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05 アイテムボックス3

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【ディドロ効果】
 自分の気に入った物を購入したときに、その物に合わせ物で統一したくなる。



【アイテムボックスがLV3になりました】

 急いでステータス画面を確認する。

【アイテムボックスLV3:ダブルボックス】
アイテムボックスを2つ同時に出現できる。

(んー!!!2つ同時だと!!!)

 試しに2つ同時に出してみる。目の前に2つのアイテムボックスが出た。
 今度は10メートル先に1つ、5メートル先に1つ。これも何の苦もなくできた。

(これは更に便利になった。しかし俺のアイテムボックスはどこに向かってるんだ?)

 もう少し戦いたかったが今日は止めることにした。少し疲れが溜まってる。早めに帰るべきだ。

 ギルドでゴブリンの討伐部位を見せるとミレイユさんがついに声を荒あげた。

「こんなに!どうしたんですか?これ?」
「討伐しました」
「1人で?」
「1人で」

 外野の冒険者達もガヤガヤと騒ぐ。

「あれが《ゴブリンスレイヤー紳士》か?」
「そうだ。けっこう若いのに紳士的なんだ」

(なんか・・・変な単語が追加されてるよ・・・)

 ミレイユさんから報酬をもらうと逃げるように外に出た。

(紳士?言葉使いが?恥ずかしい。明日からタメ口にしてみようか?)

 真剣に悩んでしまう。

【ゴブリンスレイヤー紳士:宮原幸也】

(恥ずかしい・・これは絶対に阻止しなければ・・)

 翌日、ギルドに行くと受付はミレイユさんだった。いつもの依頼を持って行くと薄目で怪しんでる表情で言った。

「レベルが上がりましたよね?」
「最初の頃より少しは・・・どうしたんですか?」
「いえ・・・受付します」

(なんだったんだろう?あっ・・タメ口にするの忘れた)

 今日もゴブリンを狩りまくる。鋼の剣が欲しいのだ。そして、昨日覚えた新しいスキル【ダブルボックス】を試してみる。2つあるとやはり戦闘が全然違う。1つを【トラップ】で使用しても、いつでも【シールド】が使えるので安心感があるのだ。

 【シールド】【トラップ】そして【ダブルシールド】【ダブルトラップ】を駆使してゴブリンを狩りまくる。
 レベルも上がったせいか体がスムーズに動く。
【シールド・トラップ】の形状変化も練習してみる。四角という状態は変えられないが、長方形にしてみたりヒモのように細長くしてみたりだ。これにより更に戦闘がはかどる。
 後1つ、アイテムボックスを垂直ではなく、水平に出現させる。そこに足をかけて上にジャンプする。どこにでも出せる足場のような感じだ。2つ出せば、けっこう上までジャンプできる。
 今日は、今まで最高の23匹を倒した。

 街まで戻りギルドの受付に行く途中に思った。

(今日の討伐数を見せたらミレイユさんはまた怪しむね・・)

 怪しむかと思ったら違った!

「23匹討伐ですね。換金いたします」
「お願いします」

「こちらが報酬です」
「ありがとうございます」
「ところでユキヤさんはいつもどこで食事を?自炊ですか?」
「えーと、宿の近くの『もんもん亭』で外食してます」
「あぁ!あそこは安くて美味しいですよね」
「はい。スープが特に」
「彼女と一緒に?」
「彼女はいません」
「本当ですか?」
「本当です」

 会話を強引に切り上げてギルドを出た。他の男冒険者の視線がキツかったからだ。
 帰りに武器屋に寄ってみる。もう少しで目標に達する。武器屋で鋼の剣を見ていると、

「ボウズ、金貨1枚でいいよ」
「えっ!?」
「だから、金貨1枚でいいって」
「えっ?どうしてですか?」
「今日は大きな納品があってね。稼ぎが良かったんだ」
「いや、でも半値はさすがに・・」
「いらないか?」
「いります!」
「よし、金貨1枚だ」
「ありがとうございます」
「あっそうだ。ボウズ、シルバーベアの肉を分けてもらったんだが一緒に食べないか?」
「いいんですか?」
「1人では食べきれん」

 武器屋のオヤジさんに肉をご馳走肉をなりながら、剣の話しを聞いた。めちゃくちゃ為になる。
 肉も美味しかったし鋼の剣も半値で手に入ったし、幸也はホクホク顔で宿に帰った。
 一方、もんもん亭にてミレイユ。

「ユキヤこねーー!!」

 今日は、朝からミレイユさんの機嫌が悪そうだ。

(彼氏と喧嘩したのだろうか?あまり近寄らないようにしよう)

「おはようございます」
「・・・おはようございます」

(うわぁー。機嫌悪すぎ)

「これ、お願いします」
「こちらですね。ところでユキヤさん。昨日はちゃんと食事したんですか?」
「あっはい。武器屋のオヤジさんに肉をご馳走になって」
「・・あっ、そうなんですか。受付完了です」

(いったい何が・・・?)
 
 鋼剣の斬れ味に驚いた。鉄剣とは別物だ。力をこめなくてもスムーズに斬れる。攻撃力も少しはマシになったかね。
 今日はいつもと何か違う。
 ずっとゴブリンばかりだったので、ゴブリンしかいないと思ってたら違ったようだ。
 明らかに他のゴブリンよりも一回り大きい個体。おそらく『ゴブリンキング』と呼ばれるヤツだ。
 今まで遭遇しなかったがおかしいのか?運がいいのか?
 ゴブリンキングは、ゴブリンよりも筋肉量が違う。破壊力も段違いだろう。持っている武器も大剣だ。戦闘力はゴブリンと比べ物にならない。
 ゴブリンキングは俺を見つけるとニヤリと笑い、ゆっくり近づいて来る。お供のゴブリンは後ろで待機状態だ。

(完全に舐められてるね・・さて、どうするか?)

 考える間もなく、ゴブリンキングがダッシュしてきた。歩を進める度に地面が響く。幸也はゴブリンキングの顔面あたりに【トラップ】を出現させダッシュする。
 ゴブリンキングは【トラップ】を顔面に直撃させ仰向けに倒れた。
 走りながら自分の心臓くらいの高さに、アイテムボックスで足場を作る。足場を右足で思い切り蹴って、倒れているゴブリンキングの方にジャンプ。落下速度を利用してゴブリンキングの心臓に鋼剣を突き立てた。

 鋼剣を心臓から抜くとお供をしていたゴブリンにダッシュしていく。【シールド・トラップ】を使い3匹を倒した。
 レベルが一気に2つ上がってLV12になった。あっさり倒してしまったので実感がないが、ゴブリンキングの経験値は多かったようだ。

 その後はゴブリンが全くいなかった。キングのせいだろうか?
 諦めて街まで戻る。受付嬢ミレイユさんに討伐部位を渡す。今日はキング込みで5匹、依頼完了ギリギリだ。

「なんですかねこれ?」
「討伐部位です」
「1つ変なのが混じってますが?」
「あぁ!やっぱりゴブリンキングじゃダメですか?」
「そうじゃないです!どこの世界に新人で、しかも1人でゴブリンキングを倒す人がいるんですか?」
「運が良かった・・」
「運じゃ勝てません!」
「早く換金お願いします」

 ミレイユさんは薄目で幸也の顔を見たあと、バックヤードに消えた。そしていつものように他の冒険者がざわつく。

「今度はキングかよ!」
「ソロで倒した奴ってどの位ぶりだ?」
「さすが《ゴブリンスレイヤー紳士》」

(その恥ずかしい二つ名はやめてくれ・・せめて紳士は外して・・紳士は・・)

「お待たせしました、ユキヤさん。銀貨6枚です」
「多くないですか?」
「ゴブリンキングも含めると、このくらいが妥当かと」
「そうですか、ありがとうございます。ところで、このチラシは何ですか?」
「最強ルーキー決定トーナメントです。毎年この街で開催されるんです」
「参加者はルーキーの人のみで?」
「そうです。新人冒険者や新人騎士、新人魔法使い等々の人ですね。ユキヤさんも参加できますよ?」
「賞金がすごいんですね。少し考えてみます」

 ギルドを後にする。賞金額にビックリした。優勝賞金、金貨100枚!俺の何日分の稼ぎだろう。
 参加締め切りは10日後だ。


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