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第二章 外堀はこうして埋められる
愛し子と加護
しおりを挟む人数分の紅茶をいれて戻り、全員に配った後、お行儀よく我慢して待っている春の女神様に「お待たせしました」というと、嬉しそうに頬を赤らめてにぱーっと可愛らしい笑顔を浮かべる。
さて、切り分けましょうね。
今回は、これを6等分にしていきましょう。
私も食べますよ?
甘いものは別ですから!
スッとナイフを入れて半分に切ると、綺麗な層になった断面がお目見えです。
「わぁ……ベリリ……いっぱいなの!ベリリなの!チェリシュが育てたベリリなの!」
え……こ、これ、春の女神様が育てたのですかっ!?
「ほう、春の庭で作られたベリリならば、間違いなく美味いじゃろうなぁ」
「断面が層になっていて綺麗だねぇ」
「ふむ。バランスが見事だ」
愛の女神様とロン兄様とテオ兄様がそう言ってる中、静かなリュート様が気になってチラリと見れば、春の女神様を抱えながら二人一緒に目をキラキラ輝かせて、ミルクレープの断面に目が釘付けです。
わかりやすいほど、期待に満ちていますね。
嬉しいです!
そっと崩れないように1カットずつ皿に盛り付け、少し多く切って残っていたベリリもすそに添えて、みんなに配り終えたので「どうぞ」と声をかける。
フォークを手にとり、みんな一口目を口にして固まった。
か、固まりましたね。
春の女神様のベリリです、大丈夫……ジーッとみんなの様子を見守っていると、一番最初に動いたのは春の女神様でした。
「んうぅっ!ルー!美味しいの!すごいの!ベリリとクリームがあまあまなのっ!」
「ええ、あまあまですねぇ」
「クリームふわふわ!この黄色いクレープ……んー、んーっ」
「もちもちしてますか?」
「もちもち?」
「ええ、そういう柔らかく弾力のある食感をもちもちっていうんですよ」
「もちもちなの!」
新しい言葉を覚えたの!と、嬉しそうににぱーっと笑う春の女神様は、本当に可愛らしいですね。
もちもちっていう言葉がこの世界にあるはずないですよね……だって、お餅がないんですもの。
いずれ、その言葉の語源がこのお餅なんですよ……なんて、説明できる日が来ればいいですね。
お餅、醤油、味噌……そして、お米。
出汁に関してはあとで海産物を見に行くから、そこで色々探せばなんとかなるでしょう。
カツオが手に入れば、発酵石で鰹節を作れるかもしれません。
昆布もあるでしょうし、小魚や干物だってあるでしょうからね。
ただ……煮干し等もあるでしょうか、気になるところです。
「美味しいのぅ……生クリームとベリリがこれほどまでに合うとは……しかも、この何層にもなった生地が良い。確かにそなたの言うように柔らかいのに弾力があり、とても好ましい食感じゃ」
「もちもちって言うんだね。へぇ……これはロールケーキとはまた違う食感で、美味しい。あちらはふんわりしてたけど、こっちは少し食べごたえもあるよね」
「ロールケーキとはなんじゃ?」
「ルナちゃんが作っていた、ふんわりした生地のケーキなんです」
「ふんわり?」
目をパチパチさせている愛の女神様に、ロン兄様がどういう物か説明してます。
寡黙なテオ兄様は、意外にも甘いものが好物なのか、幸福感を滲ませてミルクレープを口に運んでいました。
しかし……いつも手放しで褒めてくださるリュート様がやけに静かです。
どうしたのでしょう、フォークを持つ手も止まっていますね。
「リュート様?」
「ああ……いや……こんなに丁寧な仕事をしてくれてんのに、食べると一瞬で……何か勿体なくって」
「いくらでも作れますから、大丈夫ですよ。確かに食べたら無くなってしまうかも知れませんが、これっきりじゃないんですよ?」
「これっきりじゃ……ない」
「リュート様が食べたいっていうなら、私は頑張って作っちゃいますもの」
そっか……と、ホッとした表情の前に、一瞬泣きそうな顔をした彼の心にどんな動きがあったのでしょう。
ミルクレープって、コンビニでも売ってるくらいポピュラーなスイーツでしたね。
リュート様はコンビニ利用が多かったようですから、思い出が詰まっていたのかもしれません。
「リュー……食べないの?おなかイタタなの?」
「食べる。旨くてビックリしてただけだ」
「うん!おいしーの!」
ミルクレープに夢中になっていたはずなのに、リュート様の手が止まっていることに気づいて心配そうに見上げている心優しい春の女神様……本当に可愛らしい方ですね!
リュート様は心配しなくていいと大きな手で優しく春の女神様の頭を撫でますが、彼の表情にある陰りを見つけたのか、眉尻を下げて口元をもごもごさせています。
そして、何か思いついたのか、パッと表情を輝かせた春の女神様は、自分の皿の中にある一番大きなベリリをリュート様のお皿に乗せた。
「リューにあげるの。ごほうびなの」
「ご褒美?」
「リューは、いっぱーいまもったの。えらいえらいなの!」
「……そっか、ありがとうな」
リュート様はなんとも言えない表情をしたあと、ぎゅっと春の女神様を抱きしめました。
本当に心優しい女神様もいたものです。
二人の様子に心がぎゅうっとしてしまいました。
「じゃあ、そんな心優しい春の女神様に、私からご褒美です」
私のお皿にあった大きめのベリリを春の女神様のお皿に乗せると、彼女は嬉しそうにぱぁっと顔を輝かせたのだけど、次の瞬間首を傾げて「いいの?」と心配げにたずねてきます。
「私は皆さんと違ってお腹ペコリではないですから、良いんですよ。ですから、遠慮しないで食べてくださいね」
「あいっ!」
ぱっくんっ!と口に頬張りますが……その小さなお口でひと口は無理ですよ?
「そうしていると、親子のようだな」
テオ兄様の低い声が聞こえ、こちらを微笑ましいものでも見るかのように眺めていて……お、親子……ということは、リュート様と夫婦……い、いけません、妄想が過ぎますよ、私!
で、でも、テオ兄様に言われると、妙にそちらへ思考が動いてしまいます。
何故でしょう……?
「ちょっとした未来の光景みたいでしょ?」
「そうだな」
お、お二人とも待ってください!
私は召喚獣であって、リュート様のお嫁さんでは……って、もしかして、恋の女神様が言っていた勘違い発言が原因なのでしょうか。
リュート様も笑っている場合ではありませんよっ!?
訂正しておかなくては!
「ルー、ベリリあーん、なの!」
「え?」
お二人の誤解をとこうとした私に、春の女神様の愛らしい声がかかり、彼女が手に持つフォークの先に真っ赤なベリリが見えました。
「それは……」
「ルーも頑張ったから、ごほうび、なの!」
「ご褒美?」
「おいしい料理、ありがとうなの!」
にぱーっと笑って好物のベリリをどうぞと差し出してくる春の女神様に、胸キュンです!
やだもう、この可愛らしい子は私をどうしたいのでしょう!
「ありがとうございます。あーん」
「あーん」
やっぱり、春の女神様が作ってくださったベリリは一味違いますね。
とても味が濃く、品の良い香り豊かな甘味が口いっぱいに広がります。
「おいしー?」
「ええ、春の女神様が頑張って作ってくださったベリリは、とても甘くて香りが良くて美味しいですね」
「チェリシュ、うれしい!みんな、チェリシュの作ったベリリおいしーって!」
チェリシュスゴイ?とリュート様を見上げて問いかけ、彼は微笑み「えらいえらい」と言いながら彼女の小さな頭を優しく撫でています。
なんという和み空間……!
テオ兄様もロン兄様も優しい表情で眺めていますね。
愛の女神様も微笑ましいというような笑みを浮かべていましたが、私の方を見て「さて……」と呟く。
一気に空気が変わったのがわかった。
まだミルクレープを食べている途中ではあるのですが、ある程度リュート様たちのお腹も落ち着いてきたようですし、いい頃合いだと思われたのでしょう。
「まずは、どこから話そうかのぅ」
「オーディナル様の言葉をお伝えしましょうか」
「ふむ、そうじゃな。父はなんと?」
「色々あったけど、今は気にせずにそちらにいなさいということと、加護はここまでだということ、スキルをうまく扱うようにと……そして、ボクの世界の愛し子……と……」
それを真剣な表情で聞いていた愛の女神様は、1つ頷いて微笑んだ。
「そうか。ならば、妾の考えで間違いはあるまい。まず、勘違いしておるかもしれぬから、1つ訂正しておこう。加護がここまでというのは、父上が直接そなたに干渉することを一旦中止するということなのじゃろう。こちらの世界は母上の領域。それゆえ、必要以上の干渉ができぬだけで加護が消えるわけではない」
オーディナル様の加護が消えたわけではない……だけど、この世界はオーディナル様の世界ではないから私に直接関わることができなくなったということなのですね。
詳しい説明によると、一度与えた『加護』は消えたりしないのだそうです。
特定条件で使用不可になる可能性はあるようですが、それも稀なことだということでした。
そして、世界には様々なルールがあり、あちらの世界で神々が人の世に干渉できないのも、その1つのようです。
あちらとこちらで真逆のルールとなりますが、どちらも一長一短であるように思えました。
ただし、あちらの世界でも全く干渉できないわけではなく、救済措置として『愛し子』というシステムが存在するわけです。
人の手にあまることが起こる時、その愛し子のシステムが発動してオーディナル様が干渉できる人間という『愛し子』が誕生する。
「しかし、私は『愛し子』特有の黒髪をもちあわせておりません」
「ふむ……確かに、父上の愛し子であるなら、黒髪であるが……なんらかの理由があるのじゃろう。その髪色は、父の力の名残がある。元々は黒であった可能性が高いのぅ」
元々は黒……?
え……でも、そんな記憶はないですから、いつごろの話になるのでしょうか。
「少なくとも、10年前にはその色じゃ。父のはからいで、一瞬だけそなたの過去を見た。そこでのそなたはその髪色であったからな。人よけの呪いがかけられた時期でもあるようじゃ……ソレ以前にも、なにやら面倒なものがひとつかけられていたようじゃが……それがなんなのか、妾にはわからぬ」
「10年前……」
「そなたにとって、何かあった時期じゃろう」
「あ……はい、熱病にかかって、死にかけました」
確か、その時期の話だったろうと私が思い出していうと、「はっ!?」とリュート様から驚きの声があがりました。
顔が青くなっていますけど、だ、大丈夫ですよ?
ほら、ピンピンしてますからね?
「私は幼い頃から病弱で、領地で療養するほど体が弱かったと聞きます。熱病が完治したのは良いのですが、それ以前の記憶がとても曖昧なので、幼い頃に髪色が黒かと問われたら……私にはわかりません」
10年前に熱病を患ったとき、病弱だった私の生存は絶望視されたと聞きます。
しかし、記憶をほとんど……いえ、正直に言えば、ほぼ失った状態であるのにも関わらず後遺症などは全くなく、体は丈夫になり、普通に生活が出来るようになりました。
まるで、記憶を対価に健康な体を手に入れたようだと、誰かに言われたこともありましたね。
「髪色については問題ないように思う。黒であろうがなかろうが、そなたには父の加護の力を感じる。つまり、そなたは父上の代弁者であり、我々に近い者。リュートたちのように神気の干渉を受けることがなく、看破する力を持ち合わせておる」
「だから、ルーは、チェリシュが見えたー?」
「ああ、姿隠しの春霞を使っておったのか?それは通じんじゃろうな」
「すごいのー!」
あ……そういえば、あの時……私しか春の女神様を見ることができなかったのでしたね。
私はこの世界の神様が使う力の干渉を受けづらいということになるのでしょうか……それだけでも、スゴイことだと思えます。
「その代弁者が世界を渡りこちらへ来たのは偶然……ではあるまい」
「何か意味があるのでしょうか」
「それはわからぬ。そなたがこちらへ来る理由の1つは判明しておるが……それだけではないような気がするのぅ」
「1つはわかっていらっしゃるのですか?」
「……ん?そなたリュートから何も聞いておらぬのか?」
はい?
リュート様から?
思わず彼に視線を向けるのだけど、明後日の方向に視線をやっているところを見ると……あー、これは話せないってやつですね?
「もしかして、ひと月待て……の関連ですか?」
「……ああ」
「では、ひと月待てば話してもらえる内容なのですね?」
「それは、約束する」
こちらを見て力強く言ってくださるだけで、良しとしましょう。
だって、これは……リュート様なりに私を守ろうとしてくださっている気遣いの一種なのですもの。
「妾が宣言するという手もあるが?」
「今回の件で弱みを握られて言わされた……なんて言われねーか?」
「……用心深いな。じゃが、無いとは言い切れぬ」
「だろうな……」
「面倒なことじゃ……すまぬな」
「もともとそのつもりだったから、問題ねーよ」
ため息をつくリュート様と、弱々しく首を振る愛の女神様。
どうやら、愛の女神様の言葉で解決できたのに、恋の女神様の一件でそうもいかなくなったということらしいですね。
本当に、どこまで迷惑をかけてくださるのでしょう。
あの女神様……
そして、リュート様……愛の女神様にその口調は大丈夫なのですか?
愛の女神様も、普通に接してますから……もしかして、これが普段の二人のやりとり……だったりします?
思わず、チラリとテオ兄様とロン兄様に視線を走らせると、二人が黙って頷いているので、ああ、やっぱりそうなんだ……と、考えていたら「リュートはそのマナ性質からか神々に好かれ、とても仲がいいのだ」とテオ兄様が小さく呟き教えてくださいました。
なるほど、理解しましたけど……ある意味スゴイですよね。
「まあ、そなたが愛し子であることに間違いはない。あの時発動した力の一端に、父の力も感じたからのぅ」
「オーディナル様が手を貸してくださいましたから……」
「その気配に母もいっとき目を覚まし、すべてをなかったことにしてくださった。ザネンダが暴れるまえの状態に戻っておるところを見ると、眠っていても夢という形で全て見て居られたのかも知れんな」
創世神ルミナスラが眠っている……この事実は、あまり知られていないのでしょうか。
先程、リュート様が問うてはいけないという雰囲気をだしてましたものね。
「母上がよく眠る方であるということは一般的に知られておるがな……あることがあって、そうそう目覚めぬ眠りにつかれておる。しかし、夢を通してこの世界を把握しているのか、時折先程のような力をふるわれるのじゃ」
先程の力は大盤振る舞いであったがな……と、笑われてしまったけど、やっぱりお二人の神の力が為せる技であり、私はきっかけに過ぎないですよね?
あの奇跡が私の力だと思われるのは困りますもの。
「あの母上のことじゃ、愛しい父の気配を感じ、嬉しくなり無理して起きてこられたのじゃろう」
くすくすと少女のように笑い、両親のことを優しい口調で語る愛の女神様は、家族が大事で、両親が大好きなのですね。
本当に、愛情に深い女神様です。
「ああ、そうだ。そなたのスキルに関しても、説明しておかねばな」
両親のことを思い出して微笑んでいた愛の女神様は、はたと思い出したように私を見つめて優雅に微笑む。
私のスキル……昨日の今日で2つめが目覚めるとか……いったい、私はどういう状態になっているのでしょう。
一抹の不安を覚えながらも、みんなが見守る中、私はゆっくりと頷いた。
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