上 下
91 / 374
第8章 南国リゾートへの旅

第89話 エメラルド諸島

しおりを挟む
 イシュトリア・シーフードの帰り道、スタンドバーへ寄った。
 美女3人はカクテルを、オレはビールを注文した。
 オープンエアの店内は夜風が吹き抜けて心地良い。
 つまみに注文したチーズ&クラッカーを肴に1時間ほど女性たちとの会話を楽しんだ。

「クラリス、前から気になってたんだけど、冒険者ギルドの仕事はどうしたの?」

「えっと~、王室からの依頼なのでぇ、ギルドにお願いして休職にしてもらってるんですぅ」
 クラリスの話によると冒険者ギルドも人手不足なのだが、王室からの依頼であり、オレと旅に出ている間は、冒険者ギルドの管理職が代役を勤めているそうだ。
「へ~、そうなんだ、なんか悪いね」

「そうなんですよ~、私だけこんなにノンびりしちゃって、申し訳ないです」
「なんか、お土産買って行かなくちゃ~」

嵩張かさばる物でも、異空間収納に入れれば大丈夫だよ」

「ところで、明日は島に行ってみようと思ってるんだけど、どうかな」

 そう言うと、クラリスはビジネスモードに切り替えて説明してくれた。
「はい、畏まりました」
「サンドベリアの沖には、120余りの島があります」
「そのほとんどは無人島で、中には人が住んでいる島もありますが、多くても1千人前後です」

島嶼部とうしょぶは、全て王室直轄領ですが、国王陛下から許可をいただいておりますので、どの島に上陸しても問題ありません」

「クラリス、一番遠い島までの距離はどれくらい?」

「確か80kmくらいの筈です」

「飛行船なら、20分で行けるな」
「それじゃ、明朝チェックアウトして島巡りをしよう」

「分かりました」
「ですが、島には宿泊施設はありません、どうしますか?」

「大丈夫、異空間収納にテントとタープがあるし、最悪飛行船の中にエアマットとシュラフ敷いて寝てもいいし、食料も十分あるから」

 オレたちは、バーからの帰り道、腹ごなしにホテルまで砂浜を歩いた。
 30度ほど上空に真ん丸い月が出ており、その光が海に反射してキラキラ輝いている。
 それを俗に『月の道』と言うのだそうだ。

「カイトさまぁ…、今日も?」とクラリスが言った。

「ん~、望むところだけど、1対3だから体力が持つかな~」

「大丈夫ですよ~、手加減して差し上げますから」
 クラリスがドヤ顔で言うと、ステラもエミリアも声を上げて笑った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 翌日、早々にホテルをチェックアウトして、サンドベリア郊外まで移動し、そこから飛行船で島へ飛んだ。
 天気は快晴で飛行船から眺める海はエメラルドブルーに輝いていた。
 今は乾季なので雨はほとんど降らず、降ったとしてもスコール的な雨で30分もすればカラッと晴れるのだ。

 サンドベリアの沖には、120もの島々があり、『エメラルド諸島アイランド』と呼ばれている。
 大小様々な島々のほとんどは無人島で、手つかずの大自然が残っており、人が住んでいるのは、その内の1割ほどに過ぎなかった。

クラリスの話によると『エメラルド諸島アイランド』は、王室直轄領でセントレーニア総督府の管轄なのだそうだ。

 最初はサンドベリアから10kmの島、レグルス島へ向かった。
 周りは豊饒ほうじょうの海と呼ばれる屈指の好漁場で、昨日オレたちがイシュトリア・シーフードで食べた魚介類は、この島の近海で取れたものがほとんどだそうだ。
 レグルス島は周囲約80kmの島で、約1200人の住民は幾つかの集落に分かれて住んでおり、8割の住民は何らかの形で漁業に関わっている。

 レグルス島には自然の入り江があり、そこには100艘近くの帆掛船ほかけぶねと小型の帆船が数隻停泊していた。
 魚を捕るのは帆掛船ほかけぶねで、もちろん動力は風だ。
 獲った魚は帆船でサンドベリアへ運んでいるのだが、帆船の中には生簀があり、その中に入れて運ぶので鮮度も抜群なのだ。

 島の周囲は岩礁地帯と砂浜に分かれており、サンドベリアと同じくらいに風光明媚《ふうこうめいび》な島だが、それ以上に特筆すべきところはない。

 オレは『エメラルド諸島アイランド』の120余りの島々を飛行船に標準装備されている自動マッピングシステムで地図を作成することにした。
『空飛ぶイルカ号』の自動マッピングシステムは、飛行した地域を自動で測量して地図化する便利なシステムなのだ。

 一度地図を作成すれば、正確な距離も分かるし、次に来る時に全自動航行が可能だ。
 長さ80km、幅100kmの範囲を2往復して地図を完成させた。

 眼下にはエメラルドグリーンの大海原、点在するように白砂に緑の島、ところどころにラグーンを持つサンゴ礁など見事な景色の連続だった。

 その中でオレの目を引いた島が幾つかあった。
 いずれもラグーンに囲まれ、見事なサンゴ礁と白砂のビーチを持つ島だ。

「クラリス、この島の名前は?」

「え~っと、資料によれば、その島はエルメ島です」

「エルメ島か、いい名前だな」

 オレはラグーンの中の一番大きな島、エルメ島の砂浜に飛行船を着陸させた。
 目の前には、全長3kmの白砂のビーチが広がり、エメラルドグリーンに輝く海、水平線まで続く紺碧の空と白い雲がまぶしかった。
 島側には南国ムード漂う椰子やしの木や、ハイビスカスの鮮やかな赤、白と黄色のプルメリアの花、ピンクのブーゲンビリアの花も咲いており、まさに地上の楽園と言った感じだ。

「うわぁ~、何コレ、すご~い」とクラリスがタラップを降り、波打ち際まで駆けていく。
「わたし、こんな綺麗な景色見たことないです」とエミリアも後を追った。

「凄く綺麗」とステラも短い言葉に感動を凝縮させ、二人の後を追った。

 オレも元の世界で色々な場所を旅してキレイな景色を見てきたが、これほど美しい景色を見たのは初めてだ。

 波打ち際まで歩いていくと、海の透明度は限りなく透明で、熱帯魚が悠々と泳いでいるのが手に取るように見てとれた。
 恐らくサンゴ礁には、たくさんの熱帯魚が棲息していることだろう。
 飛行船で上空から見た限りは、民家や人の気配は無かったので、この島は無人島なのだろう。

「よし、今日はここで1泊するぞ!」
 そう言ってオレは、野営の準備を始めた。
 異空間収納から、ツールームテントを取り出し設営に取り掛かる。

「お手伝いします」とエミリアが言ってくれた。
 オレにとってテントの設営は朝飯前だ。

 エミリアに手伝ってもらって、15分ほどでテントの設営が完了した。
 続いて日除け用のウィングタープをテントの前に張った。
 ポリコットン素材の厚めの生地なので、今日のような強い日射しでも光を通さず、完璧な日陰を提供してくれるのだ。
 砂浜用に50cmのスパイラルペグを使ったので抜けることはないだろう。

「お~い、テント張ったぞ~」
「水着に着替えるなら使ってもいいぞ~」
 オレがそう言うと、3人の美女が走ってきた。

「カイトさま~、テントなんて別にいらないですよ~」とクラリスが言う。
「ここ無人島で誰もいないんですから~」とタープの下で服を脱ぎ始めた。

「おいおい、オレの目は気にしないのか?」

「え~、今更なに言ってるんですか~」とクラリスに呆れられてしまった。
 クラリスを見習いステラとエミリアも着替え始める。

 眼前で繰り広げられるプロポーション抜群の美女3人の生着替え。
 一夜を共にした中とは言え、魅力的な裸体につい目がクギ付けになってしまう。
 彼女たちは水着に着替え終わると海に泳ぎに行った。

 オレも水着に着替え、異空間収納からを取り出した。
 そのまま海に入っていくと、エミリアが不思議そうな顔でオレに言った。

「カイト様、それっていったいなんなのですか?」

「あ~、これね」
「これはシュノーケルマスクと言って、水の中を見ながら泳げるマスクだよ」と説明した。
 オレが元々使っていた『シュノーケルマスク』は水中メガネとシュノーケルが一体化したマスクで、正面から見ると殿様のチョンマゲのように見える。
 見た目はあまりカッコ良くないが、視野も広く、鼻でも口でも呼吸できると言う優れモノだ。

 マスクの上にはアクションカメラが装着可能で水中で動画撮影ができるのだ。
 アクションカメラを取り付けてサンゴ礁を泳ぐ熱帯魚の動画を撮影したら、さぞ綺麗だろうと持ってきたのだ。

「もう一つあるからエミリアも使ってみるかい?」

「はい、使ってみたいです」と言うので、マスクをエミリアに渡した。

 オレは30mほど沖のサンゴ礁でシュノーケリングを開始した。
 海の中は、お魚パラダイスだった。
 テーブルサンゴ、枝状サンゴなどの間を色とりどりの熱帯魚が乱舞している。
 その動画を撮影して後でジェスティーナに送る予定だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

処理中です...