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第八章 海の覇者

リモートお料理会の準備完了ですっ!

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「とりあえずは、華やかな菓子ですよね。本日中ということですから、移動のことも考えると、あまり時間が無いようですし……」
『無理を言っているとは思うが、できるだけ短時間で済ませてもらえると、とてもありがたい』
「説明が終わってから作ることを考えなければいけませんが、手順がちゃんと伝わるでしょうか……」

 音声のみで説明して、お菓子を初めて作るベオルフ様がチャレンジをするなんて、不安しかありません。
 できるだけ簡単な物にしたいのですが、見栄えが良い華やかな菓子となると難しいです。
 作り方もそうですが、飾り付けもこだわらなければなりません。
 つまり……

「せめて、昨晩わかっていたら、夢の中で説明できたのに……目の前で作って見せるほうが良い出来映えになるのですが、言葉だけでは限界がありますから……」
『確かにそうだな……ん? ちょっと待ってくれ』

 そうおっしゃったベオルフ様は、誰かと会話をしているような様子で、ブツブツと呟いていらっしゃいます。
 はて……誰とお話をされているのでしょう。

『声は聞こえていないのか?』
「ベオルフ様の声は聞こえておりますが……」
『そうか。主神オーディナルの声は聞こえていないのだな』
「先ほどは聞こえていたのに……どうして今は全く聞こえないのでしょう」

 ベオルフ様の低い声で『わからん』と言われた瞬間、リンゴの甘い香りをまとった時空神様が目の前に現れました。
 い、いつも突然で驚いてしまいますが、まだ正面に現れてくださるだけマシというかなんというか……

「父上は調整の真っ最中ダカラ、いまは他に気を回せないんダヨ。俺まで借り出されちゃっタ」
「時空神様、口の端にクリームが……」
「あ……いや、だって、リンゴパンが美味しそうだったカラ、ついっ」

 どうやら、兄と一緒に食事中だったようですが、オーディナル様に頼まれて此方へ来てくださったようです。
 しかも、兄はベオルフ様のピンチは妹のピンチでもあるから、手助けをしっかり頑張ってこいと言い部屋から蹴り出したとか……
 それを周囲にわからないように気を遣って、日本語でコッソリ教えてくださいました。
 その言葉と内容を理解しているリュート様が、優しく微笑み、チェリシュは誰の話をしているのか察したのか、目を輝かせてニコニコしています。
 前世の兄の心遣いが嬉しくて、思わず私も笑顔になりました。

「ルナちゃんの方は俺とチェリシュ。ベオルフの方は父上とノエルがいるカラ、ちゃんとリンクさせることが出来るはずダ。まあ、君たちだっタラ、そのうち、俺たちの助けがなくても出来るようになるかもしれないケド……」

 時空を超えて、会話をしている時があったみたいだしねぇと言われて、私は思わず首をすくめてしまいました。
 た、確かに……
 以前から、そういうことがチラホラありました。
 意識を飛ばして、リンクすることもありましたし……

「チェリシュの力も……なの?」
「神獣との聖約が役に立ったネ。こちら側から、増幅を担当してくれるノエルのサポートをお願いしたいんダ。ルナちゃんの新米時空神のルーペに触れて力を注げば、繋がりやすくなるはずダカラ、お願いできるカナ」
「任せてなのっ!」

 チェリシュは時空神様の腕に抱き上げられ、私が首から下げている新米時空神のルーペに触れます。
 しかし、二人が指先で触れたというのに、うんともすんとも反応がありません。
 はて……こ、壊れてしまったのでしょうか……

「それって、レンズの部分じゃ無くて、ココに触れねーとダメなんじゃねーの?」

 リュート様が不意に新米時空神のルーペに触れて指し示したのは、神石のクローバーの下にある、小さな宝石でした。
 飾りの石ではなく、ここに意味があるのでしょうか。
 でも、どうしてそれをリュート様がご存じなのでしょう。

「あ、そっか。こっちだったよね」

 時空神様も笑いながら「そうだった」と繰り返し言いながら頷いておりますが……ほ、本当に、それが正解だったのですか?

「リューはすごいの……わかっちゃったの」
「あ、いや……な、何となく? だったんだけど……」

 どうしてそう思ったのかと問われたらわからないというような様子で、リュート様は困ったように苦笑いを浮かべております。
 リュート様にしか感じない、力の流れでもあったのでしょうか。
 私とチェリシュが不思議そうに首を傾げている中、ベオルフ様は沈黙しておりましたが、此方の会話を聞いて、状況を確認しているのかもしれません。
 こういう時に焦らず、まずは状況把握から入るのは、とても彼らしいと感じました。

 チェリシュと時空神様の神力が注がれると同時に、新米時空神のルーペからオーディナル様とノエルの気配を感じます。
 どうやら、あちらでも力を注いでくださっているようですね。

 その直後、不思議な感覚が体を支配していくのに気がつきました。
 一体化……といったら良いのでしょうか。
 体の隅々までもが満たされていくような……永らく失っていた物を取り戻したような感覚がして、思わず私は自分の体を抱きしめました。

 それは、嫌な感覚では無く、とても幸せで……
 遠い昔は、当たり前にあった物なのだと、どこかで誰かが囁いた気がして、ゆっくりと瞳を開くと同時に、急ぎ現れたらしいアーゼンラーナ様の焦った表情が視野に飛び込んできました。
 よほど急いでいたのか、いつものように驚かせることなく、此方へやってきたようです。

「な、何事じゃっ……この力は……いったい……」
「ああ、やっぱり俺の可愛い奥さんには気づかれちゃったカ。問題ないヨ。ルナちゃんとベオルフの感覚が繋がっただけダカラ」
「ゼルっ! それと……ルナ……なのか?」

 いぶかしげに私を見つめるアーゼンラーナ様に笑顔で返答しようとしたのですが、その前にあちらの風景が脳裏に浮かんだことに気づき、驚いてしまいました。
 見たことの無い宿屋の一室でしょうか。
 恰幅の良い優しそうな中年の男性と、薄汚れてはいますが顔立ちの綺麗な少年が、正面の席に座って心配そうに此方を眺めている映像でした。
 意識を向ければ、あちらの光景が確認できるような感じです。
 説明するのは難しいのですが……例えるなら、頭の中に大型の中継モニターができたような感じですね。

「え、えっと……ベオルフ様と視覚が繋がっているのでしょうか」
「多分、聴覚も繋がっているはずダヨ。声は聞こえないカイ?」

 時空神様に問われた瞬間、「ルナー? 聞こえるー?」というノエルの声が響きました。

「あ……ノエル。聞こえていますよ……って、私の声は聞こえないのですよね」
「ノエルなの? ノエルー、チェリシュなのーっ」

 よじよじと私の体によじ登ってきたチェリシュが、耳元で大きな声を上げますが、さすがに聞こえていないようで、向こうは向こうでノエルが大騒ぎ中のようでした。
 電話で会話をしていたところ、通話相手を知って受話器越しに騒いでいる幼子みたい……なんて思いつつも、視覚と聴覚が繋がっている状態だというのに、あまり混乱していない状況のほうに驚いてしまいます。

「ルナちゃん。感覚はドウ? 痛みや違和感や苦しいといった症状は出ていないカナ?」
「普通は苦しかろう……人にそのようなことをすれば、発狂するレベルじゃぞ。神族の感覚で人に無理をさせでないわ。ルナ、遠慮はいらん。キツいのなら、正直に言うのじゃ」

 珍しく厳しい声で叱咤するように言ったアーゼンラーナ様は、心配そうに私の肩に手を乗せてのぞき込んできますが、どちらかというと……

「え、えっと……快適というか、違和感はありません。慣れている……ような、不思議な感じで……見たい方を意識すれば見ることができて、声はどちらも聞こえますし、とても便利な感じがします」
「そ、そう……なのか? リュート、お主からも言わぬかっ」
「ルナとベオルフだったら、大丈夫だろ? しかも、メイン調整をしているのはオーディナルだ。二人に甘いあの神がいて、めったなことにはならねーよ」

 リュート様は、ベオルフ様のこともオーディナル様のことも信じているというように、自信を持ってそうおっしゃってくださいました。
 なんだか、家族を信頼し褒められた気分になって、とても嬉しいです。
 と、とりあえず、私の耳元で「ノエルなのーっ」と言っているチェリシュをどうにかしなければっ!
 そ、そろそろ耳が痛いです。

『そちらの幼い女神も、ノエルも、そろそろ静かにしないか。ルナティエラ嬢の耳が壊れてしまう』
『そ、それはマズイから、ダメー』
「それは困ったの。ダメダメなのっ」

 チェリシュとノエルが同時に静かになったと同時に、私は驚いてチェリシュを見つめます。

「ベオルフ様の言葉が聞こえたのですか?」
「……はっ! き、聞こえたのっ」
『ボクも、ルナの声が聞こえたーっ』
『わかったから、静かにしろ』

 ベオルフ様がわしゃわしゃとノエルの体を撫で回し、きゃっきゃ喜んでいる姿を、モニター越しに見ているような感じで見ることが出来ます。
 これは……とっても便利かもっ!

「これでしたら、お料理の説明もちゃんと出来ますっ! ベオルフ様、華やかな菓子を一緒に作りましょうっ!」
「リモートお料理会かよ……」

 リュート様の的確なツッコミに、意味を理解した時空神様だけがプッと吹き出します。
 でも、感覚としてはそれに近いかもしれません。
 ベオルフ様の見ている風景から周囲の状況を確認していると、テーブルの上に置かれているお菓子に見覚えがありました。
 確か……セルフィス殿下が懇意にしている伯爵家が運営する商会が作っているお菓子……では……
 味はイマイチなのに、宣伝効果で売れているお菓子です。
  しかも、南の辺境伯が親しくしていたお店の模倣品で、美味しく出来ているならまだ救いもあったでしょうが、たいしたことない粗悪品なのですもの。
 南の辺境伯からしたら、面白くないことこの上ないはず……。
 これも、南の辺境伯を怒らせた要因なのですね。

 しかし、こういう方法で仕返しをするくらいの知恵はあるというのに、何故、あのミュリア様に気づかなかったのでしょう。
 恋は盲目とはよく言ったものです。
 もしかして……悪知恵だけ働くタイプ……とか?
 そう考えていた私の心の声が聞こえていたのか、ベオルフ様が低く唸りました。
 あ……えっと……物騒なことを考えてはいけませんよ?
 私に考えが流れ込まないようにしているようですけれど、どういう部類の考えを抱いているかはわかってしまうのですから!

「ま、まさか……菓子を作るためだけに……?」
「あちらではピンチなのです。華やかな……」

 華やかなお菓子は何にしようかと考えながら目の前のアーゼンラーナ様を見ていたら、思い浮かぶ物がありました。
 その手がありましたっ!

「ベオルフ様。突き返されたお菓子は、テーブルの上にある物ですよね? 味はどうでしょう」
『少し待て』

 ベオルフ様が目の前の商人の男性マテオさんに確認を取り、包みを開いて、お菓子を一口頬張ります。

『甘みが少し強く、硬くてパサパサしている』
「では、それを使いましょう。砕いてタルト生地にします」
『ふむ……再利用か。時間短縮にもなりそうだ』

 さすがはベオルフ様。
 私が意図していることに気づいてくださって助かります。

「あとは、ノエルのリンゴを使いましょう。精神汚染を心配されていたようですし、万が一そういう状況下にあったとしても、ノエルのリンゴだったら……」
『浄化される可能性がある……と?』
「その可能性はあるのではないかと……ですから、試してみませんか? まあ、それは副産物ということで」
『面白い。やってみよう』

 美味しくて綺麗な菓子を食べたら浄化されましたなんて、面白くないですか?
 実際、甘いお菓子を食べたら、ふわ~と幸福感に満たされて幸せな気持ちに浸れますから、浄化されている感じがしますよね。
 実際に浄化される保証はありませんが、庭園で育まれたリンゴに、それくらいの効果は期待できそうですもの。
 それでなくても、回復効果を得られているのですから……
 私とベオルフ様の特徴を、そのリンゴが持っていても不思議では無いのかもしれません。

 ノエルがリンゴを準備して、ベオルフ様は料理を作るために厨房へ移動を開始し、宿屋の人に一言断ってから、急ぎ身支度を調えているようです。

「な、なんか……変な騒ぎになってねーか? 師匠……なんかあったの?」

 大荷物を抱えて戻ってきたカカオは、時空神様とアーゼンラーナ様がいらっしゃることにも驚いておりましたが、私の表情から何かを感じ取ったのか、ミルクとマリアベルに目配せをしました。
 二人も頷き、荷物を置いて、それぞれの持ち場に戻ります。
 エプロンのひもを締め直し、気合い十分と言った様子でした。

「アーゼンラーナ様にいただいたリンゴで、お菓子を作りましょう。タルトタタンを作るお話をしておりましたが、先に華やかなお菓子を作りましょうね」
「華やかな……菓子?」
「見栄えが良く美味しいお菓子です。コツは、リンゴを薄切りにして仕上げていく感じですね」

 少しだけ手間がかかりますが、とても綺麗な仕上がりになるはず。
 必要な物を準備して、あちらにも材料があるのかどうか確認して、作業台の上に置かれた材料を最終確認。
 小麦粉、卵、バター、牛乳、ベリリジャム、カカオが持ってきてくれたショートブレッドなどが並んでおります。
 これで、準備は整いました。
 こちらも、あちらも、沢山の人に見守られながら、南の辺境伯であるナルジェス・フルーネフェルト卿をあっと言わせるようなお菓子を作るために、リモートお料理会スタートです!

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