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第三章 見えなくても確かにある絆

後悔をしないために……(リュート視点)

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 剣術の型を一通りなぞったあと刀身に魔力をこめ、それぞれの属性でもう一度同じ型を繰り返す。
 それぞれの属性魔法に対し体内をめぐる魔力が変化するからなのか、体の反応速度が微妙に違ってくる。
 どの属性魔法を使っていても、どんなに複雑な術式を数種類描いていても、淀みなく剣を振るえるようになるには、5年という歳月を必要とした。
 その中でも一番時間がかかったのは、不得意な氷属性だ。
 一番相性がいい光と雷と時空魔法は、3年程度で習得したのに対し、氷属性には随分と悩まされたものである。
 ただ、不得意ながらも人が多い場所でも使えて、被害が少ないことを考慮すると、一番使い勝手が良い。
 苦手な魔法ほど使って体を慣らしていくのがいいだろうと、普段から積極的に使用しているものの、完全に物にできたとはいい難いだろう。
 ただ、そのせいなのか俺の得意属性が氷なのだと思う者が多く、不得意属性であるのだと知る者は少ない。

 それでも、俺をよく見ている者にはわかってしまうようで、氷属性が入る術式の組み合わせを苦手としていることに気づいた魔術科の担当教諭は、剣術を使っていても全属性が使えるように、毎回違う属性の組み合わせを数種類発動させて動き回るのはどうかと提案し、言われた通りに練習してきたのだが、これが意外と難しかった。
 今では、それもなれたものではあるが、当初は「こんなもの出来るか!」と悪態をつきたい気持ちにもなったし、無理だと諦めてしまいたい気持ちにもなったけど、甘えたことなど言っていられなかったから、レオたちが呆れるくらい毎日魔力切れを起こす一歩手前まで鍛錬したものだ。
 その努力が実ったのだろう。
 発動させたい魔法の制御系術式や、周囲の被害を抑える術式、精度を上げる術式の全てが瞬時に構築できるようになり、剣をいくら振り回しても魔力の流れが乱れて術式が壊れることはない。

 ここまで辿り着くのにどれだけの時間が必要だったか……長かったなと考えることはあるが、苦手属性を一般レベルで使えるようになっただけだ。
 満足してはいけないし、これからはもっと鍛錬を積んで、周囲にあわせて動かなくてはならないだろう。

 毎回、苦手な氷属性を入れているが、今後は得意属性の微調整を考えていったほうがいいかもしれない。
 得意属性である光も雷も威力が強すぎて、人が多い場所や障害物が多い場所で使うには不向きであった。
 この魔法の威力を最小限に留めることができたなら、もっと使い勝手が良くなるだろう。

 まあ、全てを破壊尽くしていいというなら、遠慮なく使えるが……そんな場所があるはずもない。
 そこに住み、生きている人達がいる。
 高威力の魔法をなんの考えもなしにぶっ放せば、一瞬にして周りは敵だらけになるだろうし、俺はジュストと違うのだから、力を誇示したいわけではない。
 破壊に長けた力など、なんの役に立つというのか……時折、そんなことを考えてしまう。

 俺がここまで鍛錬するのは、魔物から人々を守るためだ。
 つまり、ずっとそばにいるルナは、いずれ……俺が魔物を殺す姿を目の当たりにするだろう。
 魔物には、人型のものだって存在する。
 人型であろうとも、会話ができる知能があろうとも、人を喰らい殺すモノであるならば、討伐しなくてはならないのだ。
 人型の魔物は魔獣型とは違い、人を食らうために殺すのではなく、自らの力の誇示や悦楽のために殺すことが多い。
 だからこそ、確実に仕留めていかなければ、こちらがやられてしまうのが現実である。

 ただ……その時、彼女はなにを思うのだろうか。
 日本では、魔物などいなかったし戦争もしていなかったから、本来なら一般人が人を殺めることはない。
 前世では祖父に「無駄な殺生はするな」と、教えられたものである。
 それ故に、命を奪うことに対して忌避感が強い。
 対象によってその感覚に差異が生じるのだが、人相手ならばなおさらだ。
 マールのような海洋生物であったのなら、料理をする人にとって嫌悪感や忌避感は薄いだろうが、人型の魔物と相対して討伐する様子は……人を殺しているようにも見えるだろう。

 この手で沢山の命を奪ってきた。
 それは、隠しようのない事実である。
 人々を守るためという言葉で血に濡れた手を誤魔化しはしないが、彼女に無慈悲に命を刈る姿を見られ、怯えられる日が来るかもしれない。
 それが、何よりもつらかった。

 そう考えてしまうのは、あのとき……この世界の常識と日本の常識の違いに苦しんだからだろう。

 谷底への転落事故から復帰した俺は、騎士科の仲間たちと共に魔物討伐訓練を行っていた。
 前世の記憶が戻っても訓練された体はしっかりと覚えていて、流れるように魔物の命を奪っていく。
 だが、いつもと違っていたのは、俺の心の動きであった。
 肉を断つ感触と生臭い鉄の匂い、そして断末魔が耳から離れず、何度も胃からせり上がってくる不快感に苦しむことになったのである。
 命が失われる、自ら奪う。
 騎士科に入り、訓練で何度も魔物を討伐してきたというのに、そんなことが苦しくて、つらくて……心が痛くて仕方がなかった。

 日本人であったころの俺が叫ぶ。
 生きている者の命を奪うことは間違っていると……
 ただ、この世界の俺はちゃんとわかっている。
 人型の魔物の凶暴性や、逃したあとの被害が尋常ではないことを───

 知能ある魔物や人型の魔物を逃して、街1つが壊滅するなんてザラだ。
 俺の気持ちが痛むからといって見逃した結果、沢山の命が失われてしまう。
 それだけは、絶対にあってはならないのだ。
 大切な人達を守るために、どんなにつらくとも剣を振るう。
 
 2つの世界の常識に折り合いをつけ、命を奪う覚悟を決めるのには、随分と時間が必要であった。

 だからこそ、そんな思いをルナにはさせたくない───

 戦闘でも俺の力になりたいというが、彼女にこのような苦しみを与えたいとは思わないのだ。
 できることなら、俺の後ろで守られていて欲しい。
 2つの異なる世界の常識に苛まれ、衰弱していく姿など見たくはないし、そんなルナを見たら……俺はどうなってしまうのだろう。
 大切な人が出来たことで強くなる反面、弱くもなるのだと実感した。

 傷つけたくない、守りたい、誰よりもそばにいたい、他の男に触れさせたくない、俺だけを見ていて欲しい……
 純粋な想いだけではなく、身勝手な願いも増えていく。
 人間は、どんどん欲深くなる生き物だ。
 いつか、俺自身が彼女を傷つける存在にならないよう、心がけなければ……馬鹿な男になりたくないからな。

 それでなくても、ルナはいろいろと厄介なことに巻き込まれているのだ。
 ルナを狙っていた何者かは、彼女を諦めたりはしないだろう。
 もっと鍛錬して、強くならなければならない。
 時空も世界も超えて干渉してくる……つまり、それだけの力がある存在だ。
 ただの人間だとは思えない。
 ルナの世界に魔法はないというが、もしかしたら古代魔法の存在が知られていないだけで、既に確立している可能性だってある。

「さて、何を代償にしたんだろうな……」

 思わず漏れた声は低く冷たいものだったが、ルナを長年苦しめた相手だ。
 容赦する必要など無いだろうという考えから、物騒な声が漏れてしまうのは大目に見て欲しい。

 黒いモヤの主は、陰湿で粘着質な性格をしているのだから、自らが代償を払ったとは考えづらい。
 小さな術であれば対価は少なくて済むが……これだけ大掛かりなことをしているのだから、要求される物は一人分の命でも補えないだろう。
 つまり……他者の命を対価にしたと考えるのが自然だ。
 その者は、新たな代償としてルナを狙っているとも考えられる。
 彼女はとても綺麗なマナの輝きを持っていると、アーゼンラーナは言っていた。
 あちらの世界の、創造神であるオーディナルの愛し子だ。
 神に一番近い存在───
 聖女と言われてもおかしくない彼女は、本人が自覚していようがいまいが、その輝きによって神々を惹きつけてしまうだろう。
 チェリシュやアーゼンラーナがいい例だ。
 神々にとって、俺たち二人のマナは心地良いものみたいだから、二人揃っている相乗効果で今まで以上に引き寄せられ、厄介事を持ってくるだろう。
 それが面倒だとわかってはいるが、だからといってルナと離れる選択肢などない。
 離れるくらいなら、神々が持ち込む面倒事全てを聞いてやる覚悟くらい、とうに出来ている。
 それほど、俺にとって彼女はかけがえのない存在なのだ。

「しかし……いろいろとヤベーよなぁ……」

 不意に思い出して独りごちた言葉にこめられた悩みの色は、いままでのそれとは違っていた。
 悩みの種類が違うのだから当たり前だろう。
 これは、俺がいま一番悩んでいることだといってもいい。

 脳裏に浮かぶのは、甘えたモードの彼女の姿である。
 正直、アレはヤバイ。
 かなりヤバイ。
 理性なんてぶっ飛ばす勢いでヤバイのだ。
 そろそろ、本気で誰かに相談したほうがいいのではないかと考えてしまうくらい、対策を練らないとマズイ状況である。

 しかし、こんな相談を兄貴たちには出来ないし、両親なんて以ての外だ。
 レオやシモンやキュステは、周囲のこと気にしないで食っちまえっていうタイプだから論外。
 ……アレンハイドの爺さんに相談するしかねーか。
 長年生きているだけあって、精神的に鍛えたり理性を保たせる術を知ってそうだしな。
 精神鍛錬は誰よりも積んできたはずなのに、それをなかったかのようにぶっ壊していくルナがスゲーよ。

 自覚があるのかないのか、彼女が醸し出す愛らしさと相反する色気に惹きつけられない男などいないだろう。
 清楚可憐というにふさわしい彼女が、一転して妖艶で……あ、ダメだ、思い出すな自分。
 これ以上はダメだ。
 マジで……ルナの甘えたモードは可愛いんだけど、俺の理性が大ダメージを食らってしまうのだから困ったものである。

 いや、可愛いんだけどさ。
 スゲー可愛くて、トロトロにとけるくらい甘やかしたくなるんだけどさ。
 理性と本能のせめぎあいがスゲーのなんのって!

 本気で襲ってやろうかって考えてしまうことはあるが、彼女が大事だからそんな馬鹿な真似はしない。
 それに、体だけが欲しいのではなく、彼女の心も欲しいのだ。
 召喚獣として一緒に居てほしいのではない。
 これからもずっと、俺の一番近くで支えていて欲しいと願うから……

 それに、手順はシッカリ踏まないと、前世の妹にぶっ飛ばされるような予感がする。
 何故か理性が崩れてきてヤバイ状況になると、アイツの顔が浮かび「お兄ちゃん、手順って大事よ?馬鹿なことしたら許さないからね」という声が脳裏に響く。
 アレは、アイツがマジのときの目だ。
 逆らわないほうがいい。
 ブルリと体を震わせ、精神的負荷から魔力が乱れたために霧散した術式を再度構築する。
 生まれ変わっても、どうやら妹には弱いらしい。
 理不尽であったり破天荒な妹ではあったが、こういうときの言い分は真っ当なものであった。
 わかってるっての、大事だからこそ無理やりなんて馬鹿はやらねーよ……と、心でつぶやき、脳裏に浮かぶ妹の面影を追い払う。

 ルナには笑っていて欲しいもんな。

 毎日行っている鍛錬のメニューが終わり、息をついて剣を腰に戻したときであった。
 チェリシュの歌声が聞こえてきて何をやっているのか気になり、そのままキッチンに直行すると……ルナがチェリシュの手を取って、歌いながら足踏みしているのを手伝っているようだ。
 ルナとチェリシュが、まるで母子のように見える光景が尊くて、思わず記憶の水晶を構えてしまった。
 いや、だって……可愛いだろうが!
 誰がなんと言おうと、可愛いんだよ!
 この光景を記録しないという選択肢は存在しない。
 絶対に残す。
 マジ天使が二人……ヤバイくらい可愛いだろ。
 ダメだ、この二人を放っておいたりしたら、絶対に変な野郎が寄ってくる。
 学園の野郎どもは、ある程度威嚇しておいたが……今後も馬鹿な考えを抱きそうな奴が増えそうだ。
 レオやシモンだけではなく、イーダやトリスもいるから大丈夫だとは思うが、念には念を入れて警戒しておこう。
 そんなことを考えながら、ルナとチェリシュの可愛らしいやり取りを眺めた。
 先程、ルナに渡したウォーターフライフィッシュの飛膜の中に入れた白い生地を、チェリシュが楽しそうに歌いながらリズムを取って踏んでいるようである。
 多分、小麦粉を練ったものか?
 それって……いやいや、待てよ。
 小麦粉を練った生地を踏むって……俺、1つしかしらねーぞ?
 俺がまだ小さい頃に遊びに行った祖父母の家で、妹と一緒に祖母の手伝いをして、いまのチェリシュのように生地を足で踏んだ覚えがある。
 まさか……な。
 だって、醤油がないのに……?

 そんな疑問を抱きながらも、邪魔をしないように気配を消して二人の様子をしっかり記録していると、ルナが何かに気づき、焦りだしたようである。
 あれ?
 もしかして、ルナもこの光景を撮りたいのか?
 オロオロしているルナを眺めているのもいいが、これはさすがに可哀想だな。

「楽しそうなことやってんな」

 声をかけると、ルナはこちらを見て嬉しそうに微笑んだあと、ほんのりと頬を染めてしまった。
 うん?照れる要素なんてあったか?
 チェリシュがすぐさま、お手伝いをしているのだと嬉しそうに報告してくれたのだが、バランス崩してこけそうにならないか、少しばかり心配になる。
 昨日からルナが料理している姿を熱心に見ていたようだし、手伝いをしてみたかったのだろう。
 頬を紅潮させて満面の笑みを浮かべている様は、本当に彼女の娘であるように見えた。

 結婚して子供が出来たら、こんな感じになるのだろうか。
 気が早いといわれそうだが、やっぱり考えてしまう。
 いつか……そんな日がくればいいと願わずには居られない。
 まだ、彼女に伝えられない気持ちや物事は多いが、隠すことなく全てを話せるときがきたら、今度こそ後悔することのないように、素直な気持ちを告げよう。

 前世の俺は、後悔したからな……

 仕事ばかりで忙しかった俺にも、恋する相手がいた。
 話したことがないどころか、声も聞いたことがない相手だ。
 それなのに恋というには、おこがましいかもしれない。
 でも、いまだからこそ……それが恋であったのだと言える。

 彼女に心から惹かれていた自分を誤魔化して、妹が幸せになるまではと自制していたところがあった。
 そんな考えを妹は全て承知だったのか、俺を観念させて段取りまでつけてくれたのである。
 本当に、あの妹には頭が下がるよ。

 彼女に会う日が一週間に差し迫った頃、妙にソワソワしている自分がいて、妹に何度も女性の扱い方を指南され、耳にタコが出来るのではないかと思ったが、きっと役に立つだろうとおとなしく聞いていた。
 だけど、会えなかった……会う予定日の前日に、俺は死んでしまったのだ。
 どうして死んだかは覚えていない。
 だが、前日であったということだけは覚えている。
 そして……もっと素直になればよかったという、強い後悔の念だけが心に残った。
 年上だとか、相応しくないとか、つらい思いをさせるとか、そんなこと考える前に、何故自分の気持を伝えなかったのだろうと……

 この生で、そんな後悔だけはしたくない。

 ルナに苦労をかけるだろう。
 つらい思いだってさせないとは言い切れないし、彼女に相応しいかどうかなんてわからない。
 厄介事ばかり抱えている俺だが……この胸にある想いは本物だから。
 彼女に必ず伝えよう。


 俺はルナのことを、一人の女性として誰よりも大切に想っているのだと───


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