27 / 374
第2章 王都フローリアへの旅
第25話 カイト、カミングアウトする
しおりを挟む
堪りかねた当主は大声で言った。
「別の世界?、嘘も大概になさい!
冗談にも程がある」
そう言って激昂し、先ほどまでの穏やかな態度から一変してオレを睨みつけた。
「嘘じゃありませんよ、証拠をお見せしましょう」
リカール・バレンシアに異世界から転生した人間であることを信用させるには、元いた世界の技術水準を示すしかない。
今、唯一見せられる異世界技術、それは『アウリープ号』だけだ。
「私がストレージに格納しているモノを、ご覧いただければ、ご納得いただけると思います。
しかし、ここでは家具や調度品を壊してしまうので、どこか広い場所をお借りしたいのですが…」
「それほど仰るのなら、その証拠とやらを見せていただきましょう。
ここで宜しいですかな?」
バレンシア 父娘は、オレたちを 中庭に案内した。
当主は少し離れた場所から 訝しげに見ている。
オレは覚悟を決め、異空間収納からアウリープ号を取り出して中庭に置いた。
虚空から現れた白の四輪駆動車は、サスペンションを上下に揺らしながら地面に着地した。
中庭に突如出現したオレの愛車を見て、当主は目を剥き、口をアングリと空け、驚きの声も出せないでいた。
そして絞り出すような声でオレに聞いた。
「な、なんですか、これは?」
「これは中に人が乗り、馬で牽かなくても走る『自動車』と言う乗り物です」
オレはドアを開け、運転席に乗り込み、エンジンを掛けた。
低く小気味の良いエンジン音が中庭に響き渡った。
鳩が豆鉄砲を食らったと言う言葉があるが、今の当主がまさにその状態だろう。
「ご当主様も乗ってみませんか?
宜しければお嬢様も」
ソニアが後席のドアを開けると、当主が恐る恐る乗り込んできた。
アスナは反対のドアから乗り込んだ。
「この広さじゃ、中庭を一周するくらいしかできませんが、走ってみましょう」
そう言ってシフトレバーをDレンジに入れて、ゆっくりと走りだした。
「う、動いている、信じられん、馬も牽いてないのに…
この乗り物はどうやって動いているのだ?」
「エンジンと言う動力装置で車輪を動かし、燃料は水を燃やしています」
「み、水を燃やす?、そんなこと出来る筈が無い」
当主は目を白黒させてオレの言葉を理解できない様子だった。
中庭を一周し、車を停めてボンネットを開け、究極の水素エンジンを当主に見せた。
「このエンジンという物が、車輪を回転させて走らせるのか」
商売をやっていて、常に新しい物を見聞きしているので理解は早いらしい。
「そうです、簡単に言うと、このエンジンの中で水を分解して爆発させて、その力を車輪に伝えて回転させているのです」
「ほ~、なるほど、これは実に画期的な技術だ」
どうやら何となく理解してくれたようだ、やれやれ。
それから暫くは、当主が次々と質問してきて、それに答えるだけでも大変だった。
当主の質問に、ひと通り答え終わると、ようやく納得した様子だった。
「確かに、これはこの世界の物では無いようだ。
あなたの仰ることを信じましょう。
しかし、どのようにこちらの世界へ来られたのですか?」
「え~っと、これは言っちゃっていいのかな~?」
ソニアの顔をチラっと見ると、頷いているので大丈夫なようだ。
何せ、ソニアは女神様の直属の部下(らしい)なのだから。
「実はあちらの世界で事故で死んだのですが、女神フィリア様の力で、元の世界の記憶をもったまま、こちらの世界へ転生させてもらったんです」
そう言うと、またまた父娘二人が目を見開き、驚いているのが分かった。
オレは転生してからの出来事を掻い摘んで説明した。
黙ってオレの話を聞いていた父娘は、ようやく納得してくれた。
「すると、ハヤミ様は女神様から賜わった白亜の館で暮らしておられるのですね…
その領地で薬草やハーブ、スパイスを栽培されポーションも作っておられると…
ということは、ハヤミ様は女神様から領地を拝領した領主様なのですね」
とアスナが興奮気味に言った。
「言うなれば、女神フィリア様がハヤミ様の後ろ盾ということになりますなぁ。
なるほど、この世界に、これ以上の後ろ盾はございません。
当商会は喜んでハヤミ様とお取引させていただきます。
どうか、末永くお取引のほど宜しくお願い致します」
そう言うとバレンシア商会当主はオレに握手を求めてきた。
そしてアスナも同様に全員と握手した。
「今日は良い縁を結ばせていただきました。
このご縁を下さった女神様に感謝しなければ…
それにしても、ハヤミ様が異世界からの転生者とは、俄に信じられません」
当主は、未だに信じられないと言った表情だ。
「この事が大っぴらになると何かと支障がありますので、どうか内密に」
オレは当主に釘を刺しておいた。
オレたちは応接室に戻って取引の話を詰めた。
バレンシア商会はトリンが作ったポーションの品質を高く評価し、全数買い取ってくれた。
提示額はポーションと薬草、ハーブ、スパイスを合わせ、金貨120枚だった。
日本円に換算すると1200万円くらいの価値だ。
予想よりも高値の評価だったので、その金額で契約することにした。
バレンシア商会とは継続的売買契約を締結することで合意した。
今後の取引は、後日改めて打ち合わせすることとなった。
取引は無事成立したが、懸案事項がもう一つ残っていた。
「ところで、ひとつご相談があるのですが」
「どうぞ、何なりとお申し付け下さい」
「実はトリンの錬金工房には、まだ錬金釜がないので、生産効率や品質が課題でして、錬金釜を設置したいと考えております。
錬金釜は新しく造る以外、入手する手立ては無いと聞いていますが、錬金釜を造ってくれる方をご存じありませんか?」
「はい、それでしたら、同業の錬金術師に聞くのが間違いないかと存じます。
当商会で紹介状をご用意致しますので、明日にでも訪ねてみては如何でしょう」
「なるほど、それは思いつきませんでした。
それでは、明日その錬金術師を訪ねてみることに致します」
オレたちはバレンシア父娘に礼を言って帰途についた。
「別の世界?、嘘も大概になさい!
冗談にも程がある」
そう言って激昂し、先ほどまでの穏やかな態度から一変してオレを睨みつけた。
「嘘じゃありませんよ、証拠をお見せしましょう」
リカール・バレンシアに異世界から転生した人間であることを信用させるには、元いた世界の技術水準を示すしかない。
今、唯一見せられる異世界技術、それは『アウリープ号』だけだ。
「私がストレージに格納しているモノを、ご覧いただければ、ご納得いただけると思います。
しかし、ここでは家具や調度品を壊してしまうので、どこか広い場所をお借りしたいのですが…」
「それほど仰るのなら、その証拠とやらを見せていただきましょう。
ここで宜しいですかな?」
バレンシア 父娘は、オレたちを 中庭に案内した。
当主は少し離れた場所から 訝しげに見ている。
オレは覚悟を決め、異空間収納からアウリープ号を取り出して中庭に置いた。
虚空から現れた白の四輪駆動車は、サスペンションを上下に揺らしながら地面に着地した。
中庭に突如出現したオレの愛車を見て、当主は目を剥き、口をアングリと空け、驚きの声も出せないでいた。
そして絞り出すような声でオレに聞いた。
「な、なんですか、これは?」
「これは中に人が乗り、馬で牽かなくても走る『自動車』と言う乗り物です」
オレはドアを開け、運転席に乗り込み、エンジンを掛けた。
低く小気味の良いエンジン音が中庭に響き渡った。
鳩が豆鉄砲を食らったと言う言葉があるが、今の当主がまさにその状態だろう。
「ご当主様も乗ってみませんか?
宜しければお嬢様も」
ソニアが後席のドアを開けると、当主が恐る恐る乗り込んできた。
アスナは反対のドアから乗り込んだ。
「この広さじゃ、中庭を一周するくらいしかできませんが、走ってみましょう」
そう言ってシフトレバーをDレンジに入れて、ゆっくりと走りだした。
「う、動いている、信じられん、馬も牽いてないのに…
この乗り物はどうやって動いているのだ?」
「エンジンと言う動力装置で車輪を動かし、燃料は水を燃やしています」
「み、水を燃やす?、そんなこと出来る筈が無い」
当主は目を白黒させてオレの言葉を理解できない様子だった。
中庭を一周し、車を停めてボンネットを開け、究極の水素エンジンを当主に見せた。
「このエンジンという物が、車輪を回転させて走らせるのか」
商売をやっていて、常に新しい物を見聞きしているので理解は早いらしい。
「そうです、簡単に言うと、このエンジンの中で水を分解して爆発させて、その力を車輪に伝えて回転させているのです」
「ほ~、なるほど、これは実に画期的な技術だ」
どうやら何となく理解してくれたようだ、やれやれ。
それから暫くは、当主が次々と質問してきて、それに答えるだけでも大変だった。
当主の質問に、ひと通り答え終わると、ようやく納得した様子だった。
「確かに、これはこの世界の物では無いようだ。
あなたの仰ることを信じましょう。
しかし、どのようにこちらの世界へ来られたのですか?」
「え~っと、これは言っちゃっていいのかな~?」
ソニアの顔をチラっと見ると、頷いているので大丈夫なようだ。
何せ、ソニアは女神様の直属の部下(らしい)なのだから。
「実はあちらの世界で事故で死んだのですが、女神フィリア様の力で、元の世界の記憶をもったまま、こちらの世界へ転生させてもらったんです」
そう言うと、またまた父娘二人が目を見開き、驚いているのが分かった。
オレは転生してからの出来事を掻い摘んで説明した。
黙ってオレの話を聞いていた父娘は、ようやく納得してくれた。
「すると、ハヤミ様は女神様から賜わった白亜の館で暮らしておられるのですね…
その領地で薬草やハーブ、スパイスを栽培されポーションも作っておられると…
ということは、ハヤミ様は女神様から領地を拝領した領主様なのですね」
とアスナが興奮気味に言った。
「言うなれば、女神フィリア様がハヤミ様の後ろ盾ということになりますなぁ。
なるほど、この世界に、これ以上の後ろ盾はございません。
当商会は喜んでハヤミ様とお取引させていただきます。
どうか、末永くお取引のほど宜しくお願い致します」
そう言うとバレンシア商会当主はオレに握手を求めてきた。
そしてアスナも同様に全員と握手した。
「今日は良い縁を結ばせていただきました。
このご縁を下さった女神様に感謝しなければ…
それにしても、ハヤミ様が異世界からの転生者とは、俄に信じられません」
当主は、未だに信じられないと言った表情だ。
「この事が大っぴらになると何かと支障がありますので、どうか内密に」
オレは当主に釘を刺しておいた。
オレたちは応接室に戻って取引の話を詰めた。
バレンシア商会はトリンが作ったポーションの品質を高く評価し、全数買い取ってくれた。
提示額はポーションと薬草、ハーブ、スパイスを合わせ、金貨120枚だった。
日本円に換算すると1200万円くらいの価値だ。
予想よりも高値の評価だったので、その金額で契約することにした。
バレンシア商会とは継続的売買契約を締結することで合意した。
今後の取引は、後日改めて打ち合わせすることとなった。
取引は無事成立したが、懸案事項がもう一つ残っていた。
「ところで、ひとつご相談があるのですが」
「どうぞ、何なりとお申し付け下さい」
「実はトリンの錬金工房には、まだ錬金釜がないので、生産効率や品質が課題でして、錬金釜を設置したいと考えております。
錬金釜は新しく造る以外、入手する手立ては無いと聞いていますが、錬金釜を造ってくれる方をご存じありませんか?」
「はい、それでしたら、同業の錬金術師に聞くのが間違いないかと存じます。
当商会で紹介状をご用意致しますので、明日にでも訪ねてみては如何でしょう」
「なるほど、それは思いつきませんでした。
それでは、明日その錬金術師を訪ねてみることに致します」
オレたちはバレンシア父娘に礼を言って帰途についた。
33
お気に入りに追加
1,876
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる