上 下
174 / 374
第13章 エメラルドリゾート開発編

第172話 エルメ島リゾート開発会議(後編)

しおりを挟む
「皆さん、お待たせしました。
 それでは、ご案内致しましょう」

 オレは目の前にそびえ立つ16階建て高層ホテルの入口へ向かった。
 現実では椅子に座り、ただ足を上下させているだけなのだが、拡張仮想空間の中では立って歩いているのだ。

 自動ドアの前まで来ると、ウィーンという音がしてドアが左右に開いた。
 振り返ると他のメンバーが不思議そうな顔をして、オレの後に付いてきていた。
 そうか、そもそもこの世界には自動ドアと言う物が無いからか。
「あっ、これは自動ドアと言って人を感知すると自動的に開くドアです」
 おぉ~、それは凄いと誰かが言っている。

「ここがロビーで、正面がフロントです」
 フロントにはフロントマンがいた。
 しかしデータなので流石に動きはせず、黙って虚空を見ているだけであるが、リアリティはある。

「それでは、エレベーターで、屋上まで上がってみましょう」

「カイト殿、とは、何ですか?」
 そう言ったのはゼビオス・アルカディアであった。
 この世界でフロア間の移動は、当然階段のみであり、エレベーターは無いのだ。

「あ、失礼、これも説明が必要ですね。
 エレベーターはフロア間を上下に移動する乗れる箱とでも言いましょうか。
 歩かなくても高速に階を移動できる一種の乗り物です。
 論より証拠、どのような物か乗って確かめましょう」

 オレはシースルータイプのエレベーターに乗りこんだ。
 後を着いてきた13名全員がエレベーターに乗ったのを確認してオレは、屋上のボタンを押した。
 外の景色が透けて見えるので、周りを見ていると景色が下の方へ流れていき、本当にエレベーターに乗っているような錯覚に陥った。

 屋上に着き扉が開くと、そこには空中庭園が広がっており、色とりどりの南国の花が咲き乱れていた。
 驚くほどリアルで、手を伸ばせばさわれそうな錯覚に陥るが、実際にはさわれない。

 歩いて屋上の端にあるフェンスまで来ると、眼下にはビーチの絶景が広がっていた。
 エメラルドグリーンの海に白砂のビーチ、椰子の木が風に揺れ、陽光を浴びて海面がキラキラと反射し、眩しいくらいだ。
 オレは前世でVRを体験したことはあるが、ここまでリアルでは無かった。
 この拡張仮想空間のリアリティは、もはや現実と思えるほど凄いのだ。
 他のメンバーも呆気に取られており、ホテルの設備を見て歩くどころの騒ぎではない。

 オレは本来の目的を思い出し、メンバーを引率してホテル内の設備を見て歩いた。
 屋上の展望露天風呂、カフェ&レストランを見た後、16階に降りて1フロアに3室しか無い400平米もあるラグジュアリー・スイートの室内を見て歩いた。
 部屋は専用テラスとプールにジャグジーまで付いた4ベッドルームの部屋である。
 16階なので眺めも最高だ。
 この部屋でジャクジーに入りながら海を眺めたら最高だろうなとオレは思った。

 その後、スイート専用ラウンジ、ジュニア・スイート、スタンダード・ツインルーム、2階のミニショッピングモール、レストラン、カフェ、イベントホール、1階の大浴場、インフィニティ・プール、エステ&スパなどを見て歩いた。

 ようやく拡張仮想空間に慣れてきたメンバーからは幾つか質問も出たが、その殆どがオレには当たり前となっているシャワートイレだとか、エアコンなど、設備の話で、構造云々などの話は一つも出てこなかった。

 約1時間ほどで、拡張仮想現実による高層ホテル探索ツアーは終了し、AVRシステムのスイッチ切ると、メンバー全員が放心状態であった。

 恐らく、今見てきて拡張仮想現実の世界と現実世界のギャップに対応しきれて居ないためと思われる。
 このシステムを理解しているオレでさえそうなのだから、他のメンバーには想像を絶する出来事であろう。

 所謂いわゆるVR酔いでは無いが、途轍もない先端技術の数々を目の当たりにして、思考が追いつかず脳が機能停止している人が続出している様子なので、30分ほど休憩することにした。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 再開した会議では次のことが決まった。
 ・リゾートで勤務する幹部スタッフは会員企業から転属させる。
 ・一般スタッフは領都エルドラードとセントレーニアで公募する。
 ・人数は幹部スタッフ25名、一般スタッフ360名とする。
 ・幹部スタッフの選考は各会員企業で1ヶ月後までに終わらせる。
 ・一般スタッフの選考は1ヶ月後に公募を開始し、2ヶ月後に面接試験を行う。
 ・一般スタッフは希望により、通いと住み込みのどちらでも可とする。
 ・ゲストの送迎には専用の座席数240席の大型飛行船を1隻用意し、領都エルドラードとセントレーニア間を1日3往復、宿泊者限定の無料送迎を実施する。
 ・大型飛行船は従業員の送迎用に1日2往復させる。
 ・領都エルドラードからは大型クルーザーによる1日1便の有料送迎も実施する。
 ・各店舗、レストランの割当は各企業グループの希望を聞き調整する。
 ・食肉の供給はアルカディア・グループとアクアスター・リゾートが担当する。
 ・魚介類の供給は水産組合長でもあるレオナード・イシュトリアが担当する。

 次回の会議は1ヶ月後とし、それまでに各企業で幹部スタッフの選定して報告することとなった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 会議が終わり、オレとジェスティーナ、秘書のサクラは市庁舎最上階にある領主執務室の専用居住スペースに引き上げた。
「やれやれ、今日の会議は疲れたな」とオレが愚痴をこぼすと。

「カイト、お疲れさま。
 その疲れ、私たちが癒やしてあげるわ。
 ね、サクラさん」
 ジェスティーナがそう言うと、オレたちのためにお茶を煎れてくれていたサクラが頷いた。
「はい、もちろんです」

 彼女たちが言っている癒やしとは何のことか。
 それは恐らく、性的なサービスであろうことは、容易に想像できた。

「それじゃ、二人に癒やしてもらおうかな」
 オレの眼がキラリと輝いたのを見て、ジェスティーナとサクラは立ち上がりお互いに頷くと寝室へ向かった。

 まだ夕食前だというのに良いのだろうか?
 いや、良いに決まっている。
 ストレス解消して、一汗流してからの食事は美味いに違いない。

 その後、オレたち3人がベッドの上で激しい愛のバトルを繰り広げたのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

処理中です...