……」
「ああ、もう完全に確定だよな……」
「まさかの、嫁さんが強いパターンか……」
「魔王の奥さんが女神で強いとか、最強かよ」
おかしいですね。結婚した覚えが無いのに、どうして私たちはそういう風に捉えられてしまうのでしょう。
小首を傾げている私に習って、召喚獣団子と真白とチェリシュが一緒になって首を傾げる。
その姿が気に入ったのか、リュート様は無言でカメラを取り出して撮影をしはじめ、それを目ざとく見つけたロン兄様とマリアベルが「あとで見せて!」と約束を取り付けていた。
324
お気に入りに追加
12,205
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。