178 / 558
第四章 心を満たす魔法の手
オーディナル様のアイギス
しおりを挟む「オーディナル様の力を、この指輪から感じます」
私がそう言った瞬間、そこかしこから「は?」「え?」という驚きと疑問の声がこぼれ落ちました。
誰もが疑問を覚えるはずです。
どうして、オーディナル様の創った物がテオ兄様の指にはまっているのでしょう。
「アーゼンラーナ、まさかとは思うんだが……白と黒の全部オーディナルの作品とか言わねーよな」
「少なくとも、ラングレイとクルトヘイムに伝わる物は、どちらも神鉱石で出来ておる。それを扱うことができるのは、父のみじゃ」
なるほど……そういう理由からも、オーディナル様が創った物であると言い切れるわけですね。
気がついて嬉しいと言わんばかりの、喜びに満ちた笑顔でした。
もしかして、今までは口外出来なかったのですか?
父の偉業を伝えられず、不満だったとか……?
「父の愛し子であるルナであれば、触れるだけで良かろう」
「……え?」
な、なんか……すごくプレッシャーのかかる一言をいただきましたよっ!?
イーダ様の浄化で良いのではないでしょうか。
しかし、指輪にまとわりつくモヤも気になりますし……
リュート様を見上げると、彼は黙って頷き私を手のひらに乗せて、指輪に近づけてくださいました。
うう……なんでしょう、このモヤ……えいえいっ!と翼で払ったら、それを嫌がるように避けていきます。
「何やってんだ?」
「黒いモヤみたいなのが嫌な感じなのです。もう……まとわりついちゃいけません。消えなさい、えいっ」
黒いモヤを翼でぺちっと叩きそこなって指輪をペチリと叩くと、瞬間、信じられない光が炸裂して、全員が言葉を失いました。
え……えっ?
「な、何っ、今のどうしたのっ!?リュート、ルナちゃん無事っ!?」
まずは弟の心配をするロン兄様が流石です。
おかげで冷静になれました。
周囲を見渡せば、庭で訓練中だった黒騎士様たちも各々武器を持ち戦闘態勢で部屋に入ってきていますし、キュステさんやセバスさんも急いで駆け込んできて、ちょっとした大騒ぎです。
とりあえず、テオ兄様の指にはまっている指輪に視線を移すと、黒いものが綺麗サッパリ消えていて、指輪もなんだかピカピカになったような?
黒と青っぽい銀の指輪は、どちらも澄んだ色を取り戻して黒い素材が真っ黒というわけではなく、艶っぽい黒でガラス質な感じがする透明感も持っていることに気づきました。
誰もが言葉を出せずにいる様子をどうしたらいいのかわからずに戸惑っていたロン兄様は、全員の視線がテオ兄様の手元にあるのだと理解し、同じように覗き込みます。
「あ、あれ?テオ兄のアイギスって、そんなデザインだった?」
「いや……今しがた……変化した」
「え……どうして?」
「ルナが触れたら、違和感が消えたと同時に光を放ち変化したのだ」
先程よりもオーディナル様の力を強く感じられるようになった指輪は、テオ兄様にとても馴染んでいるように見えました。
何気なくロン兄様の左親指を見ると同じような指輪があり、デザインは違うようですがオーディナル様の力を感じる物です。
この指輪って、一体何なのでしょう。
「父上が創ってからずいぶんと長い時間、魔物の放つ魔素を浴びてきたのじゃ。浄化しきれぬものが蓄積していてもおかしくないじゃろう。もしかしたら、父上が己の代わりにルナに頼んだのかもしれぬ」
以前、魔物の魂の源であるという『魔核』については聞きましたが、新たな単語である『魔素』って……と首を傾げていると、リュート様が『魔素とは、魔核から放たれる毒素みたいなもので、人や神には有害なんだ』と教えて下さいました。
称号を持つ者は総じてその魔素に耐性を持つようですが、称号を持たない一般の市民では、魔物に攻撃されただけで魔素により体調を崩し、下手をすれば命を失う危険性もあるのだとか。
それもあって、強い魔物は優先的に討伐されることになっている。
特に、神族は魔素の影響を受けやすいとのことでした。
「妾たち神族は、それ故に直接魔物を討伐することが出来ぬ。己の力を糧とされ、魔素に蝕まれて力を失う可能性があるのじゃ」
力を満たすために糧とされる神族。
腹を満たすために糧とされる人間。
この2つの種族はとてもマナ性質も近いため、お互いに手を取り合ったのは自然の流れだったのだろうとリュート様が教えて下さいました。
魔物にとっての誤算は、捕食する対象者が協力体制を築き上げたことにより、劣勢に陥ったことだねとロン兄様の補足説明も入り、なるほどと納得してしまいます。
「それまでは、儂ら竜人族を警戒しておればよかった奴らが、神と人の共同戦線に慌てふためくさまは見ものじゃったな。人と神を食らうことで力をつけていた強力な魔物は片っ端から封印され、未だに出て来れんのじゃから」
当時を見てきたアレン様が楽しげに笑い、愛の女神様も思い出して「アヤツらの慌てふためく姿は見ものであったな」と鈴を転がしたような声で笑う。
もう、1000年も前のことだろ……と、リュート様の小さな呟きに、ちょっぴり目眩を感じました。
以前お話されていた古代魔法の件や魔物のこともあり、神と人間が手をとりあった……全ては偶然であり、必然であったのかも知れません。
「アイギスも当時創られた物じゃから、長年蓄積されたものがあるのやもしれぬな」
「まあ、流石にガタが来ておっても不思議ではなかろう」
愛の女神様とアレン様の言葉に、全員の視線がテオ兄様の指輪に注がれます。
今は消え失せて見えませんが、私が見る黒いモヤとは少し質が違いました。
しかし、最近はこういう物がよく見えるようになってきましたね。
それだけ、リュート様の魔力譲渡で私の中の何かが変わってきているということなのでしょう。
「ふむ……」
テオ兄様は何かを思いついたように、少しみんなから距離を取ります。
魔力の流れを感じたと思った瞬間、指輪がみるみる変化し手の甲から肘までを覆い、大きな盾が出現しました。
え……えっ!?
「スムーズに行えるようになったな」
「速いね……」
テオ兄様とロン兄様が驚き、アイギスという物が変形した部分を見ていますけど……え、えっと……あの……アイギスって……な、何なのですかっ!?
「ああそうか、ルナは知らねーわな。アイギスは黒と白の騎士団に代々伝わる鎧なんだ。魔核を捧げることで、己の鎧たるアイギスを得る。それを得て、はじめて一人前なんだ」
形態変化があるんだ、すげーだろ?とリュート様が悪戯っぽい笑みを浮かべて言うのですが……そ、それってRPGとかでいうラスボスっぽいっですよ?
通常形態が指輪……というのは、ラングレイの家のみで、守護騎士の家であるクルトヘイム家には腕輪が代々受け継がれているのだとか。
初期状態が違うだけで、どちらも形態変化は変わらない。
第一形態 篭手
第二形態 ライトアーマー
第三形態 フルプレートアーマー
という具合らしく、用途にあわせて形態変化を行える便利な防具なんだとか……って、一々着脱しなくて良いのは助かりますよね。
黒騎士様たちは装備を解除するのが大変そうでしたもの。
それでも私の世界の人たちよりもスムーズというか、かなり手軽に着脱出来ていたみたいですが……
そんなことをリュート様とお話している間に、テオ兄様は次々に形態変化を経て、第三形態になると軽く体を動かしてみて、口元をほころばせました。
「いつもより調子が良い」
「まさか、鎧の影響だったとはね……」
「それだけこの鎧に守られているということだ」
どうやら最近テオ兄様は不調だったようで、何が原因なのか調べていたところだったみたいです。
良かった……
ということは、ロン兄様やお父様……いえ、リュート様のアイギスも同じような状態なのではっ!?
いけません、それはダメです。
ちゃんとテオ兄様のような状態にしなければ!
急ぎロン兄様の手元を見ると、テオ兄様ほどではないのですが、やっぱりモヤがかかっていました。
リュート様の肩からちょんちょんと動いて、リュート様の近くに立っているロン兄様の指輪に翼を伸ばします。
触れた瞬間、テオ兄様のときと同じように光が放たれ、黒いモヤは消失しました。
うんうん、うまくいきましたね。
「ありがとう、ルナちゃん。でも……大丈夫?体は……」
平気ですと答えようとして、猛烈な眠気が襲ってきたのを感じます。
あ……これは平気ではなかったかも……ですね。
「少し……眠い……です……」
「力を使いすぎたようじゃな」
止める間も無かったわと愛の女神様が苦笑を浮かべて私の頭をよしよし撫でます。
いけない……これは、少し長く眠っちゃいそうですね。
リュート様に、また心配をかけてしまいます。
「リュート様……少し……眠っちゃいそう……です」
「ああ。ありがとうな、ルナ。俺の兄たちを守る力になってくれて」
「いいえ、力になれて……嬉しい……です……」
ああ、そろそろ呂律も怪しくなってきました。
でも……ちょっぴり離れたくありません。
私が落ちないように手の上に乗せようとしたリュート様の手をかいくぐり、ちょんちょんと動いてリュート様の胸元へダイブ!
体のサイズを少し小さくして目測通りの場所に入り込み、もぞもぞと体を動かし居心地を確かめた私は、ここがいいと言わんばかりに頭だけぴょこりと出しました。
「何故胸ポケットにIN……やべぇ、可愛い、すげー可愛い……」
「離れたく……なかったのです」
「そ、そっか……えっと……そう……なのか」
ここからだとリュート様の表情を伺うことは難しいのですが、ぬくもりを感じられて安心。
布地がごわごわしていないから、とても快適ですし、ほら……リュート様が指先でくりくり頭を撫でてくれるので、とっても幸せな気持ちになれますもの。
「うわ、いいなリュート様!俺もポッケINしてほしい!うわぁ……」
失言くんの元気の良い声が聞こえましたが、さすがにリュート様以外にはしませんよ?
私にはリュート様のおそばが一番なのです。
眠たくて呂律があやしい口調でそう伝えると、ピクリとリュート様の体が反応したような気がしました。
「リューがベリリ……」
「チェーリーシュー」
「ルーはおねむなの?」
「力を使いすぎたせいだな。うとうとしているようだ……」
「可愛いの」
私が眠りに入りそうなので、声を抑えたチェリシュの心遣いが嬉しいです。
本当に心優しい子ですよね。
「リュート様……少し……長い眠りに……」
「ああ、大丈夫だ。回復のための眠りだとわかっているから、気にしなくていい。ポケットでいいのか?」
「はい、できるかぎり……そばに……いたい……です」
「お、おう……わかった」
「リュート様のそばに……いると……安心……あったか……ふわふわ……しあわせぇ」
思いつく限りの単語を口にしてみると、「そうか」と嬉しさをにじませた彼の声が聞こえてきて、こちらまで嬉しくなってしまいます。
「眠っている間に魔力譲渡も済ませておく。多めに渡しておくから、ベオルフによろしくな」
「はい」
今日は目覚めないとわかっているのでしょうか、でも……それだけ深く眠ってしまいそうだと感じておりますから、リュート様も同じなのかも知れません。
「ルナの手は、本当にみんなを守ってくれる、優しい手だな。ありがとう……ゆっくりおやすみ」
リュート様のあとに、みんなからも「ありがとう」と「おやすみ」という言葉をいただきました。
優しい声と言葉に包まれながら、私を労るように撫でてくれるリュート様の手こそ、私を満たしてくれる魔法の手のように感じます。
孤独を癒やし、心を光で満たしてくれる……
みんなを守ってくれているのは、貴方の手です。
本人は気づいていないみたいですが、起きたらまずはそれを伝えようと心に誓いました。
266
お気に入りに追加
12,205
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。