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06 再会

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【決定回避の法則】
 選択肢が多ければ多いほど、逆に選べなくなってしまう。 


 依頼をいつも通りに受け仕事場に向かう。もう仕事場と言っていいだろう。
 幸也は悩んでいた。トーナメント参加についてだ。賞金もさることながら腕試しをしてみたいという気持ちが芽生えていた。
 アイテムボックスというスキルで防御力には自信がある。しかし【絶対防御】ではないはずだ。

(おそらく魔法のシールドと同じで相手の攻撃力が上ならば突き抜けたり破壊されるはず。シールドが封じられた場合は・・・)

 すでにトーナメントに参加するような思考をずっとしていた。

 森に入ると昨日との違いがすぐに分かった。ゴブリンのようだが、ゴブリンとは少し違う個体がいるのだ。胸当てに鉄剣みたいな物を持っている。

(もしかして《ゴブリンナイト》。昨日まで見かけなかったはず・・・キングを倒したからか?)

 ゴブリンナイトのスピードは別物だった。突進力、斬撃力が全然違う。
 慌ててしまったが、きっちり【シールド】を決める。ガラ空きの腹部に鋼剣を振り抜く。よろめいて後ろに下がるゴブリンナイトの首に鋼剣を突き刺す。
 ほどなくしてゴブリンナイトは絶命した。

 いつも通りゴブリンを狩りまくる。
 また見たこともないゴブリンがいた。マントをつけている。杖?のような物も持っている。おそらく『ゴブリンメイジ』だ。
 ゴブリンメイジはすでに魔法詠唱を終え、こちらに火球ファイアを放つ。
 心配だったが、これも【シールド】で防ぐことができた。魔法さえ防いでしまえばゴブリンメイジは相手ではない。
 あっさりと心臓に鋼剣を突き刺した。

 そんな感じで、本日の成果は
・ゴブリンナイト 2匹
・ゴブリンメイジ 1匹
・ゴブリン 14匹
 
 ギルドに戻るとミレイユさんが

「ゴブリンじゃない物も混じってますが?」
「たぶん、ゴブリンナイトとゴブリンメイジだと思います。正式名称がイマイチ分からないので」
「いやいや。なんでナイトとメイジまで倒してきちゃうんですか?!」
「えっ!?ダメなんですか?」
「いやいや。普通、1人ソロで倒せないでしょう?」
「運が良かった・・・」
「運じゃ倒せません!」

 外野の冒険者が再びざわつく。

「紳士が今度はナイトとメイジを倒したらしい」
「もう《ゴブリンマスター紳士》でいいだろ!」
「そうだな」

(なんか二つ名が変わったけど、相変わらず【紳士】は付いたままなのか・・・それが一番いらないのに・・・)

 ミレイユさんに絡まれないうちにギルドを出る。
 トーナメント参加締め切りまで、残り9日。

 ここ5日間はいつも通り、ナイトとメイジを含めたゴブリンを狩りまくる。おかげでLV18まで上がった。
 そして再びあのチャイムが頭に鳴り響く。

【アイテムボックスがLV4になりました】

 これを待っていた!そろそろと思っていたらLV18までなってしまった。急いでステータスを確認する。

【アイテムボックスLV4:スキル収納】
スキルを3つまで収納できます。

(んー。意味が分からない・・・)

 試しにアイテムボックス内のスキル収納を見てみる。【?】が3つ並んでいる。

(俺のスキルはアイテムボックスで、アイテムボックス内にスキル収納があって収納できる???意味が分からない)

 幸也はこんな時【観察眼】とか【鑑定眼】みたいなスキルがあれば便利なのに・・と考えていたらすぐに1つ閃いた。

 倒したゴブリンナイトに向かう。そしてスキル収納でゴブリンナイトを収納する。
 今までと違い黄色に光りゴブリンナイトが消える。
 アイテムボックス内にゴブリンナイトはない。
 しかしスキル収納のところに

【スキル収納】
・剣術LV1
・?
・?

 幸也は鋼剣を抜き素振りをしてみる。明らかに今まで違う空を切る音。
 そうスキル収納にスキルを収納すれば、そのスキルを使用することができるのだ。

 幸也はメイジを探し同じようにスキル収納をする。

【スキル収納】
・剣術LV1
・火魔法LV1
・?

(おおお!)

 幸也は戦闘スキルの獲得に歓喜した。これでトーナメント参加に踏ん切りがついた。
 ゴブリンもスキル収納してみる。ゴブリンはスキルを持っていなかった。
 そしてもう一体あったゴブリンナイトへ。
 わずかばかりの髪の毛をスキル収納でなく、普通に収納した。剣術スキルの予備を持っておきたかったからだ。
 そこで、また閃く。

(髪の毛だけでもスキル収納できるのか?)

 収納した髪の毛を1本取り出し、スキル収納してみる。黄色く光り髪の毛が消えた。頭の中にメッセージが出る。

【剣術LV1を剣術LV2に上書きしますか?はい・いいえ】

 【はい】を選ぶと剣術はLV2になっていた。このゴブリンナイトは剣術LV2だったようだ。

(髪の毛でもスキルを獲得できる。ならば高スキルの人の髪の毛があれば・・・)

 ギルドへの帰り道、幸也は決心していた。トーナメント参加を。明日の朝一番に受付して来ようと。

 翌朝、一番にトーナメント参加の受付を済ます。そして聞き慣れた声で呼び止められる。

「宮原!」
「宮原君!」

 そこにいたのは幸也が元いたパーティと他のパーティメンバー数名。柳田は

「宮原、ここで何を?」
「何って受付だろ」
「おまえも参加するのか?!」

 他のパーティメンバーの山崎が

「お記念参加は辞めて欲しいね~」
「・・・」
「おまえのスキルで何するの?」
「・・・」

 幸也は無言のまま立ち去ろとする。水川が

「宮原君!」

 と叫ぶが、幸也は水川の顔を無言で見たあとその場から去った。そしてギルドに向かう。
 今日はミレイユさんがお休みなのは確認済みだ。
 ギルドの美人受付嬢に依頼を持って行く。

【オーガ討伐:ランク制限なし】

 受付嬢は驚いていた。ミレイユさんのお休みの日にしたのは確実に止められるからだ。

 受付を済ませ目的地に向かう。
 予定では行きに1日、討伐に1日、帰りに1日。
 そして翌日にトーナメント参加だ。予定がギリギリになってしまったがまぁ仕方ない。

 幸也は目的地まで歩く。これだけ歩いてもバテないのは前世から教訓があるからだ。

【人は、歩かなくなったらおしまい】

 前世で、親戚の叔父さんが肥満から糖尿。会社の上司や同僚がメタボで、健康診断前にビクビク。すべて運動不足によるものだ。なので幸也は転生した後もよく歩いた。
 結果それがこの世界に来て役に立つとは思ってもいなかった。

 歩くことは苦にならない。問題は野宿。やはり全然寝れなかった。仕方ないので日が昇ってから2時間ほど、草原で仮眠をとった。
 今日はオーガ討伐をするのに睡眠不足ではどうしようもないからだ。

 眼が覚めると森に入る。この森を抜けると湖だ。
 けっこう長い時間、森を歩いているのに魔物が1匹もいない。簡単に森を抜けることができた。
 
 湖は東京ドームほどはあるだろうか。
 水がかなり澄んでいる。湖の周りに《赤華草》が生えているのが分かる。文字通り赤いので、すぐに判別がつく。
 幸也が《赤華草》をいくつか採取しているとき、そいつが現れた。

 体長2・5メートル。白い髪に赤い皮膚。上半身の筋肉が物凄い。手には棍棒?いや、2メートルはありそうな丸太を持っている。
  
 こいつが目的のオーガだ。



 
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