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第二章 外堀はこうして埋められる

動き出すモノと、それぞれの変化

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「浄化の件は、何やらきな臭い。儂が助言せずとも国王のほうが訝しみ渋っておるから、まだ時間稼ぎはできよう」
「その間に、なにかわかればいいんだがな」

 次から次に厄介事が……と、リュート様が眉間にシワを寄せてヤレヤレと呟いたあと、思い出したかのように顔をあげます。

「1つ聞きたいんだが、アレンの爺さんは、最近マーテルに会ったか?」
「いいや。そういえば、暫く顔を見ておらんな」

 マーテル?と首を傾げると、腕の中のチェリシュが「大地母神なのー」と教えてくれました。
 本当に良い子ですね!
 ありがとうと頬ずりすると、話の邪魔にならないよう配慮したのか、小さな声で「きゃー」と嬉しそうに声を上げてくれます。
 もう、本当に可愛いんですからっ!
 うずっとリュート様の手が一瞬動きましたが、そこで止まり、咳払いをしてから話を続けます。

「ティエラ・ナタールに黒いモヤみてーなものが見えたってルナが言うんだ。念のために調べさせたほうがいいと思ったんだが……」
「黒いモヤ?」

 リュート様は前竜帝陛下にたずねられ、簡単に私にかけられていた呪いについて説明し、それが夢を媒介に干渉してくるタイプなのだと告げると、とても険しい顔をされてしまいました。

「質の悪い呪いじゃな。しかし、よくそれで今まで生きてこれたものじゃ。孤独に負けず、ずっと1人で戦うなんぞ、早々できるものではない。見た目よりもずっと強い娘じゃな」

 前竜帝陛下に優しい瞳を向けられ、言うほど凄いことをした覚えもないのに褒められてしまい戸惑う。
 だって、ただ生きてきただけですもの。
 頑張ったというよりは、頑張らなかった結果がこうなのだと考えてしまいます。
「そうだよ。俺よりずっとそういう面は強ぇーんだ」

 戸惑う私の横で、リュート様がまるで我が事のように誇らしげに頷いてみせました。
 ルナティエラとして褒められることに慣れていない人生を暫く送っていたもので、こういう時にどういう顔をしていいのかわからず、慌てて否定しようと首を振ります。
 そう、私はそんな凄い人間ではありませんもの。

「つ、強くないです。諦めただけ……」

 そこまで言ってから、愛の女神様の『そなたが諦めたのは、助けを求めることであろう?』という言葉を思い出します。
 助けを求めることを諦めた私は、何故部屋に引きこもっていれば安全だと考えたのでしょう。
 自分の考えであるというのに、まるで別の世界の姿形だけが同じである己を見るようで、全く理解できません。
 しかし、卒業パーティー以前の考えはハッキリと思い出せないのに、断罪されたあの瞬間から、私の意識は今の私とリンクしているように鮮明に思い出せました。
 してもいない罪を認めることは出来ないという、毅然とした態度が取れたのは何故だったのか……以前の私なら、あり得ないことだったはず。

 あれ?
 あのとき……いつも心を覆っていた黒いモヤみたいなものが薄れていたような?
 そういう瞬間は、以前にもありましたね。
 ベオルフ様との乗馬訓練や、会話をしているとき……だったような?
 それ以上考えようとすると、ズキズキとこめかみが痛みはじめますが、何か大事なことがここに隠れているような気がして、思考を巡らせようとするのに対し、圧力は強まるばかりです。

「ルナ!」

 肩を掴み心配そうに覗き込んでくるリュート様の瞳を見て、ココがどこであったのか思い出し、慌てて顔を上げると、心配そうにみんなが顔を曇らせていました。
 チェリシュも、ぎゅううぅっとしがみついています。

「えっと……あ、す、すみません。少し考えに没頭してしまいました」
「いや、大丈夫か?また例のあの黒いモヤだが……」
「やーの、アレはやーの」

 また黒いモヤですか……面倒なことこの上ありませんね。
 強制的に考えないように思考を捻じ曲げてくる感覚は、もう覚えましたよ?
 ただ、そこから先に進むのが難しい現状ですが、いずれ何とかしてみせましょう!

「大丈夫です。チェリシュのクローバーのおかげで、随分と楽になりました。ありがとう」
「よかったの……チェリシュ、うれしいのっ!」

 随分心配したのでしょう、ぎゅうぎゅう抱きついてくるチェリシュを抱き締め返していると、前竜帝陛下から「お前は仕事じゃろうが、勝手に口を開いたり動いたりするでない」というお言葉が……誰に向けられた言葉だろうと疑問に思い視線を向けてみると、リュート様のお父様がプルプルしていらっしゃいました。
 そ、そろそろ本気で怒られてしまいますよね。
 自重します。

「黒モヤというのは今の魔力のことじゃな」
「ああ。質が悪すぎる。残留でこれだけの悪さをするんだからな」
「全て消しされんか」
「長年蝕まれていたんだ。強制的に排除すれば、廃人になるリスクを背負うだろうから、ヘタな手出しも出来ないんだよ。ただ、対策はあるし、ちゃんとやってるから徐々にではあるが改善するだろう」

 ならば安心だというように頷いた前竜帝陛下と、安堵させるように笑うリュート様を交互に見ながら、対策って何をしているのでしょう……と、疑問に思いましたが、先程からリュート様のお父様の視線が気になって、ヘタな質問もできません。
 ここで変なことを言って心証を悪くしてしまったら、リュート様にも良くないですものね。

「そちらについては、お主に任せるのが一番のようじゃな」

 納得したように頷いた前竜帝陛下は大きくため息をついて、ティエラ・ナタールの件は、自分の手のものが調べると約束してくださいましたけど……良いのでしょうか。
 聖都で勝手なことをして、国交問題になるということはないですか?
 不安げな私の考えを読んだのか、前竜帝陛下はニコニコ笑い「心配いらん」とおっしゃってくださいました。
 顔にいっぱいシワを作って微笑んでくださる表情は、裏表など無くとても好ましいもので、心がスッと軽くなるのを感じます。

「アレンの爺さんが動くなら問題ねーだろうが……気をつけてくれ。アレは本気で厄介だ」
「そうじゃろうな。陰湿極まりないわい」
「奥様、ホンマに大丈夫なん?顔色よーないで?」

 ほら、座ったほうがええとイスを勧めてくれましたが、良いのでしょうか。
 前竜帝陛下以外の、全員が立ったままなのに……

「座っておれ。そのままでは倒れかねんじゃろう。お主は召喚獣と言えど、普通の女性と変わらんからな」

 私はチェリシュを抱っこしたままイスに座りますが、みんな立ったままなのが気になって仕方ありません。
 お、落ち着きませんね。
 そわそわしているのがわかったのか、リュート様も無言で隣に座ってくださいました。
 前竜帝陛下が「仕事中のハロルド以外は座ると良い」とおっしゃってくださいましたので、現在立っているのはリュート様のお父様だけです。
 な……なんだか、扱いが……
 いえ、そんなことありませんよね。
 こちらの世界でも、お仕事中の騎士様は大変なのです。

「ティエラ・ナタールの件は儂の部下に任せるが良い。お主の召喚獣に関しての情報が流れ、少しばかり厄介な連中が動き出していると聞く。用心に越したことはなかろう」

 思わず前竜帝陛下の顔を見ると、少し困ったように苦笑され、リュート様はわかっていたように小さく嘆息しております。
 厄介な連中って……

「人型の……人と意思疎通ができる類を見ないほどの上級召喚獣を、ジュストの転生体と思わしきリュート・ラングレイが召喚したと、阿呆共が騒いでおるだけじゃ」

 私の存在が再びリュート様の面倒を引き起こすことになる……それが心苦しいけれども、離れるという選択肢はなく、共に乗り越えていかなければならない問題だと捉えている自分がいることに驚いた。
 今までとは違う。
 離れるという選択肢を、リュート様に関しては持ち合わせていないことが嬉しく思える。

「またバカが騒ぎ出したとなれば、あぶねーかもな。キュステ、店の方は頼んだぞ」
「任せときぃ!まあ、だんさんのほうは、奥様と春の女神様をちゃーんと見てるんやで。特に奥様は危のうて……」

 どういう意味ですか?
 ジロリと睨むと、慌てて視線をそらされました。
 なんですか、その危ないって!

「しかし、ジュストの件に関していうなら、もっと周りに甘えても良いのではないか?お主は1人で頑張り過ぎじゃ」

 前竜帝陛下の言葉に、リュート様は言葉に詰まったような顔をして黙ってしまいました。
 周囲との連携や繋がりや絆を第一に考えるリュート様にとって、ジュストの件だけは例外なのです。
 まるで、これだけは自分の力で解決しなければならないというように、誰にも甘えようとしません。

「そうですね……リュート様はもっと甘えていいと思います」
「……ルナ」
「あ、でも、一番に甘えるのは私にしてくださいね?」
「は?」

 なんですかキュステさん、ぽかーんとしてますね。
 お間抜けさんに見えるから、口は閉じたほうが良いですよ。

「えっと……ルナ?」
「だって、私はリュート様の召喚獣ですもの。一番に甘えていただかなくては困ります。癒しとお料理しか取り柄がありません!戦えない私の唯一の存在意義ですよっ!?」

 どうしましょう、これだと足手まとい確定と自ら暴露しているのと同じです。
 でも、一番に甘えてくださらないと……ものすごーくモヤモヤしてしまうのですもの!
 他の方には譲れません!

「ルナは戦えることにすごくこだわるが、ルナの料理はすげーんだぞ?」
「お料理だけですもの……」
「それがどんだけすげーのかわかってねーんだからな」
「凄いですか?」
「ああ。ルナがすげーからさ。ジュストの件でなんだかんだ言ってるやつがいるって聞いたのに、『へー、そうなんだ』って感じだった。今までだったら、もっと重いものがのしかかってピリピリしてたってのに、今はさ、色んなことにワクワクしていてそれどころじゃねーんだ」

 軽やかに笑ったリュート様は嘘偽りのない瞳で私を見つめます。
 本当に……大丈夫なのですか?
 色んなことにワクワク……それは、私も同じかも知れません。
 リュート様が美味しいと言うお料理が作りたくて、二人で素材を見て「コレが食べたい」という話をするのがとても楽しいのですもの。

「ルナはすげーよ。俺に足りないものを補っただけでは足らないって、たくさんの物を見せてくれる。まず、いま一番楽しみにしているのは、今日店に来る客の反応だ」

 お客様の反応?
 何の話……と、私が首を傾げていると、キュステさんが苦笑しました。

「ああ、それは僕も気になるところやね。えらい驚くやろうなぁ。昨日のスープでも大騒ぎやったんやで?」
「そんなにか」
「ホンマ、すごかったんやって!スープがあっちゅう間に売り切れて、今日も来る言うお客さんが続出やし、今日の騒ぎで作った料理も噂が広まったんやろうか、予約でいっぱいやったもん」
「個室も増やすか?」
「せやね。別棟も予定しとるんやろ?せやったら、それも考えたらええかもしれへんわ。来週の予約も入っとったから」

「そんなに旨いのか」

 興味をそそられたのか、前竜帝陛下が前のめりにたずねてきます。
 もしかして……リュート様と類友ですか?

「旨い。ルナの料理はこの世界一旨いと断言できる」
「ほう!酒に合う料理はあるか?」
「唐揚げとか合うだろうな。すげー旨かった」
「ああ、あの鶏のカリッとしてじゅわっとする。不思議な風味のする物だね」

 ロン兄様が思い出したように頬を緩め、あれも美味しかったなぁと呟きます。
 良かった、気に入って頂けたようで一安心ですね。
 それを聞いてスルーすることができなかったのは、リュート様のお父様でした。
 体を大きく震わせ、とうとう大きな声をあげてしまいます。

「ロン、ズルイぞ!父である私もまだなのにっ!」
「仕事中じゃぞ」
「し、しかし!」
「一応報告しましたよね?」

 ニコニコ笑っているロン兄様が少し怖い……ですよ?
 聞いてなかったな?というオーラを感じます。

「まあ……別件で、お弁当という昼食をいただいたんですが、とても綺麗で美味しかったですよ。確かに唐揚げはエールに合います」
「ほう!」

 再度「ズルイッ!」とリュート様のお父様が声をあげ、ロン兄様に冷ややかな視線を向けられておりました。
 何だか……え、えっと……い、イメージが?
 厳しくキリッとした雰囲気だったのに、一気に子供っぽ……いえ、何でもありません。

「へぇ、唐揚げはレシピだけ見たんやけど、売れ筋のエールに合うんやったら味見しとかんと!」
「キュステ、あとは天ぷらとアサリのワイン蒸しもチェックしておけ。ラザニアとビスクは味が濃い目かな」
「おいしそうだったの!」

 そうか、作っているところをずっと見てたもんな。と、リュート様が私の腕の中のチェリシュをよしよし撫でて、次いで私の頭も撫で、「お疲れ様」と労ってくださいました。
 嬉しいですっ!
 も、もっと褒めてくださってもいいのですよ?
 でも、二人っきりのとき……もしくは、チェリシュと3人の時でお願いします。
 包み込むように、ぎゅーってして欲しいですものっ!

「ちょ、ちょっと僕、厨房でお仕事してくる!……あ!爺様、宿はどないしはるん?」
「城で部屋を用意してくれておるが、お前のところはダメなのか?」
「だんさん、上の空いてる部屋を借りてもええ?」
「好きに使ってくれて構わねーよ。もしかしたら、サラ姐とヨウコも入居する可能性があるが……」
「それでも部屋足りとるやんね?」
「ああ。だから好きにしろ」
「だんさんおおきにっ!用意しとくわ!」

 トントン拍子に話が進み、どうやら前竜帝陛下がこのお店の二階に住むことになったようです……が、え?だ、大丈夫なのですかっ!?
 ロン兄様は苦笑して、リュート様のお父様の表情が引きつっています。
 こ、これは……大丈夫じゃありませんよね。
 でも、きっと前竜帝陛下を止める猛者なんていらっしゃらないでしょうから、決定ということになるのでしょう。

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