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第14章 情報大臣就任編

第183話 情報大臣カイトの初仕事

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 ソランスター王国情報省の第1回本部会議が内務省の会議室で開催された。
 情報省の建物は、これから建設する予定であるが、完成までは内務省の1フロアを間借りして公務を行うのである。
 基本的に組織の8割以上が外に出る仕事なので、内勤者は少なく1フロアで間に合っているのだ。

 今日が幹部の初顔合わせで、出席者は4部門のトップと、その調整を行う情報統括官である。
 ・情報大臣     カイト・シュテリオンベルグ伯爵
 ・情報統括官    リリアン・ブライデ(財務省出身)
 ・国内情報本部長  エレナ・ダーウィン(内務省出身)
 ・国外情報本部長  ジェラルド・ミュスカ(外務省出身)
 ・諜報本部長    キアン・ベルアーリ(王国親衛隊出身)
 ・特務本部長    シラー・レーベンハウト(軍務省出身)

 情報省は新しく創設された総勢600名の組織であり、5つの省庁から転属させた混成部隊であるが、平均年齢は22歳と若いのが特徴だ。
 事実、本部長クラスは全員20歳代の若いエリート官僚で、優秀な人材ばかりである。
 国王が、それだけ情報省を重要視していると言う事だ。
 因みにオレの右腕となる情報統括官のリリアン・ブライデは、王室顧問であるオディバ・ブライデ博士の孫娘である。

 各部門の本部長から簡単な自己紹介の後、今後の活動方針と当面の数値目標が発表された。
 国内情報本部の基本方針は、王都から遠い地区ほど腐敗が激しいと言う予想の元、国内監査チームと諜報チームの表裏両面の調査を行うことである。

 ソランスター王国には、大小373の領地が存在し、王侯貴族諸侯と王室直轄領総督が国王から領地運営を委任されているのだ。
 しかし、王国建国から120年も経過し、世襲が当たり前となった現在では、国王から領地経営を委任されているという意識は薄れ、領地は元々自分達の物であるかのような錯覚に陥る領主も少なくないのだ。
 1年に1度、王都へ出仕しゅっしする参勤交代のような制度はあるものの、それ以外の期間は放任状態である。

 国内情報本部に所属する監査チームは、2名1組で100組200名が、定期的に王国内各領地を訪問し、領主と面会し公式に監査を行うのである。
 諜報本部に所属する諜報チームは、3名1組で50組150名が、旅行者を装い2週間ほど各領地に滞在し、秘密裏に情報収集活動を行うのである。

 一方、国外情報本部の基本方針は、下記の2つである。
 ①敵対関係あるいは中立の立場を取る諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
 ②友好関係にある諸外国の内情を秘密裏に情報収集すること。
 国外情報チームは、諸外国にとっては自国の内情を探るスパイであり、下手な動きをすると政治問題に発展しかねないので、慎重に行動する必要がある。
 国外情報本部に所属する諜報チームは3名1組で50チーム150名が国外の諜報活動任務に就くことになる。

 残りの100名の主な業務は下記の4つである。
 ①各チームの物理的、人的支援業務
 ②収集した情報の記録整理分析業務
 ③各チームのスケジュール管理
 ④緊急即応部隊として本部待機

 課題であった、各チームと本部間の連絡手段を検討した結果、オレが異世界ネット通販パラワショップでスマホとノートPCを必要数調達し、貸与することとなった。
 重大な王国法違反等が判明し、緊急対応が必要な場合は、本部長・統括官経由でオレに報告することと、月1回の定例本部会議を開催することを決め、閉会した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 情報大臣の特権として、王宮近くの一等地に公邸が与えられた。
 以前、ジェスティーナを盗賊団から救出した際に、その褒賞として王都内に邸宅を贈呈すると言われ、固辞こじした経緯があるが、今回は公邸なので断れないのだ。

 公邸は3階建ての建物で執務室、書斎、居間、寝室、大広間、大浴場の他、客間が12室あり、執事と侍女が12名、公邸専属の護衛が18名とかなりの規模だ。
 中庭パティオもあり、直接ここに飛行船を着陸させることも出来そうだ。

「ご主人様、執事のピオーネでございます、どうぞ宜しくお願い致します」
 王宮勤務から転属となった執事のピオーネは、30代後半の誠実そうな男であった。
 今後、公邸の管理は、この男が一手に引き受けるのである。
 侍女と警備兵を紹介されたが、多すぎて名前を覚えきれない。

「早速でございますが、ご主人さまにお祝いの品が届いております」
 ピオーネに案内され、居間に行ってみると、祝いの品がうず高く積まれていた。
 聞けば、近隣諸侯や商人から、大臣就任祝いとして届いたのだそうだ。
 また面会の申し入れが20数件入っているそうで、そのリストを見せてくれた。
 近隣の男爵や準男爵など下級貴族と商人が殆どであった。

 恐らく、王国権力の中枢たる大臣職に就任したオレに取り入ろうとするやからに違いない。
「こういうのは、面会した方が良いのだろうか?」
 オレはピオーネの見解を聞いてみた。

「恐れながら、私見を申し述べさせていただきますと、面会された方が宜しいかと存じます」
「無下に断られますと、相手の体面メンツを損ない、意図せず敵を作る可能性がございますので、予め時間を制限して相手がどのような人物か見定め、人脈を広げるのが宜しいかと存じます」
 ピオーネはオレに適切なアドバイスをしてくれた。

「分かった、リストに日時を書き込んでおくから、面会のお膳たてを頼むよ」
「人数が多いし、面会の時間は1人10分に制限してもらおうか」

かしこまりました」
 ピオーネは、経験豊富で頭脳明晰な執事のようだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 王都から錬金術師見習いの4名(ビアンカ、マリエル、ティナ、ラピス)と、アクアスター・プロダクション(ASP)の第1期研修生25名(女性21名、男性4名)がアクアスター・リゾートに到着した

 錬金術師見習いは、男女別の従業員宿舎に、ASPの研修生は専用宿泊棟に入居した。
 両方ともシャワー・トイレ付の24平米(約14畳)のワンルームであるが、家賃は無料なのだ。

 錬金術師見習いの4名は、工房長のトリンが錬金工房の中を案内した後、リゾート内のルール、日常業務についてオリエンテーションを行った。
 ASP研修生の25名はサクラが、3ヶ月間のスケジュールやレッスンの内容、リゾート内のルール等についてオリエンテーションを行った。

 いずれも厳しい選抜試験を突破した人材なので、今後の成長が楽しみである。
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