345 / 558
第九章 遠征討伐訓練
9-8 なんだかんだで気が合うようです
しおりを挟む「じゃあ、本来はベオルフのところへ移動するはずだったのに、コードを打ち間違えてルナの方へ来ちまったってことか?」
「わー、コードとかコンソールとか専門用語が伝わる相手って楽だー!」
「いや、反応するのはそっちなのか?」
落ち着きを取り戻し、チェリシュから解放された真白はベッドの上にちょこんと座ってリュート様をつぶらな瞳で見上げ、正面に姿勢良く正座して話をしている彼の姿が可愛らしくて、会話の内容はほとんど耳に入ってこなかったが、紫黒ではなく真白が此方へやってきたのは手違いにより起こった事故であったようだ。
真白ってドジッ子ですよね……
ベオルフ様が、あれだけ不安げな様子を見せてしまうのも仕方が無いと納得できる。
人の姿に戻った私の膝上で2人の様子を眺めているチェリシュは、真白を構いたくて仕方が無いのかウズウズしている様子だ。
駄目ですよ、チェリシュ。手をぐっぱぐっぱしてはいけません。
手の動きを見て握りつぶす気かしらと本気で心配していると、真白の話を真剣に聞いていたリュート様は「ナルホドわかった」と言うように深く頷いた。
「まず、システムを扱う上でコード入力の再確認は徹底したほうが良い。そのシステムがどういう物かは知らないが、転送先の確認メッセージは出なかったのか?」
「で……出たと……思う」
「なら、そこでもミスってOKしちまってんだよな?」
「は、はい……」
「行き先確認も、今後は絶対にすること。OKの連打なんてしてたら、今度はどこへ飛ばされるかわかったもんじゃねーだろ」
「お、おっしゃるとおりですー」
「システムを管理する者としての自覚が無いどころか、無責任過ぎる。いいか? システムに直接的な影響を及ぼさないからといって、確認を怠ったり連打したりなんて、システム管理者の風上にも置けない行為だ」
状況報告からリュート様のお説教タイムという華麗なる転身を遂げ、状況が飲み込めていない真白は目を白黒させてぺこぺこ頭を下げている。
ベオルフ様の前では甘えたように我が儘放題だった子が、リュート様の前では借りてきた猫のようだ。
仕事モードどころか昔の仕事を思い出しての上司モードでお説教を始めてしまったリュート様を放っておいたら、チェリシュの我慢の限界どころか、朝食を作る時間も無くなって学園へ行かなければならなくなりそうだと判断した私は、やんわりと彼の名を呼んだ。
すると、今までお説教モードであったリュート様が表情を変え、此方を「どうした?」と問いかけるように見つめる。
キリッとして仕事モードだった彼と優しく微笑む姿の違いに、真白があんぐりとしているのがわかったが突っ込まない。
そこを指摘したら、きっとリュート様の意識がすぐにシステム管理者の上司モードへ移行してしまうからだ。
「今はそのくらいにしておいてください。後から、真白の兄である紫黒とベオルフ様にお説教されるはずですから……それに、私たちは本日から討伐訓練ですので、準備もしなければなりませんし、朝食も作らないと……」
「あ、そうだったな。まあ、この話はあとでにしよう。どうせ、すぐには帰れないんだろ?」
「紫黒とオーディナルが迎えに来てくれるはずだから、すぐに帰れるはずだよ」
「……オーディナルが来るのか?」
「なんか、会議があるって言ってた! ねー、ルナ」
「はい。時空神様たっての希望で、オーディナル様を交えて十神会議を開催することになりました」
「……へ? そこまで大事な案件があったか?」
驚くリュート様に言いづらくはあったが、黒い結晶について詳しいことを語らなければならないと覚悟を決めて説明しようとした私よりも先に口を開いたのは真白であった。
「あのねー、リュートのパパさんの腕とクラーケンに付着していた黒い結晶についてなの。アレは人だけではなく神族の精神を侵食するおそれがある危険物質だから、それに対しての話し合いを行う予定なんだよ」
「神族にも影響を及ぼす精神汚染?」
「そうなの! 危険でしょ? 魔物は凶暴化して大暴れするし、人はある一定の数値に達すると見境がなくなる状態になる感じかなぁ」
言っていることに嘘は感じられないが、事実でもない。
魔物に関してはその通りだろうが、人は魔物に変質してしまうおそれがある。
それをリュート様に話すのは躊躇われたのだが、真白はそこを伝えないつもりなのだろうか。
本当にそれで良いのか考えあぐねていると、真白は小さな体を更に丸くして真剣な声色で呟く。
「――というのが建前ね」
「建前……?」
「魔物はそれで正解だけど、人は――魔物に変質するおそれがあるの」
「はっ? 人が……魔物に……なるだとっ!?」
「あくまで可能性だよー。これはリュートだから教えたんだからね? 他の人には言っちゃ駄目だよ? それに、竜人族が人を食らうと魔物になるんだから、あり得ない話ではないでしょ?」
「そ、それは……確かに……そうか」
え……そ、それは私が初耳なのですがっ!? と困惑する私を置いて、2人の会話は続く。
「つまり、人は魔物になる因子を持つの。それを刺激して、魔物に変えちゃおうと考えているヤツがいる。しかも、この世界でそれを実験しているってわけなの。だから、オーディナルが動くんだよ」
「……確かに、オーディナルが動くほどの大事だな」
片手で目元を覆い、深い溜め息をつきながらも何かを考えているのか、事実を受け入れるのに時間がかかっているのかはわからないが、リュート様に苦悩の色が見える。
そんな危険物質に侵食されていた父への心配や、衝撃は言葉に出来ない物だったはずだ。
チェリシュも心配そうにリュート様を見ているが、邪魔をしてはいけないと感じているのか声をかけることは無かった。
本当に聡い子です。こうしてチェリシュは、知り合ってからずっとリュート様を見守ってきたのかもしれないと思うと、少しだけ胸が苦しくなる。
大丈夫だという意味もこめてチェリシュの頭を撫でると、此方を見てにぱーと笑ってくれたのが嬉しいと感じるが、もっと子供らしくあっても良いようにも感じてしまう。
長い沈黙の後、ふぅ……と深く息を吐く音が聞こえ、彼は姿勢を正すと真白を拾い上げて優しい笑みを見せてくれた。
「サンキューな。お前が来て説明してくれたから助かった。この事実をルナが言うには、キツかったと思う。ルナは……優しすぎるからな」
「えへへー、それほどでもー」
「お礼にシステム管理についての必要知識を徹底的に仕込んでやるから安心しろ」
「え、そ、それはお礼じゃないよ? それは、拷問っていうんだよ?」
「違うな。教育だ」
「ええぇぇぇーっ!? わ、私には……真白には必要ないよーっ」
「必要の二文字しかねーだろ!」
なんだかんだで気があうのか、真白はすぐに本性を現して大暴れだが、それを物ともせずに捕まえてしまうリュート様は手際が良くて、こういうことに慣れているのではないだろうかという考えさえ浮かんでしまう。
まあ……幼なじみたちがクセのある方々なので、そこで鍛えられた可能性も捨てきれない。
2人の言い合いを尻目に私とチェリシュは顔を見合わせ、とりあえず朝食の準備をするためにベッドを抜け出して身支度を調えることにした。
本日必要な物はリュート様のアイテムボックスの中に収納されているし、私自身が必要になる物は、創造神と創世神の愛の絆によって魔改造され、キャンピングカーになってしまった、もとキッチンカーの鍵や発酵石の器などだ。
全部料理関係だが、これが私のスキルなのだから仕方が無い。
あとは、数種のポーションと救難信号が出せる魔石など、お母様にいただいたものばかりだ。
全てをチェックしてから部屋に戻ると、まだリュート様と真白は言い合いをしているのだが、準備は完了していたようで流石の一言である。
真白は真白で、そこまで言い合いをしているのなら此方へ来れば良いのにと考えていたら、定位置だと言わんばかりにリュート様の頭の上へ乗ってしまい、リュート様も特にそれを咎めたりはしない。
……やっぱり、気が合うのですね?
「そういえば、ルナ。他に何か重要なこととか連絡しておいたほうが良いことってあるか? オーディナルと黒結晶のことは真白から聞いたが……」
「い、いえ、他にはなかっ……あああぁぁっ! 重要なことを忘れておりました!」
「な、なんだ?」
「ベオルフ様にお願いしたら、エナガになってくださったのです! この指輪を複製したものを今は身につけていて、魔力容量のために制限はかかりますが、エナガにはなれるという話でした」
「な……なん……だ……と」
ガクッと片膝をその場につけたリュート様は、頭を前へ傾けたことで真白が落ちることを心配して手を添えてフォローしたが、小さな白い毛玉はボンドで固めたように微動だにしない。
す、凄い……飛ぶのはあれだけヘタなのに、それ以外の能力値が高いです!
「見たかった……それは、俺も見たかった!」
「チェリシュも見たかったのー!」
「可愛かったよー! ルナのお膝の上で、ちょこんと座って大人しくされるがままになってたのー!」
「ぷっ……やっぱ、ルナに弱ぇーんだな」
「ベオにーには、ルーに甘々なの」
もう、好き勝手放題に言って……でも、まあ……断られるとは考えていない部分もあったので、お願いをきいてくれるとは思っていましたが……
「でも、ベオルフは真白には失礼なんだよ? 『鳥類を一から勉強してきた方が良い』みたいなことを言うし!」
「それは真白の飛び方が問題なのでは……」
「ルナまで酷い! ルナには飛べなくなる加護をかけとくねっ!」
「真白のほうが酷いですよっ!?」
「大丈夫なの、チェリシュが見事にキャッチするのっ」
わいわいと賑やかな会話を交わしながらキッチンへ移動しはじめ、物珍しいのか真白はキョロキョロしながらもチェリシュとの会話を楽しんでいる。
真白を頭の上に乗せ、チェリシュには肩車――朝から、お父さんは大変ですねリュート様。
そして、いつものように作業をしていたカカオとミルクだけではなく、既に此方へ来てパン生地をこねていたマリアベルに挨拶をしてキッチンへ入ると、笑顔で挨拶を返してくれたのだが、何故か二度見してから頬を引きつらせて一歩下がる。
「師匠が分身?」
「師匠に新たな特技ですかにゃぁ」
「お師匠様は、日に日に成長していくのですね。見習わなくては!」
分身という本日二度目の言葉を聞いて、それほど真白と似ているだろうかと首を傾げてしまう。
おかしいですね……私は、もっとシュッとした感じのはずですよ? 真白みたいに丸っこくころころしておりません。
ジトリとカカオ立ちを見て無言の抗議をしていると「分身なんてしてるわけねーだろ?」と呟くリュート様に、苦笑が浮かんでしまう。
リュート様は言えませんよね?
そういう思いをこめた視線を的確に読み取ったのか、彼は視線を逸らして小さく咳払いをし、元気な真白は小さな翼を広げて胸を張る。
「真白なの! よろしくなの!」
「チェリシュなの、よろしくなの!」
いつの間にかチェリシュの口調がうつった真白と、何故か一緒に自己紹介を始めてしまったチェリシュの愛らしいコンビに、キッチンへやってきたお母様がメロメロになり、出勤前に顔を出したお父様が支えながらも孫でも見た祖父のように目尻を下げ、一気に人口密度が高くなったキッチンは、それなりに賑やかになったのである。
324
お気に入りに追加
12,205
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。