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第20章 女神降臨編

第304話 女神降臨(中編)

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 風評被害を受け、閑古鳥が鳴いていたアクアスター・リゾートは、女神フィリアが連れてきた38名の女神で全館貸切となっていた。
 女神一族の収益ランキングでダントツ1位の女神として、絶大な力を持つ女神フィリアは、女神一族の中で一番若く、やり手であると言われているが、パッと見にはとてもそのように見えない。

 女神フィリアの見た感じは、やんちゃで、そそっかしくて言葉遣いはぞんざいで、オレにはとても女神には見えないが、オレの7人の婚約者フィアンセ達には、全く違って見えているようだ。
 その印象は、上品で神々こうごうしく、滋味あふれる微笑みをたたえ、物静かな話し方であると言うことだ。
 しかも女神フィリアの後ろからは、後光が差していると言うのである。
 オレには後光など見えないのだが、いったいどういうことだろう。

 その女神達は、4種類の温泉を順繰りに入ったり、インフィニティプールで泳いだあとサマーベッドで昼寝したり、庭園や薬草園、果樹園を散歩したり、ボートで中島に渡ったり、釣りをしたりと、それぞれ思い思いにリゾートの休暇を過ごしていた。

 オレンジ色の夕陽が沈む頃、オレとメイド達数名で湖畔の砂浜に張った巨大タープの下で、バーベキューコンロに備長炭で火を熾し、牛肉や海老、魚介類を焼き始めた。

 その香ばしい匂いに釣られて、近くにいた女神3人が集まってきた。
「まぁ、美味しそうな匂いねぇ~」
「焼き肉の匂いを嗅いだらお腹が減ってきちゃったの~」
「あら、そのお肉、かなりいいお肉ね」

「えっ、分かりますか?
  これはシャトーブリアンと言う希少な部位の肉です」

 肉の良し悪しが、ひと目で分かるとは、この女神たちはかなり舌が肥えているようだ。
「色も綺麗で柔らかそうだし、美味しそうね~」

「もし良ければ、食べてみて下さい」
 オレは焼き立てのシャトーブリアンの塊をカットし、一切れずつ女神たちに渡した。

 3人の女神は、その肉を美味しそうに頬張りながらこう言った。
「柔らかくて美味しい~、味付けも絶妙。
 これは何か、飲み物が欲しくなるわね~」

「ビールをご用意しておりますが、如何ですか?」

「いいわね~、いただくわぁ」
 女神たちは、すぐに飛びついた。

「ちょっとちょっと~、姉さんたちだけズルいじゃない」
 そこへやって来たのは女神フィリアであった。

 今日は夕方からバーベキュー・パーティーをすると女神フィリアに伝えていたが、3人だけフライングで食べ始めたと言う訳だ。

 館内放送で、今日の夕食は湖畔でバーベキューパーティーを行う旨伝えると、女神たちが続々と集まってきた。
 今日は制服である女神服(白いシルクのロングドレスに、金色のクラウン)ではなく、それぞの私服と思われるワンピースやスカート姿で、中にはプールで泳いでそのまま来たようなビキニ姿の女神までいた。

 こうして見る女神たちは、神々しさはあるものの綺麗な一般女性と言う感じだ。
 フィリアを含め女神たちは容姿が似ているが、それぞれ個性もあり、何れもスマートでスタイルが良い美女というのがオレの感想である。
 しかし、露出が多いビキニを着ている女神を見ても、何故か清楚なイメージでイヤラシさは微塵も感じられないのは何故だろう。

 女神たちは4つのテーブルに別れ、それぞれのテーブルの真ん中に卓上バーベキューコンロを置き、バーベキューパーティーが始まった。
 食材は厳選した海の幸、山の幸、希少な食肉など豪華である。
 飲み物はドリンクコーナーを設置してメイドたちが、女神たちから注文を聞いてビールやワイン、ソフトドリンクなどをテーブルへ運ぶ形式だ。
 バーベキューを焼く係のメイドをそれぞれのテーブルに2名ずつ配置して食材に火が通り過ぎないように、注意していた。

 オレも焼き方の1人として、先程の女神3名と女神フィリアが居るテーブルで汗だくでサービスしていた。

「カイトく~ん、まだ焼けないの~?」
 女神フィリア達の食べるペースが早いので、焼くのが間に合わないのだ。

「もうちょっと待って下さい、まだ生焼けなので…」

「それ、牛肉でしょ、多少生っぽくても大丈夫よ」
 そう言って女神フィリアはシャトーブリアンの塊を自分の皿にかっ攫った。

「あ~、フィリアったら、自分だけズル~い」
 他の女神が文句を言っている。
 女神フィリアはフォークとナイフを使って目の前の肉の塊をカットし自分の口へ運んだ。
「美味し~い、この牛肉!、最高だね~カイトくん」とご満悦である。

 1テーブル10人当たり2つの卓上コンロなので、間に合うと思ったのだが甘かった。

「あっ、そうそうカイトくん、うちの従姉いとこたちを紹介するね。
 私の右隣から順番にフィリス、フィオナ、フィリオ、フィアネ、フィリン、フィアナ、フィオレ、フィリナ、フィオンだよ」

 紹介された女神たちが、それぞれ手を挙げたり会釈したりして挨拶してくれたが、名前も顔も似ているので一度には覚えられそうに無い。

「あっ、カイトです。
 いつもお世話になってます」
 と挨拶するのが精一杯であった。

 紹介された9人の中で、辛うじて判別出来るのは、既に仕事で何度も会いMOGで建物の生成をお願いしている2人の女神『フィオナ』と『フィリス』くらいである。

「ほら、カイトくんも飲みなさいよ~!」
 女神フィリアは、ビアジョッキをオレの前にドーンと置いた。

「さあ、乾杯するよ~」
 女神フィリアがビアジョッキを掲げると、そのテーブルに座っていた女神全員がジョッキを持った。

「カイトくん、乾杯の音頭お願いね~」
 女神フィリアの無茶振りに観念してオレは席を立ちアドリブで乾杯の音頭を取った。
「女神の皆さま、乾杯致しますのでご起立下さい」
 オレの言葉に女神達は一斉に席を立った。

「私は、当リゾートの経営者カイトと申します。
 この度は当リゾートにご滞在下さいまして誠にありがとうございます。
 当リゾートは、風光明媚な大自然に囲まれた森と湖と温泉が自慢のリゾートでございます。
 1週間の滞在で心身共にリフレッシュして頂ければ幸いです。
 皆様の滞在中は4種類の温泉と各種アクティビティをぜひお楽しみ下さい。
 また滞在中は毎晩ステージにて趣向を凝らしたショーを開催致しますので、ぜひ御覧下さい。
 それでは、乾杯の音頭を取らせて頂きます。
 女神の皆様のご繁栄とご健康を祈念してカンパーイ!」

 オレがジョッキを掲げると女神たちもジョッキを掲げて乾杯した。
 辺りには、ビアジョッキを合わせるガラスの音が鳴り響いた。

 女神たちの酔いが回って来た頃、砂浜に隣接したステージから、心地良いピアノの音色が聞こえてきた。
 ステージ上では、癒しの天使レオチェル・エイントワースがピアノを弾いていた。
「へ~、いい音色ねえ、とても癒されるわ」
 女神フィリアは、レイチェルの曲を褒め称えた。

「フィリア様、いいでしょ。
 うちの癒しの天使レイチェルです」

「えっ、天使なの?」

「あ、天使って言うのは愛称です」

「なるほど~、でもピッタリの愛称ねぇ」

 レイチェルのソロピアノが3曲終わり、4曲目に入ると曲調が変わり、ステージ左手から、アイリス・リーンが登場した。

 アイリスは、ステージ中央でマイクを握ると、女神たちに一礼してパワフルな声で歌い始めた。
 今日の2人は優雅な赤と白のナイトドレス姿であった。
 1曲目は『アクアスターのテーマ』である。
 雄大な森と湖、背後にミラバス山が聳え立つアクアスター・リゾートの美しさを歌った素晴らしい曲である。
 2曲目はアイリスが作詞作曲したオリジナル曲『ライズ』である。
 大平原に朝日が上がる力強い朝をイメージした曲で、アイリスのデビュー曲だ。
 3曲目は『美の女神ビーナス』という曲だ。
 ソランスター王室の王女3姉妹の美しさを美の女神に例えた曲で4オクターブの音域を自由自在に操る伸びやかで美しい歌声に女神たちは感動していた。
 4曲目は『永久とわの光』と言う静かなラブバラードである。
 5曲目は『エメラルド・ブルーの楽園』である。
 エメラルド・リゾートのプロモーション用にアイリスが作詞作曲した曲である。
 リズム感、音程、声量、表現力、声質こえしつ、音域、容姿すべてが揃った七拍子の歌姫は聴衆を虜にした。
 予定していた5曲を歌い終わると、その場にいた女神たちはスタンディングオベーションでアイリスの熱唱とレイチェルの伴奏を讃えた。

 その後もアイリスとレイチェルは、アンコールに答えて3曲ほどリクエスト曲を歌ってステージは終了した。
 女神たちは満足そうに部屋へ戻っていった。
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