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第1章 異世界リゾートへの転生

第15話 これって、もしかして夜這い?

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「ところで錬金術の時に必要な道具とかあるの?」

「そうですね、錬金材料と錬金釜が必要です。
 それに色々な作業を行いますので専用の小屋なんかもあれば嬉しいです」

「専用の小屋か…、それはローレンに言って用意させよう」

「錬金材料はどうやって調達するの?」

「錬金材料には色々な種類がありまして、薬草、動物や魔物の希少部位、金属、鉱石などがあります」

「へ~、そんなに色々必要なんだ。
 この近辺で採取できそうな錬金材料はあるかな?」

「薬草などは比較的簡単に入手できると思います」

 その話を傍で聞いていたローレンが口を挟む。
「この領内の森には色々な種類の薬草が自生しておりますし、よく使うものは城の温室で栽培している薬草もございます」

「薬草を?…、栽培ですか?
 それは、素晴らしい技術をお持ちなんですね」

「もし宜しければ夕食後に温室をご案内致します」

「はい、ぜひ見てみたいので、お願いします」

「鉱物も山の方に行けば、かなりの種類が採れるはずです。
 アダマンタイトやミスリル鉱石も有るかと…」

「アダマンタイトに、ミスリルですって!!」
 またまたトリンが食いついた。

「そんな希少な鉱石まで産出されるなんて…
 なんて素敵な場所なんでしょう」

「そりゃそうだよ、ここは女神フィリア様の管理地だからね。
 その一部をオレが一時的に拝領しているだけだから」
 多分、ホントにそんな感じなのだろう。
 女神からすれば、ほんの一瞬に過ぎない僅かな時間、転生者であるオレに領地を貸し与えたに過ぎないのだ。
 トリンにオレがこの城に来たこれまでの経緯を説明した。

「異世界から転生?……、ですか、ホントにそんな人、実在するんですね」

「トリンの目の前に実物がいるんだから、嘘じゃないよ」

「ああ、女神様に感謝です」
 トリンは色々と感激していた。

 豪華な中華のフルコースを満喫したあと、ローレンの案内で温室を見に行った。
 そこには約80種類の薬草が、育てられていた。

「薬草、こんなに育ててたんだ、オレは知らなかったよ」

「ここの薬草は生成して薬にもなりますし、スパイスとして料理に使えるものもたくさんありますので、育てて余るものはありません」
 ローレンがそう説明した。

 そう言えば、この温室に入った時からスパイスの香りがするなぁと思っていたのだ。
 よく見ると、シナモンやセージ、カルダモン、フェンネル、サフラン、ミントなどオレでも知っているスパイスやハーブ、それに生姜、ニンニク、胡椒、唐辛子、わさびなどの香辛料まで栽培されていた。

「なるほど、よく使うスパイスやハーブ、香辛料も薬草の一種ってことか。
 こんなに種類があるなんて、料理が美味しいわけだ」

「ホントにこのお城の料理、美味しかったです。
 これから毎日この料理を食べられると思うと、しあわせです」
 トリンの口がだらし無く緩み、ヨダレが出てきそうな勢いだ。

「これで大体わかったね、明日は錬金術工房と錬金材料の確保の話を相談しよう」

「そうですね、なんか自分専用の工房なんて持ったこと無かったので、今から楽しみです」

「そうか、それじゃあ打ち合わせして働きやすい工房にしないとね。
 時間も遅いし、そろそろ休むとしよう」

「はい、それじゃあ、明日宜しくお願いします」

「カイト様、ローレンさん、おやすみなさい」
 そう言ってトリンは満足そうな笑顔を浮かべ、小走りに自分の部屋へ帰って行った。

 明日も忙しくなりそうだ。
 オレは自室に戻りその夜は早めにベッドに入った。

 深夜、気が付くと、誰かがペントハウスの階段を上がってくる音がした。
 そして誰かがじっとこちらの様子を伺っている。
 部屋に鍵は掛かってないが、入って来れるのはメイドたちくらいだ

「誰だ?」

 すると暗闇から声がした。
「トリンです…
 カイト様、一緒に寝てもいいですか?」

「え、なんで?」
 これって、もしかして夜這いって言うやつか?
 でも夜這いって、男が女の部屋へ行くもんじゃなかったっけ?

 オレが余計なことを考えているとトリンはこう言った。
「怖い夢を見て、ひとりじゃ寝れないんです。
 暗い海をずっーとひとりで漂流している夢ばかり見るんです」

 これってPTSD(心的外傷後ストレス障害)ってやつじゃないか?

 なるほど、そういうことか。
 オレはエロいことを期待したが、そう言うことではなさそうだ。

「じゃあ、こっちへおいで」
 そう言って小さな灯りを点けてやる。

 明るく振る舞っていたが、トリンには相当なストレスが残っているようだ。

 トリンは、薄いナイトウェアのままオレのベッドに潜り込んで来た。
「男のベッドにひとりで来るなんて、襲っちゃうかも知れないぞ」
 オレが冗談ぽく言うと

「い、いいですよ……」とトリンは真顔で言う。

 ホントか?、心の中でそう思いながらも、女の子の弱みに付け込んでエッチに持ち込むのは、オレの信条に反するし、今夜は傍に寝かせてやるか。

「大丈夫、何もしないから、安心して寝るといいよ」

「え~、何もしないんですか?」と冗談ぽく言う。
「いえ、今のは冗談です」とすぐに前言を翻す。
「でもカイトさまの手、握っててもいいですか?」

「まあ、手くらいなら握っても問題ないか」
 トリンは華奢な手でオレの手をギュッと握ってきた。

 それから少しするとトリンの寝息が聞こえてきた。
 オレの手を握って安心したようだ。

 トリンに手を握られながら寝ようとするが、距離が近すぎて気になって眠られない。
 しかも、得も言われぬ美少女の良い匂いがオレの煩悩を刺激する。
 手を伸ばせば届く距離に美少女の可愛い唇、白いうなじ、形の良い胸、細い体があるのだ。

 トリンが寝返りを打つと、胸がはだけて見えそうになったり、無意識に足をくっつけて来たりして、これじゃあまるで蛇の生殺しじゃないか。

 その夜、オレは悶々として明け方まで眠れなかった。
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