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第15章 アプロンティア王国編

第206話 王女レイナ救出作戦(後編)

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「よし、それじゃ作戦開始だ!」

 時刻は夜8時を廻った頃で、敵兵は全員起きており、城門の外では相変わらず散発的な戦闘が続いていた。

 打ち合わせ通り、3班に分かれ配置に付いた。
 それぞれ、スターライトソードのステルスモード影響下で外からは見えない状態だ。
 小型無線機インカムで各隊が配置に付いたのを確認し、行動を開始した。

 A班はオレと双剣の達人リリアーナ、サポートにリアンナの護衛アリーの3名だ。

「こちらA班、作戦を開始する」
 インカムに向かって言うと各班から『了解』と返事があった。

 オレたちは、階段で6階まで下り、長い廊下を渡ってレイナが監禁されている部屋の前まで来た。

 部屋の前では2名の警備兵が、扉の両脇に立ち、何やらヒソヒソ話をしていた。

「レイナ王女も可哀想になぁ…
 サルーテ将軍の性奴隷えじきにされるんだからよぉ」

「サルーテのジジイ、根っからの変態だからなぁ…
 王女に何するか分かったもんじゃないぜ」

「でもよぉ、あの王女結構いい体してたよなぁ…
 オレも一度でいいから、あんないい女とヤってみたいぜ」

「もしかして、ジジイが王女に飽きたらよぉ、おこぼれに預かれるかも知れないぜぇ」
 そう言って2人の警備兵は声を殺して笑った。

 そのような下卑た話をしている衛兵達の喉元を、ヒュンと云う風切り音と共に、リリアーナの2本の長剣ソードが切り裂くと血しぶきがほとばしった。
 胴体からキレイに切り離され、頭が床に落ちるとゴトっと言う鈍い音がした。
 その数秒後にバランスを崩した胴体が、ゆっくりと床に倒れた。
 その音は思いの外大きく、辺りに響いた。

 部屋の中に押し入ると、意識を失ったままのレイナを抱きかかえ、部屋から運び出した。
 廊下に出ると、リリアーナとアリーが前後を警戒しながら階段の方向へと向かった。
「救出成功、これから離脱する」とインカムで他のメンバーに連絡した。

 その時、先ほどの音に気付いた2人の警備兵がこちらに向かって走ってきた。
 オレたちは、ステルスモードのまま壁際に寄り2人の兵をやり過ごしたが、問題はここからだ。

 6階から上階へと通ずる階段の入口まで来た時、案の定ホイッスルの音が鳴り響いた。
 警備兵が殺され、レイナが逃げたのに気付き、先ほどの兵が鳴らしたに違いない。

「任務完了、全員撤収せよ」
 その直後レイナが目を開けた。
 甲高いホイッスルの音で、意識が戻ったのだろう。
 オレの顔を見ると、引きつった表情で喚き散らした。
「どこへ連れてくの、はなしてぇぇぇ~!」
 そう言って、激しく暴れオレの手から逃れようとした。
「レイナ王女、落ち着いて!
 オレたちは、姉上の頼みで君を救いに来たんだ!」

「えっ、姉上に?」
 オレの言葉の意味をレイナは一瞬で理解した。
「君の姉上は屋上の飛行船にいるから、それで脱出しよう!」
 オレはレイナを抱えながら、7階へと通ずる階段の踊り場まで上った。
「待って、隣の部屋に従姉妹のクリスティーナがいるの!
 お願い、助けて!」と切実な表情で訴えた。

 予想外の展開に、オレは躊躇ちゅうちょした。
 今ここで引き返し、その従姉妹いとこを救出して戻るまでに、敵が大挙して押し寄せる可能性は十分にある。
 そうなると味方を危険に晒す事になるし、作戦の成功率も下がるのだ。

 しかし、もうここまで来たら一か八か運を天に任せるしか無い。

「作戦変更、もう1名救出する。
 各班それぞれの階の階段付近で待機。
 レイフェリア、レイナの部屋前に応援を頼む」

「レイナ、オレは従姉妹いとこを助けに行くから、キミはリリアーナと先に行くんだ」

「分かったわ、クリスティーナをお願いね!」

 オレは、リリアーナにレイナを託し、アリーと2人で屋上の飛行船で待つように命じた。

 オレはステルスモードのまま、来た廊下を引き返した。
 レイナの部屋の前では、先ほどすれ違った2人の兵が周囲を捜索していた。

 使いたくは無いが、どうやらスターライトソードの出番のようだ。
 スイッチを入れると9999℃のプラズマの刃がほとばしり、臨戦態勢に入った。

 そのまま進み、2人の兵にスターライトソードを振り下ろした。
 虚空から突然現れた光の刃に、一瞬にして切り裂かれ、兵たちは何があったのか分からない内に絶命した。

 そのままレイナの隣の部屋のドアを蹴破った。
 中に入るとベッドの上でシーツを被り、怯えた1人の少女が裸同然の格好でうずくまっていた。

 オレはステルスモードを切り、少女にこう言った。
「クリスティーナだね。
 君を助けに来た、レイナも一緒だ。
 さあ、おいで」
 そう言って手を伸ばすと、少女は頷きオレの手を掴んだ。

 オレは少女の手を引きながら、部屋の外へ出た。
 すると正面から4人の兵士が、剣を振りかざしこちら目掛けて突進してきた。

 オレはクリスティーナを部屋へ戻し、スターライトソードで兵4人と対峙した。
 毎朝ステラに剣の指導を受け始めてからかなり経つが、実戦でその成果を試すのは今日が初めてだ。

 斬り掛かって来る兵士の動きは、ステラに比べると緩慢で、オレの太刀筋を全く追えず、ほんの数太刀で、あっさり方が付いた。
 兵達は、スターライトソードの斬撃を受けて吹っ飛び、その場で動かなくなった。

 オレはクリスティーナの手を引き、廊下を階段方向へ走った。
 途中でレイフェリアが、オレの援護に駆けつけ合流した。

 下階でも戦闘が起こり、激しい剣戟の音が廊下に響き渡っていた。
 ステラは魔法剣の大技を繰り出し、辺りに大きな爆裂音が響いた。
 こんな狭い場所で、それ使っちゃまずいだろ、と思いながらインカムで伝えた。
「今度こそ任務完了、全員撤収せよ」

 オレはクリスティーナの手を引きながら階段を駆け上った。
 上の階でも戦闘が起きたようだが、レイナを飛行船に収容後、応援に戻ったリリアーナが、セレスティーナと2人でその場を制圧していた。

 階段を上り、屋上に出るとクリスティーナを飛行船に乗せた。
 レイナと従姉妹のクリスティーナは、再会を涙ながらに喜び合った。

 C班の4名(ステラとアムラー少佐とその部下2名)を残し、全員屋上へ到着した。
 セレスティーナとリリアーナの2名は外でステラたちを待っている。
 5分ほどして、ドヤドヤと残りの4人が屋上へ現れたが、敵がすぐ傍まで迫っているようだ。
「みんな、急いで」
 残りのメンバーの手を引き、飛行船の中へ引き入れた。
 最後に残ったのはステラだけだ。

 オレはインカムでこう伝えた。
「ステラ、船に乗れ!」
 そう言うとステラはオレの方を振り向き頷いた。

 そして、飛行船に飛び乗る直前にまた魔法剣の大技を繰り出し、一振りで追手を撃破した。
 ステラを収容すると、すぐにハッチを締めた。
 全員のシートベルト着用を確認し、ステルスモードのまま急速上昇し、王宮から離脱した。

 救出対象が1名増えると言うハプニングもあったが、全員怪我なく無事任務を達成できた事にオレは内心ホッとしていた。

 飛行船内では、レオナ王女の呼び掛けで意識を取り戻したリアンナ王女が、救出されたレイナ王女と従姉妹のクリスティーナと3人で抱き合って、大声で泣いていた。
 肉親に再開した喜びと、肉親を失った悲しみが一気に押し寄せ、リアンナは止め処無く涙を流し続けた。
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