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第22章 淫紋の宝珠編
第363話 魔道具店『闇夜のカラス』
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全員が着席すると女神フィリアに祈りを捧げ、それが終わると晩餐が始まった。
「食前酒としてワインをご用意しておりますが、如何ですか?」
メイド長のソニアが女性神官たちに聞いた。
「ありがとうございます。
折角ですから、白ワインを1杯だけ頂戴します」
大司教の他、数名の女性が手を上げワインを所望した。
オレ達も白ワインを貰い乾杯すると食事が始まった。
その夜はアクアスター・リゾートのオリジナルコース料理である。
①前菜5種盛り合わせ
・サーモンのカルパッチョ
・キノコのマリネ
・玉葱のムース
・生ハムメロン
・カプレーゼ
②スープ
ヴィシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)
③魚料理
鯛のアクアパッツァ
④肉料理
チキンソテーのチーズソース掛け
⑤米料理
海老と魚介のパエリア
⑥デザート
3種のジェラート(ジェラート・バレンシア特製)
8種のミニケーキ(ルミエール・ド・エトワール特製)
⑦食後のドリンク
コーヒー、紅茶、ハーブティー
女性神官たちは、見たことも無いようなご馳走に次々と手を伸ばし満足気に口に運んでいた。
彼女たちの後ろには6名のメイドたちが控えており、付きっ切りで給仕していた。
「お料理はたくさんご用意しておりますから、遠慮なくお代わりをお申し付け下さい」
女性神官たちは、大司教の目を気にしながらも遠慮がちに小声でお代わりした。
アウレリアは初めて食べたという冷たいジェラートがお気に入りのようで、メイドにお代わりを頼んでいた。
その姿は細身ながら均整の取れたスタイル、艷やかでサラサラな腰までの長い金髪、清楚で可憐な容姿、慈愛に満ちた優しい眼差し、気品溢れる超ハイスペックな美少女に思わず見とれてしまった。
オレの視線を感じたのかアウレリアがこちらを見たので、質問してみた。
「アウレリアさん、女神フィリア様の神託を聞いたと言う話ですが、それはどのような内容でしたか?」
アウレリアは、オレの目を澄んだ瞳で見つめ返し、その時のことを語り始めた。
「はい、ご領主様。
私は、セントエリス大聖堂で朝の礼拝に参加するのが日課でございます。
2週間前の日曜日、朝の礼拝で女神様に祈りを捧げている時でした
突然、女神様の彫像が輝き始めたのでございます。
そして、私にこのような御神託をお授けになられたのです。
それはこのようなお言葉で御座いました」
『汝アウレリアに命ず、これより一月の後、アクアスター神聖国の聖都セントフィリアへ赴き、女神大神殿に於いて司教として奉職せよ。神託の証として汝に『聖女の指輪』を授ける』
「なるほど、その神託は他の神官の方々にも聞こえたのですか?」
「はい、その場にいた者全員が女神様のお言葉を聞いたそうです」
「貴女は、女神様の御神託を聞かれてどう思いましたか?」
「女神様自らが私を司教に選ばれたこと、光栄でありとても名誉なことだと思いました」
アウレリアは、キラキラと輝く純真な瞳でオレに微笑んだ。
聖女を一人の女としてみるのは、些か不謹慎であるが、アウレリアは実に魅力的な女性だと思った。
神託により大神殿の女性神官に指名したのは、何れも16歳のうら若き乙女で、しかも全員が美少女とくれば、何となく女神フィリアの気持ちが分かる。
オレは聖都セントフィリアが発展途上の街であり、街中を循環するトラムが走ること、女神大神殿の女神像が独特なポーズをしていることなどを話すと、みんな興味深そうに聞いていた。
その後も話は弾み、夕食は約1時間半でお開きとなった。
「今日は、朝から色々と大変だったと思います。
この部屋にはジャグジーバスがありますから、温泉に入られて今日1日の疲れを癒やされると良いでしょう」
「部屋で温泉に入れるのですか?
それは素晴らしいことです」
「はい、3つの源泉からパイプラインを引いていますから、お好みの温泉が選べます。
部屋にメイドを3名残して置きますので、何か御用がありましたら、遠慮なくお申し付け下さい」
「ご領主様、盗賊から救出していただいたばかりか、一夜の宿をご提供いただき、更にはこのような豪華なお食事や温泉までご用意いただき本当にありがとうございます。
この御恩は生涯忘れません」
オレたちは部屋を退出し、12階の自分たちの居住スペースへ戻った。
シャワーを浴びウイスキーを楽しんでいると、大司教の部屋の担当メイドが慌てた様子でオレを呼びに来た。
「た、大変です…、カイト様…
大司教様が、直ぐに来て欲しいと仰ってます」
こんな夜遅くに呼び出すとは、いったい何が起きたのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『憎まれっ子世に憚る』という諺がある。
かつては栄華を極めたエッセン市魔導具ギルドの元ギルドマスター、ミルカラーニ・コアクトーもこの諺に当てはまるだろう。
コアクトーは、ギルド連合の副会長を兼任し、権力を恣にしていた。
しかし新領主シュテリオンベルグ公爵により、裏帳簿のカラクリを見破られ、脱税・横領・背任の罪で断罪されたのである。
コアクトーを始めとするギルド連合幹部3名は、逮捕され連日厳しい取り調べが行われた。
並行して表帳簿と裏帳簿、在庫の会計監査、ギルド連合幹部の家宅捜索と財産調査を行なわれ、如何に私腹を肥やしたか明らかにされたのだ。
首謀者であるギルド連合幹部3名は全財産没収、鞭打ち100回の上、領外追放処分の刑が言い渡された。
エッセン市の一等地に所有していた広大な土地と贅を極めた屋敷、愛人のために建てた別邸や蔵が建つほど貯めた金貨、絵画や壺等の美術工芸品、宝石や宝剣などの財宝も全て没収された。
妻はコアクトーに扶養能力が無いと知ると、一方的に離縁を言い渡し、4人の子供を連れて実家へ帰って行った。
大勢いた使用人や十数人いた妾の女たちも全員コアクトーの元を去った。
全財産を失い一文無しとなったコアクトーは、当座の旅費として与えられた銀貨4枚(2万円)を持ち、着の身着のままでエッセン領を追放された。
途方に暮れたコアクトーは隣の子爵領で仕事を見つけようと思った。
心当たりは幾つもあった。
最初にギルド連合時代にコアクトーが優遇し目を掛けていた商会を頼った。
かつては地面に頭を擦り付けるほどヘコヘコと媚び諂っていた業者らは掌を返すように冷たい態度を取り、コアクトーに力を貸そうとする者は誰一人として居なかった。
職が無く収入がないので、手持ちの金は減る一方だ。
宿に泊まる金を節約して、他人の家の軒下や大樹の下で寝た。
職を求めて職業斡旋所に通ったが、身元保証がないコアクトーが就ける職は皆無に等しかった。
コアクトーの悪事の噂は既に子爵領にも伝わっており、領外追放となった彼に誰も関わろうとしなかったのだ。
それから3週間ほどで遂に金が底を付き一文無しとなった。
コアクトーは、子爵領での仕事探しを諦め、更に西の男爵領に徒歩で移動した。
当然食べる物は無く、樹の実や茸で飢えを凌ぎ、沢水や雨水を飲んで乾きを潤した。
一度腹を下し、下痢が止まらず死ぬ目にあったがゴキブリ並の生命力で何とか回復した。
やっとの思いで男爵領に入ると、運良く日雇いの仕事を見つけ糊口を凌いだ。
しかし、それからすぐにコアクトー追放の噂は男爵領内でも広まり仕事を見つけるのが難しくなった。
これ以上国内に居ても、まともな仕事に就けないと悟り、コアクトーは隣の国『ウェスタニア神聖国』に越境することにした。
当然正式な通行許可証などある筈もない。
国境検問所を迂回し隣国へ入るルートがあると知ると、険しい山道を何日も掛けて踏破し、彼は『ウェスタニア神聖国』へ入国した。
コアクトーは昔の記憶を頼りに国境から一番近い街を目指した。
日中は日陰を探しながら街道をひたすら歩き、夜は獣の遠吠えに怯えながら木の上で寝た。
蛇や野兎、野ネズミなどを捕らえ動物タンパクを摂る術を覚えた。
コアクトーは、強靭な生命力で丸4日掛けて歩き、人口6千人余りの街アグレバへ辿り着いた。
しかし、そこで劇的に状況が変わる筈もなく、夜露を凌ぐ場所や、その日の食い物にさえ困る日が続いた。
恰幅が良かったコアクトーは既にかつての面影はなく、ガリガリに痩せていた。
余りに見窄らしい姿に同情した老婆の口利きでコアクトーは街外れにある貧民街に住み着いた。
とにかく何か仕事をしなければ、その日の食い物さえないのだ。
老婆の斡旋で街のゴミ拾い、便所掃除、土木工事、農作業の手伝いなど仕事を選ばず何でもこなし、ようやく食うに困らなくなった。
しかしコアクトーは、いつまでも日雇いの仕事を続けるつもりはなかった。
かと言って今更真っ当な仕事に就くことは不可能だ。
コアクトーは考えた挙げ句、自分の得意な魔道具製作の特技を活かし魔道具店を開くことを決意した。
そのために朝から夜遅くまで働き金を貯め、暇を見ては売れそうな魔道具を作り、6ヶ月と言う短期間で貧民街の外れに魔道具店を開店させたのである。
店名は、魔道具店『闇夜のカラス』だ。
怪しさ満点の店名と店頭に飾った怪しい商品に惹かれ、怪しい男たちが店を訪れるようになった。
販売している魔道具は、どれもまともな品物ではない。
コアクトーは容姿と性格には難があるが、魔道具造りの腕は確かなのである。
店内には下記のような怪しい商品が30数点並べられていた。
◎七転八倒の杖 呪文を唱えると7回転ぶまで立ち上がれなくなる杖
◎忘却の手鏡 呪文を唱えると過去10分間の出来事を忘れさせる鏡
◎本末転倒の壺 自分の意見を相手に押し付けることができる壺
◎隷属の首輪 首輪を付けた者を支配下に置くことが出来る首輪
◎復活の腕輪 元気がない男性器を絶好調にする腕輪
◎淫獣の指輪 無限に精力と体力が湧いてくる男性用の指輪
◎淫夢の勾玉 想い人の淫らな夢が見られると言う勾玉
◎淫紋の宝珠 女性の下腹部と両乳房の上部に淫紋を刻印する宝珠
「食前酒としてワインをご用意しておりますが、如何ですか?」
メイド長のソニアが女性神官たちに聞いた。
「ありがとうございます。
折角ですから、白ワインを1杯だけ頂戴します」
大司教の他、数名の女性が手を上げワインを所望した。
オレ達も白ワインを貰い乾杯すると食事が始まった。
その夜はアクアスター・リゾートのオリジナルコース料理である。
①前菜5種盛り合わせ
・サーモンのカルパッチョ
・キノコのマリネ
・玉葱のムース
・生ハムメロン
・カプレーゼ
②スープ
ヴィシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)
③魚料理
鯛のアクアパッツァ
④肉料理
チキンソテーのチーズソース掛け
⑤米料理
海老と魚介のパエリア
⑥デザート
3種のジェラート(ジェラート・バレンシア特製)
8種のミニケーキ(ルミエール・ド・エトワール特製)
⑦食後のドリンク
コーヒー、紅茶、ハーブティー
女性神官たちは、見たことも無いようなご馳走に次々と手を伸ばし満足気に口に運んでいた。
彼女たちの後ろには6名のメイドたちが控えており、付きっ切りで給仕していた。
「お料理はたくさんご用意しておりますから、遠慮なくお代わりをお申し付け下さい」
女性神官たちは、大司教の目を気にしながらも遠慮がちに小声でお代わりした。
アウレリアは初めて食べたという冷たいジェラートがお気に入りのようで、メイドにお代わりを頼んでいた。
その姿は細身ながら均整の取れたスタイル、艷やかでサラサラな腰までの長い金髪、清楚で可憐な容姿、慈愛に満ちた優しい眼差し、気品溢れる超ハイスペックな美少女に思わず見とれてしまった。
オレの視線を感じたのかアウレリアがこちらを見たので、質問してみた。
「アウレリアさん、女神フィリア様の神託を聞いたと言う話ですが、それはどのような内容でしたか?」
アウレリアは、オレの目を澄んだ瞳で見つめ返し、その時のことを語り始めた。
「はい、ご領主様。
私は、セントエリス大聖堂で朝の礼拝に参加するのが日課でございます。
2週間前の日曜日、朝の礼拝で女神様に祈りを捧げている時でした
突然、女神様の彫像が輝き始めたのでございます。
そして、私にこのような御神託をお授けになられたのです。
それはこのようなお言葉で御座いました」
『汝アウレリアに命ず、これより一月の後、アクアスター神聖国の聖都セントフィリアへ赴き、女神大神殿に於いて司教として奉職せよ。神託の証として汝に『聖女の指輪』を授ける』
「なるほど、その神託は他の神官の方々にも聞こえたのですか?」
「はい、その場にいた者全員が女神様のお言葉を聞いたそうです」
「貴女は、女神様の御神託を聞かれてどう思いましたか?」
「女神様自らが私を司教に選ばれたこと、光栄でありとても名誉なことだと思いました」
アウレリアは、キラキラと輝く純真な瞳でオレに微笑んだ。
聖女を一人の女としてみるのは、些か不謹慎であるが、アウレリアは実に魅力的な女性だと思った。
神託により大神殿の女性神官に指名したのは、何れも16歳のうら若き乙女で、しかも全員が美少女とくれば、何となく女神フィリアの気持ちが分かる。
オレは聖都セントフィリアが発展途上の街であり、街中を循環するトラムが走ること、女神大神殿の女神像が独特なポーズをしていることなどを話すと、みんな興味深そうに聞いていた。
その後も話は弾み、夕食は約1時間半でお開きとなった。
「今日は、朝から色々と大変だったと思います。
この部屋にはジャグジーバスがありますから、温泉に入られて今日1日の疲れを癒やされると良いでしょう」
「部屋で温泉に入れるのですか?
それは素晴らしいことです」
「はい、3つの源泉からパイプラインを引いていますから、お好みの温泉が選べます。
部屋にメイドを3名残して置きますので、何か御用がありましたら、遠慮なくお申し付け下さい」
「ご領主様、盗賊から救出していただいたばかりか、一夜の宿をご提供いただき、更にはこのような豪華なお食事や温泉までご用意いただき本当にありがとうございます。
この御恩は生涯忘れません」
オレたちは部屋を退出し、12階の自分たちの居住スペースへ戻った。
シャワーを浴びウイスキーを楽しんでいると、大司教の部屋の担当メイドが慌てた様子でオレを呼びに来た。
「た、大変です…、カイト様…
大司教様が、直ぐに来て欲しいと仰ってます」
こんな夜遅くに呼び出すとは、いったい何が起きたのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『憎まれっ子世に憚る』という諺がある。
かつては栄華を極めたエッセン市魔導具ギルドの元ギルドマスター、ミルカラーニ・コアクトーもこの諺に当てはまるだろう。
コアクトーは、ギルド連合の副会長を兼任し、権力を恣にしていた。
しかし新領主シュテリオンベルグ公爵により、裏帳簿のカラクリを見破られ、脱税・横領・背任の罪で断罪されたのである。
コアクトーを始めとするギルド連合幹部3名は、逮捕され連日厳しい取り調べが行われた。
並行して表帳簿と裏帳簿、在庫の会計監査、ギルド連合幹部の家宅捜索と財産調査を行なわれ、如何に私腹を肥やしたか明らかにされたのだ。
首謀者であるギルド連合幹部3名は全財産没収、鞭打ち100回の上、領外追放処分の刑が言い渡された。
エッセン市の一等地に所有していた広大な土地と贅を極めた屋敷、愛人のために建てた別邸や蔵が建つほど貯めた金貨、絵画や壺等の美術工芸品、宝石や宝剣などの財宝も全て没収された。
妻はコアクトーに扶養能力が無いと知ると、一方的に離縁を言い渡し、4人の子供を連れて実家へ帰って行った。
大勢いた使用人や十数人いた妾の女たちも全員コアクトーの元を去った。
全財産を失い一文無しとなったコアクトーは、当座の旅費として与えられた銀貨4枚(2万円)を持ち、着の身着のままでエッセン領を追放された。
途方に暮れたコアクトーは隣の子爵領で仕事を見つけようと思った。
心当たりは幾つもあった。
最初にギルド連合時代にコアクトーが優遇し目を掛けていた商会を頼った。
かつては地面に頭を擦り付けるほどヘコヘコと媚び諂っていた業者らは掌を返すように冷たい態度を取り、コアクトーに力を貸そうとする者は誰一人として居なかった。
職が無く収入がないので、手持ちの金は減る一方だ。
宿に泊まる金を節約して、他人の家の軒下や大樹の下で寝た。
職を求めて職業斡旋所に通ったが、身元保証がないコアクトーが就ける職は皆無に等しかった。
コアクトーの悪事の噂は既に子爵領にも伝わっており、領外追放となった彼に誰も関わろうとしなかったのだ。
それから3週間ほどで遂に金が底を付き一文無しとなった。
コアクトーは、子爵領での仕事探しを諦め、更に西の男爵領に徒歩で移動した。
当然食べる物は無く、樹の実や茸で飢えを凌ぎ、沢水や雨水を飲んで乾きを潤した。
一度腹を下し、下痢が止まらず死ぬ目にあったがゴキブリ並の生命力で何とか回復した。
やっとの思いで男爵領に入ると、運良く日雇いの仕事を見つけ糊口を凌いだ。
しかし、それからすぐにコアクトー追放の噂は男爵領内でも広まり仕事を見つけるのが難しくなった。
これ以上国内に居ても、まともな仕事に就けないと悟り、コアクトーは隣の国『ウェスタニア神聖国』に越境することにした。
当然正式な通行許可証などある筈もない。
国境検問所を迂回し隣国へ入るルートがあると知ると、険しい山道を何日も掛けて踏破し、彼は『ウェスタニア神聖国』へ入国した。
コアクトーは昔の記憶を頼りに国境から一番近い街を目指した。
日中は日陰を探しながら街道をひたすら歩き、夜は獣の遠吠えに怯えながら木の上で寝た。
蛇や野兎、野ネズミなどを捕らえ動物タンパクを摂る術を覚えた。
コアクトーは、強靭な生命力で丸4日掛けて歩き、人口6千人余りの街アグレバへ辿り着いた。
しかし、そこで劇的に状況が変わる筈もなく、夜露を凌ぐ場所や、その日の食い物にさえ困る日が続いた。
恰幅が良かったコアクトーは既にかつての面影はなく、ガリガリに痩せていた。
余りに見窄らしい姿に同情した老婆の口利きでコアクトーは街外れにある貧民街に住み着いた。
とにかく何か仕事をしなければ、その日の食い物さえないのだ。
老婆の斡旋で街のゴミ拾い、便所掃除、土木工事、農作業の手伝いなど仕事を選ばず何でもこなし、ようやく食うに困らなくなった。
しかしコアクトーは、いつまでも日雇いの仕事を続けるつもりはなかった。
かと言って今更真っ当な仕事に就くことは不可能だ。
コアクトーは考えた挙げ句、自分の得意な魔道具製作の特技を活かし魔道具店を開くことを決意した。
そのために朝から夜遅くまで働き金を貯め、暇を見ては売れそうな魔道具を作り、6ヶ月と言う短期間で貧民街の外れに魔道具店を開店させたのである。
店名は、魔道具店『闇夜のカラス』だ。
怪しさ満点の店名と店頭に飾った怪しい商品に惹かれ、怪しい男たちが店を訪れるようになった。
販売している魔道具は、どれもまともな品物ではない。
コアクトーは容姿と性格には難があるが、魔道具造りの腕は確かなのである。
店内には下記のような怪しい商品が30数点並べられていた。
◎七転八倒の杖 呪文を唱えると7回転ぶまで立ち上がれなくなる杖
◎忘却の手鏡 呪文を唱えると過去10分間の出来事を忘れさせる鏡
◎本末転倒の壺 自分の意見を相手に押し付けることができる壺
◎隷属の首輪 首輪を付けた者を支配下に置くことが出来る首輪
◎復活の腕輪 元気がない男性器を絶好調にする腕輪
◎淫獣の指輪 無限に精力と体力が湧いてくる男性用の指輪
◎淫夢の勾玉 想い人の淫らな夢が見られると言う勾玉
◎淫紋の宝珠 女性の下腹部と両乳房の上部に淫紋を刻印する宝珠
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