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第13章 エメラルドリゾート開発編

第175話 錬金術師見習いの面接試験

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 翌朝『踊る銀ねこ亭』を早々にチェックアウトし、魔術学園へと向かった。
 トリンの弟子となる錬金術師見習いの採用試験を行うためだ。

 今回の採用対象は魔術学園錬金術科の3年生である。
 王都魔術学園は13歳で入学し、15歳で卒業する3年制の魔術に特化した学園で、成績優秀者は魔術大学へ進学できるのである。

 オレたちは、面接会場として学園が用意してくれた会議室へと向かった。
 既に応募者は22名全員揃っており、朝9時から会社概要、仕事の内容、勤務条件、給与、休日休暇、勤務時間などについて説明した。

 その後、10時から採用試験を開始し、途中休憩を挟みながら、全員の試験が終了したのは夕方4時過ぎであった。
 採用試験と言っても1人10~15分の面接試験だけであるが、22名の応募者全員を面接するとなると5時間もかかるので面接官は大変だ。

 面接官はオレとトリン、アスナ、サクラの4人である。
 本当はトリンだけで良いのだが、面接したことがないから1人では不安だと言う理由で他の3人も同席したのだ。

 今回もサクラが作った5点満点の面接評価シートを使って面接に望んだ。
 面接評価シートは、第一印象、コミュニケーション能力、志望動機、業務理解、職業適性、学業成績、魔力特性、魔力量、錬金術特性など20項目を各5点満点で採点、それを合計し、数値化して採用の判断材料とする評価ツールである。

 面接終了後、オレたち4人は会場に残り、採用者決定会議を行った。
 サクラがパソコンに全員の採点結果を入力し、集計結果を表にして配布した。
 合計得点の高い順にソートされ、とても見やすい。
 応募者22人✕面接官4人だから88枚の評価シートがあるが、サクラはそれを短時間で入力し、集計表にしたのだから、さすがは優秀な秘書である。

 合計点数で絞り込み協議した結果、下記の4名を採用とした。
 首位合格 ビアンカ
 2位合格 マリエル
 3位合格 ティナ
 4位合格 ラピス
 因みにラピスは男で、その他の3名は女性だ。
 翌日合格者を発表し、学園のインターン制度を利用して来週から勤務してもらうこととなった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 その日、マリン以外は王宮内の『秋桜の館』に泊まった。
 マリンは恐れ多いことと王宮に泊まるのを固辞し、その日も実家に泊まったのだ。

 その夜は早めに寝室に入り、ジェスティーナと愛の時間を過ごした。
 隣の部屋にリオナやトリンが寝ているのも気にせず、深夜まで愛を確かめあった。

 次の朝、起きるとトリンに小声でこう言われた。
「カイト様、昨日の夜、隣の部屋に丸聞こえでしたよ。
 私もリオナも寝不足ですよ、どうしてくれるんですか」とプンプン怒っていた。
 この部屋の壁は思ったより薄いようなので、以後気を付けようと心に誓った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 朝食後、国王陛下から招集があり、オレは謁見の間へ向かった。
 謁見の間を入ると国王と重臣の面々が待っていた。
 メンバーは王弟であり財務大臣のチェザーレ・アルテオン公爵、軍務大臣のジョエル・リーン伯爵、内務大臣のロカレ・ブース伯爵、外務大臣のソン・サランダール侯爵、王国親衛隊長のリドル・ポラーレス伯爵である。
 
「国王陛下に於かれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます」

「おお、カイト殿、待っておったぞ。
 此度は、何用で王都に参ったのじゃ?」

「はい、錬金術師見習いの採用です」

「錬金術師?
 カイト殿も色々と大変じゃのう…」と豪快に笑った。

「はあ…、恐れ入ります」

「聞くところに寄ると、とやらの面倒を見ておるそうじゃのう」
 国王はオレが色々な事業に手を出していることを誰かから聞いたらしい。

「はい、いずれは、大きな事業に育つかと期待しております」
「ところで陛下、今日はどのような御用でございましょうか?」

「おお、そうじゃった。
 3つほどあるが、まずはエレーゼの異母妹いぼまいの件じゃな」
 そう言うと国王は侍従長に合図し、ソフィアを連れて来させた。

「カイト殿、ソフィアじゃ、見違えたであろう」

 ソフィアは、見違えるような美少女に変身していた。
 白く透明感のある肌、細くスラリと伸びた足、くびれた腰、形の良い胸、背中まで伸びた艶やかなオレンジブラウンの髪をポニーテールに結び、サファイアブルーの理知的な眼差しをたたえた魅力的な女性が立っていた。
 以前は、やせ衰えて頬も痩けていたが、今は肌の艶も良く、目もキラキラと輝き、にこやかに微笑んでいる。
「カイト様、その節は私を牢からお救い下さり、ありがとうございました」

「ソフィア、久しぶり、すっかり見違えたね。
 体調は回復したの?」

「はい、お陰さまで、もうすっかり良くなりました」

 ソフィアは、悪行の末に捕縛され絞首刑に処されたエレーゼ元伯爵の異母妹いぼまいで、地下牢に閉じ込められていたのを、偶然にオレが救い出したのだ。
 あれから、もう半年以上が経つ。

「オレの秘書として、これから何かと大変かも知れないが宜しく頼むね。
 もし分からない事があれば、何でもサクラに聞くといいよ」

「はい、畏まりました、サクラさんに秘書のイロハを教えていただきます」
 侍従長に促され、ソフィアは一礼して謁見の間を退出した。

「さて、次の話に移ろうかのう…
 カイト殿、まだ内密だが、フローラの輿入こしいれが決まった」
 国王の話によるとアプロンティア王国の王太子であるライアス王子の正室としてフローラの輿入れが決まったそうだ。
 因みにアプロンティア王国はソランスター王国の西方にある古くからの同盟国であり、フローラはソランスター王国第1王女にしてジェスティーナの姉である。

 もちろん、政略的な意図がある輿入こしいれであろうが、随分と急いだものだ。
 放っておくとオレと男女の仲になるかもと、心配して話を急いだのかも知れないが、流石にそれを聞くわけにはいかない。

 そんな事は、顔に出さずオレは祝辞を述べた。
「陛下、フローラ王女殿下のご婚約おめでとう御座います。
 ご婚礼の儀は、いつでございますか?」

「ちょうど3ヶ月後だが、カイト殿にひとつ頼みがあるのじゃ」

「はい、何なりとお申し付け下さい」

「うむ、王である儂が、他国に赴いて婚礼の儀に出席するわけにはいかんのじゃ。
 儂の名代みょうだいとして第3王女ティーナと一緒に婚礼に出席してくれんかのう」

「陛下の名代でございますか?」

「そうじゃ、儂の名代なのだから責任は重大じゃぞ。
 カイト殿はアプロンティア王国には、行ったことがなかろう。
 ついでに、カイト殿が好きな『観光』でもして来るが良いと思ったのじゃ」

「陛下、お気遣いありがとうございます」

「この件は、第3王女ティーナには、まだ話しておらんから、カイト殿から伝えてくれ」

「はい、畏まりました」
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