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6章 女神祭に行こう

9話 3日目バルカス伯爵領到着

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 問題なく領境に到着しました。商人の馬車が二台検問でチェックを受けていた。

「では後に並びましょう」

 お忍びという事でウィルさん達は偽の(といっても正式に領主が発行している身分証だ)身分証を提示する。

「エオカの領立騎士団、騎士ウィル・カートと妹のロッテ・カート。
 そっちは護衛の冒険者レス・フレイとトーナ・ミストア、チーム【金色の翼】の3人と。じゃあ1人づつこいつに手をおいてくれ」

 レスさんとトーナさんははウェイシア王立学園在学中に冒険者登録をしているので冒険者ギルドカードを持っていた。ウィルさんは長く依頼を受けていないので無効になったそうだ。
 ロッテ嬢との移動にいつも使っている身分証明書らしい。ということはレスさんはいいとしてトーナさんも年に何度か依頼を受けているのか。やはり戦うメイドだった。

 領境警備兵が差し出した判定球を青く光らせ通過する。身分偽装は犯罪にならないのか。
 私の場合エレーニア侯爵令嬢も冒険者のエルも間違いではない、どっちもだもの。
 殺人とか泥棒とかに反応するのかな。法律なんて国単位、領単位でも違うし。
 まあ、考えてもわからないから放置で。

 全員のチェックが終わり兵が門を通してくれる。

「ようこそバルカス伯爵領へ、良い旅を」

 軽く礼をして私たちはバルカス伯爵領のミム村を目指す。



 ロッテ嬢がこっちにいるので役目が変わる。私とレイディが先行して露払いはしない。
 ほぼ同スピードで進み進行方向に敵(魔物、魔獣、盗賊など)を発見したらウィルさんに伝える。
 ウリュ君は命綱を外しウィルさんの方に飛び移る。ここはさすが獣人と言える。並走する乗り物に飛び移るなんてどこのアクション映画ですか。ジャッキーと呼んで差し上げます。
 私とトーナさんが速度を落とし、反対にウイルさんとレスさんが速度を上げる。

 まず遠距離からウリュ君のボウガンとレスさんの弓攻撃。
 これで倒れなかったら中距離からアレクス君のスローイングナイフとウリュ君の魔法。
 まだ残っていたらバイコーンが蹴散らしながら蹂躙。
 それでもまだ残っていたらバイコーンから飛び降りたアレクス君が蛇腹剣でひと振りして終了である。
 私たちが着く頃にはウリュ君が魔法で穴掘ってみんなで埋めてたり素材剥いでたりしてます。

「二人ともいい腕をしています。揺れるバイコーン上からのボウガンやナイフを外さず急所に命中させるなんて熟練の騎馬騎士以上ですよ」

 褒めるレスさん。

「本当に、うちの騎士団に勧誘したいくらい。アレクス君の武器は面白いですね、ダンジョン品ですか。私も久々ダンジョンに潜ってみようかな」

「オレ、冒険者だもん」

 騎士にはならない、といっているのでしょう。しかし成長したアレクス君が白銀の鎧に身を包む姿、見てみたい気もします。

「カリオソの森までまだ距離がありますが聞いていたより魔物が多い気がします」

「龍峰から降りてきているんでしょうか」

 トーナさんの疑問にレスさんが疑問で答える。少し考えていたウィルさんが真面目な顔で話す。

「噂の域を出ていないのですが、『龍峰にフェンリルが現れた』という話を耳にしました。以前龍峰にいたフェンリルが戻ってきたのではないか…というものです」

 え、昔って確か・・・

「フェンリル、すっげー、フェンリルに俺会いたい、会ってみたい!」

 をい、それフラグじゃ、そんなフラグいらないんだけど。

「僕も会ってみたいでちゅ」

 あ、ウリュ君まで。

「ふふふ、すごいね二人とも。うん、2人…いやチーム【金色の翼】ならフェンリルにも負けないよ」

 レスさんがアレクス君達を見てそういう。2人はなにやら笑いながら相談し合ってる。

「素材はウリュ君に預かってもらったし、さあ、出発しましょう」

 ウィルさんの掛け声に一行はミム村を目指す。







 ミム村はクロード辺境伯爵領と王都方面とバルガス伯爵領都との交差する街道沿いの村、というかもう街だろう、大きな村だった。

 宿を三部屋とりロッテ嬢とトーナさん、ウィルさんとレスさん、私達と別れた。
 ウィルさんとトーナさんがロッテ嬢と宿に残り、レスさんとアレクス君が従魔の世話、私とウリュ君が冒険者ギルドで道中倒した魔物の処理をする事になった。

 カリオソの森はディヴァン領うちの魔の森ほどではないが龍峰のお膝元だけあってそれなりに魔素が多い森だ。一番近いのは明日の中間目的地の領都モヤーユほどではないが大きい冒険者ギルドだった。

 預かっていたギルドカードを合わせて5枚差し出す。

「ゴブリン14匹、オーク12匹、ダイアウルフ9匹、デビルドッグ3匹、キラーグリズリー1匹ですね。トーナさんはこれでEランク、レスさんはDランク昇格になります」

「あー、後で本人に顔出すように言っときます」

「ではこちらゴブリン5匹1000、1匹200で2800。オーク5匹3000、1匹500で7000。
 ダイアウルフ5匹3000、1匹500で5000。デビルドッグ1匹1000で3000。
 キラーグリズリー1匹3000で合計2万800、税引後1万8720メルになります」

 その足で商業ギルドに行きダイアウルフの皮4匹分、牙と爪9匹、デビルドッグの皮1匹分、牙と爪3匹分、キラーグリズリーの皮と爪、角熊の皮爪、角猪の皮を売る。
 皮が少ないのはバイコーンが蹴散らしたせいで使い物にならなかった分である。

「ダイアウルフの皮4000牙と爪4500。とデビルドッグの皮2000牙と爪1500。キラーグリズリーが1万、角熊5000、角猪2000。合計2万9000、2万6100メルです」

 今回の道中で仕留めたものは肉以外全て売る。分配する為だ。肉は食べるので保存。
 合計が4万4820メルになった。じゃあ宿屋に戻ろう。



「戻りました、ウィルさん。これを」

 今ロッテ嬢の部屋(一番広くてテーブルと椅子4脚あるので)に集まっている。テーブルに金貨を置き金額の詳細を書き写した紙を一緒に渡す。
 アレクス君達も戻ってきていた。ご飯用にキラーグリズリーの肉と内臓を渡してあるのでレイディ達のご飯は済んだようだ。

「4万…結構な金額になるんですね」

 金額に驚くウィルさん。トーナさんはお茶を入れて私たちに配ってくれたので作り置きの中からクッキーをテーブルと床に座っているレスさんとアレクス君達に分けて出す。

 早速手を伸ばしたロッテ嬢にトーナさんが「お食事前ですから控えめに」と注意した。
 ごめん、ロッテ嬢、タイミング悪かったね。

「普通の冒険者は大容量のアイテムバックなんて持ってないのでかなりの素材は諦めますから」

 とレスさん。

「あ、レスさんとトーナさんランクアップしたんで後で冒険者ギルドに行ってくださいね。本人じゃないとギルドカード受け取れないですから」

「ランクアップ、したんですか」

「ゴブリンがFランク依頼、オークとダイアウルフとデビルドッグがEランク依頼、キラーグリズリーがDランク依頼になりました」

「ではこちらがエルさん達の取り分です」

 ウィルさんが差し出したのは3万メル、えっと多くないですか?

「キラーグリズリーなんてアレクス君が一撃でしたし、商業ギルドの税率が低いのはエルさん達のおかげ、素材を持ち帰れたのもエルさん達のおかげですから」

 にっこり笑うウィルさん。そうゆうことなら遠慮せずいただきましょう。

「じゃあ僕らは下で食事をしましょう」

 レスさんに誘われた。ロッテ嬢達は部屋に食事を運ばせるそうだ。
 振り向くと空になったクッキー皿をウリュ君が差し出している。すでに洗い終わっていた。

「ほとんどアレクちゅでちゅ」

 うん、わかっているよ。

「ではまた後で顔を出します」

 レスさんと一緒に食堂に向かう間アレクス君の『ごはんの歌』に、最近ウリュ君の唱和ありません。


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