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第八章 海の覇者

相乗効果は凄まじいのです

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 パラリとレシピをめくる音がして、そちらを見ると、苦笑をにじませたイグニスさんが数枚めくったところで指を止め、小さな呟きを漏らします。

「しかし、これだけのレシピを『リュート様のためだけ』に……ですか」
「はい。リュート様は魔力消費が激しいので、よく食べますから、同じ料理だと飽きてしまう可能性がありますので、品数を増やして対応しております。そうしたほうがバランスも良いですし、体も健康に保てます」
「凄いですね……でも、分量だけではなく品数も作るとなったら大変なのでは?」
「チェリシュや私に弟子入りしている子たちが手伝ってくれますから、さほど大変には感じません」

 それを聞いた彼は驚いたように目を丸くしてチェリシュを見ると、数回瞬きをしてから首を傾げました。

「えっと……春の女神様もですか?」
「あいっ! ルーと一緒にお料理するのが大好きなのっ」
「女神様の料理とは……リュート様、恨まれますよ?」
「大丈夫だ、今のところ、あの夫婦には何も言われていない」
「リュート様くらいですよ……」

 ヤレヤレといった様子で溜め息をつくイグニスさんの様子を見ていると、本来なら太陽と月の夫婦神が「娘に何をさせているのだ!」と怒鳴り込んでくる可能性があったのでしょうか。
 えっと、それは全て私のせいですよね……
 何というか……ほ、本当に申し訳ありません。

「ルーのお料理が美味しそうって、パパとママはうらやましがっているの! チェリシュが覚えて帰るからねって言ったら、とーっても喜んでくれたの。だから、ルー、これからもお願いしますなのっ」

 そういって、チェリシュがぺこりと可愛らしく頭を下げるので、私は慌てて頭を上げさせます。

「チェリシュに頭を下げて貰うほどのことをしておりません。むしろ、いつもお手伝いしてくれて助かります。私のほうこそ、本当にありがとう」
「えへへー、チェリシュは役立ってたの! じーじに自慢できるのっ」

 にぱーっと笑うチェリシュの頭を撫でていたら、サラ様が「文句なんて出るはずがないよ」と、ちょっぴり呆れ顔でイグニスさんを見ておりました。

「サラ先輩は、その辺りを熟知しているのでしょうが、我々は出来るだけ最悪の事態にならないように気をつける必要がありますから……」
「それなら、ルナに関しては、その心配を省いて良い。十神はルナの敵にはならない。その背後に誰がいるかわかっているから余計にな……」
「まあ、父親のオーディナルに楯突く馬鹿はいないだろうな」
「じーじは最強なのっ」

 オーディナル様の加護、おそるべしっ!
 で、でも、『十神は敵にならない』という言葉には疑問を覚えます。
 サラ様はご存じないかもしれませんが、秩序の神様は私を敵視しているようですよ?
 さすがに、ここでは言いませんが……

「あと、確認しておかなければならないのは……リュート様、周囲に認知されている『食の変人』と『美食の魔王』のどちらが良いですか?」
「アンタさ……さっきから、爽やかな笑顔で俺に喧嘩売ってねーかっ!?」
「大事なことなので、ご返答いただけると助かります。レシピの売り込み文句にリュート様の名前をお借りしますので」
「馬鹿言うな。そうしたら、身元がバレ……」
「無駄だと思います。これだけの料理を、他に誰が作れるというのですか? お店の料理もそうですが、すぐに広まりますし、身バレ前提で対策を練らないといけません。むしろ、それを逆手にとっていこうと考えております」

 さすがのリュート様も難しい顔つきになり、確かに……と、納得した部分があったのか、沈黙してしまいました。
 しかし、それでは私の二つ名というか、登録名の『桜月』って、意味が無いのでは?
 リュート様の私という意味合いを持つと言って、リュート様が上機嫌で登録しておりましたが……意味が無いとなれば、少し寂しくもあります。

「どうしたんだい?」
「登録名の意味がなかったのかな……と」
「そんなことはないさ。レシピは全て『桜月シリーズ』としてまとめられているからね。レシピを求める客も、その名前を目当てに来るようになるさ」
「それなら良いのですが……」
「ブランド名は大事です。いつかは、誰もが桜月シリーズのレシピを求めてくると思いますから、今のうちに数をそろえておかなければいけませんし、レシピも毎週これくらいの数が来ると考えたら、急がないと間に合いません」

 サラ様とイグニスさんの説明を受け、なるほど……と、納得していた私の横で、沈黙を守っていたリュート様が「ふむ……」と頷き、渋々といった様子で口を開きました。

「さっきの究極の二択だけどさ……どちらかじゃないとダメなのか?」
「巷で聞く呼び名は、その二つが多いです。他にも『食の魔神』とかでしょうか」
「グレードアップしてねーか?」
「此方の方が、迫力はありますね」
「いや、料理レシピを広めるのに、なんで迫力が必要なんだよ」

 リュート様に凄まれても、あははっと朗らかな笑い声を上げるイグニスさんは、本当に強者です。
 本当に、人は見かけによりませんね。

「変人って呼ばれて喜ぶヤツはいねーから……まあ、変なヤツじゃない方にしておいてくれ」
「魔王と魔神なら、どちらが良いでしょう」
「……どっちかしかねーのかよ」

 ガックリと肩を落とすリュート様には申し訳ないのですが、どちらもお似合いです。
 悪い意味ではなく、こう……魔王みたいな格好や、魔神みたいな格好をしても似合うという意味ですよ?
 絶対にカッコイイと思いますっ!

「そういえば、ルナ。最近はリュートの食欲が凄いから、準備が大変で疲れていないか心配していたけど、大丈夫なんだね?」

 ここには私がいるから正直に言っても良いんだよ? というように、サラ様が心配そうな顔をして覗き込みながら尋ねてくださいました。

「心配していただいて申し訳ないのですが、全然大丈夫です」
「本当だね?」
「はい、楽しんで食事の準備をしておりますから、ご心配には及びません」
「楽しんで?」
「だって、お料理の準備はリュート様のためにしていることですもの。美味しいと言ってくれる時の笑顔が見たくて、頑張ってしまいます」

 うふふっと笑って答えている私に、今度はイグニスさんが心配そうに質問してきます。

「頑張りすぎていませんか?」
「大丈夫です。料理を作っている時のほうが、調子が良いくらいですもの。それに、リュート様の笑顔のためなら苦でもありません。それくらい、私のほうがリュート様の笑顔に力をいただいております。そう考えてみると……私の力の源はリュート様の笑顔ですね」

 続けて、どういう時に見せる笑顔が好きか熱く語り、それを「そうなのですね、とても素敵なことです」と、ほんわかした様子で聞いてくれるイグニスさんと、顔を背けて肩を震わせているサラ様……
 えっと、サラ様?
 何かありましたか?

「その辺で……勘弁して……」

 何故か隣から弱々しい声が聞こえてきて、どうしたのかと視線を向けると、壁に額をこすりつけるようにして両手で顔を覆っているリュート様がいらっしゃいました。
 え……ど、どうしたのですかっ!?

「リューが、ベリリなの……仕方ないの……ルーの言葉がいっぱいだったの」
「え……え?」

 訳がわからずに戸惑っていると、サラ様が弾かれたように笑い出します。
 お腹を抱え、体をくの字に曲げながら、目尻に涙まで浮かべて笑っているサラ様に、イグニスさんが非難がましい視線を向けました。

「サラ先輩。失礼ですよ」
「いや、だって……だってさ……あのリュートが……ぷっ……あははははっ」
「全く……先輩が失礼しました。お話を聞いて沢山理解することができました。このレシピは、責任を持ってご登録させていただきます。全てのレシピを広めるという方向でよろしいのですね?」
「はい。できるだけ広めてください」
「承りました。……えーと、さっそく俺も習得したいから、登録を早く完了させないといけないな」

 ……あれ?
 なんだか……口調が……?

「珍しく仕事中に素が出ているぞ。そんなに気に入ったレシピがあったのかい?」
「あ……失礼しました。えっと……友人に作ってあげたくて……ですね」
「ああ、例の女医か。医者のくせに不養生がたたっていると聞くけど?」
「地上で医療の研究が出来るようになったと、大喜びしているのは良いのですが、どうも……寝食を忘れる傾向が酷くなったというか……」
「困ったもんだね」

 有翼人のお医者様でしょうか。
 医者の不養生とはよく言ったものですが、寝食を忘れるほど没頭するなんて、リュート様タイプに間違いありません。
 何かに没頭する方は、自分のことを気遣わない傾向にありますから心配ですね。

「リュー……よしよしなの」
「頼むから、暫くスルーしておいて……」

 未だ壁にもたれかかっているリュート様と、心配して頭をなでなでしているチェリシュの父娘風景は、とても可愛らしいのですが……ちょっぴり心配です。
 リュート様へ声をかけるために口を開こうとした瞬間を見計らったように、イグニスさんから「放っておいてあげてください」と言われたのは何故でしょう。
 私が声をかけるのはダメなのですか?
 そういえば、ベオルフ様にも「暫く放っておいてやれ。それが優しさだ」とか言われたような……
 これも、その類いでしょうか。
 心配ではありますが、ここはチェリシュに任せることにしましょう。

「まあ、ルナは今後、こいつを頼れば良いさ。何せ、一番仕事が出来る上に、神族からの信頼も厚い。イグニスのチームが担当するなら、全く憂いはないよ」
「先輩にそう言っていただけると嬉しいです。後任、シッカリと頑張ります」
「さっきも言っていたけど、レジェンド級レシピもゴロゴロ出てくる可能性があるから、気を抜くんじゃないよ」
「了解です。既に対策は考えていますし、俺たちのチームワークで対応してみせます」

 あ、また俺って言っていますね。
 時々出てきてしまう素が可愛らしくて、親近感を覚えてしまいます。
 新たなレシピギルドの担当者であるイグニス・フレイドさんは、とても優しく優秀な方で安心しました。
 これからお世話になる方に、差し入れと称して持ってきたアップルローズタルトを差し出すと、中身を見た彼は目を丸くします。

「花も食べられるのですか?」
「い、いえ、それはリンゴで作った花です」
「……あっ! 先ほどのレシピにあった……コレだ。へぇ……なるほど、完成形はこういう形になるのですね。絵ではわからない部分が多くて驚きました」

 確かに絵と実物では、随分と印象が違うでしょう。
 日本にあった写真は現時点ではありませんし、食品サンプルみたいな物は、日本独自の文化だったようですから、此方には存在しないでしょうから、難しいですよね。

「でも、食品サンプルって、材料さえあれば作れるのかしら……」
「うん? 食品サンプルってアレのことか……あ、そうか、その手があったかっ!」

 いきなり復活したリュート様は、私を見てぎゅっと手を握ります。
 両手を大きな手で握り込まれ、顔の位置も近くて私は嬉しいのですが、あ、あの……どうしてこうなったのでしょう。

「ルナ、サンキューな。そうだよ、その手があったよ! なんで気づかなかったんだ、俺っ!」
「え、えっと?」
「最近、メニュー表が文字だけだとわかりづらいっていうクレームが来ているって聞いてさ、対策を考えていたところなんだ。詳細な絵を描ける人には依頼して、メニュー表は作り替える予定だったんだけど、それだけじゃ弱いなって悩んでいたんだ」

 確かに、いまイグニスさんが言ったように、イラストだけではわかりづらいですよね。
 実物がどういうものか、実際に運ばれてこないとわかりません。

「最近、そういうクレームが増えたのは確かだねぇ……でも、絵師に任せるだけでは足りないのかい?」
「イグニスの言葉でわかるだろ? 今度は実物がわからないとか言われるんだって! そうなる前に対策を打つ。まずは、店のオススメだけでも、実物に似せたサンプルを作ればいいんじゃねーかって考えている」
「そ、それって……いずれは、全メニューを作るってことですか? リュート様……お言葉ですが、これから増える一方なのですよ?」
「大丈夫だ。まずは、店の看板メニュー、客に人気のメニューと制覇していって、順々に作っていけば良い。作成する工程には考えがある」

 え?
 閃いただけではなく、もう工程まで考えていらっしゃるのですか?
 ま、まさか……

「リュート様? 私たちは明日から討伐遠征訓練ですよ? わかっていらっしゃいますか?」
「あ、うちの工房でやるんじゃねーんだ。知り合いの工房に頼むつもりで、仕事がなくて困っていたから丁度良い」
「それなら良いのですが……」
「そして、最近は行列も出来る時間帯があると聞いたから、外にそれを展示して見て貰うようにする。そしたら、料理の全体的なイメージが掴めて、注文もしやすいし、言葉で説明する時間も少なくて済むから、シロたちの負担も減る」

 あ……確かに、店で注文を取っている時に、新しい料理が出てきたら、どういうものか説明するのに大変そうでしたものね。
 そういう場合、キュステさんとシロが対応していたみたいですが、その手間が多少は省けるようになるなら、とても良いことです。

「一気に悩みが二つも三つも解決した。ルナはすげーな、やっぱり幸運の女神かもしれねー……いや、幸運の女神だろっ!」

 そういうと、感極まったように抱きしめられたのですが……間に挟まれたチェリシュは大丈夫でしょうか。
 心配になってどうしようかと考えていたら、嬉しそうな声で「さすがはルーなの、ぎゅーっなの」といって抱きつく感じがしたから、安心しました。

 えへへ……お役に立てたようで、とても嬉しいですっ!

「な? 飽きない二人だろう?」
「凄まじい相乗効果ですね」

 面白がっているサラ様と、どこか納得しているイグニスさんの声を聞きながら、リュート様のぬくもりに、これでもかというほど包み込まれた私は、とても幸せで、おずおずと彼の背中に手を回したのは、気恥ずかしいので内緒なのです。

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